発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

レッドクロスとにわかワグネリアンの日

2013年03月13日 | 物見遊山
 午前中は、福岡赤十字病院に身内を連れて行く。新しくなった病院が見たかったもので。
 駐車場はまだ工事中だったけど、誘導の人も多くすんなり入れた。
 予約受付機で予約票を受け取ると、行く科の外来の受付カウンターに直行して、カルテ入りの手提げバッグを受け取り、検査待合室へ行く。いくつかの科の検査の共通の待合室のようである。検査終了後、受付でバッグを渡してしばらくすると、名前を呼ばれて診察室へ。診察終了と同時に点数計算された会計伝票が即時発行され、それを会計カウンターに持って行くと、番号とバーコードのついた紙を渡され、画面にその番号が出れば(今回は15分待ち)、精算機でお金を払う。すると明細付き領収証と、次回の予約カードが出てくる。
 新しい建物になる前からも、毎回工夫されて、待ち時間がどんどん短くなってきていた。でも、今回のように、8時半に車を駐車場に入れて、10時前には全部終了していたようなことはなかった。大規模な総合病院としてはかなり早いと思う。
 昔は、まず予約受付をしてから再来受付でカルテを受け取るまでに時間がかかり、それから診療科の外来受付に行って検査診療となるが、検査室が空いていても検査までかなり待ち、診療のあと会計伝票をしばらく待ったと思うし、会計に伝票を出してから精算までに、どうかすると40分以上待ち時間があるために、時間つぶしに向かいのブックオフに行ったり、隣のマクドナルドに行ったりしていたものだが、会計に伝票を出すまでのトータル時間が長いので、すでに朝マックがとうに終わった時間になっていた。午前中がまるまるつぶれることもままあったことを考えると、今は早い。
 ちいさな図書室があり、外来者も館内なら持ち出せる。医療関連の本はもちろん、文庫本もあるし、漫画も多い。インターネットもできる。
 売店はローソンで、カフェは上島珈琲。
 従業員食堂と一般レストランが隔ててあるが厨房は共通のようである。11時から。昔の食堂を知っている身としては、オシャレさに感動である。

 昼からは、総合図書館へ。
 ミニシアターで「タンホイザー」上映会 1989年、バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団。ワグナーのオペラビデオの鑑賞。
 序曲や大行進曲やアリアで有名なタンホイザーのお話は大体以下の通りだけど、受け売りしても責任は負いません。
 タンホイザーは、ヴェヌスブルグという妖しくもエロい洞窟でセクシーな女神様ヴェヌスに可愛がられていたが、故郷が恋しくなったというか飽きたので人間界に帰ることにした。ヴェヌスブルグは、桁外れに評判の悪い場所らしく、タンホイザーはみんなの前でついそこにいたことをバラしてしまったので追放され、ローマに行くお遍路さんになって、罪を許されたら故郷に帰れることになった。
 ところが、帰ってきたお遍路さんたちの中にはタンホイザーはいない。彼に恋する清純な乙女エリーザベトは、自分が死ぬことでタンホイザーの罪を許してもらおうと決め、山へ向かう。エリーザベトのことが好きなタンホイザーの親友ヴォルフラムは、エリーザベトの決意が固いことを知り、彼女の心細い道を星が照らしてくれるように歌う(「愛と誠」の岩清水弘を思い起こし、泣かせる)。そこにボロボロになって帰ってきたタンホイザーは、がんばったのに許してもらえなかった、ヴェヌスブルグに帰りたいよぉなどとほざくものだから、ヴェヌスがそこに出て来て「帰ってこ~い~よぉ」と、むろんドイツ語で歌うが、エリーザベトの名を聞きタンホイザーは我に返り、ヴェヌスは「負けた」と言って消え去る。タンホイザーは亡くなったエリーザベトに魂を救済されて息絶えるというお話。
 若い男が異界に行き、あるいは連れ去られ、そこの女王というか女神様に愛される。自力で帰るか、彼に恋する乙女の尽力で帰るか、それとも死んでしまうか、という、浦島太郎というか、雪の女王というか、これに近い話はたくさんあるよね。
 ヴェヌスブルグとヴェヌスを、どう捉えるかは、その時代と社会の道徳規範によるのだろうが、ようするになにかイケナイものからの誘惑ということだと思えば、どんな時代や社会にもあるものだ。
 ろくでなし男に尽くしちゃう乙女が出て来るところも、古今東西人の世の常である。
 オペラは、テレビではダイジェストしかやらないし、DVDレンタルもない。あったところで長時間家で集中して鑑賞するのも大変だと思う。毎月ブログラムが変わるので、面白そうなものをやっていたらまた来ようと思った。
 ミニシアターの50近い座席はほとんど埋まっていた。お年寄りが多い。短いとはいえ3時間越えである。途中、寝る人がいる。すごくいい曲なんだけど、全然知らなかったらキツいだろうなと思う。

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