発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

2019年9月順不同 「蜜蜂と遠雷」本、旅などなどにまつわるエトセトラ

2019年09月30日 | 映画

◆9月30日「図書館ブックフェア」設営
 今年の会場は福岡タワー1階。
◆9月13日 丸善博多店 ブックコン参加。
 丸善は、通路吉塚側の突き当たりの壁面に私たちの本が置いてある。
◆同日、JR九州ホール[世界を変えた書物]展。
 世界史の教科書に出て来る本の本物がたくさん。金沢工業大学の稀覯書コレクションだが、革装の上製本、美しい図版や飾り罫。古い紙の匂い。コペルニクスの『天球の回転について』ダーウィンの『種の起源』レントゲン、キュリー、アインシュタインと展示され、とてつもない宇宙が展開されていた。
◆9月7日 山口県長門市へ行く。
 旅に出たかっただけ。日本海を眺める。
◆9月24日 蜜蜂と遠雷試写会。天神TOHOソラリア
 音楽の世界のことはあまりわからない。なにか聞かれても答えられない。楽器もできないにひとしい。楽器を手にしても練習しないのだから、音楽の神様もやってくるわけがない。 でも、チャンスがあればあらゆるジャンルを聞く。どれも楽しい。アコースティックな音は脳細胞の並びが整う(気がする)。だからいつもシアワセな気分で家に帰れる。音楽鑑賞の神様には愛されていると思っている。
 演奏家、特にクラシックの演奏家についての私の見解は「迷ったら負け」。ことにソリストに迷いは許されない。ひとつの音も聞き逃すまいと耳を澄ませている大勢の観客。中にはその曲をいろんな演奏家で繰り返し聴いている人もいる。目はプログラムの確認をする一瞬があるかも知れないが、耳は休まない。コンチェルトともなればオーケストラと指揮者相手に丁々発止。集中しながら長い曲を演奏し続けるエネルギーも相当なものだろう。ソリストに限らない。シンフォニーにほんの二小節だか四小節だかのソロが入るとき思う。この音を出すのにどのくらいの研鑽と努力と準備が必要だったのだろうか。迷う暇などないはずだ。
 ともかく、今回は映画鑑賞の神様が私を愛してくれたようで、試写会が当たった。
 この映画は群像劇だが、かつて天才少女と呼ばれていたが、母親が亡くなったばかりだというのにほんの子どもにコンチェルトのソリストを務めろというのも酷な話で、そのコンサートから逃げ出して以来表舞台から姿を消していた栄伝亜夜20歳が、久々にコンテストに登場、復活成るか?というお話が中心である。一度挫折して、それでも大きな国際コンクールに戻ってこれたというのはすごいことなのだが、彼女には迷いがまだあった。その辺、音楽関係者には見抜かれちゃってるの。
「覚悟がないままピアニストになるっていうのも、結構悲劇よ」(審査委員長)
「失礼、ピアノの音が出なくなったかと思って」(最終選考コンチェルトの指揮者、リハーサルで)
 でも、残酷な世界なのは、他の参加者にとっても同じこと。最終選考に残れなかったジュリアードの学生は亜夜に向かって叫ぶ。
「Why you? This is unfare!」
なんだって長いことピアノ休んでたあんたが最終選考に残れてその間ずっと研鑽積んでた私が落ちるのよ?というわけなのだ。
さて亜夜は音楽の世界に帰れるのか? 

 審査委員長はこんなこと言ってたわね。
 音大でピアノやる人の多くは「ピアノ教師になるか、趣味として続けるか、やめてしまうか」
 ああ、そうだろうな。あっち側(ソリストとして活躍するような職業演奏家)に行く人はほんの選ばれたひと握りなのだ。でもやめてしまうなんてもったいない。

◆9月の新聞の感想
「あなたたち、一体何をやってるんですか!!」(テレビ「ハゲタカ」大森南朋版、三島由香の台詞)これに尽きる。
または「よくもそんなことを!!」(グレタ・トゥンベリ)。地球温暖化のことを言っているのではない。ことばの骨が抜かれていく。私はこれに静かに地道に確実に抵抗していかなければならない。



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