車泊で「ご当地マンホール」

北は山形から南は大分まで、10年間の車泊旅はマンホールに名所・旧跡・寺社・狛犬・・思い出の旅、ご一緒しませんか。

年の初めの神楽三昧「大和・葛城」

2022年01月12日 10時00分00秒 | 日本の伝統・芸能・技の美

今日紹介する演目【大和・葛城】、本来は昨日の【土蜘蛛・葛城山】と同じカテゴリーなのですが、あえて日を変えての特別バージョン😄
2013年12月8日、千代田開発センターで開催された「月一の舞い」、「宮乃木神楽団結成15周年・記念特別公演」による【大和・葛城】

神楽のHPで見かけて一目ぼれしたポスター

前日の「本郷太刀納め神楽」の後、雪降る本郷PAで車泊。翌日の早朝、千代田まで走って、できるだけ前の席を確保すべく列に並んだものの、昨日から椅子を置いて場所取りしてる人が多く、入場時にやって来て前に割り込まれるものだから、どんどん後ろに・・😱

と、前置きはこれくらいで😅、この日の演目は「土蜘蛛」と「葛城山」の伝説をもとに創作された「宮乃木神楽団」のオリジナル。ここに登場する「土蜘蛛」とは、古代の日本において朝廷に従わない土豪たちを示す名称であり、これと同じような勢力は、日本の各地に名を変えて存在したと言われています。

舞台は平安時代中期の山深い葛城山。神武天皇に滅ぼされ僅かに生き残った我ら「土蜘蛛」一族。この大和の国:葛城山に隠れ住み、幾世代にも渡って恨みを晴らす機会を窺いながら生きてきた・・だが、この長き恨み、深き呪いの念は今まさに頼光に届き、頼光は重い病に臥したと聞く・・御簾の向こうから聞こえてきたのは、おのれの呪いが成就したことを喜ぶ不気味な声。

その言葉に応えるように開く岩屋、幾重にも張り巡らされた蜘蛛の巣の向こうから近づく怪しい影。

不気味な気配と共に登場する女郎蜘蛛。我ら土蜘蛛の呪いを受け病に臥せる頼光、今こそ積年の恨みを晴らす好機ぞ。土蜘蛛の精魂は二人に侍女となって頼光のもとに出向くよう命じます。

心得て!!!

相 心得て候~~~~~!

舞台変わって、ここは頼光の屋敷。近頃、何故か心持悪く気分も優れぬ。今はしばし、この病を治すことに専念しようと思う と家中の者に伝えています・・・・が、頼光の側近くに仕えているのは、あれは確かに女郎蜘蛛の二人!

そこへ登場する四天王の『渡辺綱』『坂田金時』。屋敷の守り、我らが必ず勤めましょうと力強く応えます。

草木も眠る丑三つ時・・何やら怪しい気配と共に寝所に現われた侍女。はっと振り向いた瞬間、その顔は恐ろしい女郎蜘蛛の顔に・・

女郎蜘蛛の吐き出す毒糸は、病に弱っていた頼光を絡めとり、やがて身動きできないままに追い詰められてゆきます。

満を持して登場する土蜘蛛の精魂。すかさず手にした葛の網で頼光を絡め捕ります。呪いに祟られ、葛の網に絡め捕られ苦しむ頼光。網を引き絞る土蜘蛛の精魂の顔に広がる狂喜の笑み・・

もがき苦しむ『頼光』に浴びせかける『土蜘蛛』の言葉。そこに込められていたのは深い深い恨みの念だったのです。
「汝知らずや我昔。大和朝廷にまつわらざる者ならば、葛の綱に絡められ滅びし者なり。いかに頼光!!!我ら味わいたる、地を這い、土を噛む苦しさを思い知れ!!!」

罠に絡め捕られて苦しむ姿は・・・眉目秀麗の頼光さんだけに、ある種の美しさを感じさせ、観客は次の展開への期待を籠めつつも、言葉を無くして舞台に釘付けになるのです。苦しみもがく頼光、しかしその手には片時も離す事の無かった名刀「膝丸」が・・・

意外な成り行きに驚く土蜘蛛、そんな馬鹿な、この罠から逃れることなどできる筈がない!!勝利の歓喜に満ちた顔は驚きから戸惑いに代わり・・

瀕死の身にありながら、我が精魂込めた葛の罠を破った頼光、何という事か!!!! 口惜しい!!え~~~~い、口惜しいぞ!!

頼光を苦しめていた病も、土蜘蛛の呪いを破ったことで消え失せ、名刀膝丸を手に反撃する頼光。情勢不利と悟った土蜘蛛は、蜘蛛の毒糸を放ち女郎蜘蛛とともに葛城の巣へと逃げ去りました。

騒ぎを聞きつけてはせ参じた『渡辺綱』『坂田金時』。この機を逃してはならぬと、共に葛城の山深くに隠れ住む土蜘蛛の征伐に向かいます。

勝手知る我が住処での戦い、地の利は我にあるとばかり、頼光の前に立ちはだかる土蜘蛛。もはやその顔に、頼光の屋敷に現われた土蜘蛛の面影は微塵もありません。鬼と化したすさまじい形相で頼光に向かう土蜘蛛。

あたりに立ち込める不気味な霧

すでに鬼と化してしまった女郎蜘蛛たち

観客席から湧きおこる拍手に応えるように、見事に「形」を決める土蜘蛛一族。ここでは完全に頼光さんたちは蚊帳の外。何と言ってもこの瞬間の主役は、間違いなく彼ら三人。

この先の戦いは、どんなに頑張っても臨場感重視の画像のみ

可愛い部下の女郎蜘蛛を倒され、今はこれまでと覚悟を決める土蜘蛛

このうえは一人でも多く道連れにと決死の戦いに挑むのですが・・

一太刀、また一太刀・・次々に襲ってくる刃の下に、吐き出す蜘蛛の糸も今は我が身を覆うのみ・・

さしも頼光を苦しめた土蜘蛛の精魂も、今は立ち向かう術もなく壮絶な最後を迎える時が来ました。敵役なのに、その死の瞬間に哀れを感じさせられるというのも、神楽ならではかもしれません。

見事土蜘蛛一族を打ち取った頼光主従。こうして都の平穏は守られ、名刀「膝丸」は「蜘蛛切丸」と改められました。

この日は「宮乃木神楽団」二代目団長の襲名式が行われるという事で、思いがけずに立ち会う事が出来ました。結成から15年、歴史としては決して長くはない神楽団ですが、独自の創意工夫によって築き上げられた魅力は、確実に私たちを虜にしました。熱烈なファンがいるというのも納得のすばらしさ。

素晴らしい神楽の裏には、裏方に徹して団員を育て上げた団長さんの存在がどれほど大きなものであったか・・そう、大事なことを忘れていました。この神楽団で使われる衣装も面も小道具も、すべて団長さんの手作りなんです。そしてそれがより一層、舞台に魅力を添えて、観客の目をも楽しませてくれます。神楽にわかファンで神楽に関してはド素人と言っても良い私たちにも、この素晴らしさはしっかりと伝わってきました。

素晴らしい最高の時間を、有難うございました!!

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京都市上京区にある「北野東向観音寺」境内の片隅には、蜘蛛が棲息していたといわれる「土蜘蛛塚」が残されています。


2022年 一月十二日

 

コメント
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