神楽と言えば【八岐大蛇(やまたのおろち)】、これはもうテッパンものの出し物として定着しているようで、団体旅行などでの観劇でも【八岐大蛇】が上演されているようです。「八戸」【八岐大蛇】【大蛇】という演目で上演されます。
2013年5月21日「出雲大社遷宮・本殿遷座祭」、「出雲大社教 神代神楽」による「八戸」。
物語は『須佐之男命』が出雲の国・斐川にさしかかった時、悲嘆にくれる老夫婦と美しい姫に出会う場面から始まります。老夫婦の名は『足名椎・手名椎』、姫の名は『奇稲田姫』。
嘆き悲しむ夫婦の為に『須佐之男命』は、姫を妻にもらい受ける約束で、大蛇退治を引き受け、まず大蛇を酔わせるための酒を作ります。
辺り一面にむせかえるような酒の匂いにつられた大蛇。姫を食らう前の食前酒代わりとばかり、酒樽を抱え最後の一滴まで飲み干しました。
あるだけの酒を飲み干し、死んだように眠ってしまった大蛇・・・そこへ静かに近づく『須佐之男命』。素戔嗚の気配に気づき、反撃する大蛇。何故か素手で格闘する『須佐之男命』。心配そうに見守る『奇稲田姫』でしたが、見事大蛇を退治する事が出来ました。
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2013年5月22日「出雲大社遷宮・本殿遷座祭奉納」、「下来原西神楽社中(浜田市)」による【大蛇】
物語は『須佐之男命』が出雲の国・斐川にさしかかった時、悲嘆にくれる老夫婦と美しい姫に出会う場面から始まります。老夫婦の名は『足名椎(あしなづち)・手名椎(てなづち)』、姫の名は『奇稲田姫(くしいなだひめ)』。
嘆き悲しむ夫婦に訳を尋ねると、夫婦には八人の美しい娘がいたが、大蛇が毎年あらわれ、七年で七人の娘が食われてしまった。最後に残された可愛い娘も、まもなく大蛇に捧げなければならないと言うのです。『須佐之男命』は、姫を妻にもらい受ける約束で、大蛇退治を引き受け、夫婦に毒酒を作らせます。
一際大きくなる囃子とともに登場した大蛇。辺り一面にはむせかえるような酒の匂い・・・大蛇は姫を食らう前の食前酒代わりとばかり、互いに奪い合うように、我先にと酒樽を抱えて飲み始めました
あるだけの酒を飲み干し、死んだように眠ってしまった大蛇・・・そこへ静かに近づく『須佐之男命』。素早く一つ目の大蛇の頭を切り落とし、返す刀で二つ目の頭を。
見事、大蛇退治の大役を果たした須佐之男命。切り落とされた首は舞台の端に並べられ、演技終了後に触らせてもらえるとアナウンス。で、こんなチャンスは二度とないとばかり、沢山の子供たちに交じって(^^;)
更に、更に大蛇の首を装着しても良いと言われ、いい年とか考える間もなく、すっぽり(笑)。予想以上に大きくてビックリですが、これを頭にかぶって、あの大蛇の動きが可能なんて・・もしかしたら主役は素戔嗚でも櫛稲田姫でもなく、八岐大蛇かもしれません。
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この日は、一演目はさんで、再び「多根神楽団(大田市)」による【八岐大蛇】。神楽と言えば【八岐大蛇】というのはやはりテッパン。そしてここでも主役は間違いなく巨大な八つの頭を持つ大蛇・・舞台の都合上、一体だけ左端でハミゴにされてます(笑)。
この神楽の見せ場は、いかに大蛇たちが勇壮に立ち回るかが重要なポイント。前段階を省いたのか、それとも時間的な関係で、短縮せざるを得なかったのか・・・理由は不明ですが、とりあえず、舞台一杯を使って勢ぞろいした大蛇たちの場面からスタート。様々なポーズを取り、重なり絡み合い、うねりの妙技を見せつけた後、製造過程を省いた酒樽を奪いあって飲み干し・・やがて聞こえてくる高いびき・・
耳を済ませて大蛇の様子を伺う『須佐之男命』、そ~っと近づき、次々に大蛇の首を一つ、また一つと刎ねていきます。
刎ねられた首は囃子方の前にずらりと並べられていますが、まるで空気のように、皆さん、無視されているのが何ともシュール(^^;)
しかし、流石の素戔嗚も、最後の大蛇には何度も苦しめられ、あわやという場面もありましたが、まさに素戔嗚を飲み込もうと大きく開けた口中めがけて剣を突き立て、見事、首を刎ねる事が出来ました。
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同じく本殿遷座祭、日を変えて5月25日に奉納された「千原神楽団(美郷町)」による【八岐大蛇】。スタートは生贄に差し出すための姫を真ん中に、泣きながら登場する老夫婦。・・なのですが、今日は客席に応援団が来ているようで、しきりに声がかかり、それに手を振って応えちゃう「手名椎」のばぁちゃん(^^;)
例によって例のごとく、二人に毒酒を造らせ、大蛇が酔いつぶれるのを待つ素戔嗚。今回が四度目の【八岐大蛇】ですが、その迫力のアクションは、神楽団によって独自の個性と工夫が成されており、何度見ても凄い!。
そうして例によって例のごとく、酔いつぶれた大蛇の首を刎ねてゆく素戔嗚さん。
刎ねられた首をせっせと舞台のかぶりつきに並べる「足名椎」。っていうか、子供たち!!何で舞台にかじりつく?!なんでじいちゃん、首を子供たちに渡してる?! 坊ちゃん、勝手に持って行っても良いのか!?・・もう何でも有りなのか???(笑)
その間にもせっせと大蛇と戦う素戔嗚さん
見事大蛇を退治し、勝利の舞を舞う素戔嗚さんと、舞台の下で同じように舞いはじめた坊ちゃん???? ・・しかも結構うまいし・・あんた誰???(笑)・・・数々のお笑い場面に一切動じることなく最後の挨拶を決めた素戔嗚さん・・ある意味、最強かも(^^;)
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2013年7月6~7日、神楽門前町のドームで開催された「安芸高田神楽特別公演」での「羽佐竹神楽団(安芸高田市)」&「日吉神楽団(安芸高田市)」の【八岐大蛇】。
神楽の中では『須佐之男命』は、専用の面をつけるか、もしくはこのように長い髪で顔を覆い隠しています。羽佐竹さん家の素戔嗚さん、キューティクルヘアーが照明にキラキラと輝いて衣装も豪華。でも個人的には画像右の、日吉さん家の素戔嗚さんの衣装が好みです(笑)
縁の紐をつないで登場する『足名椎・手名椎・奇稲田姫』。日吉さん家の素戔嗚さんは、三人の身の上話を聞く間もずっとこのポーズ(^^;)
お決まりのやり取りがあって、ジジ・ババ様たちのコント(笑)が有って、姫を妻にする約束も取り付けました。危険なのでここは一旦隠れてもらう事にします。
そして羽佐竹さん家の大蛇の登場・・なのですが、何と今回の大蛇は、口から火を吹いて舞台の上を暴れまくります!!(゜゜;)火ですよ、火!!本当に火薬のにおいがして、あたりに煙が立ち込める火なんですよ!!
ひとしきり暴れて拍手喝さいを貰った日吉さん家の大蛇たち。さっそく奪い合うように酒樽に首を突っ込み、一体・・また一体と酔いつぶれて眠り始めます。
酔いつぶれた大蛇の首を次々と刎ね、目を覚ました最後の一体も見事打ち取り、スモークと拍手に包まれて、カッコよくポーズを決める羽佐竹さん家の素戔嗚さん。
このように【大蛇】の体をちょうちん蛇胴とした考案は、石見神楽に一大改革を起こしたと言われています。この狭い舞台の上で一度に最大で八体の大蛇が登場し、見事に毒酒を飲み、酔い潰れ、更に素戔嗚との戦いでは大暴れ。しかも舞手は身体を胴の中に隠した状態で舞わなければならないのです。それは想像をはるかに超えた壮絶さ。それゆえにこそ、大蛇の主役はまさしく【大蛇】なのです。
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2013年12月7日は本郷地区:神楽太刀納め、「神幸神楽団(安芸高田市)」による【八岐大蛇】。太刀納めとは、神楽団が秋の祭りを終えて今年最後の舞い納めとして、太刀=刀を納める事。子供神楽(内容も衣装も本物・本格的)等もありかなり盛りだくさんの太刀納め神楽。ラストを飾るのはやはり【八岐大蛇】で、もうすっかりお馴染みになった三人の登場から始まります。
不審な三人の様子を見て、何事かと問う素戔嗚。
この演目で大蛇に負けずに人気なのが『足名椎・手名椎』のやり取り。それぞれの神楽団によって内容は異なりますが、はっきり言って吉本喜劇なんて目じゃありません(笑)。泣きあり下ネタありの爆笑もの。二人が出場する場面では、『須佐之男命』の存在感はゼロに等しく、完全に主役を食っています。
さぁ、いよいよ毒酒づくりですが、その前に「ばぁさんや~💛」「じいさん、かも~~~ん💛」・・って Σ(oдΟ;). 公衆の面前ですよ!お子様も見てますよ~~~!!
気を取り直して真面目に毒酒づくり。おお、良い匂いじゃ、どれちょっと味見・・・・をっをっをっっっ~~~~っ!!!。こればあさん、何も頭から飲まんでも!!樽に頭を突っ込んでじたばたする『手名椎』ですが、この後、見事なウルトラC技で復活(^^;) 姫の持つ幣(ぬさ)がプルプル震えていたのは絶対に寒さのせいじゃない!
初冬の山間部、忍び寄る夜の寒さも吹き飛ばすほど、会場は笑いと熱気で包まれ、掛け声と一緒におひねりも飛び (⌒∇⌒)。これが今年の神楽収めと言う事で、大蛇も気合たっぷり、奔放自在に体をくねらせて見せ場を作ってくれます。
軽快な太鼓の音、思わず体が浮くような打ち鉦のリズムが、大蛇の息吹と共に舞台にあふれ、いつしか舞台と客席は一つになり、やがて・・・・・最後の一頭(どうやらこいつが八岐の中でのラスボスみたい)との一騎打ち。
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翌12月8日、千代田開発センターで開催された「月一の舞」は、「山王神楽団(北広島町)」による【八岐大蛇】。が・・実はこの時昼食の調達に出ていて、肝心のジジ・ババ様達の楽しい掛け合いを見逃してしまいました(T^T)。 お昼の合間休憩が無いなんて知らなかったんだよ~~~~!! (ご亭主殿も写真ぐらい撮っておいてくれよぉ~~~~)と言う事で、勇ましい大蛇たちの妙技から。
何と今回は、『須佐之男命』が大蛇に倒されてしまうと言う大ハプニングが!!!
近くで見守っている『奇稲田姫』は、駆け寄る事も出来ず見守るだけ。
予想外の展開に、思わず素戔嗚の近くにかけよる心配そうなラスボスの大蛇さん。しっぽの先で何度かツンツンされて復活!
でもって、恩を仇で返す(笑)素戔嗚さん。最後の大蛇の首を刎ね、その尾から出てきた美しい剣を手にし『奇稲田姫』とハッピーエンドです。
「天の村雲」と名付けられた剣は、後に「草薙の剣」として『天照皇大神』に献上され、今も三種の神器の一つとして「熱田神宮」に祀られていると言う事です。
こうして『須佐之男命』は【大蛇】から助けた『奇稲田姫』と結婚し、出雲の祖神となりました。
【 八雲立つ 出雲八重垣妻籠みに 八重垣作る その八重垣を 】
この歌は二人が結婚した時に『須佐之男命』が読んだとされ、日本初の和歌と伝えられています。歌碑は二人を主祭神とする「八重垣神社」の境内に建立されています。
2021年も残すところ12時間。勇ましいオロチ退治で今年のブログはひとまず終了です。どうぞ新しく迎える来年が誰にも素晴らしいものでありますように・・つたないブログを応援して下さった大切な読者様。今年一年、有難うございました。どうぞ良いお年を m(_ _ )m
2021年 大晦日