メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

第二話 彼と彼女の事情

2006年03月18日 | LAWSON CALLING
---数年前僕はとあるコンビニエンスストアの深夜バイトをしていた。
住宅街にあるコンビニだからそれほど客は多くない。
毎日同じ客が同じものを買ってく、そんなコンビニだった。
深夜1時から朝9時までの間、店員は僕一人だけだった。
断っておくが僕は反社会的な思想を持っていた。---

夜のコンビニには色々なお客が来る。
人にはそれぞれ事情がある。

その日も僕はいつもと同じように、シーンと静まりかえった店内に流れるFMをしっとりと聞きながらレジの奥の椅子に座っていた。

すると慌しく店内に駆け込んでくる者があった。
上下グレーのスウェットを着てサンダルを履き、髪もボサボサな20代半ばくらいの男だった。

まるで寝起き3秒後の様なその姿に、何かのっぴきならない事情があるのだろか?と僕はレジに立ちそのお客のお買い上げを待ち構えた。

お客はその男一人だったので僕の視線は自然とその男にロックオンする。
何かを必死に探している。何を探しているのだろうか?
しかし数分とたたぬうちに男は一つの商品を持って、少し息をきらせてレジに駆けてきた。

レジに置かれた品物は・・・コンドームだ。

刹那、僕の脳裏に鮮明なストーリーイメージが再生される。


・・・明かりの消えたアパートの一室にて

ちゅぱちゅぱ×27

男「愛してるよ」
女「愛してるわ」
男「綺麗だよ」
女「ありがとう」

ちゅぱちゅぱ×39

男「そろそろ・・・」
女「うん」
男 何やらあたりをごそごそする
女 少し萎える
女「早くしてよ・・・」
男「あれっ、ゴムがないや」
女「えー、無きゃヤダヨ」
男「今日位いいじゃん、な」
女「嫌だ!絶対駄目!」
男 強引に行こうとする
女 ビックリするような腕力で男を跳ね返す

女「だからゴムせー言うてんねん!」
男「だから無いー言うてんねん!」
女「ゴムせな怖いー言うてんねん!」
男「失敗した事ないー言うてんねん!」
女「それが怖いー言うてんねん!」

二人 「・・・」

男 言いくるめられ諦める
女 少し不機嫌に布団に潜る
男 欲望を抑えきれず猛ダッシュで服を着てコンビニへ向かう
  コンビニの青い看板が見えてくる
  あと少し・・・あと少しのふんばりや
  店の扉を開く
  ”キンコーン”

店員 男に冷たい視線を浴びせる
男 店員の冷たい視線を感じつつもそれどころではない
  
と、冒頭へ。

レジ台へちょこんと置かれたコンドームをおもむろに掴み、そのバーコードを”ピッ”と打ち、男に金額を告げる。

気を利かせ、紙袋にそいつを入れてやる。
男は今にも「袋要らないです」と言い出しそうな空気だったが、呼吸を整えるため、そこは黙ったままだった。

買い物が終わると男はまた駆け足で店を出て行った。
その背中に僕は小さくつぶやいた

・・・「グッドラック」・・・

店に、また静寂が訪れた。

夜のコンビニには色々なお客が来る。

人にはそれぞれ事情がある。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第一話 「おねがいしまーす!」 | トップ | 第三話 長渕キック »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。