メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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「ごらん、世界は美しい」

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魂のルーツ

2014年03月17日 | ボクヲサガシテル
法事で実家に帰った。
久々に会った伯母はすっかり老いていた。

法事が終わり我が家でみんなで団欒。
話は盛り上がる。

そんな最中ふと爺ちゃんと親父がやっていた会社の話になった。

幼い頃の僕には家と会社があり、家が2つあるようなものだった。
どっちも自由に過ごしていた。

そして会社の社員の人々はまた独特な存在の人たちだった。
会社と言っても町工場なので、このご時世町工場で働く人なんて正直社会の底辺のような人が多かった。
しかし子供の僕にはそれが分からず、みんな僕をかわいがってくれる素敵なおじさんたちであった。
恥ずかしながら彼らには「ぼっちゃん」なんて呼ばれたりしていた。

そんな社員さんたちの話になった。
字が読めない人、会社に来ない人、コミュニケーション取れない人、喧嘩ばかりする人。
古株はだいたい爺ちゃんの代から働いてくれてる人で、
ほぼ全員親父より年上で、
それでいて人としては大分未熟なのでさぞ苦労があったであろう。

そんな社員の中で一人、工場長をしていたおじさんが居て、
我ら兄弟を非常にかわいがってくれて、
家にも泊まりに行ったことがあった。

一族経営の会社の中で唯一と言ってもいい特別な社員に見えた。
なぜなら会社の鍵を持っているのはウチの家族とその人だけだった。
朝、会社を開けるのはいつもその人だった。

僕から見れば礼儀正しく誠意があるまともな大人でいいおじさんだと思っていた。

ところがそんなおじさんの人生のエピソードを今更聞いた。

関西出身で向こうで婿養子になっていたがその家が合わず、
蒸発するように逃げてきた失踪人だという。
日本を転々としてる内にウチの爺ちゃんと出会い雇われたのだという。
そうしてこっちで再婚して真面目に働き出したのだと。

しかしさらなる困難がおじさんに振りかかる。
会社は爺ちゃんから親父へ引き継がれていた。
ある日若社長の親父の元へそのおじさんがただならぬ様子でやってきて、
「妻が借金を作ってしまいもうどうにもならない状況になってしまっていた、
お金を貸してもらうか、再び逃げるしか選択肢が無い」と。

額は600万くらい。
義理人情の爺ちゃんは彼を雇った責任として金を貸す気持ちだったが、
珍しく親父に相談をしたという。

「どうするんだ?俺は貸すつもりだが、今後あいつはお前の社員になる、
お前が今後もアイツを使い続けるというのなら貸してやれ。
ただアイツを切るつもりならもう切ってしまえ。」

と。
親父としてはかなりの苦渋の選択だったと想像できる。
結局2人が300万ずつ貸して・・・というか親父が借金を肩代わりして、
おじさんが借金をしていた街中の街のサラ金を親父が一軒一軒金を返して回ったという。
非常な暴利なので今ならば弁護士に相談すべきだったろうが。

おじさんは当然恩義を感じて毎月ちゃんと手渡しで借金を返しに来て、
ひと月もサボらずに金を返しに来て、
数年できっちり返済したという。
そして親父が会社をたたむまでずっと親父の一番の部下だった(ように見える)。

親父よりは10歳以上年上なので、
今は奥さんも亡くし天涯孤独の身になって施設に入っているという。
親父はそんなおじさんに
「あんたの骨は俺が拾ってやるから!」と昔に約束したという。
だから未だに気にしてるという。



この話の一番のポイントは、
僕はもう30後半だが親父にそんな一面があることを知らなかったということ。
それ以外にも他の社員の沢山のエピソードを今だから話せるとばかりに話してくれたが、
親父はちゃんと社長で多くの人間の世話をしていたということ。

よくよく考えればその後もウチの実家には親戚が居候したりした。
人の人生を救えるなんてそこそこの財力と男気が無いとできることじゃ無い。

そしてその部下のおじさんは全くイメージとは違う特殊な人生を送っていたという衝撃。

爺ちゃんは本当に義理と人情な江戸っ子みたいな人だったので想像し易いが、
それは確実に親父にも引き継がれてるもんなんだな、と思った。

それは嬉しくもあり僕は密かに感動していた。

幼いころは極度のおじいちゃん子だった僕、
一つ屋根の下に居たが親父と爺ちゃんが話をしている場面の記憶が無い。

しかし我ら子供が知らないところで、
二人は当然大人だった。

受け継がねばなるまいと思っている。

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