太っちょ

そこそこ混んでいる電車に乗っていた。

僕は座席の前のつり革に掴まり立っていて、いつものようにDSの文学全集を読んでいる。

すぐ横にはブサイクな女二人組みが立っていて、そこそこ混んでるってのに大声で喋りながらパンを食べている。

僕のすぐ横の女は小さいがかなりの太っちょで関取の様な笑顔を絶やさずテンションが高い。
その向こうの女はしゃくれている。

二人の女は向かいあって立っているので太っちょの背中のすぐ後に僕が居る構図だ。

そして太っちょは身振り手振りが大げさで、喋っている時かなり大きく手を振り回している。
なので、その度DSの文学全集を読んでいる僕の腕を容赦なく跳ね上げる。
ガツガツぶつかっている。

信じられない・・・。

何度かイラついた表情を向けたのだが、太っているせいか気付かない。
目も合った気もするのだが、気付かない。
きっと太っているからだ。

結局少し空くまでまでの間、僕はずっとガツガツと肉厚のある攻撃を耐えていた。
女は関取の様な笑顔を絶やさなかった。
僕の気も知らずとても楽しそうだ。

一体どうやって今日まで生きてきたのだろうか？

そんな人間が世の中には沢山居る。