メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

スパイの妻

2020年11月15日 | 映画
スパイの妻
を観ました。


一九四〇年。少しずつ、戦争の足音が日本に近づいてきた頃。
聡子(蒼井優)は貿易会社を営む福原優作(高橋一生)とともに、神戸で瀟洒な洋館で暮らしていた。
身の回りの世話をするのは駒子(恒松祐里)と執事の金村(みのすけ)。
愛する夫とともに生きる、何不自由ない満ち足りた生活。
ある日、優作は物資を求めて満州へ渡航する。
満州では野崎医師(笹野高史)から依頼された薬品も入手する予定だった。
そのために赴いた先で偶然、衝撃的な国家機密を目にしてしまった優作と福原物産で働く優作の甥・竹下文雄(坂東龍汰)。
二人は現地で得た証拠と共にその事実を世界に知らしめる準備を秘密裏に進めていた。
一方で、何も知らない聡子は、幼馴染でもある神戸憲兵分隊本部の分隊長・津森泰治(東出昌大)に呼び出される。
「優作さんが満州から連れ帰ってきた草壁弘子(玄理)という女性が先日亡くなりました。ご存知ですか?」
今まで通りの穏やかで幸福な生活が崩れていく不安。
存在すら知らない女をめぐって渦巻く嫉妬。
優作が隠していることとは――?
聡子はある決意を胸に、行動に出る……。


黒沢清監督・脚本です。
自分にとっては邦画にドハマリする初期衝動の一人だったのでかなり特別な監督です。
ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を取ったので話題になりましたね。

近所でやってなかったのですがそんな黒沢清作品なのでわざわざ観に行きました。

あえての古いテイストの作風で映像の質感も演出も役者の喋り方も極端に昭和レトロになってました。
大正ロマンな雰囲気を感じるくらいな昭和初期の世界観でした。

喋り方はゆりあんレトリィバァがモノマネでやる昔の女優みたいな。
流石の黒沢清監督なので世界観の構築とそのクオリティは非常にハイレベルです。

物語は淡々と進みます。
戦争ものでよくあるタイプ。
狂っていく日本の中でそのやり方に大いに疑問を抱く近代的な思考の主人公たち。
夫はスパイ疑惑をかけられるがスパイというわけじゃなく自分の意志で日本軍の暴走、人道に反する行為を止めようとしてるだけでした。

ほんのり第二次世界大戦や近代史を調べる趣味の自分ですが正直この手の人体実験の話題は余り出てきませんね。
ナチスがあれだけやってたのだからおそらく日本軍や他の国でも行われていたと思いますが。

物語の大筋はあるあるのタイプとは言え流石の黒沢清作品なのでかなり独特な仕上がりです。
一般的な監督ならばベタに引っ張って盛り上げるような場面を逆に淡々と描いて。
ここでドキドキなスリリング展開かな?と構えてもサラッと過ぎてしまったり。
逆にそれほどでもないシーンをさぞ重要っぽい熱量で描くので、あえて全体の起伏を無くしている印象でした。

そんなことの繰り返しにより不思議と登場人物たちの深い思想が見えてくるようで。
表面的な典型的物語を観てるつもりがいつの間にか非常に深い物語でした。
ハイレベルベテラン監督ならではの見事な仕上がりでした。

全体的に引きの絵や影の明暗くっきりな黒沢清節といっても良い映像は相変わらずです。
そして廃墟的なロケーションも相変わらずでした。


主演の蒼井優は言わずもがなの実力派なので最適なキャスティングでしょう。
ルックスが良くて演技も上手くて。
夫役の高橋一生とは近年みたロマンスドールでも夫婦役だったので不思議な感覚でした。
幼馴染役の東出昌大もおらおらでひとりいぐもで夫婦役だったので。
売れっ子女優だと同じ俳優さんと違う役で頻繁に共演したりで凄いですね。
あえて昔っぽい喋りとキャラクターがとても良い雰囲気でしたね。

夫でスパイ的な人物を高橋一生が演じていました。
また蒼井優との夫婦役でしたが作品によってガラッと印象が変わるので流石でした。
クールでエリートで謎めいていて、彼のイメージにとても合っていたと思います。

東出昌大が幼馴染ながらお国にに心酔する役でした。
この手の映画には必要な悪役タイプ。
お国に魂を注いで狂ったことでも迷いなく実行してしまう怖い人でした。

夫の親族を坂東龍汰が演じていました。
ちらほら見かけたことがありますがあまり印象に残る役が無かったですが。
なかなかいい演技で結構印象に残りました。
今後活躍しそうな予感がありますね。

独特で世界観強めで流石でした。


そんなわけで7点。

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