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『イノセンス』~シーザーを理解するためにシーザーである必要はない~

2010-09-04 10:50:42 | アニメ


種田陽平氏がかかわった作品の中に、押井守監督の『イノセンス』がある。
TVシリーズにもなった、士郎正宗による漫画作品の『攻殻機動隊』の劇場版で、1995年公開のアニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編にあたる。

劇場公開時に見に行ったが、私は、原作も前作の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』も知らないで、いきなり劇場版を観たので、ストーリーや、その設定について行けず、アニメーションの質としては素晴らしテクニックや背景美術ではあるのは分ったが、内容はさっぱり分からなかった。

今回、種田陽平氏がプロダクションデザイナー(美術監督)としてかかわっていたと知り、その視点からもう一度見て見ようと思ってDVDを借りてきた。

冒頭に、『この作品の世界に入る前に』ということで、『攻殻機動隊』の世界の2039年という時代の設定の説明や、『攻殻機動隊』とはどういう組織か、また、それぞれの登場人物についてなど、分かりやすい解説が付いていた。

そのお陰で、かなり世界に入りやすく、また、以前見て疑問だった点も答えがわかって、興味深く観ることができた。
http://www.production-ig.co.jp/contents/works_sp/1160_/
http://www.bandaivisual.co.jp/oshiimamoru/

時代は21世紀、第三次核大戦と第四次非核大戦を経て、世界秩序は大きく変化し、科学技術は飛躍的に高度化した。その中でマイクロマシン技術(作中ではマイクロマシニングと表記されている)を使用して脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展系であるサイボーグ(義体化)技術が発展、普及した。その結果、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代が到来した。人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが混在する社会の中で、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知してその被害を最小限に防ぐ内務省直属の攻性の公安警察組織「公安9課」通称「攻殻機動隊」の活躍を描いた物語。(Wikipediaより)

かつて、『銀河鉄道999』で、機械の体を求めて旅する少年鉄郎と亡くなった母によく似た姿の美少女メーテルが、いろいろな惑星に立ち寄りいろいろな人たちとの出会いから、『機械の体』と『生身の体』について葛藤しながら旅するシーンがあった。

『電脳化』によって、瞬時にして他人と情報を共有することができるということは、同時に、自分の脳の中に他人の意識が入り込んできたり、覗かれたり、コントロールされたり、全く別の情報を埋め込まれたり、乗っ取られたりするということにもなりかねないのだ。

そんなことが、あと20年も経ったら当たり前のように行われていると思うとぞっとする。
と言いながら、今だってサイバー犯罪ほどんどん広がっている。若者の携帯電話依存症、子どもたちのゲーム脳などは、近未来の電脳化の前哨戦なのかもしれない…。
大人だって、必要な栄養はサプリメントで摂取し、どこに行くにも車を使っている。生身の体でありながら、自然治癒力も免疫力も落ちて『薬漬け』になっているのは、はたして健康な体といえるのだろうか…。

『イノセンス』の美術は、改めて見ると、近未来のアジアのものすごいエネルギーを感じた。近代化される都市の裏側で、たくましく、したたかに生き延びているドヤ街のエネルギーと胡散臭さがうまく出ていたと思う。

音楽も「傀儡謡」のコーラスは75人の民謡歌手を集め、更にクライマックスに使用された傀儡謡ではコーラスを4回収録し、それを同時に流す事によって音に厚みを増しているというこだわりよう。あのこぶしの聞いたコーラスとキーの高さはアジアンテイストをうまく表現していると思う。

押井守監督が『うる星やつら』の劇場版『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』でも使っていた、同じ時間を何度も繰り返す不思議な現象も、作品の中で用いられている。

『公安九課』のリーダー荒巻氏が引用した「シーザーを理解するためにシーザーである必要はない」(マックス・ウェーバー『理解社会学のカテゴリー』)の言葉はすごく心に残った。
また、『鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず、声有る者は幸福也』(斎藤緑雨)も、
『ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけではない』(西洋の諺)も興味深かった。

改めて、『攻殻機動隊』の原作漫画を読み、TVアニメシリーズを最初からてみようと思った。


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