明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1163)米軍が「国境なき医師団」を空襲。22名を殺害、重軽傷者多数

2015年10月05日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151005 11:00)

アメリカ軍と連合国軍がアフガニスタンで「国境なき医師団(MSF)」の外傷センターを空襲し、スタッフと入院患者ら多数を殺傷しました。10月3日のことです。
現時点でMSFスタッフ12名と患者10名の死亡が発表されています。今後さらに死傷者数が増える可能性があります。

MSFはこの爆撃に対して「重大な国際人道法違反である」と厳しく弾劾する声明を発しています。
にもかかわらず責任を負っているアメリカ政府と軍はいまだ謝罪すら行わず「弔意」を示しているのみです。(一部で謝罪が行われたという報道がありましたが、後に「弔意」に訂正されています)
アメリカ軍は今のところ自らの犯罪を認めずに「悲劇的事態」と言い換えています。

問題の地域では9月28日よりタリバンとアフガニスタン政府軍の激しい戦闘が起こっており、これにアメリカ軍が介入する形での空襲が行われました。
これに対してMSFはこの紛争の最中でわけ隔てのない医療行為を行い、わずか数日間の間に394人の負傷者を治療してきました。わずか2日間で90件の手術を行ったそうです。文字通り不眠不休で命を救っていたのです。
もちろんMSFはこれまで外傷センターの位置のGPSデータを米軍にもアフガン軍にも繰り返し伝え、自らの安全を守る最大限の努力も行ってきました。空襲された時もただちにアメリカに襲われているのが病院であることを告げましたが、米側は無視。さらに攻撃が断続的に行なわれたそうです。

これは大変な犯罪です。
すでにザイド・フセイン国連人権高等弁務官が「犯罪の可能性すらある」と同日に声明を出し、これに続いて国連事務総長からも強い非難声明が出されました。
国営ラジオ・フランス・アンフォも10月3日の午後の報道で「空爆は誤爆ではなく襲撃であり、戦争犯罪の可能性が指摘されだしている」と述べています。フランスの国営ラジオでの報道のニュースソースは以下の通りです。

 アフガニスタンの「国境のない医師団」空爆は 米軍の「誤爆」ではなく「襲撃」の「戦争犯罪」
 フランス報道の中で考える宗教と社会の解明 飛田正夫のブログ 2015年10月4日日曜日
 http://franettese.blogspot.fr/2015/10/blog-post_4.html

日本政府もまたこのアメリカ軍の非人道的な殺りく行為に対してただちに非難声明を出すべきです。
とくに政府がアメリカ軍を支援するための戦争法を強行可決したことで、この国が世界からこれまでより強くアメリカの同盟者と見られている最中ですからこの点は大変に重要です。
アフガンの人々、さらにイスラム圏の多くの人々が、今回の襲撃に対してさらにアメリカへの怒りを強めるでしょう。
あまりに非人道的な攻撃に対して、報復を決意する人々も出てくるでしょう。

これに対して日本はすでに第三者的な位置を失っています。安倍首相が最後的に投げ棄ててしまったからです。
だからここできちんと声明を発しないと、日本もまたこのアフガニスタンでの殺りくを擁護する同盟者とみなされ、当然にも報復の対象となります。
私たちから離れた遠いところで行われていることではまったくないのです。この国は今回の病院空襲という事態においても当事者の中に入ってしまっているのです。他人ごとだと考えていてはいけない。責任があるのです。

私たち民衆の側からも、日本政府に対して、こんなにひどい殺りくを行ったアメリカ軍と同盟する戦争法を撤回せよと大きな声で迫っていく必要があります。
まさに今、イスラムの多くの人々の痛み、嘆き、怒りをシェアして、すべての戦闘行為を止めさせるための行動を行う必要があります。
もう「誤爆」などという言葉に騙されていてはいけない。人道的罪なのです。こうした過ちを起こす可能性がある戦闘をすべて止めることこそアメリカが選択すべきことです。

以下、私たちにとってとても大事なことなので、「国境なき医師団」が4日発している声明を全文転載します。なお死亡者が19人の時点で発せられたものであることにご留意ください。

*****

 アフガニスタン:MSF外傷センターへの爆撃、「連合国軍は完全なる情報公開を!」
 国境なき医師団 2015年10月04日掲載
 http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2507.html

国境なき医師団(MSF)は、アフガニスタン新しいウィンドウで開きます のクンドゥーズ州で運営している外傷センターが爆撃されたことを厳しく非難する。
子ども3人を含む患者7人とスタッフ12人の命が奪われた。また、スタッフ19人を含む計37人が負傷した。この爆撃は極めて重大な国際人道法違反である。
現時点では、この爆撃は連合国軍によるものだということをすべての指標が示している。MSFは連合国軍に対し、10月3日未明の爆撃についてすべての情報を開示することを要求する。
また、情報公開の透明性と説明責任を最大限に担保するために、連合国軍から独立した立場からの調査も求める。

15分間隔の爆撃が1時間、主要施設に極めて正確に着弾

外傷センターでの活動に中心的な役割を果たしていたMSFベルギーのマイネ・ニコライ会長は「この爆撃は許し難く、国際人道法への極めて重大な違反です。MSFは連合国軍に対し、完全なる情報公開を求めます。12人の命が奪われたこの事実を『紛争地では巻き添えが出ることもやむをえない』などと簡単に片づけることは受け入れられません」と話す。
MSFの外傷センターには、10月3日の午前2時8分から3時15分まで、15分間隔で爆撃が繰り返された。外傷センターの主要病棟、集中治療室、救急救命室、理学療法室の各施設が極めて正確に爆撃され、その周囲の施設はほぼ被弾しなかった。

「爆撃機が施設上空を旋回し……」――MSF活動責任者の証言

MSFのアフガニスタン北部での活動責任者を務めるヘマン・ナガラスナムは「爆撃と同時に爆撃機が旋回する音が聞こえました」と証言している。旋回音が一時停止すると爆弾が降り注ぐ。それが何度も繰り返された。
「私は事務室にいたのですが、外に出ると主要病棟が炎に包まれていました。病棟の2つの地下室に避難できた人もいましたが、自力で動けない患者たちはベッドに横たわったまま炎に包まれてしまいました」
爆撃直後から、外傷センターのMSFチームは、被害がなかった部屋を仮設の手術室とし、患者や同僚たちの救急救命に全力を尽くした。重傷で対応しきれない患者は、車で2時間走ったところにあるポレ・ホムリの病院に移送した。

MSFはGPSで位置情報を知らせていた

MSFは、GPSを用いた外傷センターの位置情報を連合国軍、アフガニスタン政府軍、地域の行政当局に機会があるたびに知らせていた。これは、アフガニスタンに限らず、紛争地で活動する場合には必ず行っていることだ。
しかも、外傷センターについては、直近では9月29日に情報を伝達したばかりだった。それにもかかわらず、爆撃されたのだ。
MSF日本のジェレミィ・ボダン事務局長は「爆撃は患者とスタッフの命を奪い、アフガニスタンで最も必要とされている外傷治療に緊急対応できる医療施設を破壊したのです。私たちはすべての紛争当事者に、国際人道法に則り、一般市民、医療施設、医療スタッフの安全を尊重することを、もう一度、強く要求します」と強調する。

MSF外傷センターでの活動の背景

2015年9月28日に戦闘が始まり、MSFはこれまでに負傷者394人を治療してきた。空爆が始まった10月3日未明の時点で、外傷センターの敷地内には、患者105人とその付き添い、およびMSFスタッフ80人以上がいた。
MSFの外傷センターは、アフガニスタン北東部で唯一、さまざまな外傷治療に対応できる施設だ。2011年に開設し、高い水準の外傷治療(四肢の温存療法を含む)を無償で提供してきた。
2014年だけでも、2万2000人以上を治療し、5900件以上の手術を行った。
MSFの医療・人道援助は、中立・独立・公平の立場から、思想・信条・宗教・政治的立場などにかかわらず、患者の医療ニーズのみに基づいて行われる。
MSFのアフガニスタンでの活動資金はすべて民間からの寄付でまかなわれており、各国政府などからの公的資金は使われていない。

 

 

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明日に向けて(1162)バングラディッシュで邦人殺害・・・

2015年10月04日 23時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151004 23:00)

バングラディッシュで日本人が殺害されたという痛ましい報が飛び込んできました。ISを名乗る「犯行声明」が出され、さらなる攻撃予告もされているとのことです。
亡くなられたのは星邦男さん(66)。農業関連のプロジェクトに関わられていたそうです。星さんのご冥福をお祈りするとともに、殺人を行ったものに対して心からの怒りを表明します。
同時にこのように在外邦人の危機をどんどん拡大している安倍政権の戦争政策への心からの怒りも表明したいと思います。

重要なニュースなので朝日新聞の記事と日経新聞の記事を転載します。

*****

 日本人射殺、「IS」名乗る犯行声明 バングラデシュ
 朝日新聞 ニューデリー=貫洞欣寛 2015年10月4日03時00分
 http://www.asahi.com/articles/ASHB40HQNHB3UHBI01F.html

  バングラデシュ北西部で日本人星邦男さん(66)が3日午前、何者かに撃たれて殺害された事件で、インターネット上に、過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗り、犯行を認める声明が出た。真偽は確認されていない。
 現地警察当局は「まだ内容は確認できておらず、作業を進めている」としている。
 バングラデシュでは9月28日に首都ダッカで援助団体員のイタリア人男性が撃たれて殺害され、ISを名乗る犯行声明が出ており、いずれも事実とすれば、IS名義の犯行声明が出るのは、この1週間で2件目となる。(ニューデリー=貫洞欣寛)

 邦人男性、銃撃受け死亡 バングラデシュ北部 
 日経新聞 2015/10/4 2:03
 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92443130U5A001C1000000/

 【ニューデリー=共同】バングラデシュの警察によると、同国北部ランプル近郊で3日午前、日本人男性が何者かに襲われ、銃撃を受けて死亡した。在バングラデシュの日本大使館が現地に職員を派遣、確認を急いでいる。
 現地メディアや地元警察は、旅券などに基づき、男性は岩手県が本籍の星邦男さん(66)だと明らかにした。
 警察によると、男性は農業関連のプロジェクトに携わっており、8月下旬に入国、首都ダッカから北西に約200キロ離れたランプルの近郊にある友人宅に滞在していた。
 3日、ランプル近郊を歩いていた際、バイクに乗った複数の男が発砲、胸などを撃たれたという。
 バングラデシュでは9月28日、ダッカで援助関係者のイタリア人男性が銃で殺害された。過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗るグループが犯行声明を出したとされるが、当局は確認していない。

*****

戦争法の強行可決を受けて、僕は「在外邦人の危機が高まっている」という記事を連投しました。9月25日、26日のことです。
海外におられる方に注意喚起をするとともに、こうした危機を前に、戦争法反対の声をみなさんと強めていきたいと思ってのことです。
今回の事件についてはISが行ったかどうかの真偽がはっきりしていないとのこと。バングラディッシュ政府は国内にISの存在は確認されておらず、ISに同調するイスラム勢力の「犯行」ではないかとみていると発表しています。
詳細は不明ですが、この攻撃が多くの人々が心配していたものである可能性は極めて高いです。こんなにも早く危機感を抱いていたことと思われることが起こってしまい、胸が痛むばかりです。

以下、9月末に危機の高まりを懸念して書いた記事をご紹介しておきます。

 明日に向けて(1157)在外邦人の危機が高まっている!上
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/59d72310ff08d1aa51f8ebe52e02cc55
 http://toshikyoto.com/press/2042

 明日に向けて(1158)在外邦人の危機が高まっている!下
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fe8c341e3989f366a26d85dceba1e129
 http://toshikyoto.com/press/2046

こうしたときに私たちは、バングラディッシュの様子を少しでも知ること、バングラディッシュの人々の感じ方などを知る必要があります。
その中で私たち自身の命を守る同時に、どうすれば世界が平和な方向に歩めるのかを考察し、行動する必要があります。

ご紹介した朝日新聞の記事にも書かれているように星さん殺害の前、9月28日にもバングラディッシュでイタリア人が殺害され、ISが実行声明を出していました。
この時、僕の友人で、お連れ合いがバングラディッシュで働いている女性が、あるところに以下のような文章を投稿しました。ご本人の承諾を得たのでここに転載させていただきます。
今回の星さんの殺害ではなく、その前に、イタリア人の殺害を受けて書かれた文章であることにご留意ください。

*****

ついに、父さんが一年の8ヶ月を過ごすバングラデシュでも、ISが関わる殺人が起きてしまった。
それもダッカで一番セキュリティが厳しいといわれるグルシャンで。
一番恐れていたこと。

安保法案が成立して、(←本当はあんな国会運営で議事録も残っていないのに成立したとはいえないけど。)、

戦争より、徴兵より、大学で兵器の研究が始まるより、兵器を輸出できることよりなにより、父さんのように、イスラムの国で働く人や政府関係者、NGOの人、ボランティアの人たちに真っ先に矛先が向けられるだろうと思っている。
すでにISでは、日本人の殺害指令が出ているみたいだし。

バングラデシュはとても親日で、日本が開発援助で作った橋や学校をとても喜んでくれている。NGOもたくさん入って活動している。
そして、原爆を落とされてもここまで成長した日本をとても尊敬していたりする。
アメリカに対しては、中東などでのイスラムの国々に対する横暴に怒っている。アメリカが何故それを行っているのか、アメリカの都合のよい報道しかされていない日本よりも、バングラデシュの方がちゃんと本質をわかっていると思った。
最近は中国と韓国の援助でできた橋や学校、ビルなどがびっくりするくらい増えてるけど。

でも、2年前に行った時も、なぜ日本は原爆を落としたアメリカと手を組むのか、と聞かれた。
たとえ後方支援であっても、そのアメリカと一緒に戦うことができるようになったんだから、ISだけでなく、バングラデシュの人たちの日本への信頼も薄れていく。
安保法案の成立がどんな影響をもたらすのか、imagineできますか?

*****

僕がとくにぐっと来たのはバングラディッシュの方たちがとても親日的だとこの方が指摘していることです。原爆を落とされてもここまで成長してきた日本を尊敬してくれている。これはイスラム世界に共通することです。
これに対してイスラム圏に理不尽な戦争を繰り返してきたアメリカはとても嫌われている。「なぜそんなアメリカと組むのか」というのがイスラム圏で大変強い懸念です。この懸念が今、尊敬を薄め、疑いを強め、怒りに変わりつつある。

この流れは戦争法成立で始まったのではありません。
2001年からのアフガン戦争に自衛隊が協力し、イラク戦争ではサマワに自衛隊が進駐しました。その頃からだんだんに疑義が起こり、尊敬が薄まりだし、怒りが膨らみ始めました。
それをさらに大きくしたのが本年年頭の安倍首相の中東訪問でした。どうみてもIS攻撃参加国への後方支援としか見えないような援助を行ったため、ISが日本を十字軍指定し、後藤さんと湯川さんが殺されてしまいました。
今回の戦争法の成立はこの一連の流れに拍車をかけるものです。さらにスーダンにPKOで派遣されている自衛隊が「駆けつけ援護」でイスラムの人々を殺傷することがあればさらにこの危機は深まります。

私たちは今、このマイナスの流れに対してもう一度逆の方向にイスラムの人々の思いが向いていくための努力をしなければなりません。
その第一は、何よりもイスラムの人々を手酷く傷つけ続けているアメリカの戦争政策の非道性を批判することです。私たちがアメリカの暴力を肯定などしていないことをはっきり示すことが大切です。
この間、世界で一番ひどい暴力を繰り返しているのはアメリカです。イラク戦争では「大量破壊兵器をイラクが隠し持っているから」といういいがかりで、それこそ大量破壊兵器を大量使用した攻撃を行ったのです。
世界を混乱させているのがアメリカの暴力です。このことをこそ私たちははっきりさせること、同時に日本人がそのことに気付いて行動していることを世界に示すことが必要です。

第二に、この点を踏まえつつ、アメリカの暴力に全面的に加担しようとしている安倍政権を倒すための運動を強化することです。
そのためには選挙も大事ですが、街頭行動、デモの継続もとても大事です。We are not Abe!という私たちの主張が世界に響き渡るようにしなければなりません。
戦争法反対、戦争に向かう安倍政権を許さないという声を、ありとあらゆる手段を通じて高めていきましょう!
そのことを重ねる中でこそ、安倍政権とは対立して存在している私たち日本民衆への世界の信頼を取り戻していきましょう。

僕はこの行動の中でこそ、在外邦人だけでなく、私たち日本に住まうもの全体の安全性が守られていくと僕は思うのです。
同時に日本に住まう私たちだけでなく、イスラム圏の人々、同時に戦争に駆り出されているアメリカの若者たちの命を守ることも考えた行動に起ちましょう。
この混乱の中でこそ、世界に憲法9条の心を広げるために頑張りましょう!

 

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