田園酔狂曲

二人三脚の想い出と共に!!

定石通りですが、それが何か?

2019-04-21 19:51:08 | よもやま話・料理編
さてさて、今日は、 定石 のお話でございます。
が、盤上ではなく、俎(マナ)板上の話しで失礼仕ります。
活けの車海老の料理に、次のような、やや上級な定石があります。
                
  【 活け車えびの塩焼きを一番美味くする焼き方 】

先ず、エビを竹串で のし串 を打ちます。
のし串した数匹を並べて、横から二本の金串を刺します。
焼き台は、下火とします。
塩を振ったエビの背から、焼き始めます。
車海老のグレーな皮が、焼き台に近い所、つまり背の端から赤く変わっていきます。
その変色が中程まで来たら、クルッと返して反対側を焼き始めます。
脚が焼け、腹側も焼けてきます。
それに連れ、生のグレーな皮部分が少なくなりますネ。
そして、その生のグレー部分が爪楊枝一本ぐらいの細い線になったら火から下ろしましょう。
     

直ぐに、お待ちかねのお客さんの席へ。
そこは、料理が出たらすぐに食べる家族連れ。
 「 なーに? この海老の塩焼き! 
    身がしっとりしているし、こんな甘いのは初めて頂くワ~ 」
大絶賛ですネ。

さて次の日、田園の吉兆の間に6名の予約です。
板場は、活け海老の塩焼きを、定石通りに焼きます。
仲居は急いで、そのミディアム焼きを吉兆の間に運びます。
そこでは、中央に居座る支店長が、部下たちを侍らせてご機嫌に飲んでいます。
当然、昔の自慢話をご披露しながら ・・・ 。
「 俺たちの若い頃はなあ~ 指先一本で、ちょちょいと2・3億なんて稼いだモンだ! 」
まぁ、田園の客は、そんな説教大好きな年配層が多かったのです。

話が佳境に入った、ちょうどのタイミングで、海老が届けられたのでした。
もちろん、部下たちが熱い内に食べること等、許されない雰囲気です。
「 人が大事な話しをしてやってるのに、食ってばかりいやがってー 」 と、なります。
やがて、昔の成功自慢話が済んだ頃には、塩焼きは完全に冷え切っています。
それどころか ・・・・ ?

支店長は、テーブルを叩きながら怒鳴ります。
 「 何だ、この黒い海老は? 腐ってるじゃないか。 女将を呼べ! 」
なるほど、クレームも分からんでもないのです。
テーブルに出された海老の姿焼き。
特に、首の所を中心に、黒く変色しているのです。
焼いた後、あまりに時間が経ったので、ミディアム焼けの身から次第にアクが出始めたのでした。
海老やカニ類は、充分に加熱しなかった場合、黒いアクが発生するのです。

クレームを受けた焼場の板さん。
 「 イヤ、俺はちゃんと定石通りに焼いた! いつまでも放って置く客がイケないのだ。 」
と弁明しますが、果たしてそうでしょうか。
料理は、相対的なものです。
相手のことやシチュエーション・場面を理解しないと、とんでもないチョンボもありえます。
特に田園の客みたいに、だらだらしゃべりする層が多い店では要注意でした。
そんな客と分かった時には、しっかりと火が入った海老塩焼きを出す事も考えましょう。
そんな “ 定石外れ ” の手段を覚えるのも大事なことです。

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コメント (2)
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