人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025」プログラム発表 ~ 先行抽選販売は24日まで、先行先着販売は3月1日から / 新日本フィル「室内楽シリーズ」のチケットを2枚取る

2025年02月16日 00時05分40秒 | 日記

16日(日)。「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025」の公式サイトでプログラムが発表されました 毎年5月の連休に開催されている 「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」ですが、今年は5月3日(土・祝)、4日(日)、5日(月・祝)の3日間、有楽町の東京国際フォーラムを中心に開催されます 今年のテーマは「メモワール ~ 音楽の時空旅行」で、音楽の歴史の中で文化・創造の中心地となったいくつかの大都市で活躍した作曲家の作品を中心に取り上げます その大都市とは、ヴェネツィア(1600年から1750年まで、西洋音楽の発展の中心地)、ロンドン(ヘンデルが活躍)、ウィーン(ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェンが活躍)、パリ(ドビュッシーなどが活躍)、ニューヨーク(ジャズ、ミュージカル発祥の地)が中心で、サンクトペテルブルク、ライプツィヒ、プラハ、ブタペストが加わります 公式サイトに掲載の3日間のプログラムは以下の通りです

     

     

     

この音楽祭は1995年にフランスの港町ナントで始まりました 日本では2005年から(コロナ禍のため中止となった2020~2022年を除く)毎年5月に開催されてきました 私は2006年の第2回「モーツアルト」から毎年聴き続けてきました コロナ禍前までは毎年3日間で15公演くらいハシゴしていましたが、今ではその気力も体力もありません

3日間のプログラムをざっと見ると、「これだけは聴き逃せない」というコンサートが数えるほどしかありまえせん また、毎年のように出演していた大好きなピアニスト、アンヌ・ケフェレックの名前がないのも寂しい限りです したがって、今年は公演数を絞って聴くことにしたいと思います

5月3日(土・祝)はミューザ川崎での「モーツアルト・マチネ」の予定が入っているので、この日は無理にLFJの予定を入れないことにしました

4日(日)は16時からホールCで開かれる「交響曲?協奏曲?それとも室内楽? ~ パリ生まれの破格な名曲を聴く」に興味を惹かれます    プログラムはショーソン「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセール」です    演奏はレミ・ジュ二エ(P)、オリヴィエ・シャルリエ(Vn)、ハンソン四重奏団です     また、18時からホールAで開かれる「ウィーンを席巻した作曲家が聴かせる豪壮な破天荒」が面白そうです    プログラムはベートーヴェン①ピアノ協奏曲第5番”皇帝”、②合唱幻想曲です    演奏はピアノ=フレデリック・ギイ、鈴木秀美指揮横浜シンフォニエッタ、東京混声合唱団です

5日(月・祝)は10時15分からホールCで開かれる「世紀末の天才たちの官能的室内楽二題」が魅力です   プログラムは①マーラー「ピアノ四重奏曲断章」、②コルンゴルト「ピアノ三重奏曲ニ長調」です    演奏はヴァイオリン=神尾真由子、チェロ=横坂源ほかです    また、12時半からホールAで開かれる「パリに生まれた精妙なる幻想世界」のラヴェル・チクルスが期待できそうです プログラムはラヴェル①組曲「ラ・メール・ロワ」、②左手のためのピアノ協奏曲(P:福間洸太朗)、③ピアノ協奏曲ト長調(P:アリエル・ベック)で、バックを務めるのはリオ・クオクマン指揮東京シティ・フィルです この日は18時からホールAで「競演!シューマン夫妻による愛のコンチェルト」でロベルトとクララの「ピアノ協奏曲」が小林愛実の独奏で演奏されます すごく魅力的ですが、上記2公演から時間が空いてしまい、体力的にも辛いので諦めることにします

したがって、今年は上記4公演のチケットを取ることにします

チケットの販売は次の3段階で行われます

①先行抽選販売=2月15日(土)11:00から2月24日(月・祝)23:59まで。

②先行先着販売=3月1日(土)11:00から3月14日(金)17:00まで。

③一般販売=3月15日(土)10:00から。

①の「先行抽選販売」で注意しなければならないのは、座席指定が出来ないことです 私は昨年、いくつかの公演で当選しましたが、その半分くらいは会場の端っこの席でガッカリしました したがって 今回は申し込まず、3月1日の先行先着販売(座席指定可能)を待つことにします

なお、ホールD7(221席)やホールG409(153席)の公演を聴きたい方は、「先行抽選販売」の時点で売り切れてしまう可能性が高いので、申し込んでおいた方がよいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3687日目を迎え、バンス米副大統領は14日、ドイツ南部ミュンヘンで開催中のミュンヘン安全保障会議で演説し、「欧州が最も懸念すべき脅威はロシアでも中国でもない。欧州内部だ」と述べ、欧州連合(EU)などによるSNSの虚情報対策を「言論の自由の弾圧」と糾弾し、「最も基本的な価値観が後退している」と主張した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     欧米間の断絶を内外にアピールする演説だ 最も喜ぶのはプーチンと習近平だろうな

         

新日本フィル「室内楽シリーズ」のチケットを2枚取りました

1枚は5月19日(月)開催の「『膜~膜から鼓膜へ、音から音楽へ~』:腰野真那(パーカッション奏者)プロデュース編」です プログラムにジョン・ケージ「4分33秒」が入っていますが、生まれて初めて”聴く”曲です いったいどうやって”演奏”するのか、楽しみです

2枚目は6月30日(月)開催の「『木管室内楽の頂点』:神農広樹(首席オーボエ奏者)プロデュース編」です オール・フランセ・プログラムです

なお、4月21日開催の公演のチケットも取りたかったのですが、読響定期演奏会の予定が入っているので諦めました

     

     

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藤岡幸夫 ✕ 東京シティ・フィル ✕ 東京シティ・フィル・コーアでブラームス「交響曲第3番」、伊福部昭:交響頌偈「釈迦」を聴く~第376回定期演奏会

2025年02月15日 00時18分34秒 | 日記

15日(土)。ご訪問頂いている toraブログ は、2011年2月15日の開設から本日 満14年(5114日目)を迎えました   この間 ブログアップできなかったのは、身内の不幸があった3日間だけです 本日のブログが5264本目となります。これまでのブログの内容はともかく、あらためて ”継続は力なり” を実感しています 本日現在のトータル・アクセス・ページ数は944万PVを超えていますが、一つの大きな目標である2025年中の1000万PVを視野に入れながら、これからも1日も休むことなく根性で書き続けて参りますので、今後ともご訪問くださるよう よろしくお願いいたします

ということで、わが家に来てから今日で3686日目を迎え、トランプ米大統領は13日、「より生産的なことに使えそうな資金を核兵器開発に費やしている。最終的には米国・ロシア・中国が国防予算を半減することで合意したい」として、ロシアや中国との核軍縮交渉を始める意向を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     そういう提案なら世界が大歓迎すると思う しかしプーチンと習近平が乗るかなぁ?

  昨日は 娘が外食で私がコンサートだったため、夕食作りはお休みしました 

         

昨夜、東京オペラシティコンサートーホールで東京シティ・フィル「第376回 定期演奏会」を聴きました プログラムは①ブラームス「交響曲第3番 ヘ長調 作品90」、伊福部昭:交響頌偈「釈迦」です   演奏は②の合唱=東京シティ・フィル・コーア、指揮=藤岡幸夫です

     

オケは14型で、左からヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京シティ・フィルの並び。コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はブラームス「交響曲第3番 ヘ長調 作品90」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1883年に作曲、同年12月にウィーンで初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「ポーコ・アレグレット」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成りますが、大きな特徴は全楽章が弱音で終わることです また、ブラームスが50歳の円熟期の作品で、24歳年下のアルト歌手ヘルミーネ・シュピースへの恋愛感情もあり、藤岡氏はプレトークで「幸せな曲」と語っていました

藤岡の指揮で第1楽章が開始されますが、オケからの音圧が強く圧倒されました ちょっと弦楽器が多すぎるのではないか、と思ったほどです しかし、それもすぐに慣れ、14型がしっくりくるようになりました 低弦のアンサンブルが美しく響きました 第2楽章では、クラリネット、オーボエ、ファゴットを中心とする木管楽器が心地よく歌います 第3楽章はこの曲の白眉です 甘美でメランコリックなメロディーは、サガンの小説「ブラームスはお好き?」を基に1961年に制作されたアメリカ映画「さよならをもう一度」で使われて人口に膾炙しました 冒頭のチェロによるテーマの演奏が素晴らしい このテーマは後にフルート、ホルンでも演奏されますが、哀愁漂う演奏が素晴らしかった 第4楽章ではオーケストラ総力を挙げての躍動感あふれる演奏が展開します ところで、冒頭近くで コンマスの隣の奏者が立ち上がって、最後尾まで行きヴァイオリンを交換していました。弦が切れたのでしょう こういう場合、すぐ後ろの奏者とヴァイオリンを交換し、後方へリレーでつないで 最後尾の奏者が弦が切れたヴァイオリンを持って舞台袖に引っ込んで、舞台裏で修理を施すのが普通だと思います    この日は、途中のリレーを省略した形になりました

演奏を聴き終わって、藤岡氏が語っていた「幸せな曲」というのはその通りで、そういう風に演奏していたな、とあらためて思いました

大きな拍手とブラボーがステージに押し寄せるなか、カーテンコールが繰り返されました

     

プログラム後半は伊福部昭:交響頌偈「釈迦」です 頌偈(じゅげ)とは「佛の徳を讃える歌」を意味します この曲は伊福部昭(1914-2006)が、1988年から89年にかけて 浄土宗東京教区青年会、東宝ミュージック、ユーメックスの委嘱により作曲、1989年4月8日に簡易保険ホールで初演されました  本作は「釈迦が悟りを求めて出家し、仏陀となって讃えられるまでの道程を描いた作品」です 第1楽章「カプラパスツのシッタルダ:レント・レリジョーソ(敬虔に)」、第2楽章「ブダガヤの降魔:アダージョ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第3楽章「頌偈:アダージョ」の3楽章から成ります

オケは14型のまま、ステージ下手にハープとチューブラ・ベル(NHKのど自慢で鳴らす鐘)がスタンバイします   オケの後方に東京シティ・フィル・コーアの男女混声コーラス約100名が4列でスタンバイします    狭いステージがなおさら狭く見えます    ステージ上には収録マイクが10数本林立しています。収録して後で放送するようです

藤岡の指揮で第1楽章に入ります    全体的にゆったりしたテンポによる重心の低い演奏が繰り広げられますが、イングリッシュ・ホルンのエキゾチックなソロが印象的です   また、アルト・フルートのソロが味わい深い演奏を展開します 第2楽章は、最初はゆったりしたテンポによる演奏が展開しますが、途中から急速にテンポアップし、まるでストラヴィンスキー「春の祭典」の如き変拍子の激しいリズムが演奏され、いよいよゴジラの来襲か と身構えます 男声合唱が悪魔のささやきで釈迦を試し、次いで 女声合唱が釈迦を誘惑するコーラスを歌います     ここは、藤岡氏がプレトークで「釈迦を誘惑する場面だから、美しく歌わないでほしい」と語っていた部分です 「美しく歌ったら失敗だと思ってください」とまで語っていました あくまでもリアリティーを追求してやまない藤岡氏の姿勢が顕著です とても迫力のある美しいコーラスでしたが、失敗とは言えません 第3楽章では冒頭のホルンの演奏が素晴らしかった オーケストラの総力を挙げての渾身の演奏とシティ・フィル・コーアの迫真のコーラスによってクライマックスが築き上げられ、会場の空気を震わせました

会場いっぱいの拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました 藤岡氏はプレトークで、「定期演奏会で日本人の作曲家の作品を取り上げるのが僕のポリシーです」と語っていましたが、素晴らしい方針だと思います 藤岡氏は2月20日(木)にすみだトリフォニーホールで開かれる「都民芸術フェスティバル参加公演:東京シティ・フィル」で、貴志康一「交響曲『仏陀』」を取り上げますが、今から期待が高まります

     

     

     

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ペトル・ポペルカ ✕ エマ・二コロフスカ ✕ NHK交響楽団でモーツアルト「交響曲第25番 ト短調」、同「アリア K.583, K.578, K.528」、シューマン「交響曲第1番」を聴く

2025年02月14日 00時08分01秒 | 日記

14日(金)。わが家に来てから今日で3685日目を迎え、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が12日、電話で協議し、ロシアのウクライナ侵攻の終結に向け ただちに交渉を始めることで合意した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプは裏で変な交渉しなかっただろうな どうもイマイチ信用できないんだよね

         

昨日、夕食に「茄子の肉みそ炒め」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作り、「マグロの切り落とし」と一緒に食べました いずれもヘルシーで美味しかったです

     

         

昨夜、サントリーホールでN響2月度Bプロ定期演奏会を聴きました   プログラムは①モーツアルト:アリア「私は行く、だがどこへ」K.583、②同:アリア「大いなる魂と高貴な心は」K.578、③同「交響曲第25番 ト短調」K.183、④同:レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ~ とどまって下さい、ああいとしい人よ」K.528、⑤シューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です 演奏は①②④のメゾ・ソプラノ独唱=エマ・二コロフスカ、指揮=ペトル・ポペルカです

     

最初に「アリア」があって、次に「交響曲」、そして「アリア」となり、最後は「交響曲」でコンサートを閉じる・・・こういうプログラミングは現代では極めて珍しいと言えます しかし、モーツアルトが生きていた18世紀後半においては、ごく普通のプログラミング形式でした モーツアルトは父親あてに膨大な手紙を残していますが、1783年3月29日付の手紙(当時27歳)には同年3月22日にウィーンのブルク劇場で開催されたコンサートの模様が報告されています それによると、当日のプログラム内容は次のようなものでした

①シンフォニー(交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」K.385)

②歌劇「クレタの王イドメネオ」K.366からアリア「もし私が父上を失い」:独唱=アロイジア・ランゲ夫人

③ピアノ協奏曲第13番 K.415:ピアノ独奏=モーツアルト

④コンサート・アリア K.369:独唱=ヨーゼフ・アーダムベルガー

⑤セレナード「ポストホルン」K.320から「シンフォニア・コンチェルタント」(第3楽章)

⑥ピアノ協奏曲第5番K.175とピアノと管弦楽のためのロンドK.382:ピアノ独奏=モーツアルト

⑦歌劇「ルーチョ・シッラ」K.135から「私は行きます、急いで」:独唱=タイバー嬢

⑧パイジェッロの「哲学者気取り」からのテーマによるフーガと変奏曲K.398とグルック「メッカの巡礼」から「愚民の思うは」による変奏曲K.455

⑨コンサート・アリアK.416:独唱=ランゲ夫人

⑩シンフォニー(交響曲第35番K.385「ハフナー」)から最終楽章(第4楽章)

【出典:「モーツアルト事典(全作品解説事典)」(監修:海老澤敏/吉田泰輔・東京書籍)】

(tora注1)「ピアノ協奏曲」は原文では「クラヴィーア・コンチェルト」であり、モーツアルトがクラヴィーアを弾きながら指揮をした(弾き振り)と思われる。

(tora注2)原文では各曲ともケッヘル番号(K.~)は付いていない。

(tora注3)アロイジア・ランゲ夫人はモーツアルトの妻コンスタンツェの姉で、モーツアルトはアロイジアに振られてコンスタンツェと結婚したと言われている。

上の手紙から推測すると、最初にハフナー交響曲の第1 ~ 第3楽章を演奏して、真ん中にモーツアルト得意の「ピアノ協奏曲」とゲスト歌手による「アリア」を挟んで、最後にハフナー交響曲の第4楽章でコンサートを締めくくったのではないかと思います それにしても 多彩なプログラムには驚きます

     

     (アリアの予習CD:ソプラノ=キリ・テ・カナワ、エディタ・グルベローヴァ)

さて、本番です オケは12型で、左からヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつものN響の並び   コンマスは郷古廉です

ソプラノ独唱のエマ・二コロフスカ は北マケドニア出身。カナダのトロントで育ち、最初にヴァイオリンを学んだ後に声楽に転向、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校で声楽の博士号を取得 ベルリン国立歌劇場2022-23シーズンの「ばらの騎士」オクタヴィアン役でデビュー ヨーロッパの歌劇場を中心に活躍しています

1曲目はモーツアルト:アリア「私は行く、だがどこへ」K.583です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が、マルティン・イ・ソレルのオペラ「お人好しの気難し屋」(台本はダ・ポンテ)の再演に際し、ソプラノ歌手ルイーズ・ヴィルヌーヴの依頼により1789年に作曲した作品です 内容は、夫が結婚生活の間に財産を浪費してしまったことを知ったルチッラ夫人が、ショックを受けつつも夫への愛を失わない心境を歌ったものです

ポペルカの指揮で演奏に入りますが、二コロフスカは透明感のある伸びやかな歌唱で、ルチッラ夫人の心情をリリカルに歌い上げました

2曲目はモーツアルト:アリア「大いなる魂と高貴な心は」K.578です この曲はモーツアルトがチマローザのオペラ「ロッカ・アッズッラの2人の男爵」に出演したルイーズ・ヴィルヌーヴの依頼により1789年に作曲した作品です 貴婦人ラウラは、ロッカ・アッズッラの2人の男爵の一人、トタロ男爵との結婚が決まっていたが、彼女の友人が策略を弄して、自分の妹サンドラを男爵の婚約者に仕立ててしまうーという内容で、この曲は男爵に初めて会った際にそのことを知ったラウラがサンドラに怒りをぶつけて歌うアリアです

二コロフスカは、次第に感情が高ぶっていくラウラの心情を、リリカルに力強く歌い上げました

3曲目は「交響曲第25番 ト短調」K.183です この曲はモーツアルトが1773年に作曲しました モーツアルトが作曲した約50曲の交響曲の中で短調の曲はこの曲と「第40番 ト短調」の2曲しかありません    第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット・エ・トリオ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります 

ポペルカの指揮で第1楽章が開始されますが、弦楽セクションの切れ味鋭い演奏が短調の悲壮感を際立たせます オーボエがよく歌います 第2楽章では弦楽器の柔らかいアンサンブルが美しく響きました 第3楽章はかなり速いテンポで開始されますが、トリオの部分になるとテンポをグッと落とし、オーボエ、ファゴット、ホルンに充分歌わせます この対比が素晴らしかった 第4楽章は高速テンポで走り抜けた、という印象です 終盤で郷古コンマスがソロを弾いて注目を集めましたが、この曲にヴァイオリン・ソロを披露する場面があっただろうか?  ポペルカの演出か? とにかく聴き慣れない演奏場面でした

4曲目はモーツアルト:レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ~ とどまって下さい、ああいとしい人よ」K.528です この曲はサルコーネのオペラ「なだめられたチェーレレ」の歌詞に基づいており、ソプラノ歌手ヨーゼファ・ドゥシュクの依頼により1787年にプラハで作曲された「演奏会用アリア」です イベリアの王ティターノは、シシリアの女王チェーレレの娘プロセルピナと駆け落ちするが、結婚を許さない母親に阻止され、死を命じられるーという内容で、そのティターノが別れの場面で歌うのがこのアリアです

ポペルカの指揮で演奏に入りますが、二コロフスカはこの曲でも巧みなヴォイスコントロールによる透明感のあるリリカルな歌唱で、つらいなかでも恋人を想う気持ちを見事に歌い上げました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました

     

プログラム後半はシューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が1841年に作曲、同年ライプツィヒで初演されました 第1楽章「アンダンテ・ウン・ポーコ・マエストーソ ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・アニマート・エ・グラツィオーソ」の4楽章から成ります

弦楽器が14型に拡大し、ポペルカの指揮で第1楽章に入ります 冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレが、いかにも春を呼び込むように響きます ポペルカは速めのテンポでサクサクと演奏を進めますが、”音楽が息づいている”という印象を受けます 第2楽章はゆったりと演奏される厚みのある弦楽セクションのアンサンブルが美しい 第3楽章では力強いスケルツォが演奏されますが、クラリネットがよく歌います 第4楽章ではフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットといった木管楽器がよく歌い、弦楽セクションが渾身の演奏を展開します テンポを上げてなだれ込んだフィナーレは圧巻でした

全体的に、ポペルカの指揮は細かいですが、流麗な指揮ぶりで不自然さがなく、完璧にオーケストラをコントロールしている様子が窺えます

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました Aプロ公演の感想(10日付ブログ)にも書きましたが、ポペルカは素晴らしい指揮者だと思います

     

     

     

         

今日は東京オペラシティ コンサートホールに東京シティ・フィルの「第376回 定期演奏会」を聴きに行きます

     

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エディット・マティスさん死去 / 「室内楽ホール de オペラ  林美智子の『フィガロの結婚』」のチケットを取る / 藤野知明監督「どうすれば よかったか?」を観る

2025年02月13日 00時04分43秒 | 日記

13日(木)。3月14日(金)午後2時から①新日本フィル「扉シリーズ」と②東京フィル「サントリーシリーズ」が重なってしまうので、東京フィルを9日(日)15時からのオーチャードホールシリーズに振り替えました 振り替えは電話でしか受け付けないので午前中電話したのですが、「10日未明からシステム障害で通話できない」と自動音声で応えていたので、映画から帰って来て4時過ぎに電話したら繋がりました 自動音声の返答があるということは電話は繋がっていると思うのですが・・・何か変です

昨日、9月20日(土)14時から第一生命ホールで開かれる「室内楽ホール de オペラ  林美智子の『フィガロの結婚』」のチケットを取りました 前回は「全アンサンブル版」でしたが、今回は「全アリア版」です 林美智子プロデュースによるモーツアルトのオペラ公演は三部作(フィガロ、コジ、ドン・ジョバンニ)すべて観ましたが、「シンプル・イズ・ベスト」を絵に描いたような楽しい公演です 今回も林美智子さんがどう仕掛けてくるか、とても楽しみです

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3684日目を迎え、トランプ米大統領は10日、途上国などの政府高官への贈賄行為を摘発する法律について、外交政策を妨げているとして、執行停止を命じる大統領令に署名した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     海外では公務員への賄賂は”黙認”すると受け取られかねない 不正商行為が拡大する

         

娘が職場の知人から「モツ」を仕入れてきたので、昨日の夕食は「もつ鍋」にしました 寒い夜は鍋ですね。本当に美味しかったです

     

         

昨日の朝日新聞朝刊によると、スイスのソプラノ歌手、エディット・マティスさんが9日死去しました。享年86歳でした カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロス・クライバーなど往年の名指揮者と頻繁に共演を重ね、モーツアルトやリヒャルト・シュトラウスのオペラで歴史的名演を聴かせ、ドイツ歌曲でも多くの名演を残しました

モーツアルト「歌曲集」のCD(ピアノ=ベルンハルト・クレー:1972年録音)の最後に収録された「春への憧れK.596」の、透明感のあるソプラノを聴きながら故人を偲びたいと思います

     

     

         

昨日、渋谷のユーロスペースで藤野知明監督・撮影・編集による2024年製作ドキュメンタリー映画「どうすれば  よかったか?」(101分)を観ました

8歳年上の姉は面倒見がよく、絵が上手くて優秀だった 両親の影響から医師を志し 医学部に進学したが、ある日突然、事実とは思えないことを叫び出した    統合失調症が疑われたが、医師で研究者でもある父と母はそれを認めず、精神科の受診から姉を遠ざけた     その判断に疑問を感じた弟の知明(監督)は、両親に説得を試みるが解決に至らず、わだかまりを抱えながら実家を離れる     このままでは何も残らない・・・姉が発症したと思われる日から18年後、映像制作を学んだ藤野は帰省ごとに家族の姿を記録し始める    一家そろっての外出や食卓の風景にカメラを向けながら、両親の話に耳を傾け、姉に声を掛け続けるが、状況はますます悪化する    姉は自分に賭けられていた保険を解約し、その資金でニューヨークに旅行に出てしまう そんなこともあり、両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を監禁するようになる やがて母親がガンで亡くなり、父親はやっと姉を精神病院に入院させることに同意する 3か月後、自宅に戻った姉はごく普通の会話が出来るようになった 最初に発症してから治るまで25年間もの時間を要した 姉は62歳の誕生日を祝い、その後ガンで亡くなった

     

このドキュメンタリーを観終わって思ったのは、親があまりにも優秀過ぎると、子どもが不幸になる可能性があるということです 親は子どもに過度の期待をかけ、子どもは親の期待に応えるべく懸命の努力をするが、能力には限界がある プレッシャーに耐えきれず子どもが精神を病んでも、親はそれを”病気”と認めようとしない その結果、子どもが正常に戻るまで25年もかかってしまう その25年間は取り返しがつかない だれがどう償うというのか

母親も姉も亡くなった後、弟で監督の藤野和明は「両親の姉に対する対応は間違っていたのではないか もっと早く精神科の専門医に相談して入院させるべきだったのではないか。(姉に対して)本当はどうすればよかったと思うか?」と父親に迫ります これに対する父親の答えは「(自分がやったことは)間違っていたとは思わない」というものでした このシーンを観た私は、頭のいい人は最後まで自分の過ちを認めないんだな、と思いました たぶん、息子の藤野監督も同じように思ったのではないかと思います この映画のタイトルは「どうすれば  よかったか?」ですが、藤野監督は自分なりの結論を持っていると思います むしろ、このドキュメンタリーを観た観衆に対し、「あなたが同じような境遇にあったとして、どうすればよかったと思うか?」と問いかけているように思います

     

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筒井康隆著「七瀬ふたたび」を読む ~ テレパシー能力を持つ20歳の七瀬と超能力者を抹殺しようと企む暗黒組織の闘い:今この作品を読む意味

2025年02月12日 00時01分56秒 | 日記

12日(水)。わが家に来てから今日で3683日目を迎え、トランプ大統領は10日、連邦政府が紙製のストローの調達をやめるとする内容の大統領令に署名した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     マックのハンバーガー大好きトランプのことだ マックデリバリーを想定しているな

         

先週も今週も金曜日は2人とも夕食が外になるので、隔週金曜のローテを崩して昨夜「鶏の唐揚げ」を作りました 今回は「大根おろし+ポン酢」で食べましたが、美味しかったです

     

         

筒井康隆著「七瀬ふたたび」(新潮文庫)を読み終わりました 筒井康隆は1934年大阪市生まれ。同志社大学卒。1981年「虚人たち」で泉鏡花文学賞、87年「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、89年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、92年「朝のガスパール」で日本SF大賞をそれぞれ受賞 著書多数

本書は1975年5月に新潮社から刊行された作品を78年に文庫化したものです

生まれながらにして人の心を読むことができる超能力者、20歳のテレパス火田七瀬は、人に超能力者だと悟られるのを恐れ、お手伝いの仕事を辞め、母の実家に向かう 七瀬は夜行列車内で、生まれて初めて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会い、さらに予知能力を持つ青年・恒夫に出会う。恒夫は列車が事故に遭うことを予言し、七瀬らは途中の駅で降りる その後、異なる超能力の持ち主と巡り合った七瀬は、仲間に引き入れ、時には対決する。北海道でノリオと念動力を持つ黒人青年ヘンリーと生活を始めるようになった頃、超能力者を抹殺しようと企む謎の暗黒組織に知られ、死闘を展開することになる

     

解説を読んで、本作は「七瀬3部作」の第2作であることを知りました。いつものことです とはいえ、第2作から読んでも何の不都合はありません。とても面白く読みました

七瀬は超能力者を抹殺しようと企む謎の暗黒組織に対して怒りを抱きますが、著者はその理由を次のように表しています

「彼女を一番怒らせたことは、超能力者というものは普通人を淘汰するために生まれてきたものだとする彼らの考え方だった そこには故意に超能力者を人類全体に対立するものとして考えようとする悪意がある。だからこそ彼らは、超能力者が多数発生して集団となる前に、皆殺しにしてしまおうと考えたのだ。その思い上がりと身勝手さが、七瀬にはどうしても許せなかった

これを読んだとき、「超能力者は言わばマイノリティーである この作品のテーマは、マイノリティーを迫害する大きな組織(国・政府)や 保守的な社会通念から脱することのない人々に対する問題提起ではないのか 七瀬の怒りはマイノリティーの怒りではないか」と思いました  「超能力者というものは普通人を淘汰するために生まれてきたもの」とは思いませんが、「少数派は無視される、あるいは危険視されがちである」という実態から考えると、相通じるものがあるように思います もちろん、本書が書かれた時代と現代とでは世の中の社会通念が変化していますが、物語を現代に置き換えて考えると、そのように読むことも可能ではないかと思います 多様性を否定し「性別は男と女だけ」と断言するトランプ大統領の存在を目の当たりにすると、その思いを強くします

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