人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「音楽㊙講座」山下洋輔×茂木大輔ほかを読む~ベートーヴェンはマイルス・デイヴィス?

2014年05月31日 07時00分50秒 | 日記

31日(土)。5月も今日で終わりです。月日の流れは本当に速いものですね 昨日、会社帰りに新宿ピカデリーに寄って、今日の午前10時からのMETライブビューイング、ロッシーニ「ラ・チェネレントラ」の座席指定を取りました いつものように、左ブロックの後方、右通路側席です

 

          

 

  閑話休題  

 

東京交響楽団から「第621回定期演奏会(6月14日)ソリスト変更のお知らせ」というハガキが届きました それには、この演奏会に出演予定だったメゾ・ソプラノのジェニファー・ラーモアが、『本人の都合により出演が不可能となった』とあり、サーシャ・クックが代演すると書かれていました

 

          

 

東京交響楽団は、前回の第620回定期演奏会でも、バリトンのマルクス・ヴェルバが健康上の理由で出演出来なくなり、フランコ・ポンポー二が代演したばかりです

また、同じ東響のオペラシティシリーズ第81回演奏会(7月20日)に出演予定だった首席客員指揮者のクシシュトフ・ウルバンスキが足の手術のため、チェロのタチアナ・ヴァシリエヴァが出産準備のため、ともに出演出来なくなり、ロレンツォ・ヴィオッティがタクトをとり、ダーヴィド・ゲリンガスがチェロを弾くことになったというお知らせも、つい先日見たばかりです

 

          

 

この相次ぐ変更はいったい何なのでしょうか。偶然にしてはあまりにもひどいのではないか 幸か不幸か、ソリストは名前もロクに知らないので、誰が演奏しても良いのですが、ウルバンスキが出演できないのは大いにガッカリしました 言わば今シーズンの”売り”の一つだったはずで、彼が出演出来ないというのは、”羊頭狗肉”だったのか、と勘繰りたくもなります こういうことがこれからも続くようなら、来期以降の定期会員継続は再考せざるを得ません。最初から出演できないことが分かっていながら年間プログラムに取り込んで発表し、定期会員を獲得するつもりだったと思われても仕方ないでしょう。これは信用問題です

 

  も一度、閑話休題   

 

「音楽㊙講座~山下洋輔×茂木大輔ほか」(新潮文庫)を読み終わりました 山下洋輔は1942年、東京生まれ。1969年に山下洋輔トリオを結成し、ジャズピアニストとして国内外で活躍、83年にトリオを解散したあと、88年に山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成しました

この本は、クラシック音楽家・茂木大輔、パーカッショ二スト・囃子方の仙波清彦、音楽研究科・徳丸吉彦との対談集です 仙波清彦、徳丸吉彦と言われても誰だかさっぱり分からないので、どうしてもN響首席オーボエ奏者・茂木大輔との対談が一番すんなりと頭に入ってきます

 

          

 

対談の中で茂木氏がいくつか興味深いことを言っていますので、紹介します。山下洋輔の「音楽の演奏に絶対音感は必要か?」という問いに対して、茂木氏は次のように答えています

「僕は絶対音感ないですから 和音の中の音程というのが我々にとっては大事なんです。つまり、周りとどうなっているかということの方がはるかに優先される 鍵盤的に正しく音程が並んでいるかということを考えるよりも、今起きている現場で、自分だけがほかと比べて高いとか低いとかいう方が重要です

「ウィーン・フィルなど、どんどんどんどん、もう4サイクルぐらい演奏中に平気で上がるんですよ それは確かに正しいかというか、音楽的にもとてもいいことで、ピッチが高くなるということは興奮を呼ぶ 音も緊張感が高くなっていく。フィナーレに向かってピッチが上がって行くというのは恰好いいのですけれども、そうなったらそうなったで、みんなその中で音程を合わせていかなければいけない だから、あえて過激な言い方をすると、オーケストラをやる上においては、絶対音感があって、それでしか演奏できないということは、すごく邪魔なんじゃないでしょうか

次に、面白いと思ったのは、クラシック音楽家をジャズの音楽家に例えたら誰になるかという「クラシック対ジャズ 音楽史巨匠アナロジー」です

茂木氏の独断と偏見によるアナロジーによると、モーツアルトはチャーリー・パーカー(天才、夭折、純真)、ベートーヴェンはマイルス・デイヴィス(偉大、影響力大、気難しい)、シューマンはソニー・ロリンズ(太くたゆたうドイツ民族の旋律と大きな構想)、ショパンはビル・エバンス(楽器依存型、詩人、自己完結的)という結びつきになるようです ジャズを多少聴きかじった身としては、少しは分かるような気もします

クラシック音楽好きには面白い本です。お薦めします

 

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東京藝大学生オケでプロコフィエフ「交響曲第5番」を聴く

2014年05月30日 12時56分57秒 | 日記

30日(金)。昨夕から今朝にかけて、息子が実験レポート作成のため徹夜でパソコンを使用していたため、今朝ブログがアップできませんでした まじめにやっている後ろ姿に「1時間だけ使わせろ」とも言えないので、諦めました したがって、昼休みに書いている次第です

 

  閑話休題  

 

昨夕、上野の東京藝大奏楽堂で藝大学生オーケストラの第50回演奏会を聴きました プログラムは①ニコライ「喜歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲」、②ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番変ホ長調」、③プロコフィエフ「交響曲第5番変ロ長調」です。指揮は同大教授・澤和樹、②のチェロ独奏は同大准教授・中木健二です

 

          

 

全自由席とあって、開場の午後6時半には長蛇の列が出来ていました。とは言うものの学生だけのオケとあってか会場の入りはほぼ7割位です 自由席なので1階15列13番、センターブロック左通路側を押さえました

オケのメンバーが登場します。総勢70人弱といったことろですが、女性が多く、男1対女2.5の割合です。珍しくコンマスは男性です オケは、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスといった態勢をとります

1曲目はニコライの喜歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲です。このオペレッタは、ご存知の通りヴェルディの「ファルスタッフ」と筋書きが同じです。太った酒飲みのファルスタッフが2人の女性にラブレターを送って騙し、金を得ようとしますが、陰謀に気づいた女性たちに仕返しをされるというお笑いの物語です

序曲はチェロとコントラバスの長閑なメロディーで始まりますが、そのうちこのオペラに相応しい楽しげで楽観的なメロディーに変わります

名刺代わりの序曲が終わり、2曲目のショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」の演奏のため、オケの規模が縮小されます。チェリストのために、指揮者の隣のスペースにチェリスト用の台が設置されます 2010年からフランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団首席奏者を務める中木健二が登場、スタンバイします

第1楽章は作曲者自身が「おどけた感じの行進曲」と呼んでいる通りの曲想で、聴いていてMETライブビューイングで観たショスタコーヴィチのオペラ「鼻」を思い出しました

第2楽章はゆったりした曲想で、唯一の金管楽器ホルンの音色が美しく響きます。第3楽章はチェロの独奏によるカデンツァです。中木のチェロは鋭くショスタコーヴィチに切り込んでいました

第4楽章は第1楽章冒頭のメロディーが再度登場し、最後は圧倒的な迫力でフィナーレを迎えます

休憩後のプロコフィエフ「交響曲第5番」は、第二次世界大戦中の1944年に作曲されました。当時ソヴィエトはナチス・ドイツと闘っていましたが、プロコフィエフは「お国のために」作品番号100番のこの曲を作曲したと言われています

第1楽章はフルートとファゴットのゆったりとした第1主題から始まりますが、プロコフィエフ特有の、次第に規模が大きくなって壮大な曲想に転換していきます

第2楽章は軽快かつおどけた曲想の音楽が展開します 第3楽章は一転、抒情的な曲想が続きます。そして間を空けることなく第4楽章に入ります。ほとんど戦争に勝ったかのような喜びに満ちた曲想で、大団円を迎えます

息子と同じ年代の学生たちの真摯な演奏姿を見ていると、心情的に応援したくなります 良かったですよ、皆さん

 

   も一度、閑話休題  

 

プログラムに東京藝大主催のコンサートのチラシが挟まれていたのでご紹介します 会場はいずれも上野の東京藝大奏楽堂です

最初は7月1日(火)午前11時からの「学生オケ・プロムナードコンサート」です。プログラムは①ドヴォルザーク「交響詩”真昼の魔女”」、②ブラームス「交響曲第3番ヘ長調」で、藝大特別招聘教授ペーター・チャバ指揮東京藝大シンフォニーオーケストラ。入場無料です

 

      

 

2つ目は6月13日(金)午後7時から開かれる「藝大フィルハーモニア定期演奏会」です プログラムは①ヴォーン・ウィリアムズ「タリスの主題による幻想曲」、②ディーリアス「歌劇”村のロメオとジュリエット”より”楽園への道”」、③ウォルトン「交響曲第1番変ロ短調」です。指揮は尾高忠明。全自由席で3,000円です

          

          

 

3つ目は6月21日(土)午後3時から開かれる「藝大チェンバーオーケストラ第23回定期演奏会」です プログラムは①エルガー「序奏とアレグロ」、②オネゲル「交響曲第2番」、③ワーグナー「ジークフリート牧歌」、④モーツアルト「交響曲第41番”ジュピター”」です。指揮は尾高忠明。全自由席1,500円です

 

          

 

学生のオーケストラだと言って、バカにしてはいけません。このオケは別府アルゲリッチ音楽祭などにも招待されて演奏しています

 

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「文藝別冊・モーツァルト」「葉桜の季節に君を想うということ」「ドルチェ」を買う

2014年05月29日 06時33分36秒 | 日記

29日(木)。昨夕、当ビル9階の宴会場で日本記者クラブ賞の贈賞式と記念パーティーがあったので出席しました 受賞者は毎日新聞東京本社政治部特別編集委員の山田孝男氏と、読売新聞東京本社特別編集委員の橋本五郎氏のお二人です 受賞に当たり、お二人からそれぞれのお人柄が表れた挨拶がありましたが、山田氏の「ここにご出席の方々の中には、原発反対の方もいれば、推進派の方もいる。原発推進維持と脱原発の違いは、人類の英知を傾けて原発と共存するべきだと考えるか、原発を離れることが人類の英知と考えるかにある。独善に陥ることなく、英知を探求していきたい」という態度表明が印象に残りました その後、パーティーに移ったので、赤ワイン を飲みながら寿司、ロースト・ビーフ、サーモンなどを食して1時間弱で引き揚げました

帰りがけに新宿ピカデリーに寄って、31日(土)のMETライブビューイング「ラ・チェネレントラ」の座席指定を取ろうと窓口に行ったのですが、「まだ受け付けていません。これまでと座席指定の受付方法が変わって、公開日の2日前からになりました」と説明されました 今までは4日前から受け付けていたのです。映画館に限らず、興行主というのは時々このような身勝手な変更を一方的にやりますよね わざわざ遠回りして新宿まで行ったのに、結局無駄足を踏んだことになります。新聞に投書してやろうかな

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日、本を3冊買いました 1冊目は河出書房新社の文藝別冊「モーツァルト」です。作曲家・池辺晋一郎とドイツ文学者・池内紀の対談、ピアニスト・小菅優や作曲家・吉松隆のエッセイ等が掲載されていて、モーツアルトの魅力を浮き彫りにしています

 

          

 

2冊目は歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うということ」(文春文庫)です タイトルに似合わず、第57回日本推理作家協会賞を受賞したミステリーです

 

          

 

3冊目は誉田哲也著「ドルチェ」(新潮文庫)です 誉田哲也の本はこのブログでも何冊かご紹介してきましたが、女性刑事・姫川玲子を主役とした一連のシリーズ「ストロベリーナイト」、「ジウ」とは離れ、42歳の独身女刑事・魚住久江が難事件の解決に挑みます

 

          

 

いずれも、感想などをこのブログにアップしていきます

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メンデルスゾーン「ピアノ協奏曲第1番」、コルンゴルト「交響曲嬰へ調」を聴く~都響定期

2014年05月28日 07時01分03秒 | 日記

28日(水)。昨夕、サントリーホールで東京都交響楽団の第771回定期演奏会を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「ピアノ協奏曲第1番ト短調」、②コルンゴルト「交響曲嬰へ調」です。指揮はネザーランド・オペラ主席指揮者のマルク・アルブレヒト、①のピアノ独奏はイスラエル出身のサリーム・アブード・アシュカールです 大好きな作曲家の理想的なカップリングの曲によるコンサートです

 

          

 

自席は1階22列19番、センターブロックの最後列から2列目の左端から4つ入った席、ほぼソリストの真正面の延長線上の席です 会場は8~9割埋まっている感じです 

座席に着いてから気になったことがあります。隣に座った中年女性の香水がちょっときついのです ヨーロッパの歌劇場などでは「オペラハウスは社交場」などと言って、綺麗に着飾って香水をつけてワインを飲んで・・・・といった習慣が当たり前なのかも知れませんが、ここは日本です。しかもオーケストラの定期演奏会です 休憩時間にワインは良いでしょう。しかし、香水の匂いは音楽を鑑賞するうえで妨げになります 香水などつけなくても十分に魅力的でございますよ ご遠慮いただくか、もう少し軽くおつけ遊ばせられないでございましょうか

さて、コンマスは四方恭子さん、第2ヴァイオリン首席にはエンカナ(遠藤香奈子)さん、チェロ首席には古川展生さんがスタンバイします

メンデルスゾーンの「ピアノ協奏曲第1番ト短調」を生で聴くのをどんなに待ち望んだことか 

メンデルスゾーン一家は1830年からベルリンの自宅を離れ、欧州各地を旅しましたが、この曲は1831年の秋に滞在していたミュンヘンで作曲され、バイエルン国王の主催する慈善演奏会で初演されました 作曲者22歳の若さでした。作品全体の下書きはわずか3日間で終えたという天才ぶりです。モーツアルトの再来と言われる所以です

指揮者アルブレヒトとともに長身のアシュカールが登場します。第1楽章冒頭の導入部は、ただならぬ雰囲気を漂わせる曲想です そこに独奏ピアノが入ってきますが、疾風怒濤のピアノが延々と続きます ピアニストは第1楽章のほとんどを絶え間なく弾きまくります。相当なスピードで駆け抜けていくといった印象です メンデルスゾーンの音楽の良さは”推進力”だと思いますが、まさにその典型のような曲想です 楽章間を空けることなく第2楽章のアンダンテが奏でられ、第3楽章へも休みなく続きます。明るく快活なテーマを展開しながらフィナーレを迎えます

何度もステージに呼び戻されたアシュカールは、アンコールにメンデルスゾーンの”無言歌”でも弾くかと思いきや、シューマンの「トロイメライ」をゆったりと静かに演奏し拍手を浴びました

 

          

 

休憩後は、これもまた待望のコルンゴルト「交響曲嬰へ調」です。コルンゴルトもメンデルスゾーンと同様、モーツアルトの再来と騒がれましたが、それもそのはず、彼の父親は、わが子にウォルフガング・アマデウス・モーツアルトのセカンド・ネームを採って、エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルトと名付けました メンデルスゾーンとの共通点はユダヤ系の血を引いていることです。かのグスタフ・マーラー(彼もユダヤ人)がコルンゴルトの才能を認め、ツェムリンスキーに推薦したことから、彼の弟子となり、11歳でバレエー=パントマイム「雪だるま」がウィーン宮廷歌劇場で皇帝の隣席のもと初演されました。それ程の早熟ぶりを示していました

ナチスによる迫害から逃れアメリカに亡命し、映画音楽で大成功を納め、その後ウィーンに戻りクラシックの音楽家として再出発しようとしましたが、”時代遅れの作風”や”映画音楽に魂を売った”というレッテルを貼られ、失意のうち1957年にアメリカで死去しました その後ほとんど忘れられた音楽家として鳴りを潜めていましたが、この交響曲に再び光が当てられたのは1972年のルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィルによる録音です。私もCD化されたこの演奏で予習しました

 

          

 

「交響曲嬰へ調」はヨーロッパを戦禍から解放した象徴的な人物、フランクリン・ルーズベルト大統領の想い出に捧げられています

アルブレヒトのタクトで第1楽章が開始されます。目先がクルクルと変わり先が読めない曲想が続きます 時にバルトークのような響きも響かせますが、彼を認めたマーラーの響きはありません

第2楽章は、まさに映画「スター・ウォーズ」のテーマ音楽のルーツと言うべきスケールの大きな音楽が展開します コルンゴルトは1934年、演出家マックス・ラインハルトからの依頼でハリウッド映画「真夏の夜の夢」のためにメンデルスゾーンの作品の編曲を手がけたところ大評判となり、映画配給会社ワーナー・ブラザーズとの関係が始まりました 彼は1936年の「風雲児アドヴァース」と1938年の「ロビン・フッドの冒険」でアカデミー賞(作曲部門)を受賞しています

第3楽章「アダージョ」を経て第4楽章「フィナーレ」に移ります。ここでは第1楽章冒頭部をはじめ、これまでの主題が再び現れ、過去を振り返りながら曲を閉じます

全4楽章、約1時間弱の演奏ですが、アルブレヒトは精力的な指揮によって、世紀末ウィーンの雰囲気をオーケストラから引き出していました

会場一杯の拍手 と、主に2階席からのブラボーの嵐に何度もステージに呼び戻され、その都度、主要な演奏者を立たせていましたが、最後には譜面台上の黄色い表紙の分厚いスコアを閉じて上に掲げ、「拍手を受けるのはこの交響曲です」と言わんばかりのジェスチャーを示し、聴衆に別れを告げました

この日は、以前から是非生で聴きたいと思っていた曲を2曲聴けたので大満足でした。いずれも名曲です ほかのオーケストラも是非取り上げて欲しいと思います

 

          

 

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東京藝大ピアノ・シリーズ「ベートーヴェンのソナタ」を聴く

2014年05月27日 07時00分37秒 | 日記

27日(火)。昨日の朝日朝刊「文化の扉」は「はじめての山本直純」を取り上げていました 山本直純と言えば1970年代から80年代にかけてTBSで放映されていた「オーケストラがやって来た」の企画・出演・司会・演奏のすべてを担当し、日本におけるクラシック人口の拡大に大きく貢献した人物です 私も毎週のように楽しみにして観ていました

指揮者・小沢征爾は中学時代に山本に師事していますが、72年には共に新日本フィルハーモニー交響楽団を創設しました かつて山本直純が小沢征爾に告げた有名な言葉があります

「お前は世界の頂点を目指せ。オレは日本でクラシックの土壌を耕して待っている」

実際に、その通りになったわけです 山本直純というと、作曲家としても有名です。映画「男はつらいよ」のテーマソングをはじめ、「森永エールチョコレート」の”大きいことはいいことだ”、童謡の「一年生になったら」も彼の作品です

この記事を見て初めて知ったのですが、山本直純は日本人で初めてボストンポップス管弦楽団を振った指揮者とのこと。アメリカの聴衆の喝さいが目に浮かぶようです 指揮ということで言えば、83年の大阪城築城400年を記念して始まった「1万人の第9」を指揮したのも山本直純でした とにかく、とてつもないスケールの大きな人でした

 

  閑話休題  

 

25日に上野の東京藝大奏楽堂で「藝大ピアノ・シリーズ ベートーヴェンのピアノ・ソナタ」を聴きました これは東京藝大・奏楽堂シリーズの「音楽の至宝」Vol.2「ベートーヴェンのソナタ」全4回のうち第1回目のコンサートです 第1回「ウィーン時代初期」、第2回「ウィーン時代中期」、第3回「傑作の森」、第4回「ウィーン時代後期」となっています

 

          

 

午後3時開演ですが、30分前には長蛇の列が出来ていました 幸い1階13列25番、右ブロック左通路側をとることができました。会場は8~9割方埋まっている感じです

この日の公演は東京藝大の教職員がベートーヴェンのピアノ・ソナタを中心に、ほぼ作曲年代順に代わる代わる演奏するもので、若い人で非常勤講師、ベテランで教授が登場します

トップバッターは植田克己教授の登場です。1977年ロン=ティボー国際コンクール第2位入賞者とのことです 演奏するのは「ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調作品7」です。26歳の時の作品ですが、ピアノ・ソナタの中では第29番”ハンマークラヴィーア・ソナタ”に次ぐ長さを持つ長大なソナタです。生演奏で聴くのはこれが初めてですが、これは聴きごたえがありました

次いで、「チェロ・ソナタ第2番ト短調作品5-2」が、チェロ=河野文昭、ピアノ=迫昭嘉(ともに教授)によって演奏されます。私は滅多にチェロ・ソナタを聴く機会がありませんが、河野文昭のチェロは明るく朗々と鳴り響いて素晴らしいと思いました

前半の最後のプログラムは「ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13”悲愴”」です。非常勤講師の齊藤龍によって演奏されます。緊張した面持ちで登場し、若さを力に”悲愴街道まっしぐら”の演奏を展開しました ベートーヴェンはこうでなくちゃ、という気持ちの良い演奏でした

休憩後の最初は「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24”春”」です。ヴァイオリン=野口千代光(准教授)、ピアノ=安田理沙(非常勤講師)によって演奏されます 野口千代光は芸大フィルハーモニアのソロ・コンサートマスターを務めています。「スプリング・ソナタ」はいつ聴いても、誰の演奏で聴いても良い曲です 名曲は演奏を超えると言えば良いのでしょうか。この演奏で特に良かったのはピアノの安田理沙です。決してヴァイオリンを邪魔せず、主張するところはしっかり主張していました

後半2曲目は「ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調作品27-1”幻想曲風ソナタ”」です。非常勤講師の多賀谷裕輔が演奏します 上着を付けず、ワイシャツ姿で登場、ピアノに向かいました。この曲の特徴は4つの楽章が切れ目なく演奏されることです。多賀谷はアンダンテのゆったりした楽章とアレグロの速い楽章を鮮やかに弾き分けていました

最後の”トリ”は非常勤講師・伊藤わか奈により「ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2”月光”」が演奏されます ピアノに向かうと、手元のハンカチで鍵盤を丁寧に拭います。演奏者が変わるごとに係りの人が椅子を取り替えたり、ピアノの位置を変えたりしているのですから、ピアノの鍵盤も綺麗に拭いて、次の演奏者に気持ち良く弾いてもらうのが心遣いというものだと思うのですが、どうでしょうか

あまりにも有名なこのソナタを、伊藤はゆったりとした落ち着いたテンポで開始します。第1楽章「アダージョ・ソステヌート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「プレスト・アジタート」と全曲を聴いてみて、あらためてこの曲は聴きごたえのある”大曲”だと思いました

出演者8人による演奏で3,000円という入場料は東京藝大だからこそ可能な料金設定だと思います

 

          

 

このシリーズの第2回目「ウィーン時代中期」は6月1日(日)午後3時からですが、私はバッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートが入っているので行けません 第3回目「傑作の森」は10月13日(月・祝)午後3時からですが、この日のチケットはすでに入手済みです

 

  も一度、閑話休題   

 

プログラムに藝大主催のコンサートのチラシが挟み込まれていました いずれも割安なのでご紹介しておきます

最初は7月11日(金)午後7時からの「東京藝大管打楽器シリーズ~日独名手の饗宴」です。元ベルリン・フィルの首席オーボエ奏者・シェレンベルガ―、ベルリン・フィルの首席クラリネット奏者・フックスなどが出演し、フンメルやR.シュトラウス等の曲を演奏します。何と入場料は2,000円(全自由席)です さっそく昨日、会社帰りにいつものチケットぴあで購入しました

 

          

 

次はジャズの好きな人への朗報です 今年も「ジャズin 藝大」が7月26日(土)午後3時から開かれます。藝大出身のMALTAをはじめ、サクソホンの須川展也などが出演し、「ムーンライト・セレナーデ」、「茶色の小瓶」などを演奏します 入場料はS席5,000円、バルコニー席4,000円です。昨年聴きに行って良かったので今年も、と思いましたが、残念ながらこの日、東響のコンサートの予定が入っていて聴きに行けません

          

          

 

最後はクラシック入門編コンサートのお知らせ 7月5日(土)午後3時から開かれる「オーケストラの招待~目からウロコの実験教室」です。「音の大きさは2人で演奏すれば2倍になるの?」「同じ曲をピアノとオーケストラの演奏で聴き比べてみよう」などの実験を行うそうです 実験に使われる音楽はハイドンの「交響曲第94番”驚愕”」、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」など 入場料は高校生以上1,000円、小・中学生500円です。私は残念ながらこの日、2つのコンサートが入っていて聴けません

 

          

 

これからも、割安なコンサートがあればご紹介していきます。よい子のみんなは期待して待っててね

 

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スダーン+東京交響楽団でベルリオーズ「テ・デウム」を聴く~350人の総力戦

2014年05月26日 07時00分40秒 | 日記

26日(月)。24日の夕方、サントリホールで東京交響楽団の第620回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」序曲、②ペンデレツキ「3つの中国の歌」、③ベルリオーズ「テ・デウム」で、指揮はユベール・スダ―ンです

 

          

 

今年3月をもって東響の音楽監督を退き、桂冠指揮者に就任したスダーンが登場、第1曲めのベルリオーズ「序曲:ローマの謝肉祭」の演奏に入ります 冒頭、謝肉祭の熱狂を表すテーマが勇ましく奏でられ、次いでコーラングレ(イングリッシュホルン)のソロで叙情的なメロディーが美しく奏でられます スダーンは東響から色彩感豊かでふくよかな響きを引き出します。スダーンの素晴らしいところは、このような派手っちい曲を演奏する時も品が失われないことです

規模が縮小され、次のペンデレツキ「3つの中国の歌」が開始されます。ペンデレツキは昨年80歳を迎えたポーランドの作曲家ですが、この曲は実質的に日本初演とのことです テキストは1907年にドイツで出版されたハンス・ベートゲの詩集『中国の笛』から3編が選ばれています。ベートゲといえばマーラーの「大地の歌」でも使われましたね

バリトン独唱のフランコ・ポンポー二がスダーンとともに登場します。METにも出演したことのあるバリトンですが、「コジ・ファン・トゥッテ」のグりエルモ役を歌ったというのも頷ける優男です

第1曲「神秘の笛」、第2曲「月出ずる夜」、第3曲「夜の風景」からなりますが、第1曲の冒頭のメロディーが流れてきた時、不思議な感覚に捉われました 東洋風味のある西洋音楽と言ったらよいのか、フルートとトライアングルの独特の響きが中国を印象付けます。第3曲ではハープと弦楽器によるハーモニーが神秘的に響きます

この曲を、作曲者名を伏せて聴かされても、ペンデレツキの名前は出てこないでしょう。十数分の短い曲ですが、現代音楽としては聴きやすい曲でした

 

          

 

休憩時間が終わり、自席に着くと、ステージ裏のP席に男女混成合唱団が配置に着くところでした 約90名の男声を中央に挟んで、約120名の女声が配置されます。さらにステージ後方には約60名の児童合唱団がスタンバイします 合唱だけで約270人ですが、オケを加えれば350人は超えるでしょう。しかし、ベルリオーズの「テ・デウム」が作曲者のタクトで初演された1855年4月30日には、900人の演奏家によって演奏されたと言いますから です。ベルリオーズは音楽の規模において突出していたのですね

「テ・デウム」はカトリック教会の「神を讃える」聖歌ですが、フランスでは軍事的勝利を祝う機会にもよく演奏されたそうです 私はこの曲を聴くのは初めてですが、冒頭のパイプオルガンによる強奏とそれに次ぐ圧倒的な合唱を聴いた時、まるでオルガンとオケと合唱の力比べではないか、と思いました 中でも合唱の迫力は凄まじいものがあり、時にオケの音が聴こえないほどでした

聴いていてすぐにマーラーの交響曲第8番を想起しましたが、あの曲は合唱がオケをねじ伏せるといった印象はありません ベルリオーズがいかに人の声の力を信じていたかの証左でしょう

圧倒的な迫力で曲が終わり、拍手が起こりましたが、「まだ拍手には早すぎたか」と遠慮した聴衆がいったん拍手を控えたため、拍手が鳴り止みましたが、スダーンが客席に振り返って「終わりました。どうぞ拍手を」というジェスチャーを示したため、再び、じわじわと、そして段々大きく、最後は会場が割れんばかりの拍手がステージ上のオケと児童合唱、テノールの与儀巧、P席の合唱団を包み込みました

合唱指揮者、テノールとともに、スダーンは何度もステージに呼び戻されましたが、指揮者だけ再登場したとき、ステージ横で控えていた東響の大野順二専務理事から大きな花束が贈呈され、深々と頭を垂れていました 長年の音楽監督に対する慰労と、桂冠指揮者就任のお祝いを込めた花束だったのでしょう

東京コーラスの皆さんは、それぞれの生活を抱える中で、練習を積んでこの日に臨んだことと思います 皆さんはプロ並みの圧倒的な迫力でわれわれ聴衆を感動させてくれました。あらためて大きな拍手を送ります

「やっぱり、スダーンは素晴らしい」とあらためて思ったコンサートでした

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METライブビューイング、モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」を観る~アンサンブル・オペラの魅力

2014年05月25日 07時13分33秒 | 日記

25日(日)。昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」を観ました キャストは、フィオルディリ―ジにスザンナ・フィリップス、ドラべッラにイザベル・レナード、デスピーナにダニエル・ドゥ・二―ス、フェルランドにマシュー・ポレンザ―二、グリエルモにロディオン・ポゴソフ、ドン・アルフォンソにマウリツィオ・ムラ―ロほか 演奏はジェイムズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はレスリー・ケーニッヒ。この公演は今年4月26日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラの実況録画映像です

 

          

 

現場復帰したジェイムズ・レヴァインが指揮台に座ってタクトをとります。序曲が始まりますが、レヴァインはモーツアルトが求めるであろう軽快なテンポで音楽を進めます 「フィガロの結婚」にしても、この「コジ・ファン・トゥッテ」にしてもモーツアルトはテンポが命です カメラは時々指揮をするレヴァインの顔をアップで捉えますが「モーツアルトを振るのが楽しくて仕方がない」という喜びに満ちた表情を見せています

「コジ・ファン・トゥッテ」(女はみな、こうしたもの)は1790年1月26日にウィーンのブルク劇場で初演されましたが、最近の研究によると、ダ・ポンテがサリエリのために書いた台本を、サリエリが途中まで作曲したがうまくいかなかったことから破棄したため、モーツアルトに依頼が回ってきたということのようです

2組の男女がそれぞれのパートナーを交換して、女性陣が誘惑にのるかのらないか賭けをするという内容ですが、ベートーヴェンは「ドン・ジョバンニ」とともに「不道徳なオペラ」として毛嫌いしたことでしょう しかし、ダ・ポンテとモーツアルトにとっては「人間は本能には逆らえない。オペラは楽しくなくっちゃ」というのが根底の考えでしょう

アラバマ州生まれで、フィオルディリージを歌ったスザンナ・フィリップスは、つい最近、METの「ラ・ボエーム」で”はまり役”のムゼッタを歌ったばかりですが、今回の”真面目”なヒロインをどう演じ歌うことができるのかが注目されました もともと歌唱力のあるソプラノなので難なく”騙され役”のヒロインを見事に歌い演じました

妹のドラベッラ役のイザベル・レナードはMETの地元ニューヨーク生まれのメゾ・ソプラノですが、深みのある美しい声の持ち主です 昨年のサイトウ・キネン・フェスティバルにも出演したとのことですが、残念ながら私は生で聴くことができませんでした

フェルランド役のマシュー・ポレンザー二はイリノイ州出身のモテ男で、実に自然で輝きのあるテノールです グりエルモ役のロディオン・ポゴソフはモスクワ生まれのバリトンですが、歌はもちろんのこと、迫真の演技力が光っていました

今回の公演で二人のヒロインの人気を食わんばかりの勢いだったのが、デスピーナ役、メルボルン生まれのアメリカ人ダニエル・ドゥ・ニースです 15歳でオペラデビューし、METは19歳で初舞台を踏んだといいますから相当の実力者です 黒人歌手ですが、歌はべらぼうにうまく、相当演技力もあるソプラノです。彼女の一つ一つの動作がチャーミングです

そして、哲学者ドン・アルフォンソを演じたマウリツィオ・ムラーロの円熟味のある歌と演技は舞台に落ち着きを与えていました

このオペラの魅力はソロのアリアはもちろんのこと、二重唱、三重唱、四重唱、六重唱といったアンサンブルです とくに二重唱が1人加わって三重唱になり、また1人加わって四重唱になり、最後に6人が揃って六重唱を歌う第1幕のフィナーレはアンサンブル・オペラの魅力そのものと言っても過言ではないでしょう アリアが歌われるたびに、「モーツアルトっていいな」「METは最高だ」とひとり呟いていました

今回の演出はサンフランシスコ生まれの女性演出家レスリー・ケーニッヒですが、きわめてオーソドックスな舞台作りと演出で、非常に好ましく思いました モーツアルトのオペラというと、音楽そっちのけで「この斬新な演出を見てくれ」的な慙愧に耐えないトンデモ演出がままありますが、演出は音楽の邪魔をしてはいけません。その点ケーニッヒの演出は音楽を最優先に考えた最良の方法を採っていました

私はこれまで何度か「コジ・ファン・トゥッテ」を生で、あるいはライブビューイング等の映画で観てきましたが、今回のMETの公演が、歌手陣、演出ともに最高でした

 

          

           (左はイザベル・レナード、右はスザンナ・フィリップス)

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村上龍著「55歳からのハローライフ」を読む~ハローワークではありません!

2014年05月24日 07時01分18秒 | 日記

25日(土)。村上龍著「55歳からのハローライフ」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 村上龍は1952年長崎県生まれ。1976年に「限りなく透明に近いブルー」で第75回芥川賞を受賞しました 最近ではテレビ東京の「カンブリア宮殿」の司会者としても知られています。この本の巻末でバークレイズ証券の北野一氏が「解説」を書いていますが、そちらの繋がりなのでしょう

その北野一氏が書いている通り、私もこの本のタイトルを「55歳からのハローワーク」と勘違いしていて、村上氏の書いた「13歳からのハローワーク」のシニア版だと思っていました ところが、ぱらぱらっとページをめくってみると中編小説集であることが分かりました

 

          

 

収録されているのは、晴れて夫と離婚したものの経済的な問題から結婚相談所に通い、様々な男たちに出会う中米志津子を描いた「結婚相談所」、早期退職してキャンピングカーで妻と旅する計画を家族から反対される富裕太郎を描いた「キャンピングカー」、落ちぶれた中学時代の友人を母親に会いに行かせる因藤茂雄を描いた「空飛ぶ夢をもう一度」、大切なペットの犬を亡くした妻とその夫の心理の変遷を描いた「ペットロス」、元大型トラック運転手・下総源一の老いらくの恋を描いた「トラベルヘルパー」の5つの小説から成っています

これらの物語に共通しているのは、いわゆる定年の一歩手前で、人生をもう一度やり直したいと考えている男女の小さな決意を描いているということです 小説ですから「そんなことは有り得ないだろう」と思う部分もありますが、そこに書かれた世界に”思い当たる節”がある人にとっては光明となるでしょう

さらに、5つの物語に共通して出てくる大事なものがあります。それは飲み物です 「結婚相談所」ではアールグレイの紅茶 「キャンピングカー」ではパーコレーターで淹れたコーヒー 「空飛ぶ夢をもう一度」ではパラディーゾ(ミネラルウォーター) 「ペットロス」ではプーアール茶 「トラベルヘルパー」では狭山の新茶です これらの飲み物が主人公と相手方との媒介となって物語が進行していきます これは作者が意図して用意した小道具だと思います。蛇足ですが、”狭山の新茶”は、私の生まれ故郷である埼玉県狭山市や入間市付近で取れるお茶です ちょうど今ごろが新茶の季節で、先日、狭山から新茶の詰め合わせを送ってきたばかりです

文庫本の帯によるとこの作品は6月14日からNHKでドラマ化されるとのこと。私はテレビは観ませんが、ドラマとしては面白いかも知れません

 

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新国立オペラ、R.シュトラウス「アラベッラ」を観る~粒ぞろいの歌手陣

2014年05月23日 07時01分22秒 | 日記

23日(金)。昨夕、初台の新国立劇場でリヒャルト・シュトラウス「アラべッラ」を観ました キャストは、アラべッラにアンナ・ガブラ―、ズデンカにアニヤ=二―ナ・バーマン、ヴァルトナー伯爵に妻屋秀和、アデライデに竹本節子、マンドリカにヴォルフガング・コッホ、マッテオにマルティン・二―ヴァイル、フィアッカミッリに安井陽子ほか。演奏はベルトラン・ド・ビリー指揮東京フィル、演出・美術・照明はフィルップ・アルロ―です

私の2つ前の席はこのオペラの衣裳を担当した森英恵さんが、左前の席には次期新国立オペラ芸術監督・飯守泰次郎さんが座っておられます

 

          

 

舞台は19世紀末のウィーン。没落貴族のヴァルトナー伯爵には、長女アラべッラと男の子として育てているズデンカがいる。美人のアラべッラには士官のマッテオなど多くの求婚者がいるが、彼女は誰にも関心がない ある日、彼女の前に資産家のマンドリカが現れ、お互いに一目ぼれしてしまう。ひそかにマッテオを愛するズデンカは、彼を慰めようと姉の部屋の鍵と偽って自分の部屋の鍵を渡す。マンドリカはアラべッラの不貞を疑うが、ズデンカが真実を告白し、アラべッラとマンドリカ、ズデンカとマッテオが結ばれる

 

          

 

実は今回の「アラべッラ」は、尾高忠明氏が新国立オペラの芸術監督に就任した2010年のオープニングを飾った思い出の作品の再演です。よほど思い入れのある作品なのでしょう。私がこのオペラを新国立で観るのは前回に次いで2回目です

指揮者ベルトラン・ド・ビリーは2010年まで8年間ウィーン放送交響楽団の音楽監督を務め、2012年2月にN響定期公演で振ったこともある人気指揮者です

アラべッラ役のアンナ・ガブラ―はミュンヘン生まれ。2011年の新国立オペラ「こうもり」でロザリンデを歌ったソプラノです 聴いていて思うのは、リヒャルト・シュトラウスに相応しい輝きがあり深みのある声を持った歌手ということです マンドリカを含めて4人の男性から求婚されるのに相応しい美貌の持ち主でもあります 第3幕の最終場面で階下のマンドリカのもとに、アラベッラがコップ1杯の水を手にして階段を降りてきて歌う長いアリアは、リヒャルト・シュトラウスの魅力を最大に発揮した歌声でした

同じくらい魅力的だったのは、アラベッラの妹ズデンカを歌ったドイツ・ジークブルク生まれのアニヤ=ニーナ・バーマンです 男の子として育てられたので外向けには「ズデンコ」という、雪道ですっころんだような可哀そうな名前ですが、ズボン役から第3幕で本来の女性に戻った時の歌と演技は素晴らしいものがありました

アラベッラに求婚するマンドリカ役のヴォルフガング・コッホは、田舎の農場主らしい素朴で力強い歌声で聴衆を魅了しました

舞踏会のマスコットガール、フィアッカミッリを歌った安井陽子は、過去に新国立で歌ったモーツアルト「魔笛」での夜の女王のアリアで示したコロラチューラ・ソプラノの魅力を存分に発揮しました

私が今回特に感心したのは、ヴァルトナー伯爵を演じた妻屋秀和の活躍です。このオペラが、実は喜劇であることを彼の歌と演技が思い起こさせてくれました この人は何を歌っても、何を演じても素晴らしい活躍を見せてくれますが、今回は突出していました

歌ではありませんが、特筆すべき演技がありました。第3幕で、アラベッラが3人の男性に別れを告げるシーンの中で、最後にラモラル伯爵が一人で回転して踊りながら階段をジグザグに上がって行くところがありますが、あれは一歩間違えれば「蒲田行進曲」におけるヤス(柄本明が演じた)の『階段落ち』になるところです バリトンの大久保光哉は歌と同じくらいあのシーンを”稽古”したのではないでしょうか

最後に、この公演の大きな特徴は、300種類もの青で舞台を満たしたフィリップ・アルロ―による舞台・演出です アラベッラの衣裳はもちろんのこと、背景もすべて青で統一され、独特の世界を表出しています

ビリー指揮東京フィルはウィーン情緒豊かな音楽づくりをしていました。カーテンコールでは主役級の歌手陣を中心にさかんな拍手とブラボーを受けていました

第1幕の後の休憩時間に、いつものようにロビーに出てプログラムを読んでいたら、「もしもし、〇〇ちゃん?あのね、夕食食べたの?グランマは帰るの10時過ぎになるから玄関の鍵だけ閉めておいてちょうだい。門の鍵は開けておいてね」という高齢女性の声が聞こえました グランマって・・・・・・そうか、グランドマザーね。要するに「おばあちゃんは帰りが遅くなるから」という連絡だったのです 親はどうした?と思いましたが、最近、孫に「おばあちゃん」とか「おじいちゃん」と呼ばせない高齢者が増えているように思います。ファースト・ネームで呼ばせるという女性もいます いくつになっても自分自身が歳をとって孫がいる年齢になったことを認めず、意識的に若さを保とうとするアンチエイジング対策の一つと思われます しかし、これは決して悪いことだとは思いません。それにしても、玄関の鍵は分かるとして、門の鍵と聞いた時は「どんな大邸宅に住んでいるんだろうか?」と、思わずお顔を拝見してしまいました。ごく普通のおばあちゃんでした

午後6時半に始まったこの公演が終了したのは午後10時5分を回っていました。新国立オペラ「アラベッラ」は青の舞台と共に思いだすことでしょう

 

          

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読売日響≪三大交響曲≫≪三大協奏曲≫日本フィルのマーラー「第6番」チケットを買う

2014年05月22日 07時00分51秒 | 日記

22日(木)。クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」に「長原幸太が10月から読響のコンサートマスターに就任する」というニュースが載っていました 長原幸太は大阪フィルのコンマスなどを歴任しました 室内楽のコンサートではこの人の名前を見ることが多い今日この頃です。これによって10月以降の読響のコンマスは日下紗矢子、小森谷巧、ダニエル・ゲーデに加えて4人体制になります。ここ数年の読響は動きがかなり活発ですね

 

          

 

  閑話休題  

 

チケットを3枚買いました。最初の2枚は毎夏の恒例行事となった「読売日響サマ―フェスティバル2014」の「三大交響曲」と「三大協奏曲」です

「三大交響曲」は8月16日(土)午後2時からサントリーホールで開催されます。プログラムは①シューベルト「交響曲第7番ロ短調”未完成”」、ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調”運命”」、③ドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」で、指揮は川瀬憲太郎です

「三大協奏曲」は8月20日(水)午後6時半からサントリーホールで開催されます。プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」、②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」、③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」で、独奏は①が弓新、②が辻本玲、③がニコライ・ホジャイノフ、指揮は円高寺雅彦です

両方のジャンルで「三大」に選ばれた6曲に共通する点が一つだけありますが、お判りになりますか?そう、すべてが”単調”ではなく”短調”の曲です

もう1枚はピエタリ・インキネン指揮日本フィルによる第661回定期演奏会です。プログラムは①シベリウス「交響詩:夜の騎行と日の出」、②マーラー「交響曲第6番”悲劇的”」です。とにかく、マーラーの交響曲を生で聴きたい一心で買ったようなものです マーラーやブルックナーを部屋でチマチマ聴いていても本当の良さは分かりません

 

          

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