人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

エンターティナー、アレクサンドル・ラザレフ=日本フィルでブラームス「交響曲第4番ホ短調」を聴く

2013年01月31日 06時59分16秒 | 日記

31日(木)。早いもので1月も今日で終わり。あっという間の1か月でした。2月は28日しかないのでもっと速く過ぎ去ってしまうでしょう

昨夕、池袋の東京芸術劇場で日本フィルのコンサートを聴きました これは2013年都民芸術フェスティバルの参加公演です。プログラムは①チャイコフスキー歌劇「エフゲニー・オネーギン」より”ボロネーズ”、②リスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」(ピアノ=後藤正孝)、③ブラームス「交響曲第4番ホ短調」です。指揮は常任指揮者アレクサンドル・ラザレフです

自席は1階P列18番、会場のど真ん中と言ってもよい席ですが、残念ながら通路側席ではありません客席は9割方埋まっている感じです。オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといったオーソドックスな態勢を取ります 日本フィルを生で聴くのは本当に久しぶりです。コンマスの木野雅之さんのほかは一人も分かりません。定期会員ではないので仕方ないのですが

1曲目のチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」~ポロネーズは、公爵主催の舞踏会を導くための音楽です ラザレフはタクトを持たずに登場、振り向きざまに右手を振り下ろします 弦楽器などは慌てています。幸い冒頭は管楽器のみの演奏で間に合いましたが ラザレフの指揮はパワフルです。指揮台の上で激しく動きます 何年か前、この曲を同じ日本フィルで西本智美の指揮で聴いたことがありますが、対極にある演奏でした 西本智美のポロネーズはあくまでも華麗で美しく響きましたが、ラザレフのポロネーズは身体全体を使った”前進あるのみ”といったパワフルな音楽です。同じ曲、同じオケでこうも違うかと です。

センターにピアノが運ばれ、ソリストの後藤正孝がラザレフとともに登場します。後藤は2011年の第9回フランツ・リスト国際ピアノコンクールで満場一致の第1位を獲得、同時に聴衆賞を受賞しています 1985年生まれといいますから27~28歳ですが、小柄なため子供が登場したのかと勘違いしてしまいました

ところが、その子供のような小柄なピアニストの両手から紡ぎ出されるリストのコンチェルトの音楽は、気迫に満ちたパワフルなものでした 満場の拍手に応えてリストの「愛の夢第3番」をロマンチックに演奏しました 今後の課題はアマタいるピアニストの中でどう差別化して生き残っていくかです

休憩後のブラームスの「交響曲第4番ホ短調」はブラームス最後の交響曲ですが、名曲中の名曲です。ラザレフはこの曲も身体全体を使って精力的に指揮をします。良く言えばパワフル、悪く言えばマイペースの指揮振りです 動きが激しいので彼を見ながら聴いていると、どうしても視覚が優先してしまい肝心の耳で聴くことがおろそかになってしまいます こういう時には目をつむって音だけに集中するに限ります。音楽だけを聴く限り、よく流れていていい演奏です

ラザレフは、第4楽章のフィナーレで、観客席の方を向いて全曲を締めくくりました 満場の拍手とブラボーに、管楽器を立たせて賞賛し、自らも喜びを身体で表現します。気をよくした彼はアンコールにブラームスのハンガリー舞曲第4番を演奏しました

途中で演奏が終わると見せかけて客席を振り返り、拍手が起こると”まだあるよ”と言わんばかりに再び演奏を続け、また終わると見せかけて、拍手が起こるとまた”まだまだあるぜ”と言わんばかりに再び演奏を続け、客席とキャッチボールしつつオケと一緒に楽しみながら演奏していました ラザレフはエンターティナーです 今の日本フィルにはこういう元気な”タレント”が必要なのだと思います

 

          

 

  閑話休題  

 

一昨年2月15日に始めたこのブログも今日=1月31日で777回の記念すべき回数を記録しました ここまで続けてこられたのもこのブログをご覧いただいた皆さん、とくにコメントを寄せて下さった”定期読者”の皆さんのご支援のおかげです ちなみにこのtoraブログの先週1週間(1/20~1/26)の訪問者数は2818人で1日平均402人、見られたページ数は6065ページビューで1日平均866ページ、訪問者数ランキングは181万7125ブログ中1506位となっています。これからも休むことなく毎日更新していきます。ご覧の上コメントをお寄せいただくと励みになります。よろしくお願いいたします

 

 

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シューベルトの弦楽四重奏曲「ロザムンデ」を聴く~新日本フィル室内楽シリーズ

2013年01月30日 06時59分44秒 | 日記

0日(水)。昨夕、丸の内消防関係団体の「新年顔合わせ会」が丸の内の日本工業倶楽部で開かれたので、S元監査役と参加しました M丸の内消防署長に挨拶をしてから、知り合いがいないか探しましたが一人もいないのでひたすら飲んで食べました ウイスキーの水割りを2杯、赤ワインを2杯飲んで、寿司、おでん、蟹ピラフ、焼きそば、ホタテの貝柱、牡蠣フライ、デザートにメロンと苺、仕上げにコーヒーと、ほぼフルコースを平らげて会場を後にしました 私は7時からすみだトりフォニーホールでコンサートがあるので、東京駅から総武線で錦糸町に向かいました

 

  閑話休題  

 

すみだトりフォニーホール(小)では新日本フィル室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴」第3回公演を聴きました プログラムは①ハイドン「フルート三重奏曲第1番~第4番(ロンドン・トリオ)」、②シューベルト「弦楽四重奏曲第13番イ短調”ロザムンデ”」です

開演前、いつものように新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんによる”プレ・トーク”がありました。この日はスメタナ四重奏団とアレクサンダー・シュナイダー氏の解説がありましたが、いつもながら原稿は用意するものの、まったくそれを見ないで”立て板に水”のごとく弦楽四重奏団のメンバーの名前や物事の年代を正確に言い表して、観客の関心を引きつけていました

これについて、公演終了後の”ワンコイン・パーティー”でご本人が参加者の質問に答えて「私は小さい頃、引きこもりだったのです その当時は”引きこもり”という言葉はなかったのですが、楽しみと言えば、レコード・ジャケットの解説を隅から隅までよく読むことでした。それが記憶に残っているのです。脊髄と口が直結していて、言葉が自然に出てしまうのです。決して頭がいいということではないのです」と謙遜していらっしゃいました。私は決してそんなことはないと思っていますが

篠原さんは以前プレ・トークで「今期限りでプレ・トークは降りる。私の後任は決まっている」とおっしゃっていましたが、「後任を発表します。次期のプレ・トークはコントラバス奏者の村松裕子さんが担当します」と発表されました。会場からオーッというどよめきの声が・・・・ この人選は意外でした。男性とばかり思っていましたので ご本人には本当に失礼なのですが、篠原さんの”立て板に水”のイメージからは遠いように思われます 村松さんをよく知る人は、いやあピッタリだと思うよ、とおっしゃるかもしれませんが、わたしには未知数です。いずれにしても、誰がやるにしても篠原さんの後任は”いばらの道”を歩むようなものだと思います。同情します。しかし、村松さんと言えば、パリコレに出てくるモデルのようなスタイルのいい素敵な女性ですから、是非応援したいと思います。村松さん独自のトーク・スタイルを確立することを期待したいと思います

 

          

 

1曲目のハイドン「フルート三重奏曲」第1番~第4番(ロンドン・トリオ)はフルート=荒川洋、ヴァイオリン=塩澤菜美、チェロ=川上徹の演奏です 4曲全部通して35分~40分程度の短い曲ですが、すべてが長調の曲と言うこともあり、アカルク(①明るく②あ、軽く)楽しい曲です。聴く側は気軽に聴けるのですが、それよりも、演奏する側が楽しめる曲ではないかと思います。そんな演奏でした

ハイドンについては、”ワンコイン・パーティー”で篠原さんが「ハイドンというと軽く思われがちですが、グレン・グールドは”最も偉大な音楽家”と評価していました。晩年に録音したハイドンのピアノ・ソナタは本当に素晴らしい演奏です グールドはモーツアルトよりもハイドンを評価していたと言ってもよいかもしれません」と解説されていました。私もその演奏をLPレコードで持っていますが、久しぶりに聴いたみたくなりました

2曲目のシューベルト「弦楽四重奏曲第13番イ短調”ロザムンデ”」は第1ヴァイオリン=澤田和慶、第2ヴァイオリン=山恵子、ヴィオラ=高橋正人、チェロ=多田麗王の演奏です

終演後、ホワイエでの”ワンコイン・パーティー”で、篠原さんが第1ヴァイオリンを弾いた澤田和慶さんにインタビューして「シューベルトの”ロザムンデ”は純粋で真っ白な曲ですが、演奏するには本当に難しい曲だと思います この曲を弾いていてどういう感想をお持ちですか?」と訊ねていました。もちろん澤田さんは「難しい曲です」と答えていました。ここで私は、なぜ篠原さんが「この曲は難しい曲だが、弾いている本人はどう思ったか」と訊いたのかを考えました。私なりの解釈はありますが、それを言葉で表すのは非常に困難です。間違っているかも知れませんし ただ、篠原さんのやさしさが現われた質問だったな、と思いました

全体を通してみて、後半の楽章にいくにしたがってアンサンブルが良くなってきたという印象を持っています とくに第3楽章「メヌエットートリオ:アレグレット」ではチェロがよく歌っていました

”プレ・トーク”が始まる前に、篠原さんが2冊の本を持ってきてくださいました 私のブログに篠原さんがコメントで教えてくださったことから、古本屋をはしごして探していたのに見つからなかった本です ブタペスト・クァルテットの向こうをはってブタコレラ・クァルテットを結成した井上和雄氏(昭和14年生まれ)による著書で、「ベートーヴェン 戦いの軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」(音楽之友社)と「モーツアルト 心の軌跡~弦楽四重奏が語るその生涯」(音楽之友社。サントリー学芸賞受賞)です

 

          

          

 

この2冊の本は欲しくて欲しくてたまらなかった”待望の書”です これからじっくり読みたいと思います。趣味でブログを書いているに過ぎない、どこの馬の骨かも知れない私(篠原さんは私の名前も勤務先もご存じない)のために、時間をさいて絶版になった本を探してプレゼントしてくださったのです そのお気持ちだけでも本当にありがたく思っているところです。そのご厚意の少しでも応えるべく、いずれこれらの本についてもブログで紹介したいと思っています

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筑紫哲也著「旅の途中~ジャーナリストとしての私をつくった39人との出会い」を読む

2013年01月29日 06時59分10秒 | 日記

29日(火)。入院中の母の様態が思わしくなく、個室に移されたという連絡を受けて、昨日、急きょ会社を休んで、狭山の病院に見舞いに行きました 幸い呼吸も安定していて顔色も良かったので一安心しました

西武新宿線狭山市駅から歩いて坂を下りる途中、市立中央公民館が解体工事の真っ最中でした ここは思い出の場所です

今から30年以上前のことですが、公民館の前で「レコード・コンサートへのお誘い」のチラシを配っていました 確か1か月に一度、ここの会議室を会場にしてクラシック音楽のLPレコードをかけるコンサートを開いているという内容でした 興味本位で参加してみると6~7人の人が新発売のLPレコードに耳を傾けていました。その時かかっていたのが誰の何の曲だったのか全く覚えていません 主催者は地元のNさんという私より1つか2つ年上のN自動車狭山工場に勤める青年とその奥さんで、公民館の許可を得て自分のスピーカーを持ち込んでレコード・コンサートを開いているという話でした 相当数のチラシを配ったらしいのですが、それを見てコンサートに参加したのは私ひとりだけだった、とNさんから聞きました。”少数派”のクラシック人口って昔も今もそれほど変わらないのかもしれません

それをきっかけに、個人的にお互いの家を行き来してクラシック音楽の情報交換をするようになりました。急にロリン・マゼール=クリーヴランド管弦楽団のコンサートに行けなくなったので代わりに聴きに行ってくれと言われて東京文化会館に出かけたのもいい思い出です その後、私が東京で暮らすようになってから、Nさんはどこでどうしているのか、消息は定かでありません そんな出会いのきっかけを作ってくれた公民館が目の前で解体されているのを見て、複雑な思いがしました

 

          

 

  閑話休題  

 

筑紫哲也著「旅の途中~ジャーナリストとしての私をつくった39人との出会い」(朝日文庫)を読み終わりました これは、新聞記者(朝日新聞)の時代、テレビ・キャスター(TBS”筑紫哲也 NEWS23”)の時代、雑誌編集者(朝日ジャーナル編集長)の時代を振り返って、出会った人々との交流を描きながら自分の半生をたどった自叙伝です

新聞記者時代で意外だと思ったのはジャズのMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)のピアニスト、ジョン・ルイスとの交流です

「私ほどMJQの生の演奏を聴いた者はいないだろう」と断言しています。筑紫氏は特派員などで3度アメリカ暮らしをしていますが、その間に”追っかけ”に近いことをやっていたようです。ジャズに関して彼は相当詳しいようです 私もMJQのレコードは名曲「ジャンゴ」を収録した2枚組を持っており、よく聴いたものです ジョン・ルイスはバッハへの傾倒が半端ではありません。彼の音楽は限りなくクラシックに近いジャズと言ってもいいでしょう

もう一人は小説家の阿佐田哲也との交流です

彼は色川武大の名前で書いた「黒い布」で中央公論新人賞を受賞し、その後、阿佐田哲也名義で「麻雀放浪記」などの麻雀小説を執筆し「離婚」で直木賞を受賞しています 何と筑紫氏は阿佐田哲也と「話の特集」編集長の矢崎泰久と歌手の井上陽水と何度か卓を囲んだことがあるというのです しかも、書かれたことを見る限り筑紫氏は相当な腕前であるようです。新聞記者に”麻雀”はつきものと言ってしまえばそれまでですが、”プロ”の阿佐田哲也を相手に戦うのですから相当な度胸だと思います

そして、面白いのは何と言っても長嶋茂雄です

「伝説によれば、この学生(長嶋)は英語の授業で、現在形を過去形に直す練習をこうやって切り抜けたという。問題: I live in Tokyo.(私は東京に住んでいる)。これを過去形に直しなさい。彼の答え: I live in Edo.(私は江戸に住んでいる)。なるほど、東京の過去名は江戸である。が、英語の授業でこんな答えを思い付く者はおそらく空前絶後であろう

このほかにも、長男の一茂が小さい頃、球場に連れて行ったのに試合後、忘れて置いたまま帰宅してしまった話とか、試合用にストッキングを左右とも同じ足に履いて、もう片方がないと大騒ぎした話とか、ピンチヒッターを審判に告げる時に自分でバントのジェスチャーをしてしまい作戦がばれた話とか、面白いエピソードが満載です

テレビ・キャスター時代では、音楽家として3大テノール(パバロッティ、ドミンゴ、カレーラス)が取り上げられています 普段あまり上演される機会のないオペラの発掘に熱心なドミンゴが「ABCDオペラ」という名言を吐いたというくだりがあります。オペラファンなら誰でも、それぞれの頭文字で思い浮かべることができる定番演目のことで、その繰り返しだけではオペラの発展はない、という批判を込めた表現だとのことです その「ABCD」とは「アイーダ」「ボエーム」「カルメン」「ドン・ジョバンニ」の頭文字とのこと。これについて、筑紫氏は、名曲だから繰り返し上演されるのだから、必ずしも批判には当たらないのでは、と疑問を呈しています

また、小澤征爾、黒澤明といったその道を極めたアーティストの知られざる姿も紹介されています

本書の「解説」を昨年”最も読まれた本ベストテン”の第1位「聞く力」の著者であり「筑紫哲也 NEWS23」のアシスタントを務めた阿川佐和子さんが次のように書いています

「フレームの中にどれほど不愉快そうな顔が現われようとも、どんな困難が待ち受けていようとも、自分が面白いと思ったらとことん食らいつく・・・・しかもデヘデヘと笑いながら その素直で果敢で愛嬌ある精神こそがジャーナリストの本質だと、本書を読み終わったとき、私はしみじみと理解するのである

まさに、そのようにしみじみ理解するような話が詰まった本です

筑紫哲也と言えば、学生時代には朝日ジャーナルを買って読んだ(ふりをしていた)し、1970年代後半のテレビ朝日系の日曜夕方の番組「こちらデスク」をよく観ていました。筑紫氏はサファリルックのようなカジュアルな服装で、腕まくりをして、理路整然と事件の本質を解説していました 彼が言った言葉で、今でも忘れられない言葉が一つあります。何かの事件を報道した時のコメントなのですが、”法律的、あるいは理論的には正しくても、人の気持ちとして納得できないまま解決を図るべきではない”という意味で、「理に適い、情に適う」解決をすべきではないか、という趣旨のコメントしたのです この言葉は、その後の私の、解決すべき問題に直面した時の大事な判断指針になっています。今は亡き筑紫氏に感謝しています

 

          

 

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高関健=新交響楽団でブルックナー「交響曲第5番変ロ長調」を聴く

2013年01月28日 06時59分07秒 | 日記

28日(月)。昨日、すみだトりフォニーホールで新交響楽団の第220回演奏会を聴きました プログラムは①ベルク「3つの管弦楽曲」、②ブルックナー「交響曲第5番変ロ長調」(ハース原点版)です。指揮は帝王カラヤンのアシスタントを務めたこともある高関健です

自席は1階13列26番で、センターブロック右サイド通路側です。会場はアマチュア・オケにしては多い8割方埋まっている感じです プログラムがベルクとブルックナーだけあって、最初から約100名のフルオーケストラがスタンバイします 左から奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置で、高関シフトです コンマスはいつもの女性です。楽団員名簿を見るとコンマスは堀内真実さんと前田知加子さんの二人ですが、どちらなのか不明です 次の公演の時には分かるようにしておいてくれると嬉しいのですが

プログラムノートにクラリネットの品田という人がベルクの「3つの管弦楽曲」の解説を書いていますが、「”ゲンダイオンガク”と言って先入観を持たないで聴いてほしい」と呼びかけています。「過激な感情爆発と異常な沈潜が頻繁に交代し、所々で軍楽隊や酒場の踊りのような俗っぽい音楽を顔を出すところなどはマーラーを髣髴とさせるとても人間くさい音楽です」と誘い込んでいます

なるほど、実際に聴いてみると、オペラ「ヴォツェック」を含め、これまで聴いた他のベルクの曲と比べてとても聴きやすい曲でした とくに最後の第3曲「行進曲」は、ハンマーの3連発で驚かされ、さらに最後のハンマーの止めの一発などは、まるでマーラーの第6交響曲のようで親近感を覚えました

それよりも、品田さんの解説にある「ベルクの生涯」がとても面白く興味をそそられました ベルクは14歳の頃から独学で歌曲を作曲するようになりますが、15歳で父を亡くしてから経済的に苦しくなり、おまけに喘息を発症してしまいます 17歳の時にはベルク家に仕えていた女中マリー・ジョイフルに子供を産ませてしまい、学校の卒業試験で落第し、自殺未遂まで起こします 翌年に何とか卒業はしたようですが、マリーは子供を連れて家を出て行ったとのこと。ベルク唯一の娘アルビーネ・ジョイフルは、ベルクの埋葬の際に一度ベルク家に姿を現しただけだったそうです。ベルクはとてもジョイフルとは言えない波乱の人生を送ったのですね こういう解説を書いてくれると、”ゲンダイオンガク”と敬遠している作曲家に対して親近感を感じますよね。とても良いことだと思います

ブルックナーの交響曲第5番は、1896年に「初版」が彼の弟子フランク・シャルクによって出版されましたが、第4楽章を中心に大幅なカットやオーケストレーションの変更がなされたものでした 1929年ウィーンに国際ブルックナー協会が設立され、ハースが1935年に原典版を出版しました。この日の演奏は、この原典版に基づいたものです

高関健のタクトで第1楽章が、低弦のピッチカートによる序奏で始まります。そして金管の輝かしいコラールが演奏されます 管楽器がとてもいい感じで、とくにフルートは絶好調です。アマチュア・オケで一番心配なのは管楽器なのですが、このオケの金管も木管もすごくレベルが高く安心して聴いていられます それと、前回も思ったのですが、ティンパ二のオトーサンがオケの真ん中で頑張っているのが何とも頼もしく感じました

第2楽章「アダージョ」では弦楽器の厚みのある音が印象に残ります 管楽器と相まって弱音から強音に至るまで音の大伽藍を築き上げます

第3楽章「スケルツォ」は歯切れの良い演奏が心地よく響きます。第4楽章は第1楽章と同じ序奏で始まります 最後はすべての楽器を総動員してのコラールが、会場を突き抜けんばかりの迫力で迫ってきます。きっと、ブルックナーは音楽の勝利を神に捧げているのでしょう

新交響楽団は、マーラーやブルックナーの交響曲を演奏する時は必ず聴くようにしていますが、それは、ある意味でプロよりも感動を得ることがあるからです 普段はそれぞれの仕事を持ちながら、貴重な時間を割いて練習に励み、年間4回のコンサートにすべてを掛ける、そうしたひたむきな姿勢が演奏から伝わってくるからです このオーケストラは、また聴きたいという気持ちにさせてくれます

さらに付け加えると、感心するのは毎回立派なプログラムが用意されていることです 表紙を入れて16ページの分厚いもので、演奏者のプロフィールや曲目解説のほか、最近の演奏会記録、楽団員名簿などが収録されていて充実しています。とりわけ楽団員による曲目解説は”どこでこういう知識を仕入れてくるのだろう”と思うほど専門的な解説が成されていて、いつも感心します

また、演奏者の家族(特に幼児)のことを考えてか、コンサートを聴く際のマナーを書いたスリップがプログラムに挟み込まれていましたが、これもプロのオケでさえ稀な試みです。さすがはアマオケの老舗と言えるでしょう

 

          

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イーメル(Tr)衝撃のデビュー~METライブビューイング、ベルリオーズ「トロイアの人々」を観る

2013年01月27日 07時00分52秒 | 日記

27日(日)。昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ベルリオーズ「トロイアの人々」を観ました。これは今年1月5日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場での公演のライブ映像です 自席はJ-4番で、左サイド通路側です。

「トロイアの人々」はベルリオーズが1856~58年にかけて作曲した全2部・5幕からなる上演時間5時間を超えるオペラです 19世紀半ばには、この壮大なオペラを上演できる劇場がなかったため、作曲者が生存中には上演されず、フランス語による全幕上演は20世紀半ばまで待たなければなりませんでした なにしろ、歌手、合唱、演出、衣裳、大道具、小道具等のスタッフはMETで1,000人規模になるといいます 滅多に上演の機会はありません。METでの前回の上演は2003年だったそうですから、ちょうど10年ぶりの再演ということになります

キャストは、トロイアの王女で預言者であるカサンドラにデボラ・ヴォイト(ソプラノ)、コロエプスにドゥウェイン・クロフト(バリトン)、トロイア軍の大将アエネアスにブライアン・イーメル(テノール)、その息子アスカ二ウスにジュリー・ブ―リアンヌ(メゾソプラノ)、パントゥスにリチャード・バーンスティーン(バス)、カルタゴの女王ディド―にスーザン・グラハム(メゾソプラノ)、その妹アンナにカレン・カ―ギル(メゾソプラノ)、ナルバルにクワンチュル・ユン(バス)、イオパスにエリッカ・カトラー(テノール)ほか、ファビオ・ルイ―ジ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はフランチェスカ・ザンベッロです

物語の第1部は「トロイアの陥落」で、トロイアの王女で預言者であるカサンドラは、ギリシア軍が巨大な木馬を残して突然撤退したことに国の滅亡を予感します しかし、アエネアスのもと戦勝に沸く民衆は木馬を城内に引き入れてしまいます。英雄エクトールの亡霊がアエネアスに「トロイは崩壊する。イタリアに行き、帝国を築け」と告げます。木馬から現れたギリシア兵が火を放ちトロイアは崩壊します。絶望したカサンドラと女たちは自害します

第2部は「カルタゴのトロイア人」です。女王ディド―のもと平和に過ごしているカルタゴに、イタリアに向かうトロイア人たちの船がやってきます。ちょうど戦いが起こり、劣勢なカルタゴに対しアエネアス率いるトロイア軍が助太刀を申し出てディド―は感謝します それをきっかけにアエネアスとディド―は愛し合うようになります しかし、亡霊たちが現われアエネアスに「イタリアへ」と促します。引きとめるディド―を振り切って出帆したアエネアスに失望したディド―は、自分は灰になって復讐者ハンニバルとして蘇る、と予言して自害して息を引き取ります

 

          

 

幕間に歌手へのインタビューがありますが、同じMETのソプラノ歌手ジョイス・ディドナートがスーザン・グラハムに「このオペラはイタリア・オペラではなく、フランスのベルリオーズが書いたのでフランス語で歌うことになるけど、イタリア・オペラやドイツ・オペラと違ってどう取り組むの?」と訊くと「ベルリオーズはとにかく革新的です。冒頭から難しいアリアが待っています 自分の声はソプラノとメゾソプラノとのちょうど中間の声だと思うけど、女王ディド―の役には合っていると思うわ」と答えていました。その通り、スーザンの声はぴったりです。ソロでもデュオでも伸びのある美しい声です

今回の公演で、これを書かなければ片手落ちだと思えるのは、アエネアスを歌ったブライアン・イーメルの突出した素晴らしさです 当初アエネアスはMETの看板テノール、マルチェッロ・ジョルダー二が歌う予定だったのが、出演できなくなり(理由は不明)、急きょ代役を務めることになったのです 幕間のインタビューで「いつMETから代役の依頼があったの?」と訊かれ、イーメルは「クリスマス・イブの日に電話をもらいました。クリスマスは取りやめで、すぐにMETに駈け付けてリハーサルをやって本番に漕ぎつけたのです」と答えていました。

以前にもこの役で歌ったことがあるそうですが、それにしてもほとんど練習時間が取れない悪条件の中で、立派に代役を務めただけでなく、他の歌手を圧倒するまでの見事な歌唱力を見せてくれました イーメルが歌うとなぜか説得力があるのです。彼の歌うアリアは人を感動させる力を持っています この公演がMETデビューということですが、何という度胸でしょうか 最後のカーテンコールでは一際大きな拍手とブラボーを一身に浴びていました 次のMETをしょって立つ一人になる可能性は極めて高いと言えるでしょう

いつも思うのは合唱の素晴らしさです。「トロイアの人々」は合唱がほとんど出ずっぱりと言えるほど出番が多いのですが、MET合唱指揮者のパランポがインタビューに答え「このオペラでは総勢110名の合唱陣が出演しています ある時はトロイア人として、ある時はカルタゴ人としてというように幕によって役割が違うのです。自分が今誰を演じているかを意識しながら歌うことが求められます また、歌っていない時には舞台裏で着替えをしたりしていて、休むヒマがありません」と言っていました。コーラス陣も大変ですが、それをまとめるパランボはもっと大変ですね

もう一人、指揮者のファビオ・ルイージを挙げないわけにはいきません インタビューで「マエストロはここ数週間、METだけで”仮面舞踏会”、”アイーダ”、そして”トロイアの人々”と、たった一人で指揮をしていらっしゃいますが、毎回どう切り替えて取り組んでいるのでしょうか?」と訊かれ「メトのオケは優秀なので、集中して取り組むことができます メトのオケを指揮できることは光栄です」と答えていました。

それと、スケールの大きな舞台作りと、途切れることなく続く音楽の中で、観客を飽きさせないようバレエを取り入れるなど工夫を凝らしたフランチェスカ・ザンベッロの演出の素晴らしさは特筆に値します

そういえば、第2幕の前のインタビュー映像が流れている時に、暗い会場の中を老夫婦がやってきて「ああ、ここだ、ここだ、すみません」と言って私の隣に座りました。すると「この映画変ねえ?」「ウーン、おかしいなあ」「会場間違えたんじゃないですか?」「でも、7階って言ってたよね?」「そうだけど、違う映画みたいですよ」「出ようか」「そうしましょう」という会話があって、すごすごと退場して行かれました その後、休憩時間に表に出て隣の会場(No2スクリーン)を確かめると山田洋次監督「東京家族」を上映していました お二人はトロイアではなく東京に行くべきだったのですね 長丁場のオペラを観ている中、一幅の清涼剤になりました。癒されますねえ、こういう人たちは お二人が無事に「東京家族」をご覧になったことを祈念しております

METライブビューイング「トロイアの人々」は休憩2回を含め上映時間5時間17分の超長編オペラです新宿ピカデリー、東銀座の東劇ほかで2月1日(金)まで上映されます。長時間拘束に対する覚悟を決めて出かけましょう

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新国立オペラ2013-2014年シリーズ会員継続へ

2013年01月26日 07時00分46秒 | 日記

26日(土)。昨夕、本当は来週月曜が誕生日のX部長のバースデー・パーティーを挙行しました 最初にIビル地下のベトナム料理店YBでBBBビールとココナッツ焼酎ネプモイを飲んで、べろんべろんになってタクシーで上野に向かいました。例によってカラオケ歌合戦 をやらかしましたが、3人とも93点が最高で伸び悩みました。お店が用意してくれたバースデーケーキ をいただき、X部長を中心にケータイで写真を撮りましたが、X部長にも家庭があるのでここに掲載することは控えます いわゆる一つの  ”自主規制”ですね。頑張れ南方週報 ・・・・・・・・という訳で、今日も朝から頭痛が・・・・・・・

 

  閑話休題  

 

ローレンス・ブロック著「償いの報酬」(二見文庫)を読み終わりました ローレンス・ブロックは1938年、ニューヨーク生まれ

許可証を持たない私立探偵マット・スカダーは、禁酒を始めてから3か月が過ぎようとしていました いつものようにAA(アルコール自主治療会)の集会に参加したスカダーは、幼なじみで犯罪常習者のジャック・エラリーに声を掛けられます。彼は禁酒プログラムの一環として、過去に犯した罪を償う”埋め合わせ”を続けていると言います そんな時、ジャックは何者かに頭部と口に銃弾を撃ち込まれて殺されてしまいます ”償いの報酬”は殺されることでした。スカダーはジャックの残した”埋め合わせ”リストに載っている5人に会って調査を始めますが、該当者がいません さて、いったい誰が彼を殺したのか・・・・・・

ローレンス・ブロックの著作は何冊か読みましたが、ある意味”乾いた感覚”というか、殺人が起こっているのに生々しさがないというのか、セリフ一つとっても魅力があります これは翻訳者である田口俊樹という人の力によるところも大きいと思うのですが、独特のテンポの良い言い回しが心地よく響きます

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

新国立劇場から2013-2014年会員継続の案内が届きました オペラ公演の日程は次の通りとなっています(日時はプレミエ公演のケース)。

1.ヴェルディ「リゴレット」(新制作) 10月3日(木)午後7時

2.モーツアルト「フィガロの結婚」 10月20日(日)午後2時

3.オッフェンバック「ホフマン物語」 11月28日(木)午後6時30分

4.ビゼー「カルメン」 2014年1月19日(日)午後2時

5.プッチーニ「蝶々夫人」 1月30日(木)午後7時

6.コルンゴルト「死の都」(新制作) 3月12日(水)午後7時

7.ベルク「ヴォツェック」 4月5日(土)午後2時

8.マスカ―二「カヴァレリア・ルスティカ―ナ」、レオンカヴァッロ「道化師」(各・新制作) 5月14日(水)午後7時

9.R.シュトラウス「アラべッラ」 5月22日(木)午後6時30分

10. 池辺晋一郎「鹿鳴館」 6月19日~22日までのうち1回を選択(中劇場)

このうち最も期待しているのはコルンゴルトの「死の都」です コルンゴルトはマーラーもその才能を高く評価していたオーストリア出身の作曲家です。30年以上前からコルンゴルトの音楽を好んで聴いてきた身としては、日本では上演の機会がなく、観ることができなかった彼のオペラを是非、生で観たいと思います 「カヴァレリア・ルスティカ―ナ」「道化師」もまだ生で観たことがないので楽しみです  また、新制作の「リゴレット」もどんな演出・舞台になるのか期待が膨らみます

1階中央ブロック左サイド通路側の現在のS席を継続するよう申込書を送付しました。あとは恐ろしい料金引き落とし日を待つのみです

 

          

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大谷康子、小菅優、宮田大でメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第1番」を聴く

2013年01月25日 07時00分23秒 | 日記

25日(金)。昨日の朝、7階のパントリーにコーヒーを注文しに行くと、なぜかテーブルに醤油さしがあったので、「弁当屋さんが忘れていったの?」と聞くと、Mさんが「ショウユ―こと」と明石屋さんま風に答えたので、「キッコーマン・ユー?(ショウユーお前は?)」と返すのを思い止めて「そう来たか」と並みの反応を示すと、そばにいたNさんが「そういう時は”ソースか”と返さなくっちゃ」と言うので、二の句が告げられませんでした 朝から何やってんだか、この人たちは・・・・・・あっ、俺もか

 

  閑話休題  

 

昨日昼休み、飯野ビルのエントランスロビーでランチタイムコンサートがありました 出演はピアノンの川脇かれんさんです。昨日はスケジュールが立て込んでいたので、ドビュッシーの”花火”を途中から聴いてすぐにPCビルに戻りました 川脇さんは東京音楽大学2年在学中だけあって、さすがに若いなあと感じましたが、紡ぎ出される音はしっかりしていました それにしても、このコンサートで演奏する出演者の多くはドビュッシーの”花火”を選びますが、聴衆受けする要素がたくさんあるのでしょうね

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨夕、東京文化会館小ホールで「ピアノ・トリオの夕べ」を聴きました これは2013都民芸術フェスティバル参加公演の一つとして開かれたものです。プログラムは①ハイドン「ピアノ三重奏曲第39番ト長調」、②ショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第2番変ホ短調」、③メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」の3曲 演奏はピアノ=小菅優、ヴァイオリン=大谷康子(東響コンマス)、チェロ=宮田大の3人です

自席は0列40番で、右側のやや後方席。会場は文字通り満席です 大谷は水色のドレス、小菅は黒の衣装の上に▽形のポンチョのような青のショールを付け、宮田はシルバーのシャツ姿で登場します

1曲目のハイドン「ピアノ三重奏曲第39番ト長調」は1795年出版の作品73(全3曲)に収められている曲ですが、古典的な様相を帯びた曲です モーツアルトは1791に死去しているので、それよりも後に作曲されたことになります。こう言っては何ですが、モーツアルトと比べてしまうと、ハイドンの曲から感動を得るのは相当困難です 3人の演奏は素晴らしいものの、曲自体の魅力の点でどうなのでしょうか

2曲目のショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第2番ホ短調」は、若い時から彼の理解者だったイヴァン・ソレルチンスキーの死去を悼んで1944年に作曲した曲です 第1楽章冒頭のチェロの弱音による高音の響きは独特の世界を描きます。悲痛な叫びのようです 第2楽章はスケルツォですが、遠心力で吹っ飛ばされそうです 第3楽章は悲劇の音楽、第4楽章は作曲者が怒っている楽章です ショスタコーヴィチは何に対して怒っているのでしょうか?社会主義レアリズムを強要したジダーノフでしょうか?最大の理解者を失った運命に対してでしょうか?いずれにしても、3人のアンサンブルは見事です

この日の目的はメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」を生で聴くことです 最近、CDを中心にメンデルスゾーンの音楽をよく聴いていますが、彼の音楽の魅力は前へ前へという”推進力”だと思います それでは、その音楽の特質は何かと言えば、プログラムに書かれているように「古典性とロマン性の融和」だと言えるでしょう

この曲は1839年、メンデルスゾーンが30歳の時に作曲されましたが、短調独特のロマン的な魅力に溢れています 第3楽章「スケルツォ」は、彼の弦楽八重奏曲などでも聴かれる軽快な”妖精風スケルツォ”です。これがまた大きな魅力です

大谷、宮田、小菅のコンビは、個々人の優れた表現力を背景に呼吸がピッタリと合っているので、聴いていて思わず身を乗り出してしまうような魅力に溢れています

終演後、4回舞台に呼び戻され、3人を代表して宮田が「今日は、ありがとうございました。素晴らしいお二人と共演できて光栄でした。アンコールにクライスラーの”ウィーン小行進曲”を演奏します」とアナウンスして、演奏に入りました

大谷のヴァイオリンを中心に、いかにもウィーン情緒たっぷりの演奏で、すっかり魅了されました メンデルスゾーンも聴けたし、アンコールでウィーン情緒も味わえたし、大満足のコンサートでした

 

          

 

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ツィトコーワ(Ms)のヴェーヌスが光る~新国立オペラ、ワーグナー「タンホイザー」を観る

2013年01月24日 06時58分19秒 | 日記

24日(木)。朝日の朝刊に「CM天気図」という連載コラムがあります これは雑誌「広告批評」の主宰者だった天野祐吉さん(現コラムニスト)が書いていて、毎回楽しみにしているのですが、昨日のテーマは「文化貧乏はヤだね」というものです 要約すると、

「若い友人から”パチンコって文化ですか?”と聞かれた。もちろん、パチンコだって文化だ 人間が作り出したものは、ピンからキリまで含めて、みんな文化だ。その文化は、ヒマから生まれる。ヒマのないところからは文化は生まれないし、育つこともない ついでに言えば、文化人というのはヒマ人のことだ。そのヒマを積極的につぶすことを遊びという。”遊びの文化を創造する”主体は企業じゃない、ぼくら一人ひとりなんじゃないだろうか。経済大国もいいけれど、遊びごころのない国は、おカネはあっても貧しいよね

そうだ、その通りだ 人間が作り出すものはみんな文化だ。中でも、音楽や美術といった芸術は文化の最たるものだろう それはヒマがなければ生まれないし、育つこともない。映画やコンサートばかり観たり聴いたりしている私などは”積極的にヒマをつぶして遊んでいる”文化人そのものかもしれません。”お前が文化人なら日本人は全員文化人だ”と言われたら、カルチャー・ショックで寝込みそうですが、さしあたってNHKの特別会員くらいにはなれるのでは もちろん、NHKって「日本ヒマ人協会」の略ですけど、それが何か?

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の新国立劇場でワーグナーの「タンホイザー」を観ました 2013年はワーグナー生誕200周年ですが、その幕開けの公演といってもよいものです。中世のタンホイザー伝説とヴァルトブルク伝説に題材を取り、官能的な愛と精神的な愛の間で葛藤する騎士タンホイザーが、乙女エリーザベトの自己犠牲によって救済される物語です

キャストは領主ヘルマンにクリスチャン・ジグムンドソン、タンホイザーにスティー・アナセン、ヴォルフラムにヨッヘン・クプファー、ヴァルターに望月哲也、エリーザベトにミーガン・ミラー、ヴェーヌスにエレナ・ツィトコーワほか。コンスタンティン・トリンクス指揮東京交響楽団、演出はハンス=ペーター・レーマンです

 

          

 

新国立劇場に着いてクロークにコートを預け、階段を上がって行く途中、工事中らしき壁に何やら張り紙がありました ちらっと見ると、エスカレーターを設置するため工事中で、完成は2月末とのことでした。オペラを観にくる人はお年寄りが多いので、そういう要望があったのかも知れません。とにかく良いことはどんどんエスカレートさせてやって欲しいと思います ただし、チケット代を値上げしないでね

自席に座ろうとすると、隣席の人と通路で立っている人とが話をしていたので、開演ぎりぎりまで待ってもいいか、と思って会場最後列通路で待っていると、何と東京シティフィルの元常任指揮者・飯守泰次郎さんがそこに加わって話し込んでしまいました まいったな、と思いましたが開演のアナウンスに救われ、無事に座ることができました

開演に際して、いつものように「この建物は震度7にも耐えられる構造になっています。地震の際はそのまま席にお着きのうえ係員の指示をお待ちください」というアナウンスがありました 3.11大震災以降、どこのコンサートホールでもお馴染みの風景になっています

指揮者トリンクスのタクトでタンホイザー序曲が始まります とうとうと流れるその音楽を背景に、舞台上にガラスの竹のような筒が何本もせり上がってきます。プログラムによるとハンス=ペーター・レーマンによるこの演出は2007年の再演とのこと。2007年にはすでに定期会員になっていたので、このオペラを同じ演出で観ているはずですが、まったく見覚えがありません 仕事の都合で行けなくなって誰かにチケットを譲ったのかも知れません

 

          

 

長い序曲の途中からバッカナールの音楽となり男女のバレエが踊られますが、新国立劇場バレエ団によるこのバレエが素晴らしいのです 第1幕で最初に登場するのはタンホイザー役のスティー・アナセンとヴェーヌス役のエレナ・ツィトコーワですが、この二人は対照的でした。アナセンは寝ているような態勢で歌っているせいか、やっと声を振り絞って出しているような苦しげな歌い方でした それに対してツィトコーワは愛の女神ヴェーヌスを魅力的に表情豊かに歌っていました アナセンについて言えば、本人のせいではないのですが、ダボダボのパジャマの上からガウンを着ているような衣装が何とも不似合いで違和感がありました もっとスマートな歌手だったら似合ったかもしれません 他の出演者の衣装が素晴らしかった中で主人公一人だけが浮いていました

第2幕は何と言ってもエリーザベト役のミーガン・ミラーの美声とヴォルフラム役のヨッヘン・クプファーの歌合戦での堂々たる歌声です それと忘れてはならないのが、新国立劇場合唱団の力強く頼もしい合唱です

第3幕は再びツィトコーワが出てきて主人公のタンホイザーを愛と歓楽の世界に誘惑する歌を魅力的に歌っていました 彼女はロシア生まれのメゾソプラノですが、新国立劇場では「フィガロの結婚」のケルビーノ、「バラの騎士」のオクタヴィアン、「ラインの黄金」のフリッカなどで出演しています。小柄ながら声量もあり美しい声で人気があります

そういえば大きなテレビ・カメラが2台、会場後方にスタンバイしていましたが、NHKかどこかで放送するのかもしれません

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永富彩ピアノ・リサイタル、芸劇パイプオルガンお披露目、KSTアンサンブルのチケットを入手

2013年01月23日 06時59分06秒 | 日記

23日(水)。昨夕、会社帰りに新宿ピカデリーに行って、METライブビューイング、ベルリオーズのオペラ「トロイアの人々」のチケットを買いました 今週土曜日はコンサートの予定がないので26日(土)の座席指定を取りました。いつものように会場後方左サイドの通路側席です 3枚連続券(9,000円)は使えないので現金で支払いました。通常は@3,500円ですが、「トロイアの人々」と「パルシファル」は@5,000円です。前回の半券を提示すると300円引きの4,700円になりました 休憩2回を含めて上映時間が5時間半と相当長いオペラです。ソプラノのデボラ・ボイトとメゾソプラノのスーザン・グラハムの歌の競演が楽しみです

 

          

 

  閑話休題  

 

チケットを3枚買いました。1枚は2月14日に東京文化会館小ホールで開かれる永富彩の「ピアノ・リサイタル」です 永富彩の名前はコンサートのチラシや音楽情報誌「ぶらあぼ」で時々見る程度であまり興味がありませんでした。しかし、「ぶらあぼ」2月号に彼女がホロヴィッツが弾いていたNYスタインウエイCD75で弾いたショパンなどを収録したCDを出すが、その記念に演奏会を開くことになった、というニュースが載っており、当日もそのスタインウエイで弾くらしいことが分かったので興味が出てきました彼女の意気込みを聴きたいと思います

プログラムは①ショパン「英雄ポロネーズ」、②ラフマニノフ「音の絵~ヴォカリース」、③リスト「コンソレーション第3番」、④スクリャービン「詩曲:焔に向かって」ほかです

 

          

 

2枚目は東京芸術劇場のパイプオルガンの復活お披露目記念コンサートです 芸劇の改装工事とともにオーバーホールのうえ音の調整をしてきたパイプオルガンが、いよいよ3月31日(日)に復活することになったのです プログラムは、ルネッサンスタイプオルガンでの演奏としてH.シャイデマン「ハレルヤ、われらの神を賛美せよ」、作者不詳「楽しみのために」、バロックタイプオルガンでの演奏としてクレープス「ファンタジー”大いに喜べ、おお、わが魂よ」、バッハ「幻想曲とフーガト短調BWV542」、モダンタイプオルガンでの演奏としてダンドリュー「復活祭のための奉献唱”おお子らよ”」、ヴィドール「オルガン交響曲第5番」より第1、2、5楽章が演奏されます

演奏は東京芸術劇場のオルガ二スト、小林英之、新山惠理、平井靖子の3人です。S席=2,000円、A席=1,500円ですが、A席は極めて少ないです オーケストラの音楽と違って、パイプオルガンの音楽は会場のどこで聴いてもさほど違いはないのではないかと思うのでA席(3階)を買いました

 

          

 

3枚目は4月12日(金)に紀尾井ホールで開かれる「KSTアンサンブル2013 meets 吉野直子」コンサートです プログラムは①モーツアルト「弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515」、②同「アダージョとロンド ハ短調K.617」、③ドビュッシー「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」、④ラヴェル「序奏とアレグロ」です 出演はキオイ・シンフォニエッタ(KST)のメンバーとハープの吉野直子です。これは、何と言ってもモーツアルトの「弦楽五重奏曲K.515」を生で聴きたいからチケットを買ったようなものです

 

          

 

かくして1月は12回、2月は10回、3月は16回、4月は10回、クラシック・コンサートでスケジュールが埋まることにあいなりました

 

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モナスティルスカ(Sp)鮮烈なデビュー~METライブビューイング、ヴェルディ「アイ―ダ」を観る

2013年01月22日 06時59分00秒 | 日記

22日(火)。明後日24日(木)12:05から内幸町の飯野ビル1階エントランスロビーで「ランチタイムコンサート」があります 今回の出演は12歳でドイツ・スタインウェイピアノコンサートで第3位入賞、東京音楽大学2年在学中の川脇かれんさんです

プログラムは①ショパン「エチュード作品25-1」「幻想即興曲」「ソナタ第3番より第1楽章」、②ドビュッシー「前奏曲集Ⅱ巻」より「第7番 月の光の降り注ぐテラス」、「第12番 花火」、③ショパン「エチュード作品10-1」「ワルツ第6番 子犬のワルツ」、④リスト「BACHの名による幻想曲とフーガ」です

このコンサートの出演者は、今はほとんど無名に近い人たちですが、将来性を感じさせる若手の俊英が選ばれています お近くにお出かけの際には、ベーゼンドルファ―の美しい音色に耳を傾けていかがでしょうか

 

          

 

  閑話休題   

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ヴェルディ「アイ―ダ」を観ました これは昨年12月15日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上映された公演のライブ映像です キャストは、アイ―ダにリュドミラ・モナスティルスカ(ソプラノ)、ラダメスにロベルト・アラーニャ(テノール)、アムネリスにオルガ・ボロディナ(メゾソプラノ)、アモナズロにジョージ・ギャグ二ッザ(バリトン)、ラムフィスにステファン・コツァン(バス)、エジプト王にミクローシュ・シェべスチエン(バス)ほか、ファビオ・ルイジ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はソ二ヤ・フリゼルです

1869年、スエズ運河が開通し、記念としてエジプトのカイロに歌劇場が建設されました。そのこけら落としのためにヴェルディが58歳の時に作曲したのがオペラ「アイーダ」です 結局、こけら落としには間に合わなかったものの、1871年12月24日に大成功のもとに初演が挙行されました

物語は、一言でいえば、エジプト護衛隊長ラダメスと、敵方のエチオピアの王女アイーダとの相思相愛の仲に、ラダメスを愛するエジプト王女アムネリスが絡んだ悲恋物語です

幕間のインタビューで、この日がMETの「アイーダ」1129回目の公演だと言っていました アイーダだけで1129回ですよ METの歴史の重みを感じさせます。

また、このオペラの第2幕では”アイーダ・トランペット”によって勇壮な「凱旋行進曲」が奏でられ、エジプト軍の兵士が次々と行進してきますが、行進する兵士だけで約100人が登場し、そのうち半数が舞台裏にもどって着替えをして戦利品を運ぶ民になって再び登場するのだそうです オーケストラ、合唱、歌手、エキストラ、衣裳、大道具、小道具などすべて合わせると1,000人規模の人たちが関わっているとのこと。METの「アイーダ」に賭ける意気込みを感じます

METの舞台には本物の馬3頭とポニー2頭が登場します インタビューでルネ・フレミングが馬とポニーにニンジンをあげながら、「多くの馬の中からどういう馬を選ぶの?本番で馬が急に騒いたらどうするの?」と質問すると、飼育係は「多くの馬の中から落ち着いた馬を選びます。そのうえで、馬の近くで大きな音を出したり、オペラを大音響で聴かせたりして、大音響やオペラ音楽に耳を慣れさせます 途中で落ち着かなくなった場合は、控えの馬を登場させます」と答えていました。その昔はゾウを舞台に乗せたそうですから、ソーゾウを絶します オペラは表に出る出演者でけでなく、裏方も大変なことがよく分かります

アイーダ役のモナスティルスカはウクライナ出身のドラマティック・ソプラノです。この公演がMET初デビューとのことですが、実に堂々たる歌唱力で、弱音からフォルテまで美しい声で周りの空気を自分の世界に引き込みます これまで何度か「アイーダ」を観てきましたが、これほど”強い”アイーダを観たことはありません 敵陣の奴隷になりながらも、最後まで愛するラダメスを慕って意志を貫き通す強いアイーダです

ラダメス役のアラーニャは、METの看板テノール的な存在です。何を歌っても張りのあるしっかりした歌声を聴かせてくれます 今回のライブビューイングで気になったのは、彼の歌う時だけ高音部が音割れしているような金属的な音が聴こえました。これはどうしたことでしょうか。アラリャ と思いますが、アラーニャには全く責任はありません

そしてアムネリス役のボロディナの迫力は凄いものがあります 低いメゾの特性を生かした”ドス”の効いた迫力ある歌声でアリアを歌います また、彼女は歌だけでなく”目”でアムネリスの心象を現していました あの目に睨まれたら誰もが身がすくんでしまうでしょう 数年前、オペラ好きの小泉首相がNHKホールにMETの来日公演を観に来た時、ボロディナがサン=サーンスの「サムソンとデリラ」のデリラを見事に歌いきったのを思い出します。その時のサムソンはプラシド・ドミンゴでした

第2幕の「凱旋の場」ではバレエが踊られますが、これがまた楽しいのです ヴェルディは勇壮なアリアや心を打つアリアだけでなく、こうした楽しいバレエ音楽も書いているのです 

古代エジプトを意識した大がかりな舞台装置、多くの登場人物、勇壮な音楽、そして華麗で楽しいバレエ、「アイーダ」こぞ”グランド・オペラの中のグランド・オペラ”だといっても過言ではないでしょう

第4幕が終わり幕が下りると、会場のあちこちから拍手が聴こえました 映画館で拍手は珍しい、と思って入場の際に配られた「アイーダ」のタイムスケジュールの欄外を見ると、目立たない字で次のように書かれていました

「生の舞台さながらに、拍手や”ブラボー”の歓声を歓迎いたします」

METライブビューイング「アイーダ」はインタビュー、休憩を含めて合計3時間44分の上映です。新宿ピカデリー、東銀座の東劇ほかで25日(金)まで上映されます。入場料は3,500円(事前に座席指定を)。本物のオペラを観ると思えば安いものです

 

          

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