人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

映画「怒り」を観る~誰に対する 何に対する怒りか?

2016年09月30日 11時53分43秒 | 日記

30日(金).今日で9月も終わりですね.月日の流れは何と速いのでしょうか!・・・・と 毎月末に書いているような気がします 

昨日午後4時から,元の職場(社団法人)のOB会が内幸町のNPCビル内であり,幹事の一人として出席しました 今回から総会をやらず,懇親会からスタートという形に変えました.時間が早かったこともあり,最初のうちはアルコールばかりがはけて料理に手を付ける人がいませんでしたが,1時間も経つとさすがにお腹が空いて来たようで徐々にお皿が空になっていきました 26人が参加し,お互いに旧交を温めていました 最後に集合写真を撮って2時間弱で解散しましたが,私は先輩のM山さん,Mりさん,S藤さんと4人で同ビル地下の焼き鳥Oに行って2次会をやりました 話の中味は しょーもない内容なので割愛します ということで,わが家に来てから今日で732日目を迎え,2020年東京オリンピックのあまりの多額の費用にビックリするモコタロです

 

          

          「ひっくり返すのは困難」と言っている人がいるね いつもの 

 

   も一度,閑話休題   

 

昨日,TOHOシネマズ錦糸町で「怒り」を観ました 巣鴨から地下鉄都営三田線で神保町まで行き,乗り換えて錦糸町まで行くつもりでいたのを,何をとち狂ったか都営新宿線に乗ってしまい,途中で「西大島」という駅名を見て間違いに気付き,ヤフーの「乗換案内」で検索して半蔵門線に乗り換えました 幸い開演時間には十分間に合いましたが,背中は汗びっしょりでした 最近この種の失態が目立つようになりました.「最近」じゃないだろう,という声は無視します

 

          

 

さて,この映画は吉田修一の小説「怒り」を映画化した作品です

2011年の夏,八王子の郊外で,ある夫婦が惨殺死体で発見される 現場には,犯人と目される山神一也が血で書いた「怒」の文字が残されていた.それから1年後,千葉,東京,沖縄の3つの地点で物語が始まる

千葉では,房総に暮らす槙親子の所で,娘・愛子(宮崎あおい)が前歴不詳の田代哲也(松山ケンイチ)と名乗る男と付き合うようになり,父・洋平(渡辺謙)は田代にどんな過去があったのかと苦悩する

東京では,大手広告代理店に勤めるゲイの藤田優馬(妻夫木聡)と同居を始めた大西直人(綾野剛)が突然失踪する.素性が知れない彼はなぜ失踪したのか

沖縄では,離島に母と引っ越してきた泉(広瀬すず)はサバイバル生活を送る田中信吾(森山未来)と出会うが,泉の同級生・辰哉(佐久本宝)とからみながら物語が展開する

真犯人は田代哲也,大西直人,田中信吾とそれぞれ名乗る男の中に居るわけですが,山神一也は顔を整形手術して逃走しているという設定になっているのがミソです 警察は山神の整形前の写真と整形後のモンタージュ写真を作って公開しますが,上記の一人が整形前の顔,一人が整形後の顔,一人が顔に3つのほくろがある点で山神の特徴と一致しているという設定です

ネタばれになるので,誰が真犯人かは伏せますが,この映画のタイトル「怒り」は,いったい誰の 何に対する怒りなのか?という疑問が起こります 私はまず第一に,真犯人が発作的に何の罪もない夫婦を殺すキッカケを作った「仕事上の嘘の指示」を自分に与えた会社関係者への怒りがあったと思います 千葉では,田代を最後まで信じることが出来ず,警察に通報した愛子の自分自身に対する怒りがあったと思います 東京では,大西を心の底から信じることが出来ず死なせてしまった藤田の自分自身への怒りがあったと思います 沖縄では,レイプした米兵と,それを止められなかった辰哉に対する泉の怒り,信じていたのに裏切った田中への辰哉の怒りがあったと思います

ところで,この映画は出演者の豪華さに驚きます 私が一番驚いたのは,妻夫木聡です.ついこの前の山田洋二監督「家族はつらいよ」では親思いの優しい青年を演じていたと思ったら,今回はゲイをそれらしく演じていました 次に驚いたのは宮崎あおいです.太った身体つきなので最初は彼女だと思いませんでした.この映画のために体重を増やしたそうです そして,役者として面白いと思ったのは森山未来です.最初は人の良さそうな善人を演じていますが,怒りを感じると途端に態度が狂暴になる男を見事に演じています 最後に,やはり渡辺謙でしょう.娘のために苦悩する父親の姿が顔の表情からひしひしと伝わってきます 広瀬すずの成長も見ものです 実に見ごたえのある映画でした 

招待券をくださった ゆえさん にあらためてお礼を申し上げます.ありがとうございました

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西本智美+イルミナートフィルでベートーヴェン「第九」,モーツアルト「戴冠式ミサK.317」を聴く

2016年09月29日 08時08分27秒 | 日記

29日(木).パソコン・プリンターのインク・カートリッジが無くなったので,ブラックと3色カラーの両方を買いました.家電量販店で2つで5千円近くしました プリンターの価格は安くして,インク・カートリッジで稼ぐという経営戦略があからさまです 一度,リサイクルのカートリッジを買ったことがあるのですが,とんでもない粗悪品で,二度と買うまいと思いました ということで,わが家に来てから今日で731日目を迎え(3年目に突入),インク・カートリッジの匂いを嗅いで食欲を感じているモコタロです

 

          

            ブラックより3色カラーの方が美味しそうな匂いがするな

 

  閑話休題  

 

昨夜,上野の東京文化会館大ホールで「西本智美の第九」演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「戴冠式ミサ ハ長調K317」,②ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です ソリストは,ソプラノ=熊本佳永,アルト=野上貴子,テノール=二塚直紀,バリトン=田中勉,管弦楽=イルミナートフィルハーモニーオーケストラ,指揮=西本智美です

 

          

 

このコンサートは,西本智美とイルミナートフィルが,11月にヴァチカンで開かれる「ヴァチカン国際音楽祭2016」で「第九」と「戴冠式ミサ曲」を演奏するのに先立って,同じプログラムによるコンサートを兵庫と東京で演奏する「壮行演奏会」です ヴァチカンに招かれて演奏するのは今年で4年連続だそうです.すごい快挙ですね

自席は2階R4列4番,右サイドの2階席です.会場は文字通り満席で,1階の踊り場の通路には補助席まで出ています S席が4,000円,A席が3,000円で「第九」が聴けるという割安感からか,あるいは人気の女性指揮者・西本智美の人気からか,会場全体に熱気を感じます

男女混声合唱団が入場します.男声を真ん中にして左右に女声がスタンバイします.総勢150人弱といったところでしょうか 次いで,オケの面々が登場し配置に着きます.1曲目はモーツアルトなので小編成です.左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという態勢です 男性のコンマスは どこかで見たことのある人ですが,分かりません

「イルミナートフィルハーモニーオーケストラ」は,プログラムの解説によると「芸術監督 西本智美のもと,受賞歴を多く持つ国内外のオーケストラ首席経験者などの奏者で結成され・・・」となっています が,実態がよくわかりません.全体を見渡すと,第1ヴァイオリンに東京藝大の藝大フィルハーモニアの第2ヴァイオリン奏者の女性(名前は不明)がスタンバイしています 彼女は他の奏者より頭一つ抜きん出た背の高い美人なので目立ちます もう一人,チェロの首席にN響と新日本フィルで首席を務めた木越洋の姿があります

オケに次いでソリストの4人が登場しオケの後方にスタンバイ,合わせて西本智美が指揮台に向かいます ロビーの掲示に,西本智美は腰と背中の痛みのため 座って指揮することをご容赦願いたい,旨のお知らせが貼り出されていたので,大丈夫かな?と思っていたら,椅子なしで立って指揮をすることになったようです 彼女の手にタクトはありません.手で指揮をするようです

モーツアルトの「戴冠式ミサ曲K.317」は,1779年3月にザルツブルクで書かれ,その年の4月4日の復活祭にザルツブルク大聖堂で初演されました この曲は第1曲「キリエ」,第2曲「グローリア」,第3曲「クレド」,第4曲「サンクトゥス」,第5曲「アニュス・デイ」から成っています

西本智美は両手を使ってしなやかに指揮をします 各曲の間は極力空けず,サクサクと音楽を進めます この曲を聴くと「これはミサ曲ではなく,オペラではないか」,「こんなに美しいオペラのアリアのようなミサ曲は他の誰にも書けない」と思います

私が西本智美の指揮を初めて見たのは かれこれ15年以上前,90年代最後あたりのことだったと思います 2000年4月に彼女が日本フィルを振ってチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」のCDを録音していますが,私はその前から彼女のコンサートを聴いています

 

          

 

手元に残っているコンサート・プログラムを見ると,2002年9月にロシア・ボリショイ交響楽団”ミレニウム”を率いて凱旋公演を行った時に聴いています

 

          

          

 

その後だと思いますが,ロシア・シンフォニー・オーケストラを率いてコンサートを行っています(プログラムに日時の表記がない)

 

          

 

彼女の指揮を一番最初に見たとき,「まるで宝塚のスターが指揮をしているみたいだ」と驚きました.まだ一度も彼女の指揮を見たことのない人のために分かり易く書くと,「『ベルサイユの薔薇』のオスカルがタクトを振ってオーケストラを指揮しているような感じ」つまり「超カッコいい!」のです 彼女は 男性はもちろんのこと,女性のファンが少なくありません と言うか,女性のファンの方が多いかも知れません.それは「宝塚」がキーワードです

その西本智美は1994年 大阪音楽大学を卒業,1996年 ロシア国立サンクト・ぺテルベルク音楽院オペラ・シンフォニー指揮科研究課程へ奨学金給付生として留学,イリヤ・ムーシン,ビクトール・フェドートフに師事し,同時にロシア国立キーロフ・マリインスキー劇場に籍を置き,指揮研究員として約90公演の副指揮者を務めました そして1998年 京都市交響楽団でチャイコフスキーの「悲愴交響曲」を指揮して日本デビューを飾っています

この経歴からも分かるように,彼女は他の多くの日本人指揮者が国際的な指揮者コンクール(ブザンソン,トスカニーニなど)に入賞してからデビューし 活躍しているのに対し,コンクール経験なしに,言わば「ロシアの現場のたたき上げ」でデビューを飾っているのが大きく違うところです これが,「西本智美は他の指揮者とはちょっと違うな」と思わせるアイデンティティーになっています

 

          

 

さて,休憩後はオケの編成が拡大します.コンマスは女性に変わり,良く見るとチェロとヴィオラの位置が入れ替わっています 西本智美は,今度はタクトを持って登場します.オケの編成といい,タクトの扱いといい,モーツアルトとベートーヴェンに対するアプローチは異なるようです.彼女なりのこだわりがあるのでしょう

西本のタクトで第1楽章が始まります.モーツアルトでもベートーヴェンでも彼女の指揮は華麗です この曲でもテンポ感よくサクサクと進めますが,彼女の指揮はどこで切り取っても”絵”になります 第1楽章が終わると,彼女は後ろの柵に寄りかかります.やはり腰がきついのでしょう 第2楽章が終わると合唱団とソリストが登場します.その間,西本は身体を捻って軽いストレッチをやっていました

私が大好きな第3楽章「アダージョ」を経て,いよいよ第4楽章が間断なく始まります さて,個人的に気になるのは,歓喜のテーマが様々に変奏され,トルコ行進曲風の音楽になった時に打たれるトライアングルの音が聴こえるかどうかです いよいよ,その時がやってきました.聴こえました やったー,4000ヘルツをゲット トライアングルはステージの左サイドなのに対し,私の席は2階の右サイドなので遠く離れています.それでも聴こえたので良かったと思います それとも今回は強く叩いたのか?まあいいや.聴こえたんだから

ということで,いつの間にかフィナーレを迎えて熱狂的に曲が閉じられました.言うまでもなく拍手とブラボーの嵐です 何度かカーテンコールがありましたが,西本智美のゆっくりした足取りが気になります 指揮台を降りる時もゆっくり慎重に降りていました.相当つらいのでしょう

 

          

 

この日演奏した西本智美+イルミナートフィル+合唱団は,11月16日にサン ピエトロ大聖堂で開かれる「ローマ教皇代理ミサ」でモーツアルト『戴冠式ミサ』,オラショ『グレゴリオ聖歌』を,翌17日にサン パオロ大聖堂で開かれる「ヴァチカン国際音楽祭2016」でベートーヴェン『第9交響曲』を演奏します

プログラムに挟まれたチラシの中に「ヴァチカン国際音楽祭2016 合唱団員・ツアー(一般参加者)募集」のチラシが入っていました しっかりしてますね  今回の「壮行演奏会」は,募集に応募した人たちの練習の成果が披露されたのでしょうか

 

          

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「クァルテット・エクセルシオ~アラウンド・モーツアルトVol.2」他のチケットを買う/「ハドソン川の奇跡」を観る

2016年09月28日 07時53分20秒 | 日記

28日(水).ちょうど2年前の9月28日,モコタロがわが家の一員に加わりました 月日の流れは速いものでもう2年経ったのかと感慨深いものがあります その当時の写真は当ブログのプロフィール欄に掲げた赤ちゃんモコタロです 最近では私が近づいても無下に逃げるようなことが少なくなりました.tora家で生きるための生活の知恵を蓄積してきた結果でしょう 

ということで,わが家に来てから今日で730日目を迎え,初めてテレビ討論会に臨んだ米大統領候補のクリントン氏とトランプ氏の発言に注目するモコタロです

 

          

             クリントン:私はクリキントンよりマロンやかな政策を持っています!

             トランプ :エースもあるし,ジョーカーという切り札も持っているぜ!

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「ビーフシチュー」と「生野菜&ツナ&まぐろの生ハムのサラダ」を作りました 本当はカレーライスを作ろうと思っていたのですが,ネパールで10日間過ごした息子が,「カレーのような辛いものばかり食べていたので しばらくカレーは食べたくない」というので,方針転換したのです どうせ材料は同じですから問題ありません

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日チケットを2枚購入しました 1枚目は来年2月19日(日)午後2時から晴海の第一生命ホールで開かれる「エルディーティ弦楽四重奏団~ベートーヴェン最晩年の高貴なるメッセージⅢ」公演です.プログラムは①ブラームス「弦楽四重奏曲第2番イ短調」,②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調”大フーガ付き”」です

 

          

          

 

2枚目は3月12日(日)午後2時から第一生命ホールで開かれる「クァルテット・エクセルシオ~アラウンド・モーツアルト vol2」です プログラムは①モーツアルト「歌劇”フィガロの結婚”序曲」(弦楽四重奏版),②シューベルト「弦楽四重奏曲第6番ニ長調」,③モーツアルト「弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.458”狩”」,④シュタードラー「二重奏曲第1番」(クラリネットとヴィオラ版),⑤モーツアルト「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」です.クラリネットは今年春まで新日本フィルの副首席奏者を務めていた澤村康恵です

 

          

          

 

以上の2枚はWEBのトリトン・アーツ・チケットデスクを通じて座席指定のうえ予約し,コンビニで支払いました

 

  最後の,閑話休題  

 

今月29日からロードショー公開された,クリント・イーストウッド監督の最新作「ハドソン川の奇跡」を観てきました ゆえさんからいただいた招待券を利用して,昨日 楽天地シネマズ錦糸町で観ました

 

          

 

2009年1月15日,厳冬のニューヨーク上空850メートルで155名の乗客・乗務員を乗せたジェット旅客機のエンジンに鳥が飛び込み,両翼のエンジンが停止してしまう 160万人が住む大都市の上空で,管制室から 近くの空港に着陸するよう指示が出るが,高度が低すぎて空港に引き返せないととっさに判断した機長サリー(トム・ハンクス)は,ハドソン川に不時着することを決断する 事故発生から208秒のことだった.サリーは航空史上前例のない困難な状況の中,水面への不時着を見事に成功させ,155名全員生存の偉業を成し遂げた それは「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ,サリーは一躍ヒーローとなった はずだった.ところが,事故調査委員会は,事故当時 片方のエンジンは微かだが動いていたとして,近くの空港に着陸するという選択肢はなかったのか?という疑いをかけ,緊密なデータに基づいて事故再現シミュレーションを行い,サリーを追い詰める つまり,近くに空港に着陸すれば1000人以上の警察官や消防士を動員する必要がなかったのではないか,という主張です.サリーは本当のヒーローになれたのか

 

          

 

これは事実の基づく映画です 当時その事実を新聞報道で知って感動を覚えたものです サリーは事故調査委員会による事故再現シミュレーションの結果に対し,「予測不能の事故に遭った時,次に為すべき行動を決断するまでの時間がまったく考慮されていない」と反論し,シミュレーションのやり直しを求め それが認められて35秒が追加されます その結果を見て,最終的に危機回避の正しい判断を行うのは人間である,というサリーの信念が正しかったことが分かります 最後に本物のサリーと奧様が,助かった乗客たちとともに登場し,当時を振り返りますが,サリー機長の的確な判断と敏速な行動が無ければ彼らはそこに居なかったのだと思うと,彼こそ本当のアメリカのヒーローだと思います 

なお,原題は「サリー」ですが,日本でそのままのタイトルにすると「魔法使いサリー」を思い起こす世代があるので,「ハドソン川の奇跡」が適訳だと思います

久しぶりに良い映画を観ました イーストウッドの作品では前回の「アメリカン・スナイパー」も良かったですが,これはそれを上回る感動作だと思います

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ロジェストヴェンスキー+読響でショスタコーヴィチ「交響曲第10番」他を聴く

2016年09月27日 08時01分46秒 | 日記

27日(火).昨日午前,大学院関係の学会に出席するため16日からネパールのカトマンズに行っていた息子が,多種類のお土産と大量の洗濯物と共に帰ってきました 「先週,日本は雨模様で寒い日が続いていたんだよ」と話すと,「へえ~」と驚いていました.現地の方が比較的天気が良かったようです 何より本人が無事に帰ってきて一安心しました 

ということで,わが家に来てから今日で729日目を迎え,お兄ちゃんがカトマンズのお土産に買ってきたネパール産のオーガニック・コーヒーの匂いを嗅いでいるモコタロです

 

          

                     この匂いは きっとうまいべ カト  マンズ思うだよ おら 

 

  閑話休題  

 

11月27日(日)の新国立オペラ「ロッシーニ『セヴィリアの理髪師』」と「クァルテット・エクセルシオ」のコンサートが共に午後2時開演とダブっているので,昨日,新国立劇場ボックス・オフィスに電話して,12月4日(日)午後2時からの部に振り替えてもらいました 新国立オペラのプルミエ(初日公演)会員の振替制度は1年に3回まで利用できるので,あと2回の枠がありますが,毎年のように3回の枠を使い切っています.実に有難い制度です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響の第562回定期演奏会を聴きました オール・ショスタコーヴィチ・プログラムで,①バレエ組曲「黄金時代」,②ピアノ協奏曲第1番ハ短調,③交響曲第10番ホ短調です ②のピアノ独奏はヴィクトリア・ポスト二コワ,指揮は読響名誉指揮者ゲンナジ―・ロジェストヴェンスキーです

 

          

 

コンマス・小森谷巧以下オケの面々がステージに登場し,配置に着きます.いつもの読響と違ってヴィオラとチェロの位置が入れ替わっています 左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという並びは,24日の東響定期公演でユベール・スダーンが採用したのと同じ編成です

もともとこの編成は,ディズニー映画「ファンタジア」や,ディアナ・ダービン主演の映画「オーケストラの少女」でお馴染みのアメリカの巨匠レオポルド・ストコフスキーが,主にステレオ・レコード録音の技術的な理由によって採用した編成です つまり,ヴァイオリン等の高音楽器は左スピーカーから,チェロやコントラバス等の低音楽器は右スピーカーから音が出てくるように,弦楽器の配置を決めたのです

この日の演奏曲目は,ロジェストヴェンスキーが生前に親交のあったショスタコーヴィチの曲ばかり3曲です

今年85歳のロジェストヴェンスキーが,ゆったりした足取りで,身体を後ろに反り返すようにして舞台中央に向かいます 指揮台がない代わりに柵が設置されています.指揮台を置かないのは上り下りが危険だからでしょう.気のせいか,白い指揮棒が異常に長く見えます

最初に演奏するのはバレエ組曲「黄金時代」です この曲はレニングラード国立劇場が,1929年にバレエ台本のコンクールを開いた時に,映画監督のイヴァノフスキの台本が入賞したのですが,その台本のためにショスタコーヴィチが作曲したのがこの作品だったのです 第1曲「序曲」,第2曲「アダージョ」,第3曲「ポルカ」,第4曲「舞踏」から成ります.聴きどころは,第2楽章のサクソフォンの静かなメロディーと小森谷コンマスのヴァイオリン独奏です ショスタコーヴィチの浪漫的な面がよく出ています また,もう一つの聴きどころは,第3楽章「ポルカ」でのシロフォンのとぼけた音楽です 「これぞショスタコーヴィチのアイロニー」と叫びたくなるような,人をおちょくったような音楽です

グランド・ピアノがセンターに運ばれ,ソリストを迎えます.ロジェストヴェンスキーの伴侶であるヴィクトリア・ポスト二コワが登場,ピアノに向かいます また,トランペットのソリストが指揮者の前にスタンバイします

2曲目の「ピアノ協奏曲第1番ハ短調」の正式な名称は「ピアノとトランペットと弦楽オーケストラのための協奏曲」です したがって,トランペット以外の管楽器は退場しています.ショスタコーヴィチは作曲家としてだけではなく,ピアニストとしても名を馳せていました 彼は,1927年に開かれた第1回ショパン国際コンクールに出場し入賞しています (なお,この時の優勝者は同じソ連のレフ・オボーリンです).

この曲はショスタコーヴィチ自身のピアノ独奏で初演されましたが,大成功を納めたと言われています 4つの楽章から成りますが,切れ目なく演奏されます.演奏を聴く前は,「読響は夫婦セットで出演するという条件で押し切られたな」と思っていましたが,実際に演奏を聴いてみると,それは誤解であることが分かりました ポスト二コワのピアノは,ショスタコーヴィチ特有のアイロニーが見事に演奏に反映されていました

なお,「黄金時代」と「ピアノ協奏曲第1番」の予習のために聴いたCDは下のNAXOS盤です

 

          

 

休憩時間に,ホワイエで当ブログの読者ゆえさんとコーヒーを飲みながら歓談しました 実は,同じく当ブログの読者Nさんがこの日の演奏会に来られなくなり,チケットをゆえさんに譲ったのでした ちょうど良い機会だったので,新日本フィルと読響の会員特典CDを何枚か引き取ってもらいました 今や新しいCDは枕元に積み上げているほどCDの置き場所に困っているのです ゆえさんからは映画の招待券をいただきました.期限内に観に行こうと思います.ゆえさん,ありがとうございました 

ゆえさんは10月2日のサントリーホール30周年記念ガラ・コンサート(正装コンサート)に”参加する”ということで,迷いに迷って決めた当日の衣装姿をスマホ画面で見せてくれました.彼女の名前(本名)にピッタリの素敵な衣装でした ひと言で言うと「大胆素敵」です.女性にはおしゃれの楽しみがありますね その点,男は・・・・皆まで言うまい

 

          

 

休憩後は交響曲第10番ホ短調です この曲は1953年夏から秋にかけて,第9番(1945年作曲)以来8年ぶりに書かれた交響曲です ショスタコーヴィチは第1番(1924-25年),第2番(27年),第3番(29年)と2年に1作というペースで作曲,その後,力作オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(30-32年)を経て,第4番(35-36年),第5番(37年),第6番(39年),第7番(41年),第8番(43年),第9番(45年)と再び2年に1作のペースに戻っています このペースから見て,第9番から第10番までの8年間というブランクは異常な長さです これは,明らかに第9番が,第2次世界大戦後のソ連のイデオロギー統制を目的とした1948年の「ジダーノフ批判」の標的とされたことが大きな後遺症として残っていたことを意味しています

この曲は4つの楽章から成りますが,演奏時間にして約1時間を要する大曲です 1953年3月5日に「諸民族の偉大な統領」であるスターリンが死去しましたが,この曲はその年の夏から秋にかけて作曲されています その意味で,この曲はスターリンの死と,その後の「雪解け」ムードが直接的な契機になっているとみなす見方が有力です

第2楽章「アレグロ」はスケルツォですが,狂暴な嵐のような音楽は,ヴォルコフ編「ショスタコーヴィチの証言」によると,スターリンの肖像を表しているとしています

この楽章に限らず,ロジェストヴェンスキーは読響からとんでもないエネルギーを表出させ,会場を圧倒します この85歳の老人のどこにそんな力があるのか,と疑問に思うほどです 第4楽章のフィナーレは,スターリン亡き後の自由な芸術界の勝利を宣言しているかのようです

最後の音が鳴り終わると,しばしの しじまの後,会場割れんばかりの拍手とブラボーの嵐がステージを取り囲みました 拍手を受けたロジェストヴェンスキーは,しばらく楽員の方を向いたままの姿勢でいますが,急に後ろを振り返り,こちらに向き直ります 芝居気たっぷりの役者・ロジェヴェンに あらためて大きな拍手が送られます 演奏を終えたばかりの楽員たちも大きな拍手を送っています 笑顔で拍手を送る楽員たちを見ていると,彼らにとってロジェストヴィンスキーは「愛すべきおじいちゃん」的な指揮者なのでしょう

初めてロジェストヴェンスキーの指揮で聴きましたが,さすがはロシアの,というか,ソ連の大指揮者だと思いました ちまちましたところが微塵もなく,豪快に音楽を鳴らし切ります 素晴らしい演奏というのは,もう一度聴いてみたいと思わせる演奏を言いますが,その意味で,この日のコンサートはもう一度聴きたいと思った公演でした

 

          

 

なお,予習のために下のCDを何度か聞きました それでもこの曲は手ごわい相手でした

 

          

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小山実稚恵+アルティ弦楽四重奏団でドヴォルザーク&ブラームスの「ピアノ五重奏曲」を聴く

2016年09月26日 07時45分44秒 | 日記

26日(月).ここ1,2週間は曇り又は雨の肌寒い天気でしたが,昨日は久しぶりに暑い夏がぶり返した様相でした 衣替えしてしまったので長袖シャツの袖を折って半そでにしました ということで,わが家に来てから728日目を迎え,不審人物が倒れているので声をかけているモコタロです

 

          

          もしもし 聞こえますか? どうしましたか? 他人の家の中で・・・

 

          

             どうやら 人並みに呼吸はあるようだな どうでもいいけど3頭身だな

 

          

               どれどれ 心臓も動いているようだ 人形のくせに 生意気なヤツ

 

          

             人形相手にいつまでもバカやってらんないよ 撮影終了 撤収~!!

 

  閑話休題  

 

昨日,晴海の第一生命ホールで「室内楽の魅力  ブラームス第5回~音楽家たちとの友情Ⅱ」公演を聴きました プログラムは①ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲イ長調」,②ブラームス「ピアノ五重奏曲ヘ短調」です 出演は,ピアノ独奏=小山実稚恵,アルティ弦楽四重奏団=豊嶋泰嗣(Vn),矢部達哉(同),川本嘉子(Va),上村昇(Vc)です 

アルティ弦楽四重奏団は京都府民ホール”アルティ”の開館10周年を記念して上記のメンバーにより1998年に結成されました 豊嶋泰嗣は新日本フィルの,矢部達哉は東京都交響楽団の各ソロ・コンサートマスターです 川本嘉子は都響の元・首席ヴィオラ奏者,上村昇はソリストとして室内楽などで活躍しています   ピアニストの小山実稚恵はチャイコフスキー国際コンクールとショパン国際ピアノコンクールの両方に入賞した日本人唯一のピアニストです

 

          

 

1曲目のドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲イ長調」は,ピアノ=エディット・ファルナディ+バリリ四重奏団による1953年のモノラル録音CDで予習しておきました

 

          

 

自席は1階4列15番,センターブロック左から3つ入った席です.会場はかなり埋まっています 5人の奏者が登場し配置に着きます.1曲目のドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲イ長調」は,ピアノを奧に,矢部達哉が第1ヴァイオリンを担当し,豊嶋,上村,川本の順に並びます

この曲は1887年の夏の終わりに完成されました.作曲者が46歳の時の作品です 4つの楽章から成りますが,いずれもドヴォルザークらしい旋律に溢れています 例えば,第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」はピアノに導かれてチェロが美しいメロディーを奏でますが,メロディーメーカー,ドヴォルザークの面目躍如といったところです

私などは,ドヴォルザークと言うと,交響曲はともかく,室内楽では弦楽四重奏曲「アメリカ」くらいしか頭に浮かんできませんが,このピアノ五重奏曲はなかなかの傑作だと思いました それは,この日のような各自がソリストとしての実力を持つメンバーによって演奏されたからこそです 私にとってはドヴォルザーク再発見といったところです

 

          

 

2曲目のブラームス「ピアノ五重奏曲ヘ短調」は,ピアノ=ウェルナー・ハースとベルリン・フィル八重奏団によるCDで予習しておきました ヴィオラを弾いているのは当時ベルリン・フィル団員だった土屋邦雄氏です

 

          

 

今度は第1ヴァイオリンを豊嶋泰嗣が務めます.この曲は最初 弦楽五重奏曲として作曲され,次いで2台のためのピアノ・ソナタに編曲され,最後にピアノ五重奏曲として完成したという曰くつきの曲です ブラームスが迷いに迷って最終形として完成しただけのことはあり,彼の数ある室内楽の中でも最高レベルの傑作です この曲は4つの楽章から成りますが,第2楽章「アンダンテ」における豊嶋泰嗣の演奏は”渋さの極致”で「これぞブラームス」と絶賛したくなる入魂の演奏でした.そして第3楽章「スケルツォ」における5人の演奏は,ピアノと弦楽四重奏,あるいは弦楽器同士の疾走感溢れる丁々発止のやり取りが素晴らしく,やはり「これぞブラームス」と叫びたくなるような白熱の演奏でした 小山のピアノは主張すべきは主張しているのですが,決して弦楽四重奏の演奏を邪魔しない節度が保たれていて好感が持てました そして,第4楽章「フィナーレ」になだれ込み渾身の演奏で締めくくりました

会場割れんばかりの拍手とブラボーがソリストたちに押し寄せました 5回ほどカーテンコールがありましたが,これだけの熱演です.アンコールは望むべきもありません.5人とも もうクタクタでしょう

 

          

 

ところで,プログラム・ノートを昭和音楽大学の有田栄教授が書かれていますが,ブラームスとドヴォルザークの共通点として私の知らない事実が挙げられていました ブラームスはドヴォルザークを世に送り出すキッカケを作り,その後も積極的に応援していたことは良く知られています 1874年,当時33歳だったドヴォルザークが,若い芸術家の経済的支援を目的に新設されたオーストリア国家の奨学金に応募した際,審査員の一人だったブラームスは,提出された作品を見てドヴォルザークを強く推薦し,その後もドイツの大手出版社に働きかけてドヴォルザークと契約させたりしました そんな二人の共通点は言うまでもなく「民謡」でした 二人とも「民謡こそが自分の音楽の原点」と考えていたのです.ブラームスはハンガリー舞曲を,ドヴォルザークはスラブ舞曲を作曲したことからも分かります 私が驚いたのは,二人のもう一つの共通点が 何と「ワーグナー」だったということです

ブラームスは,ワーグナーに批判的な友人ハンスリックには内緒で,ワーグナーと手紙をやり取りし,どこから手に入れたのか「タンホイザー」のオリジナルスコアを手元に置いていたといいます 一方,ドヴォルザークは,若い時にプラハ劇場オーケストラでヴィオラ奏者を務めていたことがあり,ワーグナー自身の指揮で「タンホイザー」「ワルキューレ」「トリスタンとイゾルデ」を演奏した経験があるというのです.こんな話初めて聞き,いや,見ました プログラムノートはこういう知られざる(私にとって,ですが)真実を書いてこそ価値があると思います

ところで,入口で配布されたチラシの中に,去る6月30日の東京藝大モーニングコンサートでハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲を見事に弾いた岡本誠司のコンサートのチラシが入っていました 11月2日(水)午前11時から第一生命ホールで開かれる「雄大と行く 昼の音楽さんぽ~岡本誠司 ヴァイオリンが歌うロマンス」公演です.岡本誠司はJ.S.バッハ国際コンクールの優勝者です プログラムはクライスラー「愛の喜び」「愛の悲しみ」,エルガー「愛のあいさつ」他で,ピアノは上田晴子です 休憩時間にロビーのデスクで座席を指定して予約し,コンサート後にチケットを引き取ってきました 楽しみが一つ増えました

 

          

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ユベール・スダーン+東響でベルリオーズ「劇的物語『ファウストの劫罰』」を聴く

2016年09月25日 08時15分43秒 | 日記

25日(日).わが家に来てから今日で727日目を迎え,久しぶりに”わが家”に不法侵入した不審者を問い詰めるモコタロです

 

          

             この辺でレアなポケモンが出ると聞いたって? それは ぼく モコタロンだよ

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで東京交響楽団 第644回定期演奏会を聴きました プログラムはベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」です ソリストは,ファウストにマイケル・スパイアーズ(テノール),メフィストフェレスにミハイル・ぺトレンコ(バス),マルグリートにソフィー・コッシュ(メゾ・ソプラノ),ブランデルに北川辰彦(バス・バリトン),混声合唱は東響コーラス,児童合唱は東京少年少女合唱隊,指揮は東響桂冠指揮者ユベール・スダーンです

 

          

 

私が「ファウストの劫罰」を聴くのは,1999年9月3日(金)にサイトウ・キネン・フェスティバル松本の公演以来17年ぶりです 元の職場(社団法人)に小澤征爾フリークのA君がいて「一緒に行きませんか?」と誘われたのです.彼の車で東京から松本まで日帰りコンサート旅行を決行したのでした.往復を運転してオペラもしっかり観たA君は大変だったと思います

その時の公演は,ファウストにジョルダーノ・サバティー二,メフィストフェレスにジョセ・ヴァン・ダム,マルグリートにスーザン・グラハムといった当時 世界の第一線で活躍する歌手陣を配し,小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ,ロベール・ルパージュの演出によってオペラ形式で上演されました オーケストラ・ピットに入った精鋭による演奏もさることながら,特に印象に残っているのはロベール・ルパージュによる斬新な演出です 舞台上空から垂れ下がったロープに何人もの人がぶら下がり,まるでシルク・ドゥ・ソレイユのようなパフォーマンスを見せていました ルパージュは最近の米メトロポリタン歌劇場で上演されたワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」で,時代の最先端を行く斬新な演出を施し,世界中のオペラ界に話題を巻き起こしました

もう一つ印象に残っているのは,最後のマルグリ―トの昇天の場面で,マルグリートを演じるスーザン・グラハムが舞台中央に設置された上空に伸びる長いハシゴを登っていくシーンです 足を踏み外さないかと,ハラハラドキドキしながら見守っていたのを思い出します

今回の公演に先立って「事前に予習を!」と思い,まさか持っていないだろうとダメ元で探してみたら,ありました 「ファウストの劫罰」のCDです ファウストにニコライ・ゲッダ,マルグリートにリタ・ゴール,メフィストフェレスにジェラール・スゼーという歌手陣,アンドレ・クリュイタンス指揮パリ国立歌劇場管弦楽団&合唱団によるハイライト版です ハイライト版とは言え,これを少なくとも8回は聴いたので大体の物語と音楽の流れは頭に入りました

 

          

 

ゲーテの劇詩「ファウスト」に基づく劇的物語「ファウストの劫罰」は1846年に書き上げられました 彼の代表的な作品「幻想交響曲」,「イタリアのハロルド」「ロメオとジュリエット」などは国内よりも国外での評価が高かったため,ベルリオーズは自作を指揮しながらヨーロッパ中を放浪していましたが,その時期にこの曲が着手されたのでした.彼は「回想録」の中で次のように振り返っています

「私は他の自作品ではめったに経験したことのないような容易さでこの曲を作曲した 私はあらゆる時,あらゆる場所でそれを書いた.馬車の中で,汽車や汽船の中で,それから街の中でさえも

こうして夢中で作曲した作品は1846年12月6日,パリのオペラ・コミークで初演されましたが,上演は惨憺たる結果に終わり,結局1万フランの借金が残っただけでした この曲の真価が認められたのは彼の死後8年目の1877年2月に行われたコンサートでした

 

          

 

満席近い会場です.P席に東京コーラスの面々が配置に着きます.左サイドに女声陣が,右サイドに男声陣がスタンバイしますが,女声対男声の比率はほぼ3対2で,総勢約150人です 次いでオーケストラのメンバーが入場し配置に着きます.左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスというシフトを取ります 東響がこのシフトをとるのは珍しいことで,恐らくスダーンだけではないかと思います コンマスは水谷晃です.そして,メフィストフェレス役のぺトレンコ,ファウスト役のスパイアーズ,ブランデル役の北川が入場しオケの後方にスタンバイします 驚いたのは,スパイアーズだけが譜面台がありません あらためてプログラムに掲載されたプロフィールを見ると,ファウスト役はベルギー,ブラジル,フランス,ポーランド,アメリカ等で何度も歌っているとのことで,楽譜など見る必要がない”当たり役”ということでした

スダーンが指揮台に上がりますが,脚か腰が辛いのでしょう.椅子に座って指揮をとります 

「ファウストの劫罰」は4部構成ですが,第1部はゲーテの原作にはないハンガリーの平原が舞台になっています これは,フランス国内で認められなかったベルリオーズが国外に演奏旅行に出たときに,ハンガリーの国民歌「ラコッツィ行進曲」に出合い,これを管弦楽に編曲したものを,この劇的物語に無理やりはめ込んだのです

2階のパイプオルガンの左右の壁に日本語の字幕スーパーが映し出され,歌の理解を助けます

第1部では冒頭,ファウストのアリア「春になって」が歌われますが,アメリカ・ミズーリ州出身のテノール,マイケル・スパイアーズの伸びのある美しい歌を聴いた途端,この日の公演の成功を確信しました 第1部の終盤はラコッツィ行進曲です.17年前のサイトウ・キネンで聴いた時は,オケがオーケストラ・ピットに入っていたことから,イマイチ迫力がありませんでしたが,スダーンのメリハリのある指揮による大管弦楽で聴くそれは大迫力で迫ってきました

第2部では,メフィストフェレスによる「のみの歌」が歌われますが,世界的に活躍するぺトレンコは身振りを交えながらユーモアたっぷりに「身分の高い蚤」の歌を歌い上げました

第2部が終わったところで20分の休憩に入りました ここで東響のプログラム冊子について一言

東響のプログラムでは,その日の演奏曲目が順番に掲げられているだけで,どこで休憩が入るのかが明示されていません 特に今回のように1曲のみで2時間20分近くかかる曲の時は,途中で休憩が入るのか入らないのかでトイレ対策も違ってきます 私が定期会員になっている読売日響にしても,新日本フィルにしても休憩が入る場合はプログラムにその旨明示されています 東響事務当局に改善を要望します

 

          

 

ここで,ぺトレンコ,スパイアーズと共にマルグリートを歌うメゾ・ソプラノのソフィー・コッシュが登場し配置に着きます

第3部ではマルグリートがバラード「トゥーレの王様」を歌いますが,ヴィオラ首席の青木篤子が抒情的な演奏でマルグリートのアリアを導き入れます フランス出身で今年3月からオーストリア宮廷歌手の称号を得たソフィー・コッシュの歌うバラードはエキゾチックな世界を彷彿とさせます

第4部では冒頭,マルグリートが熱烈なロマンス「燃ゆる恋の想いに」を歌いますが,抒情的なイングリッシュホルンの調べに乗せて歌われるコッシュの歌うロマンスは,バラード「トゥーレの王様」よりも感情移入が激しく,マルグリートその人に成り切って歌い上げました

最後のエピローグ(地上にて,天国にて,マルグリートの神化)では,女声合唱に被せて児童合唱の無垢な歌声が会場に響き渡りました

スダーンがタクトを降ろすと,一瞬のしじまの後,大きな拍手とブラボーがステージに押し寄せました 何度もカーテンコールがありましたが,今回は,オペラのようにソリストが一人一人舞台中央に出てきて拍手を受けるスタイルが取られました 中でもファウストを歌ったスパイアーズには ひと際大きな拍手が寄せられました もちろん最後は全員でカーテンコールです

休憩時間を含めて2時間半を超えるロング・コンサートでしたが,個人的には かつて東響を13年間率いてきたスダーンの統率力はまったく衰えていないと感じたコンサートでした

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バッハ・コレギウム・ジャパンでJ.S.バッハの音楽劇「急げ,渦巻く風よ」BWV201を聴く~世俗カンタータの傑作!

2016年09月24日 08時43分15秒 | 日記

24日(土).わが家に来てから726日目を迎え,キューバ訪問中の安倍首相が経済援助を約束したというニュースを見て,今後の両国の関係を懸念するモコタロです

 

          

              北朝鮮対策の キューバしのぎの援助じゃないだろうね?

 

  閑話休題  

 

昨夕,東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)の第119回定期演奏会を聴きました プログラムは①J.S.バッハ:音楽劇「さあ,晴れやかなトランペットの高らかな音よ」BWV207a,②同・音楽劇「急げ,渦巻く風よ~フェーブスとパンの争い」BWV201です ソリストは,ソプラノ=ジョアン・ラン,アルト=ロビン・ブレイズ,テノール=ニコラス・パン,中嶋克彦,バス=ドミニク・ヴェルナー,クリスティアン・イムラー,指揮は鈴木雅明です

 

          

 

実は,私がバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏を初めて聴いて のめり込んだきっかけとなったのは2000年7月9日(日)に東京オペラシティコンサートホールで聴いた,今回のプログラムにあるBWV201の音楽劇「急げ,渦巻く風よ」でした この曲を初めて聴いた印象は「まるでオペラのようだ」というもので,聴いていて「しかめつらのバッハもこんなに楽しい曲を書いたのか」と新鮮な驚きを感じ,それから間もなくB.C.Jの定期会員になりました 月日の経つのは速いもので,あれから16年になります

 

          

 

開場時間の30分前に会場入口の片隅にあるプログラム売り場でプログラムを1,100円で買い求め,片っ端から読みました.プログラム冊子を買うのは久しぶりです 

客の入りは,会場の後方の席に空きが目立ち,ちょっと寂しい感じがします 「マタイ受難曲」のような大曲の時はビッシリ埋まるのですが,残念です

オケのメンバーが登場し,コンマス・寺神戸亮の音頭でチューニングを開始します 弦楽奏者は立ったままなので,おやっ?と思ったら,立ったまま行進曲風の音楽を始めました 後で分かったのですが,これは1曲目のバッハ「さあ,晴れやかなトランペットの高らかな音よ」の最後の合唱のメロディーを管弦楽で演奏したものでした コンサートのオープニングに相応しい明るく華やかな曲です このメロディーに乗ってコーラス陣が入場,次いで指揮者の鈴木雅明が登場します

1曲目の音楽劇「さあ,晴れやかなトランペットの高らかな音よ」BWV277aは,1726年に作曲したカンタータ「鳴りかわす弦の競いつつ相和する響きよ」BWV207のパロディーです ザクセン選帝侯兼ポーランド王アウグスト3世の1735年8月3日の聖名祝日用に作曲したものです.テノール,アルト,ソプラノ,バス,そして合唱によってアウグスト3世を讃える歌が,トランペットをはじめとする管弦楽の祝祭的な演奏に支えられながら歌われます

 

          

 

休憩時間にロビーに出ると,壁に据え付けられたモニター画面に,次に演奏する音楽劇「急げ,渦巻く風よ」の物語をアニメ風の紙芝居仕立てにした映像を映し出していました.これは物語を短時間で把握するのに最適なツールでした

休憩後は,待ちに待った音楽劇「急げ,渦巻く風よ」BWV201です ステージの左サイドにはヴァイオリン,ヴィオラ,トランペット,チェンバロ1,ティンパ二が,中央にはチェロ,ファゴットが,右サイドにはオーボエ,フラウト・トラヴェルソ,チェンバロ2がスタンバイします

この音楽劇はギリシャ神話を基にしたもので,次のようなストーリーになっています

「牧神のパン(ドミニク・ヴェルナー)と太陽神アポロのフェーブス(クリスティアン・イムラー)は,どちらも自分の歌が一番美しい,と譲らない そこで,疑心暗鬼の神モムス(ジョアン・ラン)は,彼らをけしかけて歌合戦をすることにした 山の神トゥモルス(中嶋克彦)はフェーブスのサポーターに,フリギヤ王ミダス王(ニック・パン)はパンのサポーターになってそれぞれの歌を誉めちぎる フェーブスは高貴な賛歌を歌い,一方のパンは陽気な歌を歌う.ライプツィヒの守護神でもあるメルクリウス(ロビン・ブレイズ)が現れて,フェーブスの高貴な歌に軍配を挙げると,フェーブスは,通俗的なパンの歌を擁護したミダス王に「おまえの耳は,ロバになれ!」と叫び,王様の耳をロバの耳に変えてしまった

とにかく楽しい音楽です 最初に感じた「この曲はまるでオペラのよう」という印象はまったく変わりません 歌手陣は全員が絶好調でした B.C.J常連のジョアン・ラン,ロビン・ブレイズ,ドミニク・ヴェルナーは言うまでもなく完璧でしたが,ミダス王を歌ったテノールのニック・パンとフェーブスを歌ったバスのイムラーは今回初めて聴きましたが,声も良く通り,歌唱力も抜群でした

オーケストラで忘れられないのは,フェ―ブスが歌合戦で歌うバスのアリアのバックを務めたオーボエ・ダモーレの三宮正満とフラウト・トラヴェルソの菅きよみの素晴らしい演奏です これぞ芸術です また,三宮正満はトゥモロスがフェーブスを讃えて歌うアリアのバックの演奏でも抜群の冴えを見せていました

また,ロビン・ブレイズが歌うメリクリウスのアリアを支えたフラウト・トラヴェルソの菅きよみと前田りり子の演奏は,スピード感溢れる中に抒情を讃えた素晴らしい演奏でした

歌合戦が展開している間,オケも合唱も右半分のフェーブス派と左半分のパン派に分かれて応援する形を取るのですが,右のフェーブス派にいた前田りり子が,パンやミダス王が歌うたびに,あくびをしたり手を左右に振って「下手な歌」という仕草をしたりと,コメディアン的な一面を披露したのには驚きました 一見おとなしく真面目そうに見えるので,今回のパフォーマンスとの落差が大きく,”意外性の可笑しさ”を醸し出していました

終盤で,ヴェルナーの歌うパンが歌合戦に破れると,ロビン・ブレイズが歌うメリクリウスがロバの耳を頭から被せます 曲が終わるころ,今度は別のロバの耳が指揮者の鈴木雅明の頭に被せられ,会場の笑いを誘います

圧倒的な拍手とブラボーがステージに押し寄せます 鈴木雅明は頭のロバの耳を取ってコンマスの寺神戸亮の頭に着けます もうこうなったらババ抜きです でも,さすがは世界の寺神戸です.しばらくロバの耳を頭に着けて満足げな顔をしていました おぬし,嫌いではないな

16年ぶりに聴いた音楽劇「急げ,渦巻く風よ」は,やっぱりオペラのように楽しい音楽でした 見方によっては,この曲はバッハが作曲した唯一のオペラと言えるかも知れません

終演後,会場から出ると,「プログラムまたはCDをお買い上げいただいた方は,サイン会があります」という声が聞こえてきました.あとは帰るだけなのでサインをもらうことにしました 何と並ぶ順番が一番目でした 一番ですよ,奥さん こういう時は1階後方の通路側席は断然有利です ロビ―の片隅に設置されたテーブルに,鈴木雅明,鈴木優人,ドミニク・ヴェルナー,クリスティアン・イムラー,ロビン・ブレイズ,ニコラス・パン,ジョアン・ラン,中嶋克彦の順に並んでいます.プログラムの表紙に,鈴木雅明氏から順番にサインをしてもらうことにしました

 

          

 

鈴木雅明氏が金,鈴木優人氏が銀で(オリンピックのサイン会?),ほかのメンバーは黒のサインペンです ニコラス・パン,クリスティアン・イムラー,ロビン・ブレイズがどれだったか記憶が定かではありませんが,たぶん,パンは右下,イムラーは左中央,ブレイズは真ん中ではないかと思います

 

          

 

私はさっさと8人のサインをもらって退却したのですが,振り返って見たら,二番目の人が鈴木親子の次のところで話し込んでいたみたいで,後がつっかえていました サイン会というと必ずいますね.後ろに多くの人が並んでいるのに,おかまいなしに延々と話し込む人が 一番乗りは正解でした

バッハ・コレギウム・ジャパンはコンサートと並行して,演奏した曲をCD化していますが,この日演奏したBWV201はまだ発売されていませんでした.発売しだい購入したいと思います

この日のコンサートは,演奏曲目は16年ぶりの思い出の曲だったし,演奏は最高だったし,サインももらったし,今年聴いた中で最も思い出に残る素晴らしい公演の一つになりました

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大友直人+東響でベートーヴェン「第九」を聴く~第25回Kissポートクラシックコンサート

2016年09月23日 07時53分27秒 | 日記

23日(金).「暑さ寒さも彼岸まで」と言われます 小雨が降り肌寒かった昨日,思い切って衣替えをしました 半そでシャツにアイロンをかけてタンスにしまい,代わりに長袖シャツを出しました 「これで一仕事終わった」と自己満足に浸っていたら,夜の天気予報で「来週は『暑さ寒さは彼岸まで』とはいかず,また30度台の暑さがぶり返すします」と言っていました もういいよ,衣替えしちゃったよ,今更どーすんだよ

話は360度変わりますが,昨日の日経朝刊・社会面に「ポケモンGO お台場混乱」という記事が載っていました.記事を要約すると

「東京・お台場でスマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』の利用者数百人が集まり,一部が赤信号を無視して車道に出るなどし,警察官が誘導後も混乱は1時間以上続いた 周辺で珍しいポケモンのキャラクター『ラプラス』が出現し,捕獲しようと集まったとみられる 警視庁はゲームの運営会社の担当者を呼び出して対策を協議したという

この記事から得られる教訓は,「そんな危険なゲームは法律で取り締まるべきだ」とか「『ポケモンGO』ではなく『バカモンGO OUT』と名称を変えるべきだ」ということではなく,「レアなポケモン・キャラクターが出没するところには多くの人が集まる」ということです これを逆手にとって,全国のシャッター通り商店街や過疎地に『ラプラス』などのレア・ポケモンを出没させて,ツィッターでつぶやかせたらどうでしょうか そこに集まった人たちに『ピカチュウ饅頭』や『ラプラス・サブレ』を売りつけるのですよ どうでしょう,このアイディア えっ,警視庁が運営会社の担当者を呼んだのはそのアイディアを話すためだったって? 嘘だあ~ 軽すぎね? それじゃ 軽視庁じゃん

ということで,わが家に来てから725日目を迎え,目の前に自分に似た存在がいるのに気が付いて,頭に疑問符を浮かべるモコタロです

 

          

             キミは誰? 誰でもいいけど,ぼくのマネは止めてくれる!

 

  閑話休題  

 

昨日,サントリーホールで「第25回Kissポートクラシックコンサート」を聴きました プログラムは①チャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」,②ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です ①のチェロ独奏はサントリーホール館長でもある堤剛,②のソリストは,ソプラノ=森麻季,アルト=八木寿子,テノール=福井敬,バリトン=福島明也.合唱=ミナトシティコーラス,管弦楽=東京交響楽団,指揮=大友直人です

このコンサートの冠である「Kissポート」というのは,港区が「都心に相応しいコミュニティ」の活性化をめざして設立した「公益財団法人 港区スポーツふれあい文化健康財団」のことです 区民に気軽にクラシック音楽を親しんでもらおうと,港区にあるサントリーホールを会場にクラシックコンサートを毎年開催,今年設立20周年を迎えるとのことです Kissポートの「ポート」というのは多分 港区の港=ポートにひっかけて付けた名称だと思います

 

          

 

自席は1階20列16番,センターブロック左通路側,私にはお馴染みの席です 会場は合唱団が座るP席を除いて9割くらいの入りでしょうか 周囲の会話などを聞いている限り,合唱団員の家族・友人・知人などが多いように見受けられます

東京交響楽団のメンバーが配置に着きます.「おやっ?」と思ったのは,コンマスのグレヴ・二キティンが入場しても拍手が起こらなかったのです この日のお客さんは東響の定期演奏会の会員とはまったく違う客層だな,と思いました

チェロの堤剛が,いつものようにタクトを持たない大友直人とともに登場します このブログをいつもご覧いただいている方なら良くお分かりになると思いますが,大友直人はタクトでなく,手と目で合図します.そう「アイコン・タクト」で合図を送ります 

さっそく1曲目のチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」の演奏に入ります この曲は1876年~77年に作曲されました.チャイコフスキーは協奏曲では,共に有名なヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲第1番を書いていますが,チェロのためにはこの変奏曲を書きました チャイコフスキーはモーツアルトを意識して,18世紀のロココ風の自作の主題を基に8つの変奏を書きました

堤剛の演奏で聴く変奏曲は優雅な曲想の中,時に感傷的に,時に明るく,チェロ特有の豊かな響きを堪能させてくれました

ここで20分の休憩に入りました.私はいつも通りロビーに出ましたが,在京オケの定期演奏会と違ってロビーが閑散としています 圧倒的多数の人は席を立たないでずっと座り続けているのです  これも”いつもと違う客層だな”と思った点です  私は腰痛気味なので,出来るだけ座る時間を短くしたいと思い,休憩時間には必ず席を離れ,ロビーでも立ちっぱなしでプログラムやチラシを読んでいます

 

          

 

休憩が終わり席に着くと,まず,コーラス陣が入場し2階のP席にスタンバイしました.男声55人を真ん中にして,女声138人が左右に分かれます メンバー全体を見渡して ひと言で言い表すと「老老若男女女」といったところですが,もちろん歌に年齢は関係ありません 実力と熱意の世界です その点,メンバーの顔を見渡すとやる気満々の前向きの姿勢が窺えます

ミナトシティコーラスは,2000年5月 港区在住・在勤・在学のメンバーを中心に結成された男女混声合唱団で,このコンサートには連続して出演しており,今回が14回目となるそうです 

大友直人が登場して指揮台に上がり「第九」の演奏に入ります 大友は少し速めのテンポで軽快に音楽を進めます.東響はほぼベストメンバーをそろえています 冴えていると思ったのはフルートの甲藤さち,オーボエの荒木奏美,ファゴットの福士マリ子といったいつものメンバーです

「フルートがいつもより柔らかい音がする」と思って,フルート奏者の3人を見ると,いつもは金色に輝くピカピカの楽器を吹いているのに,この日は3人とも黒のボディのフルートを吹いていました フルートは木管楽器なのでこの方が木管に相応しいな,と思ったりしました(実際に,3人が使用していたフルートの材質が銀製なのか,木製なのか,それ以外なのかは不明ですが).

第2楽章が終わると,舞台左袖からソリストの4人が登場しオケの後ろにスタンバイします この時も拍手がありませんでした.これも「いつもと違う」と思いました 第3楽章は天国的ですね.私が「第九」で一番好きな楽章はこの第3楽章「アダージョ・モルト・エ・カンタービレ」です

そして間断なく最終楽章に移ります.居眠りしていた人は第4楽章冒頭の管弦楽の咆哮で起こされたことでしょう いよいよバリトン独唱が「おお友よ,こんな音楽はよそう!~」と歌いますが,福島明也は高音がちょっときつかったようです 次いで混声合唱が力強く入ってきます

テノールの福井敬は絶好調です この人は安定感があります.そしてソプラノの森麻季の美しい高音が華を添えます アルトの八木寿子も頑張っています

独唱と合唱によって「歓喜のテーマ」が様々に変奏され,トルコ行進曲風の音楽に移ります ここで私の悲劇が起こりました この場面ではトライアングルが弱音で叩かれるのですが,私の耳にはまったく聴こえないのです 自席は前から20列目なので,後ろから数えた方が早いほど舞台からは遠いのですが,まったく聴こえないというのは流石にショックです 先日の人間ドックの聴力検査で,高音(4000ヘルツ以上)の音が聞き取れていないという結果が出ていたので,他の人には聴こえているのに,私には聴こえていないのかも知れません もし同じ会場でこの公演を聞いた人がいらっしゃったら是非,トライアングルの音が聴こえたかどうか教えてください.お願いします

そんな個人的なショックをものともせず,「第九」は迫力のある合唱と,それに次ぐ管弦楽の熱演によりフィナーレを迎えました 会場からは大きな拍手が,ソリストと合唱団,そしてオーケストラに寄せられました

合唱団員の皆さん,お疲れ様でした 楽しい打ち上げが待っていたことでしょう ご家族,友人,知人の皆さん,良かったですね.合唱団頑張りましたね 合唱団員は歌えて得する,家族や友人・知人は喜びを分かち合って得する,聴いている聴衆は感動をもらえて得する・・・・皆得,さすがは港区

でも,私はトライアングルと4000ヘルツが頭から離れません.ショックです

 

          

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飯野ビルランチタイムコンサートを聴く~目黒遥菜ピアノ・ソロ

2016年09月22日 08時08分32秒 | 日記

22日(木・祝).わが家に来てから724日目を迎え,夕刊で日銀の金融政策決定会合の結論を見て,結局 われわれ しもじもの生活はどうなるのかさっぱり分からないという表情のモコタロです

 

          

           それで 定期預金の金利は上がるわけ? 関係ないの? 日銀って誰の味方?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉と大根の炒め煮」,「生野菜とタコのサラダ」,「インゲンのお浸し」を作りました.「豚肉~」は写真でご覧の通り,焦がしてしまいました 「蓋をして水分が蒸発するまで煮る」と書かれていたのでサラダを作っていたら,いつの間にか焦げていました フライパンに蓋をして煮ていると中が見えないので,どの辺で火を止めるか判断が難しいですね 焦がして慌てフタめきました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

一昨日,あれほど探し回ったのに見つけ出すことが出来なかったモーツアルトの「ディヴェルティメントK.563」のCDが見つかりました 昨日,念のためと思い,CD棚のモーツアルト・コーナーを眺めていたら,協奏曲のコーナーに混じっていました ギドン・クレーメルのヴァオイリン,キム・カシュカシャンのヴィオラ,ヨーヨーマのチェロによる演奏です せっかくなので,読響アンサンブルの復習の意味でいま一度聴きました.何度聴いても良い曲です

 

          

 

  またまた,閑話休題  

 

昨日,内幸町の飯野ビルで開かれた第54回ランチタイムコンサートを聴きました ピアノ独奏は2015年(14歳)アジア国際音楽コンクールピアノ中学生部門第1位の,現在高校1年生の目黒遥菜です

オール・ショパン・プログラムで,①エチュード作品10-5「黒鍵」,②同・作品25-11「木枯らし」,③同・作品10-3「別れの曲」,④同・作品10-12「革命」,⑤ピアノ・ソナタ第3番ロ短調です

 

          

 

少し早めに会場に着いたので,前から2列目の中央近くの席に座りました 旧飯野ホールからロビーに移したベーゼンドルファーの後方には,人間の高さほどのパーティションが立てられ,音が効率的に聴衆側に届くようになっています ロビーでのコンサートなので,何もしないと音が四方八方に拡散してしまうので,主催者側が対応を図ったのでしょう

ブルーのステージ衣装,メガネ着用で現れた目黒遥菜は,見るからに高校生といった初々しい感じがします さっそくピアノに向かい,1曲目のエチュード作品10-5「黒鍵」の演奏に入ります いきなりガツンとくる感じで,選曲のセンスの良さを感じます 次いで,エチュード作品25-11の「木枯らし」を演奏します.この曲も力強い演奏で早めに聴衆の心をつかみます

ここで,初めてマイクを握り

「私は現在高校一年生です.今日は文化祭の代休ということで,ここで演奏することになりました.よろしくお願いします

と挨拶し次の曲に入りました.エチュード作品10-3「別れの曲」,エチュード作品10-12「革命」の「静」と「動」を鮮やかに弾き分けました

最後に「ピアノ・ソナタ第3番」を,流れを大切にしながら情熱的に演奏し,約50分のコンサートを締めくくりました まだまだ高校1年生,これからなので頑張ってほしいと思います

 

  最後の,閑話休題  

 

コンサート帰りに,有楽町のBカメラに寄って,i Phone 6s 用のソフトカバーと画面保護ガラスを購入しました ソフトカバーは値段もデザインも様々で迷いましたが,出来るだけシンプルで 薄く 軽く 丈夫そうなもの ということで,下の Ultra Slim という商品(税別 2,480円)を選びました

 

          

 

画面保護用ガラスも様々ありましたが,「安物買いの銭失い」にならないようにと,下の商品(税別 3,980円)を選びました 実は,娘がスマホを落として画面にヒビが入ってしまい,「絶対に保護ガラスを貼っておいた方がいいよ!」と言うので買い求めたのでした

 

          

 

幸いカードのポイントがたまっていたので,すべて吐き出して実質タダで入手しました 家電量販店で買う商品はどうしても単価が高いので,たまるポイントも高くなります そこで,どうしても同じお店で買ってしまいます.お店の思うツボです

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読響アンサンブルでモーツアルト「ディヴェルティメントK563」,ベートーヴェン「第7交響曲」を聴く

2016年09月21日 08時29分24秒 | 日記

21日(水).わが家に来てから723日目を迎え,リビングの片隅で白ウサちゃんと過ぎ去っていった台風を振り返るモコタロです

 

          

                 この辺(豊島区)は大したことなくて良かったよ

 

  閑話休題  

 

昨夕,よみうり大手町ホールで「読響アンサンブル・シリーズ第11回~長原幸太ら読響メンバーの室内楽」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメント 変ホ長調K.563」,②ベートーヴェン「交響曲第7番イ長調」(弦楽五重奏版)です 出演はコンサートマスターの長原幸太,第2ヴァイオリン首席・瀧村依里,ソロ・ヴィオラ・鈴木康浩,同・柳瀬省太,チェロ首席代行・高木慶太です

 

          

 

7時半からの公演に先立って,7時からコンマスの長原幸太を迎えてプレトークがありました 長原はマイクを持って人前で話すのが苦手なようで,ナビゲーターの鈴木美潮(読売新聞)さんが,「それじゃ,ヴァイオリンを持ってお話しいただきましょうか」と提案すると,舞台袖にヴァオイリンを取りに行き,ヴァイオリン片手に「ああ,これで落ち着きました」と安堵の表情を見せました インタビューによると,彼は母親がピアノの先生をやっていた関係で,最初は母親からピアノを習っていたそうですが,途中でヴァイオリンに転向したそうです.その一方で,小学低学年の時はサッカーをやり,その後は野球のピッチャーをやったそうです その間,2度も腕を骨折したそうです 

「あの松坂投手と同じ歳なんですが,ヴァイオリニストにならなかったら今頃はヤンキースで投げていたかもしれません

と法螺を吹いていました 広島県の出身ということで,プロ野球は今シーズン25年ぶりのセリーグ優勝を決めた広島カープのファンとのことです 本人曰く

「読売のオケに居ながら,読売のホールで演奏しながら,すみません

と,親会社に配慮して心にもない謝罪を述べていました.本当は嬉しくてしようがないのです

今回のプログラミングについて聞かれると

「最初にメンバーを決めました.そして,このメンバーなら難しい曲にもチャレンジできるかなと思って,モーツアルトの弦楽三重奏によるディヴェルティメントと,ベートーヴェンの交響曲第7番の弦楽五重奏曲版を選びました

と答えていました

「よみうり大手町ホール」について聞かれると

「まだ出来て年数も経っていないこともあって,舞台の近くで聴くと音が突き刺さる様な印象があると思います これは演奏が悪いのではなくて,ホールの特性です(会場) 本当はもっと客席に近い所で演奏したいのですが,後ろに下がって演奏します また,今回は弦楽だけの演奏ですが,これにピアノが加わると,ピアノの音が一番良く響く位置はどこか,と考えるので,それに合わせて弦楽奏者の位置も変わってきます.そういう意味で,難しいホールです

と答えていました 私はこれまで,このシリーズのインタビューで何人かのアーティストが語るこのホールに対する印象を聞いてきましたが,これほど率直な感想を聞いたのは初めてです ほとんどは「素晴らしい音響のホールで,ここで演奏するのは光栄です」的な感想が多かったように思います.今回の発言で,長原幸太に対する評価が一層高まりました 天下の読売日響のコンサートマスターとしての自覚と自信があるからこその発言だったのだと思います

 

          

 

さて本番です.ヴァイオリンの長原幸太,チェロの高木慶太,ヴィオラの鈴木康治が登場します 3人揃ったところで,パッと見の共通点は①年齢が近いのではないか,②メガネをかけている,ということです 早速1曲目のモーツアルト「ディヴェルティメント変ホ長調K.563」の演奏に入ります

この曲は,1788年9月27日に.モーツアルトが晩年に手紙で何度も借金を申し入れていたウィーンの織物商人プフベルクのために書かれました この人がいなかったらモーツアルトの晩年の傑作は日の目を見なかったかもしれません

実は,この曲をあらかじめCDを聴いて予習しようと思ったのですが,恥ずかしながら,1枚あるはずのCDがどうしても見つからなかったのです 多分700枚以上所有しているモーツアルトのCDは,交響曲,協奏曲,管弦楽曲,独奏曲,オペラ,宗教曲とジャンル別に分類してCDラックに収めてあるのですが,とうとう見つかりませんでした.一生の不覚です

この曲は6つの楽章から成ります.演奏を聴いていて,プレトークで長原が話していた「この曲は,モーツアルトが本当に言いたいことが音楽として表れている」とコメントしていたのは第2楽章の「アダージョ」ではないか,と思いました 私には窮地を救ってくれたプフベルクに対する感謝の気持ちの表明に聞こえました

第3楽章の「メヌエット」は3人の奏者の掛け合いが楽しめました 第5楽章のもう一つの「メヌエット」ではヴィオラの鈴木の演奏が冴えわたりました 第6楽章の「アレグロ」の心地よさをどのように表現すれば良いでしょうか

全楽章を通じて3人の息はピッタリで,モーツアルトの音楽の魅力である「光と影」を浮き彫りにしていました

ところで,3人は各楽章間にチューニングを入れていましたが,外は台風の影響で雨模様 ホール内の湿度の変化が弦に影響を与えていると思われます.弦楽器は湿度に敏感ですから演奏する側は大変ですね

休憩後はベートーヴェンの「交響曲第7番イ長調」の弦楽五重奏版です 5人の演奏者が登場します.左からヴァイオリンの長原,瀧村,チェロの高木,ヴィオラの鈴木,柳瀬という編成です.この曲は1812年に作曲されましたが,音楽の3要素=リズム,メロディー,ハーモニーのうちリズムを主体とした曲です 比較的新しいところでは「のだめカンタービレ」のテーマ音楽として使われていました 「のだめ」と言えば,コンマスの長原幸太は,あの「のだめ」のオケのコンマスの奏でる音楽を陰で弾いた人だとのことです.知ってた?

早速第1楽章に入ります.冒頭はソフトに入りましたが,これはホンのあいさつ代わりで,その後は弦楽器だけの五重奏で演奏しているとは思えないほど色彩感豊かに演奏が展開します 主に第2ヴァイオリンの瀧村依里がクラリネットを始めとする管楽器のパートを演奏していました 面白かったのは第3楽章「プレスト」での5人の奏者の掛け合いです.見ていて楽しそうでした

そして第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」を迎えます.この楽章こそワーグナーが名付けた「舞踏の聖化」です 5人の演奏者はフル・オーケストラさながらに,全力でリズムの饗宴を繰り広げます.5人のうち誰が良いとかいった問題を超越しています.5人がそれぞれのパートを全力で演奏している姿が感動を呼びます

演奏が終わるや否や,会場いっぱいの拍手とブラボーがステージを囲みました 何度目かのカーテンコールの後 長原幸太が,

「今日は台風が近づく中,ようこそお越しいただきありがとうございました 台風が近づいているので短めのアンコールを演奏します

とアナウンスして,ベートーヴェンの「交響曲第8番ヘ長調」から第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」を演奏,拍手喝さいを浴びました

正直言って,心の底から楽しめるコンサートは1年に何回もあるものではありません.その意味では,この日のコンサートは心の底から素晴らしかったと言える貴重なコンサートでした 「読響アンサンブル」はコンマス及び首席クラスだけを惜しげもなく投入します 年6回が年4回に縮小されたのは非常に残念です 「このメンバーがいる限り,読売日響の定期会員を継続しよう」と思わせます

最後に付け加えれば,この日は半径1メートル以内にトラブルメーカーがいなかったので,終始落ち着いて演奏に耳を傾けることができました 本当はこれが普通なのですが その意味も含めて,本当に素晴らしいコンサートでした

コメント (2)
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