人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

リー・アンクリッチ&エイドリアン・モリーナ共同監督「リメンバー・ミー」、ウェス・サンダーソン監督「犬が島」を観る~ディズニー・アニメとストップモーション・アニメの傑作:ギンレイホール

2018年10月31日 07時29分45秒 | 日記

31日(水)。月日の流れは速いもので 今日で10月も終わり 明日から11月です  秋も深まる今日この頃、娘が Suica を買ってきたのですが、

     

 

蓋を開けると こんなでした

 

     

 

缶を裏返してみると「品名:プリントチョコレートSuica」、「JR東日本商品化許諾済」とあり、ご丁寧にも「乗車券・電子マネーとしてはご利用になれません」と書かれていました これで改札を通り抜けられないことはチョコっと考えれば分かります チョコは永遠のロングセラー「マーブルチョコレート」の味がしました どちらも姿かたちがマーブルだから 味も同じということでしょうか? いま一つ工夫がほしいところです

ということで、わが家に来てから今日で1489日目を迎え、東京電力がツイッター公式アカウントに、福島第一原発の建屋内部の画像を「#工場萌え」というハッシュタグ付きで投稿した問題で、世耕弘成経済産業相が30日の閣議後の会見で「ユーモアを見せるのは悪くないが、非常にスキルが要求される。いい教訓になったのではないか」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       今なお福島県内外に4万3千人以上が避難してるのに 何がユーモアだ?スキルだ!

     

         

 

昨日、夕食に「クリームシチュー」と「生野菜サラダ」を作りました 「クリームシチュー」は10か月ぶりくらいでしょうか。鶏もも肉を使いました

 

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールで「リメンバー・ミ―」と「犬が島」のアニメ映画2本立てを観ました

「リメンバー・ミー」はリー・アンクリッチ&エイドリアン・モリ―ナ共同監督による2017年ディズニー映画(105分)です

ギターの天才少年ミゲルはミュージシャンを夢見ている。しかし、厳格な掟によってギターを弾くだけでなく音楽を聴くことされ禁じられていた ある日、ミゲルは古い家族写真をきっかけに、自分のひいひいおじいちゃんが伝説のミュージシャン、デラクルスではないかと推測する 彼の墓に忍び込み、美しいギターを手にした瞬間、先祖たちが暮らす”死者の国”に忍び込んでしまう そこは夢のように美しく、ガイコツたちが楽しく暮らすテーマパークのような世界だった しかし、日の出までに元の世界に帰らないと、ミゲルの正体は消え、永遠に家族と会えなくなってしまう 唯一の頼りは家族に会いたいと願う 陽気だが孤独なガイコツへのヘクターだけ。だが、彼にも「生きている家族に忘れられると、死者の国からも存在が消える」という運命が待ち受けていた 絶体絶命の二人と家族をつなぐ唯一の鍵は、ミゲルが大好きな曲”リメンバー・ミー”だった 不思議な力を秘めたこの曲が時を超えて軌跡を巻き起こす

 

     

 

いかにもディズニーらしい「家族が一番大切」というメッセージの映画でした   ただし、この映画が良いところは今の家族だけでなく、過去からの繋がりの中で家族の絆を描いているところです しかも、先祖代々言い伝えられてきた「音楽は聴くのも演奏するのも許さない」という家訓を破って、ミゲルが「リメンバー・ミー」を歌い 軌跡を起こすところです    この映画のテーマは「大切な人は、いつまでも忘れないこと」です

 

         

 

「犬が島」はウェス・アンダーソン監督による2018年アメリカ映画(101分)です

舞台は近未来の日本。ドッグ病が大流行するメガ崎市では、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を”犬が島”に追放する ある時、12歳の少年がたった一人で小型飛行機に乗り込み、その島に向かった。愛犬で親友のスポッツを救うためにやってきた市長の養子で孤児のアタリだった 島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たちを新たな相棒とし、スポッツの探索を始めたアタリは、メガ崎の未来を左右する大人たちの陰謀へと近づいていく

 

     

 

この映画は動きをコマ撮りしていく「ストップモーション・アニメ」です。100分の映画のために144,000の静止画を撮影し、670人のスタッフで445日かけて制作したといいます 相当の根気が必要で、独身者は婚期を逃しそうです コマ撮りしているため、犬や人物の動きはぎこちないものがありますが、最先端のCGにはない 懐かしい気持ちを抱かせるような 面白い効果を醸し出しています

ウェス・アンダーソン監督は大の日本びいきだそうで 黒澤明監督を尊敬しているそうです   映画の中では、歌舞伎や浮世絵に触発された映像もあり、音楽面では和太鼓を打ち鳴らすシーンとともに、黒澤映画で使われたようなヒロイックな音楽が流れるシーンもありました

ドッグ病の治療開発に挑むメガ崎大学の渡辺教授の助手ヨーコ・オノの声を本人が吹き替えたりして 結構凝っています

この映画はタイトルが「犬が島」なので、アタリの元護衛犬スポッツ、アタリを助けるヒーロー犬のチーフ、レックス、キング、ボス、デューク、そして犬が島の雌犬ナツメグなど多種多様な犬たちが登場しますが、よくもこれだけ違う犬たちを”創造”したものだと感心します 3Dプリンターを使って作れば簡単だろうと思ったら、それは犬当違いというものです

 

     

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スコリモフスキ監督「早春」、ベルトリッチ監督「暗殺のオペラ」を観る ~ ヴェルディ「リゴレット」の音楽が流れる ~ 早稲田松竹

2018年10月30日 07時25分04秒 | 日記

30日(火)。わが家に来てから今日で1488日目を迎え、ハロウィーン直前の週末になった27日深夜から28日未明にかけて、東京・渋谷では仮装した人たちが集まり ゴミクズを放置したり 軽トラックが横転されるなどトラブルが相次いだ というニュースを見て不届き者に警告するモコタロです

 

     

                 サッカーのサポーターのようにゴミは持ち帰りましょう 放置する人はクズです

 

         

 

昨日、夕食に「牛肉と玉ねぎの甘辛炒め」と「トマトとレタスのスープ」を作りました 「牛肉~」は醤油などの調味料と片栗粉に牛肉を漬けこんでからフライパンで焼くのですが、いつも肉が焦げ付いてしまいます 片栗粉が原因だと思いますが、何とかならないものか、と作るたびに思います

 

     

 

         

 

昨日、早稲田松竹で「早春」と「暗殺のオペラ」の2本立てを観ました

「早春」はイエジ―・スコリモフスキ監督・脚本による1970年イギリス・西ドイツ映画(2018年デジタルリマスター版・92分)です

ロンドンの公衆浴場で働き始めた15歳のマイク(ジョン・モルダー=ブラウン)は、そこで働く年上の女性スーザン(ジェーン・アッシャー)に惹かれていく しかし、婚約者がいながら別の年上男性とも付き合う彼女の奔放な生活を知り、実らぬ思いを募らせたマイクの行動は徐々にエスカレートしていき、悲劇的な結末へと突き進んでいく

 

     

 

何事も未経験であるがゆえに、身近な年上の女性スーザンに付きまとう15歳の”未成年”マイクをジョン・モルダー=ブラウンが滑稽ながらも魅力的に演じています そんな迷惑な少年を軽くあしらうお姉さんジェーン・アッシャー演じるスーザンも魅力的です

可笑しかったのは、スーザンと婚約者が映画館に入ると、マイクは年齢をごまかして入館し二人のすぐ後ろの席で”18歳未満お断り”の映画を観るのですが、その時の映画のBGMがワーグナーの「ワルキューレの騎行」だったのです 成人映画にワーグナーは結びつかないので、思わずのけ反りました

 

     

 

         

 

「暗殺のオペラ」はベルナルド・ベルトリッチ監督・脚本による1970年イタリア映画(2018年デジタルリマスター版・99分)です

ムッソリーニ政権下、ファシストによって暗殺された父親の死の真相を探るべく、アトス(ジュリオ・ブロージ・父と二役)は北イタリアのとある田舎町を訪れる この町では 父親はレジスタンの英雄的存在になっており、当時のレジスタンの生き残りの3人の関係者に話を聞くと謎は少しずつ解明していくが、アトスが予想もしない意外な事実が明らかにされる

 

     

 

この映画はラテン・アメリカ文学の奇才ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」に収められている「裏切り者と英雄のテーマ」を原作としています

「暗殺のオペラ」の”オペラ”はヴェルディの「リゴレット」を指しています つまり、アトスの父親はオペラ劇場で「リゴレット」を観劇中に背中から銃撃されて死んだ、という設定になっているのです 劇中「リゴレット」の「序曲」や、第2幕のリゴレットとジルダの二重唱「おれたちは同じだ」などが流れます

「そうか、犯人は複数いたのか」と思いきや、とんでもないどんでん返しが待っています。そこが、この映画が名作として残っている根拠だと思います

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」 のチケットを取る~高関健✕木嶋真優のブラームス「Vn協奏曲」他 / 前橋汀子「私の履歴書」から / ジェフリー・アーチャー著「嘘ばっかり」を読む

2018年10月29日 07時22分26秒 | 日記

29日(月)。わが家に来てから今日で1487目を迎え、前衛芸術家の草間彌生さんが理事長を務める草間彌生記念財団は、中国の上海市などで草間さん贋作の展覧会が開かれたが、財団の申し入れにより中止になったと27日発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                   このニュースはトランプ米大統領が知的財産権侵害で中国を非難するのが頷ける

 

         

 

ヴァイオリニストの前橋汀子さんが日経朝刊 最終面の「私の履歴書」に連載していることはすでにご紹介しました 毎回、波乱万丈の半生で面白く読んでいるのですが、第26回目の「履歴書」では 1980年に日本に戻ってきてからのコンサート以外の活動についても触れています 田中康夫原作の映画「なんとなく、クリスタル」に出演したこと、NHK紅白歌合戦の審査員を務めたこと、テレビ番組の企画でシャンソン歌手ジュリエット・グレコと対談したこと、などが綴られています 面白いと思ったのは、グレコがいつも黒ずくめの衣装で歌っているのは「主役は音楽であって、私は黒子だから」と言ったのに対し、前橋さんは「ステージで演奏する時は、服も曲の一部だと思っています。だから私はいつも衣装を数着持ってコンサートに出かけ、ステージの壁の色や照明なども考えて着る服を選ぶ。それも楽しみなのです」と持論を展開し、お互いに譲らなかったというエピソードです そして、83年にデビューアルバムを発表して以来、次々とCDを送り出していき、88年に「バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全集」を録音したと書いています 私が唯一持っている前橋さんのCDがこの2枚組のバッハです

 

     

 

おそらく30年ぶりにCDジャケットを開いてみたら、作家の五木寛之氏が「魂のヴァイオリニスト 前橋汀子さんのこと」という題でエッセイを書いていました これを読んで面白いと思ったのは、幼い頃に前橋さんがロシアのサンクト・ペテルブルク音楽院出身の小野アンナさんにヴァイオリンを習っていたころ、五木氏は早稲田のロシア文学科の学生で、ブブノヴァというロシア夫人に語学や詩などの講義を受けていたが、ブブノヴァさんはアンナさんのお姉さんだということを後で知ったそうです そんなこともあって、五木氏は前橋さんに親近感を覚えるようになったと書いています ロシアつながりの縁ですが、いつ、どこで、誰と誰が繋がっているのか分からないものです。オソロシア

 

         

 

来年3月1日(金)午後7時からサントリーホールで開かれる「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」公演のチケットを取りました プログラムは①ブラームス「悲劇的序曲作品81」、②同「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77」、③ドヴォルザーク「交響曲第8番ト長調作品88」です ②のヴァイオリン独奏=木嶋真優、管弦楽=「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」、コンマス=小森谷巧、指揮=高関健です

 

     

 

         

 

今年も残り少なくなってきたので、3本柱の目標達成状況をチェックしてみました 10月28日現在で、①クラシック・コンサート181回(目標:年間200回)、②映画鑑賞135本(同:150本)、③読書50冊(同:70冊)となっています ①は今年の残りチケットの枚数をみるとクリアできる、②は楽勝でクリアできそう。しかし③は残り2か月で20冊、単純計算で3日に1冊のペースで読まなければなりません 極めてハードルが高いですが、あーだこーだ理屈をこねている暇はありません。目標がある限り達成を目指すべし 

ということで、ジェフリー・アーチャー著「嘘ばっかり」(新潮文庫)を読み終わりました ジェフリー・アーチャーは1940年英国生まれ。1966年に大ロンドン市議会議員として政界デビューを果たし、69年には最年少国会議員として下院入りを果たしています 当ブログでは7部からなり6年の歳月を要した「クリフトン年代記」(①時のみぞ知る、②死もまた我らなり、③裁きの鐘は、④追風に帆を上げよ、⑤剣より強し、⑥機は熟せり、⑦永遠に残るは)をはじめとして、文庫化された作品は全てご紹介してきました

この「嘘ばっかり」は「十二本の毒矢」「十二の意外な結末」「十二枚のだまし絵」「十四の嘘と真実」「プリズン・ストーリーズ」「15のわけあり小説」に次ぐ7番目の短編小説集です 「嘘ばっかり」には15の短編小説と「次作についてのお知らせ」という名のもとに新作長編小説(1960年代のソ連を舞台に展開するアレクサンドルの物語)の最初の3章が収録されています

 

     

 

いずれも「そうきたか」「してやられた」という傑作揃いですが、すべてをご紹介するわけにもいかないので特に印象に残った作品をいくつか挙げてみます

まず最初に「最後の懺悔」です 30年来の友人である4人の男が主人公です。弁護士でサン・ロシェールの町長であるマックス・ラセールズ、個人銀行の会長であるクロード・テシエ、高等学校の校長であるアンドレ・パルメンティエ、病院の上席医であるフィリップ・ドゥ―セ博士の4人です 4人はナチに逮捕され同じ監獄に監禁されています。ある日、神父が来て「ドイツの列車がレジスタンによって爆破されドイツ人将校が死んだ。その報復に、収監されている4人のうち誰か1人を生かして残り3人を絞首刑にしなければならない。選択の方法として、各自が犯した最悪の懺悔をしてもらい、内容によって自分が決める方法を取りたい」と言い、一人一人が神父に懺悔をすることになります 4人はそれぞれ今まで神父に懺悔したことのない最悪の懺悔をします。さて、誰が生き残ることが出来たか?・・・結論を読むと納得します

次は「だれが町長を殺したか?」です イタリアの小さな町でロンバルディ町長が何者かに殺されます。彼は強請、贈賄など悪行の数々をやりたい放題やっていたので、誰も悲しむ町民はいませんでした 殺人捜査を命じられた32歳の若き警部補アントニオは町民一人一人に事情聴取することになります。しかし、誰もが「ロンバルディを殺したのは自分だ」と主張するので混乱します なぜ町民は口裏を合わせるように嘘をつくのか?ただ一人町長殺しを自白していない女性がカギを握っていたーというお話です

最後は「上級支店長」です 早期退職を強いられた銀行員アーサー・ダンバーが資産家の顧客の秘密に気が付き、人生の大逆転をかけて仕掛ける大金獲得作戦ですが、裏工作が上司にバレてしまいます しかしダンバーは凝りません。性懲りもなく徹底的に人生を賭けた勝負に出ます。そこがいいところです

いつものごとく、読み始めたら途中でブレーキがかけられない面白さです。お薦めします

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

上岡敏之 ✕清水華澄他 ✕ 新日本フィルでブルックナー「交響曲第9番」、同「テ・デウム」を聴く ~ 浸透する上岡イズム / 「ムジカ・エテルナ」指揮者クルレンツィスのインタビューから

2018年10月28日 00時25分26秒 | 日記

28日(日)。大学の研究室のOB会に出席するため山形から帰京した息子が「山形の秋」を届けてくれました ラ・フランス、庄内柿、あけび、プラム、カラトリイモ等々です

 

     

 

息子がさっそく山形の食材を使って夕食を作ってくれました 「あけびの肉詰め」「野菜とシメジの味噌汁」「カラトリイモの煮っころがし」です 料理はすべて美味しかったのですが、デザートに食べた「あけびの種」(写真の右上)は、食べ方が分からなかったので全て噛んで食べたらすごく苦かった 本当はゼリー状のところだけ食べることが後で分かったりして  

京都に居るときゃ~ あけびと呼ばれたの~ って 小林旭かい 

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1486日目を迎え、11月の米中間選挙を前に、トランプ大統領に批判的な政治家や著名人らにパイプ爆弾とみられる不審物が送り付けられた事件で、米捜査当局は26日、フロリダ州に住むトランプ支持者の容疑者の男を逮捕した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     大統領がトランプだから容疑者も異常だと決めつけてはいけない 思っていても

 

         

 

26日の朝日朝刊 文化文芸欄に「超高速テンポ 音符(ノート)よりハート ロシアに拠点 ムジカエテルナ 指揮者クルレンツィス」という記事が載っていました 超訳すると

「ロシアの地方都市を拠点にバロックから現代曲まで演奏するオーケストラのムジカエテルナが、聴衆の固定概念を覆す挑発的な演奏や録音で世界的な注目を集めている 正統か異端か・・・。ギリシャ出身の指揮者テオドール・クルレンツィス(46)は193センチの長身。『音符(ノート)でなく、ハートを音楽に与えるのが指揮者の役目。工場労働者のような旧来のオケから音楽の愉悦は生まれない』が持論だ ソリスト級の団員約100人は日本の田部絢子ら12国籍に広がる。『なぜ人々はクラシックよりもロックのコンサートで興奮するのか。演奏者のエネルギーが伝わるからだ』。目指すのは、長年の解釈を経た音楽の再生産ではなく、作曲当時の姿を蘇らせること。当時使われたバルブのないナチュラルホルンやガット(羊の腸)弦の弦楽器を使い、チェロ以外の全員が立ったまま超絶のスピード感で疾走する 聞き慣れたものと異なる超速のテンポは、実は楽譜の指示通りだという 『ロマン派以降、作曲時より約2倍遅く演奏されてきた。自分が知っていると信じている遺跡(曲)への思いから少し離れてみることが大事だ』。1990年代前半、ロシア・サンクトぺテルブルクで名匠イリヤ・ムーシンに師事した。晩年、ゲルギエフ、テミルカーノフら著名指揮者を含む教え子で 彼だけを『唯一の天才』と話した逸話が残る 『彼から学んだことは自分が持つ音楽の夢を信じ、その想像力を育てること。指揮者とは音楽だけでなく詩作、劇場、映画、脚本、文学を理解し、それらを媒介する人間であるべきだ』と語る

来年2月11日(月・祝)に すみだトリフォニーホールで開かれる「クルレンツィス✕ムジカエテルナ」のコンサート・チケットを購入済みです プログラムはチャイコフスキー①ヴァイオリン協奏曲ニ長調、②交響曲第4番ヘ短調です どちらかと言うと、ヴァイオリン独奏を務めるパトリツィア・コパチンスカヤの演奏を聴きたくて購入したチケットですが、この組み合わせはエキサイティングなコンサートになることは間違いないでしょう 今から楽しみです

 

     

 

         

 

昨日、サントリーホールで新日本フィル第596回定期演奏会(ジェイド)を聴きました プログラムはブルックナーの①交響曲第9番ニ短調(ハース/オーレル版)、②テ・デウムです  出演はソプラノ=山口清子、アルト=清水華澄、テノール=与儀功、バス=原田圭、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=上岡敏之です

余談ですが、3日連続サントリーホールで、3日連続あの爺さんを見かけました N響定期も 読響定期も 新日本フィル定期も 同じ会員であることが判明しました 世の無情を感じます

 

     

 

気を取り直して本題に入りましょう アントン・ブルックナー(1824-96)はオーストリアのリンツで生まれ、ザンクト・フローリアン修道院の聖歌隊と付属小学校に入り、その後、1856年にリンツ大聖堂のオルガニストに就任、1868年にはウィーン音楽院教授に着任しています ブルックナーは「習作」と「0番」を含め全部で11曲の交響曲を作曲しましたが、遅咲きのブルックナーの評価が高まったのは交響曲第7番や「テ・デウム」が初演された1880年代半ばになってからでした

この日のコンサートは未完ながら最後の交響曲である「第9番」と、ブルックナー自身が「最良の作品」と述べたという「テ・デウム」の組み合わせですが、この演奏形態は珍しい試みではありません これは、生前ブルックナーが 万が一の場合「第4楽章の代わりに『テ・デウム』を演奏するように」指示したことを根拠に2曲をセットで演奏するというものです その根拠を否定するわけではありませんが、「テ・デウム」の方が「交響曲第9番」より9年も前に作曲された作品であるということもあり、個人的にはそれぞれ独立した曲として別々に演奏すべきではないか、と思います 「交響曲第9番」は、あの寂寥感溢れる「アダージョ」で終わるのが本来の姿ではないだろうか

その「交響曲第9番ニ短調」は、1893年12月に第1楽章が、94年2月に第2楽章が、同年11月に第3楽章が完成しましたが、96年10月に第4楽章を作曲途中で死去、未完のままスケッチが残されました

第1楽章「厳かに、神秘的に」、第2楽章「スケルツォ。動きを持って、生き生きと」、第3楽章「アダージョ。ゆっくりと、厳かに」の3楽章から成ります

一方「テ・デウム  ハ長調」は1884年3月に最終稿が完成し、85年5月2日にウィーン楽友協会小ホールで初演されました 「テ・デウム」は神への讃歌で、日曜や祝日など特別な日に歌われます 第1曲「神よ、私たちはあなたをたたえ」、第2曲「それゆえ願わくは、あなたが」、第3曲「永遠に栄光のうちに」、第4曲「あなたの民を救って下さい」、第5曲「主よ、あなたが私の拠りどころです」の5曲から成ります

オケはいつもの新日フィルの並びで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成です コンマスはチェ・ムンス氏。管楽器を見渡すと、左手にスタンバイする9本のホルンが壮観です いつものように第2ヴァイオリンの篠原英和氏と松崎千鶴さんを確認 P席は「テ・デウム」で合唱が入るため空いています。指揮台の前には譜面台がありません。どうやら上岡氏は暗譜で指揮をするようです

上岡氏のタクトで第1楽章に入ります 冒頭のホルンによる主題は重厚そのものです 上岡氏は全体的にかなりゆったりしたテンポで音楽を進めます 演奏を聴きながら、30年以上前に一度だけ訪ねたことのあるリンツの「ブルックナーハウス」(コンサートホール)の傍を滔々と流れる雄大なドナウ川を思い浮かべていました 第2楽章「スケルツォ」は一転、速いテンポにより躍動感あふれる演奏が続きます この楽章では上岡氏のタクトが 右へ 左へ 上へ と忙しく動き、楽員を煽り立て、楽員は懸命についていきます

第2楽章が終わった段階で、新国立劇場合唱団の混声合唱80名がP席の所定の位置に着きます

上岡氏のタクトで第3楽章「アダージョ」の演奏に入ります この楽章ではホルンのうち4本がワーグナー・チューバに持ち替えて演奏します。この楽章こそ、ブルックナーの神への感謝とこの世への別れを告げる音楽です 上岡氏は第1楽章のゆったりしたテンポに戻り、一音一音を噛みしめるように音楽を進めます

上岡氏のタクトが上がり、最後の音が空間に消えていきます。第9番の終了ですが、あとに「テ・デウム」が控えているので ここで拍手は起こりません 静かにタクトが下ろされると、ソリストの4人が入場しオケの後方にスタンバイします

上岡氏のタクトにより「テ・デウム」の演奏に入ります 冒頭、合唱が「神よ、私たちはあなたを讃え、主であるあなたを賛美します」と歌い出しますが、新国立劇場合唱団の力強いコーラスが素晴らしい ソリスト4人も好調です 中でも山口清子さんのソプノが良かったと思います オーケストラは歌手とコーラスに寄り添いながら迫力のある演奏を展開しました

演奏が終了したのは ちょうど3時半、そのあと満場の拍手とブラボーによるカーテンコールが繰り返され、オケと合唱が解散したのは3時40分でした

2016年9月から新日本フィルの第4代音楽監督に就任して3年目を迎えた上岡敏之氏ですが、着実に上岡イズムがオーケストラに浸透してきたように感じるコンサートでした

 

     

 

 

toraブログの登録読者数が1950人に達しました。普段からご覧いただいている皆さまに感謝申し上げます これからも1日も休むことなく書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鈴木雅明✕リディア・トイシャー✕櫻田亮✕RIAS室内合唱団✕読売日響でメンデルスゾーン「オラトリオ『キリスト』」、モーツアルト「交響曲第39番」他を聴く / 都民芸術フェルティバルのチケットを取る

2018年10月27日 07時24分24秒 | 日記

27日(土)。わが家に来てから今日で1485日目を迎え、中国訪問中の安倍晋三首相は26日午前、北京の人民大会堂で李克強首相と会談し、冒頭で「競争から協調へ日中関係を新たな時代へ押し上げていきたい」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     中国は領土面でも人口面でも圧倒的に超大国なんだから 少しは遠慮してほしいな

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉と大根の炒め煮」と「鮭とシメジと白菜のプチ鍋」を作りました 「豚肉~」は cookpad のレシピですが、洗濯物をたたむのにガスコンロから離れた間に焦がしてしまいました 味が不明です

 

     

 

         

 

昨日は都民芸術フェスティバル2019の「オーケストラ・シリーズ」と「室内楽シリーズ」の1回券のWEB発売開始日だったので、日本演奏連盟のサイトからチケットを取りました

 

     

 

Ⅰ.オーケストラ・シリーズについては、前回「セット券」を取ったのですが、今回は8公演のうち3公演(東京フィル、東京シティ・フィル、日本フィル)がすでに予定されている公演とダブっているので、諦めて1回券を取りました

1回券のチケット代は、A席:3,800円、B席:2,800円、C席=1,800円です。私はすべて2階のB席をとりました なお、8公演セット券は26,000円(300席限定)となっています

オーケストラ・シリーズ(会場はすべて池袋の「東京芸術劇場コンサートホール」)で、取ったのは次の5公演です

①NHK交響楽団(1月30日・水・19時)=ロベルト・フォレス・べセス(指揮)、ソン・ヨルム(ピアノ)=チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ、同「ピアノ協奏曲第1番」、ドヴォルザーク「交響曲第7番」

②新日本フィル(2月20日・水・14時)=原田慶太楼(指揮)、伊藤恵(ピアノ)=ワーグナー「マイスタージンガー」前奏曲、リスト「ピアノ協奏曲第1番」、ラフマニノフ「交響曲第2番」

③読売日響(2月27日・水・19時)=カーチェン・ウォン(指揮)、小山実稚恵(ピアノ)=バーバー「弦楽のためのアダージョ」、モーツアルト「ピアノ協奏曲第20番」、ブラームス「交響曲第4番」

④東京都響(3月6日・水・19時)=梅田俊明(指揮)、大谷康子(ヴァイオリン)=ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」序曲、サン・サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」、ブラームス「交響曲第2番」

⑤東京交響楽団(3月15日・金・19時)=川瀬賢太郎(指揮)、仲道郁代(ピアノ)=ドヴォルザーク「序曲:謝肉祭」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」、リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」

 

     

 

Ⅱ.室内楽シリーズは全席指定@3,000円です 私は全3公演(会場はすべて上野の「東京文化会館小ホール」)を取りました

①弦楽四重奏(1月23日・水・19時)=前橋汀子クァルッテット=ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第8番」、同「第14番」

②デュオ(2月13日・水・19時)=岡本郁也(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)=シューマン「幻想小曲集」、メンデルスゾーン「チェロ・ソナタ」、黛敏郎「BUNRAKU 」、プーランク「チェロ・ソナタ」

③トリオ(3月  4日・月・19時)=萩原麻未(ピアノ)、梁美沙(ヴァイオリン)、堤剛(チェロ)=ベートーヴェン「チェロ・ソナタ第4番」、ハルヴォルセン「ヘンデルの主題によるパッサカリア」、ドヴォルザーク「ピアノ三重奏曲第4番”ドゥムキ―”」

 

     

 

こうしてみると、オーケストラ・シリーズも室内楽シリーズも水曜日ばかりですね M銀行T支店に8公演分のチケット代を振り込んだので、あとはチケットが届くのを待つだけです

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読売日響の第582回定期演奏会を聴きました プログラムは①J.M.クラウス「教会のためのシンフォニア ニ長調VB146」、②モーツアルト「交響曲第39番変ホ長調K.543」、③メンデルスゾーン:オラトリオ「キリスト」作品97、④同:詩篇第42番「鹿が谷の水を慕うように」作品42です 出演はソプラノ=リディア・トイシャー(③④)、テノール=櫻田亮(③のみ)、合唱=RIAS室内合唱団(③④)、指揮=バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督・鈴木雅明です

 

     

 

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスは日下紗矢子さんです

1曲目はJ.M.クラウス「教会のためのシンフォニア」です ドイツ生まれのヨーゼフ・マルティン・クラウス(1756-1792)は、ザルツブルク生まれのモーツアルト(1756-1791)とまったく同じ時代を生きた作曲家です 彼は1781年にスウェーデンのストックホルム宮廷楽団に奉職し、88年に宮廷楽長に就任しています。この作品は1789年のスウェーデン国会の開会式のために作曲されたものです

鈴木氏の指揮で演奏に入ります。ゆったりとした序奏に続いて速いテンポで音楽が奏でられますが、私の第一印象は「モーツアルトの未発表のオペラの序曲が発見されました」と言われてこの曲を聴き、何の違和感も感じない音楽、というものです それほど曲想がモーツアルト的です。しかし、モーツアルトと決定的に違うのは、フーガ風の作りになってはいるものの、モーツアルトには必然性がある(例えば「ジュピター・シンフォニー」)のに対し、クラウスはしつこさしか感じない、つまり無駄な繰り返しが多いということです 図らずもモーツアルトの偉大さを再認識させた作品でした

2曲目はモーツアルト「交響曲第39番変ホ長調K.543」です ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトは1788年の夏、交響曲第39番、第40番、第41番を一気に書き上げています 作曲の動機は不明ですが、プログラム・ノートによると、「楽譜出版のため」という説が有力だそうです つまり当時 活躍していたヨーゼフ・ハイドン、ミヒャエル・ハイドン(兄弟)やコジュルフらが交響曲を3曲セットにして出版していたことに刺激を受けたのではないか、という説です しかし本当のところは本人しか知りません 第1楽章「アダージョ~アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

鈴木氏の指揮で第1楽章に入ります 序奏の後は相当速いテンポで音楽が進められます 固いマレットによるティンパニが心地よく響きます 私がこの曲を聴く時に注目するのは第3楽章「メヌエット」です この楽章の表示は「アレグレット」ですが、鈴木氏はほとんど「アレグロ」で突っ走ります 中間部の2本のクラリネットとフルートによるトリオは、指揮者によってはテンポを落とし「ここぞ聴かせどころ」とばかりに歌わせますが、鈴木氏はほとんどテンポを変えません あっけないくらいです。私はこのトリオはじっくり味わいたいので、テンポを落としてほしいと思います その意味では不満が残ります 第4楽章「アレグロ」はほとんど「プレスト」で走り抜けました

超高速モーツアルトでしたが、これが鈴木雅明スタイルなのでしょう


     


プログラム後半はメンデルスゾーンの宗教曲です 鈴木氏はバッハに次いでメンデルスゾーンの宗教音楽に傾倒していますが、この日やっと、滅多に演奏されない作品を上演できて念願がかなった形です まず最初はオラトリオ「キリスト」作品97です フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809‐1847)は、「パウロ」「エリヤ」に次ぐ3番目のオラトリオとして「地上、地獄、天国」に着手しましたが、未完に終わり、作曲家の死後、残された場面だけがオラトリオ「キリスト」として出版され、1852年9月にイギリスで初演されました この曲は第1部「キリストの誕生」、第2部「キリストの受難」から成ります

オケの後方にRIAS室内合唱団(男声17、女声19)がスタンバイし、ソリストのリディア・トイシャーと櫻田亮が指揮台を挟んでスタンバイします 鈴木氏の指揮で第1部が開始されます。ソプラノのトイシャーは最初のナレーション部分を歌うだけであとは出番がなかったのが残念でした 第2部終盤ではコラールが歌われますが、まるでバッハの「マタイ受難曲」のコラールを聴いているようでした バッハ・コレギウム・ジャパンの常連で最近安定感を増してきたテノールの櫻田亮は、この日も絶好調でした RIAS室内合唱団のコーラスは、これがたった36人で歌っているのか と思うほど透明感がある一方で底時からのあるコーラスを披露してくれました

2曲目はメンデルスゾーンの「詩篇第42番『鹿が谷の水を慕うように』作品42」です 「詩篇」とは「旧約聖書」に収められた150篇の詩から成る詩集のことで メンデルスゾーンは1837年に、その中の第42番に音楽をつけ、曲は1838年1月1日に初演されました。この曲は第1曲から第7曲まであります

この曲で初めてソプラノのリディア・トイシャーが本領を発揮、透明感のある美しい声を会場に響かせました RIAS室内合唱団はこの曲でもクリアな声で見事なアンサンブルを聴かせてくれました

会場いっぱいの拍手とブラボーに応え、RIAS室内合唱団がアカペラでバッハのモテット「来たれイエスよ来たれ」BWV229より「アリア」(最終曲)を透明感のある声で歌い上げ、再び満場の拍手を浴びました

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブロムシュテット ✕ NHK交響楽団でベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」、ステンハマル「交響曲第2番」を聴く / 「葵トリオ」ミュンヘン国際音楽コンクール凱旋リサイタルのチケットを取る

2018年10月26日 07時21分50秒 | 日記

26日(金)。わが家に来てから今日で1484日目を迎え、米紙ニューヨーク・タイムズは24日、トランプ大統領が私用の iPhone で友人らと話している内容が中国に盗聴されていたと報じた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

        大統領自ら危機管理能力が欠如しているから”小学5、6年生並み”と言われるんだ

 

         

 

昨日、夕食に「 厚揚げとトマトの和風炒め物」と「わかめと舞茸のスープ」を作りました 「厚揚げ~」は新聞のコラム「料理メモ」の、「スープ」は cookpad のレシピです

 

     

 

         

 

9月にドイツ・ミュンヘンで開かれた第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝した「葵トリオ」の凱旋リサイタルのチケットを取りました 12月14日(金)午後7時からサントリーホール「ブルーローズ」です 「葵トリオ」は東京藝大の大学院と大学院修了生の3人から成り、メンバーは小川響子(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)、秋元孝介(ピアノ)です プログラムは①ハイドン「ピアノ三重奏曲第27番」、②ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番」、③シューベルト「ピアノ三重奏曲第2番」です

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団の第1896回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調作品68”田園”」、②ステンハマル「交響曲第2番ト短調作品34」です 指揮はN響桂冠名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットです

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスは伊藤亮太郎です

1曲目は ベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調作品68”田園”」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827年)自身が「田園交響曲」と名付け、各楽章に標題を付けています かと言って、単なる自然描写音楽ではなく、ベートーヴェンが楽譜に「田園交響曲、あるいは田舎での生活の思い出。音画というより感情の表出」と記しているように、感情を表した交響曲です

第1楽章:田舎に到着した時の愉しい感情の目覚め「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章:小川のほとりの風景「アンダンテ・モルト・モッソ」、第3楽章:田舎の人たちの楽しい集い「アレグロ」、第4楽章:雷鳴、嵐「アレグロ」、第5楽章:牧歌、嵐の後の喜びと感謝の気持ち「アレグレット」の5楽章からなりますが、第3楽章から第5楽章は続けて演奏されます

1927年7月生まれ、ということは現在満91歳のブロムシュテットが矍鑠たる歩行で指揮台に向かいます 聴衆の中に彼に勝てる人がいるのか

いつものように彼はタクトを持ちません。この日に行われたプロ野球ドラフト会議では、クジを右手で引くか左手で引くかで運命を占ったようですが、ブロムシュテットは両手で音楽を紡いで運命を手繰り寄せます

この田園交響曲は木管楽器群が大活躍しますが、オーボエの茂木大輔、クラリネットの伊藤圭、フルートの甲斐雅之(?)らを中心に、しっかりブロムシュテットの期待に応えていました 第4楽章「雷鳴、嵐」では、ティンパニの強打と弦楽器群の熱演が会場を揺るがしました

 

     


プログラム後半はステンハマル「交響曲第2番ト短調作品34」です カール・ヴィルヘルム・エウフェーン・ステンハマル(1871-1927)はスウェーデンの作曲家・ピアニストです 彼は「交響曲第1番」(1902~03年)を作曲後、シベリウスの「交響曲第2番」(1901~02年)を聴いて衝撃を受け、第1番を撤回し、さらに1910年にデンマークの作曲家ニールセンの「交響曲第1番」を指揮したことをきっかけに 北欧の作曲家として作曲活動をする方向を探り始め、1911年から1915年にかけてこの「交響曲第2番」を作曲しました

この曲は第1楽章「アレグロ・エネルジコ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・マ・ノン・トロッポ・プレスト」、第4楽章「フィナーレ:ソステヌート~アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

ブロムシュテットの指揮で第1楽章に入ります   シベリウスに影響を受けただけあって、ところによってはシベリウス風の音楽が聴こえ、そうかと思うと、伊福部昭風の土俗的、民俗的な音楽も聴こえてきました 第3楽章はどちらかというとドヴォルザークの民俗舞曲を感じさせる曲風でした また、第4楽章は最初の方はマーラー風に響くところがあったりして変化にとんだ曲想でした    この作品でも木管楽郡が大活躍し、金管楽器も冴えていました

ブロムシュテットはアメリカ・マサチューセッツ州生まれですが、両親の母国がスウェーデンで、自身もスウェーデンのノールショッピング交響楽団、オスロ・フィルなどで指揮をとった経験から、今回スウェーデンの作曲家ステンハマルの代表作である「交響曲第2番」をプログラムに取り上げたのだと思います 彼の求める要望にN響の面々は熱演で応えました

演奏後、N響最年少(?)の第1ヴァイオリン奏者・宮川奈々さんからブロムシュテット翁に花束が贈呈されました この日はブロムシュテットにとって今年度最後のN響定期演奏会ということで、「今年もありがとうございました。来年度もよろしくお願いします」という意味が込められていたのだと思います

このシーンを見ながら、初めてブロムシュテットの指揮で演奏を聴いた時のことを思い出していました 記憶があいまいで、時期(多分35年以上前)も会場もはっきりとは覚えていないのですが、誰かの代振りでドレスデン国立歌劇場管弦楽団を指揮してリヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を指揮したのです 確か3曲振ったと思いますが、この曲だけ覚えているのは、事前アナウンスで「ヨハン・シュトラウスのティル~」と間違ってアナウンスしたからです もちろん、後で訂正されましたが、この時のブロムシュテットの鮮やかな指揮とドレスデンのオケの音色にすっかり魂を奪われ、それ以来ドレスデンのオケが来日するたびに聴きに出かけることになったのです

なぜか、あの頃のブロムシュテットと現在のブロムシュテットとあまり変わらないような気がします とにかく元気溌剌です 来年も元気な姿でN響を振ってほしいと思います

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高橋臣宣 ✕ 松田理奈 ✕ 清水和音でブラームス「ホルン三重奏曲」ほかを聴く~芸劇ブランチコンサート「勇壮なるホルンの響き」 / ヤニック・ネゼ=セガン MET新音楽監督に~日経の記事から

2018年10月25日 07時20分06秒 | 日記

25日(木)。バッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)から来シーズンの年間会費の請求書が届いたので銀行振込しました B.C.Jは振込先がM銀行S支店だけなので不便です と書いても誰もどこの銀行は分かりませんね 今 気が付いたのですが、三大メガバンクの三菱UFJ銀行も、三井住友銀行も、みずほ銀行も、すべてイニシャルがMです これに街金融を入れたら4大M bankです。これらが破産すると bankrupt になってしまいますが

振り込んで安心して家に帰ったら、文京シビックホールから「響きの森クラシック・シリーズ チケット予約確定のご案内」というハガキが届いていて、10月29日~11月4日の間に現金と引き換えに来シーズンのチケットを渡すという内容でした またお金が出ていきます その前に26日(金)が「都民芸術フェスティバル」のオーケストラ・シリーズと室内楽シリーズの各1回券発売日なので、これもお金が出ていきます 今月はきついなあ

ということで、わが家に来てから今日で1483日目を迎え、1882年に建築が始まり、なお未完のスペイン・バルセロナの世界遺産サグラダ・ファミリア教会が、市の建築許可を得ずに工事を進めていたとして、教会が3600ユーロ(約47億円)の「解決金」をバルセロナ市に支払うことで合意した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      教会は建築家ガウディ没後100年にあたる2026年の完成をめざしているそうだよ

 

         

 

昨日、夕食に「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」「タラと豆腐と野菜のプチ鍋」「マグロの山掛け」を作りました 「プチ鍋」は土鍋でなく小さな鍋で作ったのでプチ鍋と名付けました。よろしかったでしょうか

 

     

 

         

 

昨日の日経 夕刊文化欄に「ヤニック・ネゼ=セガンさん MET新音楽監督に」という記事が載っていました 超訳すると

「9月、米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)の新音楽監督に、モントリオール出身の43歳の若きカナダ人指揮者が就任した 同歌劇場とは約10年の付き合いがあり、新ポストへのスムーズな移行に自信を示す 『誰もがスマホ、メール、仕事から解放されたいと思っている。オペラはそういう人たちを全く別の世界に連れていける』と語る。同歌劇場創設以来初めての日曜日興行の決定、ニューヨークの他の文化施設とのコラボ公演を仕掛けるなど、オペラのファン層の広がりを狙う 現在音楽監督を務めるフィラデルフィア管弦楽団などとの来日経験も豊富。『日本人の音楽への集中力は指揮台の上で突き刺さってくるほど強い』と語る。映画館で上映する『ライブ・ビューイング』が定着し、今シーズンの上映は11月2日から始まる

この記事を読んで意外に思ったのは、「初めての日曜日興行の決定」です ということは、これまでメトロポリタン歌劇場は日曜日の公演はなかったということになります 日本はむしろ逆で、土曜日、日曜日でなければオペラを観られない人たちを配慮してか、土・日公演はごく普通のこととして定着しています この点においては 日本の方が先んじていると言っても良いのでしょうか

 

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで「第15回芸劇ブランチコンサート 勇壮なるホルンの響き」を聴きました プログラムは①バッハ「G線上のアリア」、②サン・サーンス「白鳥」、③ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」、④ラフマニノフ「ヴォカリーズ」、⑤モンティ「チャールダーシュ」、⑥ブラームス「ホルン三重奏曲」です 演奏は、ホルン=高橋臣宣(東京フィル首席)、ヴァイオリン=松田里奈(2004年 日本音楽コンクール第1位)、ピアノ=清水和音です

 

     

 

今回から2階センターブロック左通路側で聴きます。いつも通り、1階、2階席は満席状態です 1時間強で2,200円という割安なチケット代が受けているのでしょう

ホルンの髙橋氏とピアノの清水氏が登場し、さっそく1曲目のバッハ「G線上のアリア」の演奏に入ります この曲はJ.S.バッハ(1685-1750)が1729年から1731年にかけて作曲した「管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068」の第2曲「エア」を、19世紀のヴァイオリニスト、ヴィルヘルミがヴァイオリンのG線だけで演奏するように編曲した作品です 清水氏のピアノに乗って高橋氏のホルンの豊かな音色が会場に響き渡ります

2曲目はサン・サーンス「白鳥」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1886年に作曲した組曲「動物の謝肉祭」の第13曲で、チェロによって演奏される作品です 今回は初めてホルンでの演奏を聴きましたが、高橋氏は長い旋律をものともせず音楽性豊かに演奏しました

ここで高橋氏が舞台裏で楽器をF管に代えて再登場します 清水氏が「私はホルンが大好きで、演奏者では東京フィルの髙橋さんの演奏がとてもリズム感が良いので好きです」と語りかけると、高橋氏は「いつもシャープにはっきりと吹くことを心がけています」と語っていました。さらに「オーケストラの中で吹くのも相当のプレッシャーでしょうが、ソロで吹くのもプレッシャーでしょう」とマイクを向けると、「相当のプレッシャーですが、一方で気持ちが良いものです」と答えていました。「次の『パヴァーヌ』は管弦楽曲版では冒頭ホルンが演奏するのですが、これを聴くとピアニストとしては羨ましいなあと思います 髙橋さんは名人ですから上手く吹いてくれると思います」と潜在的な圧力をかけると、「すごいプレッシャーを感じます 精一杯頑張ります」と答えました

そして、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」の演奏に入ります この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1899年に作曲したピアノ曲です 髙橋氏は、表情豊かに味わい深い演奏を繰り広げ、聴衆を深い感動に誘いました この演奏を聴いていたら、管弦楽曲版でもう一度聴いてみたくなりました

ここで、ヴァイオリンの松田理奈さんが舞台に呼ばれます 彼女は花粉症であまり声が出ないとのことで、「ブタクサです」、「難しいです」という少しの言葉しか発しませんでした

3人揃って演奏するのはセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)の「ヴォカリーズ」(三重奏版)です この曲は1912年に作曲した歌曲集「14の歌」の最終曲です ヴォカリーズというのは母音の「ア」だけで歌われる手法です。三重奏編曲版は高橋氏が見つけ出してきたそうですが、演奏を聴く限りアンサンブルが綺麗な作品に仕上がっています

次はピアノの伴奏でヴァイオリンがモンティ「チャールダーシュ」を演奏します この曲はイタリアのヴァイオリニスト・作曲家のモンティ(1868‐1922)が1904年に作曲した作品です ハンガリーの民俗音楽で、哀愁を帯びた部分と、超高速で弾かれる超絶技巧部分が対比して演奏されます。松田さんの演奏は鮮やかそのものでしたが、清水氏の解説によると、この曲は路上で弾くような雰囲気を持った作品なので、弾ける人と弾けない人がいて、弾けない人は恥ずかしがってしまう傾向がある、とのことです 松田さんは恥ずかしがらないタイプのようです

最後は「本日のメーンイベント~60分3本勝負~」じゃなくて、ブラームス「ホルン三重奏曲変ホ長調作品40」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833‐1897)が1865年に作曲した作品です 第1楽章「アンダンテ」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ」、第3楽章「アダージョ:メスト」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

清水氏の話によると、数あるブラームスの室内楽の中で一番好きな曲なのに、来日する著名な管楽器奏者はたいていピアニストの奧さんとかパートナーを連れてくるので、ピアニストとして呼ばれてピアノ三重奏曲を演奏する機会がほとんどない、とのこと ホルンの髙橋氏はこれが3度目、ヴァイオリンの松田さんは今回が初めてだそうです

全体を通じて、高橋氏の歯切れのよいホルンの演奏が際立っており、なぜ清水氏が彼を絶賛するかが良く分かりました 一方、アダージョ楽章における独特の寂寥感を醸し出すことにおいても優れた演奏でした

ギネスブックにも「世界で一番難しい楽器」として認定されているというホルン。高橋氏の話では「素人は音が出るだけで軌跡だ」とおっしゃっていましたが、普段、聴くだけの身にとって、ホルンという楽器が身近に感じたコンサートでした

 

         

 

コンサート終了後、会場入口で来年4月以降のブランチコンサートの前売りをやっていたので、4月、6月、8月の3回分のチケットを購入しました(一般発売は27日から)。チラシを見ると、シレッとチケット代が200円値上がりし@2,400円となっています まあ、それでも格安には違いないので文句はありません。今度は1階席左ブロック右通路側にしました チラシの内容を見ると、ますます充実したプログラム編成、演奏者も錚々たるメンバーになっています

 

     

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大友直人 ✕ 森麻季+福原寿美枝ほか ✕ 東京交響楽団 ✕ ミナトシティ・コーラスで ヴェルディ「レクイエム」を聴く ~ ヴェルディの意図通りの演奏=第27回Kissポート クラシックコンサート

2018年10月24日 07時26分21秒 | 日記

23日(火)。わが家に来てから今日で1482日目を迎え、トランプ米大統領は22日、大型減税の第2弾として中間所得層の家計を対象に「10%程度の所得税率の引き下げを打ち出す」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     財政赤字拡大が分かっていてやるのは 11月の中間選挙狙いとしか考えられないな

 

  昨日は、娘も私も外食だったので、夕食作りはお休みしました   

 

         

 

昨夕、サントリーホールで「第27回Kissポート クラシックコンサート」を聴きました プログラムはヴェルディ「レクイエム」です 出演は、ソプラノ=森麻季、アルト=福原寿美枝、テノール=吉田浩之、バリトン=岡昭宏、管弦楽=東京交響楽団、合唱=ミナトシティ・コーラス、指揮=大友直人です

1868年、ロッシーニの死に際して13人のイタリアの作曲家による「レクイエム」合作の企画があり、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)は最後の部分「われを解き放ちたまえ」を作曲しましたが、最終的にこの企画は頓挫し演奏の機会を得られませんでした   1873年、ヴェルディは敬愛する詩人・小説家のマンゾーニの死を追悼して、9月半ばから翌年4月半ばにかけて他の部分を完成、作品はマンゾーニの一周忌の1874年5月22日にミラノの聖マルコ教会で120名の合唱と100名の選抜オーケストラにより初演され 大成功を納めました

 

 

     

 

ヴェルディ「レクイエム」は次の通り大きく7つの部分から成ります

第1曲:レクイエムとキリエ=四重唱と合唱

第2曲:怒りの日(ディエス・イレ)=四重唱と合唱:「怒りの日」「ラッパは驚くべき音を」「死は驚く」「すべてが書き記されている書が」「哀れな私」「威厳のある王よ」「思い出してください」「私は嘆き苦しみ」「呪われた者は退けられて」「涙の日」の10曲から成る。

第3曲:オッフェルトリオ(奉納唱)=四重唱

第4曲:サンクトゥス(聖なるかな)=二重唱によるフーガ

第5曲:アニュス・デイ(神の子羊)=二重唱と合唱

第6曲:ルクス・エテルナ(永遠の光)=三人のソリストが死者を照らす永遠の光を願う

第7曲:リベラ・メ(解き放ちたまえ)=ソプラノ独唱と合唱

 

     

 

自席は1階20列27番、センターブロック右通路側です。会場はほぼ満席です

P席にミナトシティコーラスの男女混声合唱約190名がスタンバイします 中央の男声を左右の女声が挟む形で配置され、男女比は ほぼほぼ1対2です 男声が少ないのはアマチュア・コーラスの宿命でしょうか

オケはいつもの東響の並びで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスはグレヴ・二キティンです

ソリスト4人と指揮者・大友直人氏が登場し早速演奏に入ります 静かな「レクイエム」に続いて、「怒りの日」が激しい和音の連打に導かれ合唱によって力強く歌われます。このテーマは「レクイエム」の中で最も有名なドラマティックな音楽ですが、この後、クイド・スム・ミゼルの前、ラクリモサの前、リベラ・メの後の3回登場し、長い「レクイエム」にアクセントを付けます 「怒りの日」の後の「ラッパは驚くべき音を」では、ステージ左右上方席に陣取ったバンダ(トランペット各2本)が華々しくファンファーレを演奏します

歌手陣は4人とも好調で、とくに女性の二人が素晴らしかった ソプラノとメゾ・ソプラノの二重唱が何度か聴かれますが、透明感のある森麻季さんと深みのある艶やかな福原寿美枝さんのデュオは息もピッタリで、見事に調和していました 森麻季さんは聴くたびに良くなっているように思います 福原寿美枝さんは初めて聴きますが、こんなに素晴らしいメゾがいたのかとびっくりしたくらいです

テノールの吉田浩之さんはベテランの域だと思いますが、声が良く通っていました 岡昭宏さんは数々のコンクールで入賞歴がある通り、魅力のバリトンでした

ミナトシティコーラスの皆さんは、アマチュア合唱団としては大健闘でした。「怒りの日」の力強い合唱は迫力満点でした

大友直人✕東京交響楽団はしっかり歌手陣と合唱を支え、約80分間を弛緩することなく演奏し遂げました

さて、ヴェルディの「レクイエム」は、初演当時から「あまりにもイタリア・オペラ的だ」「ドラマティック過ぎる」「教会に相応しくない」といった批判にさらされてきました これについてヴェルディは、初演に先立つ1874年4月26日、楽譜出版社のリコルディに宛てた書簡に「このミサ曲をオペラと同じように歌ってはいけません。オペラでは効果があるかも知れない音声装飾はここでは私の趣味ではないのです」と記しています 

この日の4人の独唱と合唱を聴いていて感じたのは、大友氏はヴェルディのこの言葉の重みを歌手や合唱に伝え、ヴェルディの意思に沿って 装飾を排して歌うように要請したのではないか、ということです ソロも、二重唱も、四重唱も、合唱も、私にはオペラのようには聴こえませんでした 大友氏は「レクイエム」を 「死者のためのミサ曲」の意味を意識して歌うように求めたのではないか、と思いました

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日下紗矢子✕北谷直樹✕読響アンサンブルでバッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番」、バルトーク「弦楽のためのディベルティメント」他を聴く~これぞアンサンブルの極致!

2018年10月23日 07時20分34秒 | 日記

23日(火)。わが家に来てから今日で1481日目を迎え、米ニューヨーク・タイムズ(電子版)は21日、トランプ政権が性の定義を生まれつきの性別に限定し、変更を認めない措置を検討していると報じた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      あれもこれも11月の中間選挙を見据えて 共和党支持層にアピールする政策だな

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」を作りました 野菜は茄子、ピーマン、トマト、玉ねぎが入っています。何回食べても飽きない味です

 

     

 

         

 

昨夕、よみうり大手町ホールで読響アンサンブル・シリーズ「日下紗矢子リーダーによる室内合奏団」公演を聴きました プログラムは①ビーバー「バッターリア」、②J.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番」、③バルトーク「弦楽のためのディヴェルティメント」です ヴァイオリン独奏はベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のコンマスで、読響の特別客員コンマスの日下紗矢子、②のチェンバロ独奏はアーノンクール、シュタイアーなどに師事した北谷直樹、フルート独奏は首席のフリスト・ドブリノヴです その他の出演者は、ヴァイオリン=太田博子、鎌田成光、小杉芳之、山田耕司、瀧村依里、小田秀、杉本真弓、外園彩香、山田友子、ヴィオラ=鈴木康治、正田響子、冨田大輔、三浦克之、チェロ=富岡廉太郎、唐沢安岐奈、松葉春樹、渡部玄一、コントラバス=瀬康幸、ジョナサン・ステファ二アクというメンバーです

いつものように、開演前にプレトークがあり読売新聞社の鈴木美調さんが今回の仕掛け人・日下紗矢子さんに演奏曲目についてインタビューしました 鈴木さんはさすがにインタビューが上手いですね

 

     

 

さて、本番です。1曲目はビーバー「バッターリア」です 「バッターリア」とはバロック時代に好まれた戦いを描写した合奏曲とのことで、この曲はボヘミア出身のハインリッヒ・イグナツ・フォン・ビーバー(1644-1704)が1673年に作曲した作品です 演奏時間にしてわずか10分程度の作品の中に8つの楽章があります

日下さん以下9人の弦楽奏者とチェンバロの北谷直樹氏が登場し、さっそく演奏に入ります プレトークで日下さんが話された通り、第2楽章では各々の楽器がそれぞれ別々のメロディーを演奏し 酩酊状態にある兵士を表現します 不協和音ここに極まれり また、第7楽章ではチェロとコントラバスのピッツィカートが銃声を模倣して弾かれます 傑作なのは、戦いに負けたらしい兵士たちが「やれやれ」といった感じでため息をつくような最後の一音です

この曲を聴いて、思いました。バロックとは「いびつな真珠」という意味だけど、ビーバーの「バッターリア」こそ「いびつな真珠」ではないか、と

2曲目はJ.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調」です ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)はケーテンのレオポルト公のカペルマイスター(宮廷楽長)の時代(1717ー1723)に楽器編成の異なる6つの協奏曲を書きました これをブランデンブルク辺境伯に献呈したことから 後に「ブランデンブルク協奏曲」と呼ばれるようになりました この曲の大きな特徴は、従来コンティヌオ(通奏低音)として扱われていたチェンバロが独奏楽器として活躍するところです これは当時の音楽界では画期的な出来事でした。第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アフェットゥオーソ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります

日下さん以下8人の弦楽奏者とフルートのドブリノヴ氏、チェンバロの北谷氏がスタンバイし第1楽章の演奏に入ります プレトークで、日下さんは「ベルリンでも室内楽を多く演奏していますが、第5番を演奏するのは初めてです」と語っていましたが、とても初めてとは思えないノリの良さでアンサンブルをリードしていきます また「バロック音楽は『拍』の取り方が大事で、それを共有することが重要です」と語っていましたが、10人の息はピッタリです 終盤の北谷氏によるチェンバロのカデンツァはさすがだと思いました 鮮やかな演奏はまさに名人芸です 第2楽章はソロ・ヴァイオリン、フルート、チェンバロによる三重奏ですが、この演奏が素晴らしかった 極上のワインを飲んでいるような味わいでした そして第3楽章は再び弦楽合奏とフルートとチェンバロの息の合ったアンサンブルが素晴らしい しばらく拍手が鳴り止みませんでした

この拍手を受けて、北谷氏が「これから演奏するトリオ・ソナタのジーグはバッハ作と言われていますが、疑わしい作品です アンコールに演奏します」とアナウンスして、バッハ「トリオ・ソナタ  ハ長調BWV1037」から「ジーグ」を、日下、ドブリノヴ、北谷、富岡の4人で演奏し、大きな拍手を浴びました

 

     


プログラム後半はバルトーク「弦楽のためのディヴェルティメント」です この曲はベラ・バルトーク(1881-1945)が1939年8月に、当時の作曲家たちのパトロン、アルパウル・ザッハーのスイスの別荘で作曲しました 作曲期間はなんと2週間でした 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「モルト・アダージョ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ」の3楽章から成ります

第1楽章は民俗風のメロディーが様々に変容していき、とても面白い曲です 弦楽だけの一糸乱れぬアンサンブルが見事です 日下さんはプレトークで「日本の弦楽奏者のレヴェルは非常に高い」と語っていましたが、まさにその通りの緻密なアンサンブルです 「緻密のアッコちゃん」などと冗談を言っている場合ではありません 第2楽章は憂いに満ちた暗い音楽が続きますが、聞こえてくるのは第二次世界大戦の足音でしょうか 第3楽章は一転、明るく弾むような民族舞曲風の音楽です ヴィオラの鈴木康治氏などは実に楽しそうに弾いています 演奏家はこうでなくっちゃ 20人の弦楽奏者の演奏はアンサンブルの極致です

満場の拍手とブラボーに応え、アンコールにモーツアルト「ディベルティメントK.136」から第3楽章「プレスト」が軽快に演奏され 再び会場溢れんばかりの拍手の中、コンサートの幕を閉じました  この日の公演は、読響の弦楽セクションの緻密なアンサンブルを まざまざと見せつけられた、実に素晴らしいコンサートでした

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ベートーヴェンの告白」~ピアニスト本田聖嗣氏のエッセイから / 「村上レディオ 第2弾」を聴く / 伊坂幸太郎著「陽気なギャングは三つ数えろ」を読む~4人のギャングの特殊能力で危機を脱出!

2018年10月22日 07時26分12秒 | 日記

22日(月)。昨日午後7時から TOKYO FM で「村上レディオ  第2弾~秋の夜長は村上ソングスで」を聴きました   これは小説家・村上春樹がディスクジョッキーを務める番組で、今回が2回目です。村上氏が自宅から持参したCD(LPも?)をかけながら、その曲にまつわるエピソードを村上節で披瀝していきます 前回アネサ・フランクリンの曲をかけたら、最近彼女が死去したことから、最初は彼女の歌う「マイウエイ」がかかりました 村上氏の説によると、彼女はオリジナル曲を換骨奪胎してまったく違う曲にして歌っているが、クラシックで言えばグレン・グールドが似ているとのことです その後、ダニー飯田とパラダイスキングとか、ジャズピアニストの大西順子(「ゲット・バック」)とか、エンゲルベルト・フンパーディンク(「ラスト・ワルツ」)とか、ルイ・アームストロング+ジャック・ニコルソン(「バラ色の人生」)とか、スタン・ゲッツとか、いろいろなジャンルの歌手や演奏家の曲がかかりましたが、残念ながら今回もクラシックはかかりませんでした 55分間耳を傾けていましたが、あの調子ではクラシックの入る余地はまったくありません。もし1曲でも入ったら浮いてしまいます もし第3弾があるのなら、今度こそ「クラシック特集」を期待したいと思います

ということで、わが家に来てから今日で1480日目を迎え、11月6日に投開票される米中間選挙まで2週間あまりとなったが、世論調査によると定数435の下院では民主党が過半数を奪い返す可能性が十分ある というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプは「下院で負けても自分の責任ではない」と予防線を張ってるようだよ

 

         

 

昨日の日経朝刊「The STYLE」面にピアニストの本田聖嗣氏が「ベートーヴェンの告白」と題するエッセイを寄せています。超訳すると

〖私がプレゼンターを務めているインターネットのクラシックラジオ「OTTAVA」の事務局に、ベートーヴェンの幼なじみのフランツ・ゲルハルト・ヴェーゲラー医師が創業者だったという孫が経営するドイツの「ヴェーゲラー醸造所」から「今度『ベートーヴェンのベストフレンド』というワインを売り出すので、宣伝してほしい」という電話がかかってきた。ベートーヴェンは若くしてボンを離れウィーンに移住したが、ヴェーゲラーとは手紙のやり取りをしていた ベートーヴェンは 遠く離れても親身になってくれる医師であり幼なじみでもあるヴェーゲラーに、『私はウィーンで気難しい人間として知られているが、考えてもみたまえ。音楽家の看板を下げている私が『すいません、おっしゃることが良く聞こえないのですが?』などと聞き返せるだろうか?それを避けるために、気難しい男の振りをしているのだ。この苦労がわかるだろうか!」と告白している。故郷ボンを後にしてから決して振り返らなかったベートーヴェンが、旧知の友人だけに見せた弱さ・・・ 死の床にあるベートーヴェンにヴェーゲラーから故郷のワインが差し入れられるが、弱ったベートーヴェンは「遅すぎる!」といって息を引き取った、という逸話が添付のリーフレットに記されていた。ドイツから届いた立派な木箱には「Symphony No.9」と書かれていた ワインを味わいながら、鉄人ベートーヴェンもやはり人間だったのだ・・・としみじみと思いながら噛みしめた

ベートーヴェンが聴覚を失いながら次々と名作を世に出していったことは良く知られていますが、突然耳が聴こえなくなったのではなく、だんだんと聞こえなくなっていったようです そのために反って、人との会話に苦労をするようになったのだと思われます    ベートーヴェンの生まれ故郷ボンの「Symphony No.9」というワイン、飲んでみたいものです   在庫ありますか?と訊いて、nein と言われたら諦めるしかありませんが

 

         

 

伊坂幸太郎著「陽気なギャングは三つ数えろ」(祥伝社文庫)を読み終わりました 伊坂幸太郎は1971年千葉県生まれ。2000年に「オーデュボンの祈り」で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞してデビューして以来、数々のヒット作を発表、多くの文学賞を受賞しています

「陽気なギャングは三つ数えろ」は、2003年2月の「陽気なギャングが地球を回す」、2006年の「陽気なギャングの日常と襲撃」に続く9年ぶりのシリーズ第3作です

主人公の銀行強盗はそれぞれ特殊能力を持った4人組です。成瀬は他人の嘘を見抜く能力を持っており、ギャングのリーダー格的存在 響野は口から出まかせの演説の名人で、普段は喫茶店ロマンを経営している 雪子は時間をコンマ単位で把握できる体内時計の持ち主でシングルマザー 久遠はスリの名人で、動物に詳しい 響野には妻の祥子がおり、雪子には息子の慎一がいます 物語は彼らを巻き込んで展開します

 

     

 

久遠はひょんなことから週刊誌記者の火尻を暴漢から救うが、ギャングの一味だという正体に気付かれてしまう その直後から4人のギャングたちの身近で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発する 4人は連携を取りながらハイエナのようにしつこく嗅ぎまわる火尻の追及をかわし、逆に追い詰めていく

この本を読むと、「今どき、銀行ギャングなんて出来るわけがないだろう」と思いますが、銀行強盗のシーンは冒頭部分だけで、物語のキッカケに過ぎません この本を読む楽しさは、4人のギャングがそれぞれの特殊能力を生かして如何にして目の前の危機を脱し 反転攻勢に移るかにあり、伊坂幸太郎特有の会話の妙にあります

例えば、成瀬と響野の会話に次のようなものがあります

成瀬「世の中にはどっちかに分類できない話が多いんだ。いい話にも悲しい話にも思えるものばかりだ

響野「チャップリンの言ったあれか?人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ、という

成瀬「それとはちょっと違う

読み始めたら読む手が止まらない面白さです。お薦めします

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする