人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

尾高忠明 ✕ 辻井伸行 ✕ 読売日響でショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番」&「交響曲第5番」、芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」を聴く ~ 読響 第679回名曲シリーズ

2025年02月28日 00時18分41秒 | 日記

28日(金)。2月は逃げる   月末を迎えたので、恒例により2月の3つの目標の実績をご報告します ①クラシック・コンサート=15回、②映画鑑賞=2本、③読書=5冊でした 今月は28日しかないのでこんなものだと思います

ということで、わが家に来てから今日で3699日目を迎え、トランプ米大統領は25日夜、自らが主張するパレスチナ自治区ガザのリゾート化構想に関する動画を自身のSNSに投稿したが、「トランプタワー」を想起させる高層ビルや自身の黄金像が立つ様子が描かれており、物議を醸しそうだという観測が流れている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプは 自身を”王様”と自称してるが 復讐を恐れて 誰も ”裸の王様”と言えない

         

昨夜、サントリーホールで読売日響「第679回 名曲シリーズ」を聴きました プログラムは①芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」、②ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 作品35」、③同「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です 演奏は②のピアノ独奏=辻井伸行、トランペット独奏=辻本憲一(首席)、指揮=尾高忠明です

     

会場はいつもより中高年の女性客が多いようです たぶん”辻井押し”のファンの人たちだと思われます とても良いことです その調子で どんどんクラシック・コンサートに足を運びましょう

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の並び コンマスは林悠介、隣は戸原直というダブルトップ態勢を敷きます

1曲目は芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」です    この曲は芥川也寸志(1925ー1989)が1950年のNHK放送開始25周年記念管弦楽曲懸賞に応募するために作曲、特選入選を果たした作品です   作品は近衛秀麿指揮日本交響楽団(現N響)により1950年3月21日に日比谷公会堂で初演されました 芥川也寸志の名はこの曲により人口に膾炙するようになりました 飯尾洋一氏のプログラム・ノートによると、芥川は懸賞金の20万円で田園調布に家を買ったそうです 億ションが当たり前の昨今の東京の住宅事情から見ると隔世の感があります 第1楽章「アンダンティーノ」、第2楽章「アレグロ」の2楽章から成ります

尾高の指揮で第1楽章に入ります 木管群による賑やかな演奏が展開しますが、中間部ではイングリッシュ・ホルンが寂寥感のある演奏を繰り広げます 第2楽章はシンバルの一撃で開始され、金管楽器が勇壮なテーマを奏で、明快で歯切れのよいリズムによる推進力に満ちた演奏が展開します 極めてスタイリッシュな曲想で、アメリカのシンフォニー・オブ・ジ・エアを率いて来日し、この曲を指揮したソーア・ジョンソンが、帰国後にこの曲を200回以上取り上げたというのもよく分かる気がします 実に爽快な演奏でした

2曲目はショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 作品35」です    この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1933年に作曲、同年10月15日にレニングラードで作曲者の独奏ピアノにより初演されました   楽器編成から言えば「ピアノ、トランペット、弦楽合奏のための協奏曲」です  第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「レント」、第3楽章「モデラート」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成りますが、続けて演奏されます

ピアノ独奏の辻井伸行は2009年のヴァン・クライバーン国際コンクールで日本人として初優勝を飾りました それ以降、内外のオーケストラと共演を重ねています

ピアノがステージ中央に配置され、テレビカメラがソリストの指の動きを捉える位置に設置され、周囲に集音マイクが立てられます

     

弦楽器が12型に縮小し、尾高の指揮で第1楽章に入りますが、辻井のピアノは「アレグロ・モデラート」ではなく「プレスト」のような速さで突っ走ります 独奏トランペットも、オケも辻井のペースに合わせる形で演奏が進行します 第2楽章は一転、叙情的な演奏が繰り広げられます 後半では弱音器付きの独奏トランペットによる抒情的な演奏が印象的です 短い第3楽章に続いて、第4楽章が賑やかに開始されますが、まるで「競争曲」のようにトランペットとピアノがせわしない対話を繰り広げ、オケを伴ったスピード感あふれる演奏で「狂騒曲」のごとくフィナーレに突入しました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中 カーテンコールが繰り返され、辻井はカプースチン「プレリュード第1番」を目にも止まらぬ速さで鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

     

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です この曲は1937年に作曲、同年11月21日にレニングラードで初演されました この前年の1936年1月、ソ連共産党機関紙「プラウダ」は、ショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンスク群のマクベス夫人」を「音楽ではなく荒唐無稽。粗野で原始的で下品」と批判しました このため彼は「交響曲第4番」を完成したものの、野心的な内容への批判を回避するため作品の発表を撤回します その後に作曲したのが「交響曲第5番」で、明快で分かりやすいスタイルが当局にも受け入れられ、結果的にショスタコーヴィチの名誉は回復しました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

弦楽器は16型に拡大し、尾高の指揮により第1楽章がチェロとコントラバスの魂のこもった演奏で開始されます 荒木奏美のオーボエ、フリスト・ドブリノヴのフルート、金子平のクラリネットがよく歌い、弦楽セクションが渾身の演奏を展開します 特にヴィオラ・セクションの美しいアンサンブルが印象的です 第2楽章は低弦の力強い演奏により開始されます テューバ、バストロンボーンの重心の低い演奏が印象に残ります 林コンマスのソロが素晴らしい 第3楽章は弦楽セクションによる繊細な響きで開始されます ハープをバックに歌うフルートの演奏が寂寥感に満ちて素晴らしい また、荒木のオーボエの演奏が冴え渡ります 第4楽章はティンパニの激しい連打と弦楽セクションの渾身の演奏で開始されます 金管楽器が咆哮し、切れ味鋭い弦楽器が渾身の演奏を展開し、打楽器が炸裂し、オーケストラの総力を挙げてのアグレッシブな演奏によってスケールの大きなフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーの嵐のなか、カーテンコールが繰り返されました

この日は読響のゴージャスなサウンドを堪能することが出来ました

     

     

     

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新国立オペラ、ビゼー「カルメン」初日公演を観る ~ サマンサ・ハンキー、アタラ・アヤン、ルーカス・ゴリンスキー、伊藤晴にブラボー!

2025年02月27日 00時47分20秒 | 日記

27日(木)。わが家に来てから今日で3698日目を迎え、トランプ米大統領は25日、外国人富裕層に米国の永住権を500万ドル(約7億5000万円)で「販売する」と表明、2週間後をめどに正式発表する  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     現在の米国に それほどの価値を見出す外国人富裕層がいるとは 思えないんだけど

         

昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でビゼー「カルメン」初日公演を観ました キャストは カルメン=サマンサ・ハンキー、ドン・ホセ=アタラ・アヤン、エスカミーリョ=ルーカス・ゴリンスキー、ミカエラ=伊藤晴、スニガ=田中大輝、モラレス=森口賢二、ダンカイロ=成田博之、レメンダード=糸賀修平、フラスキータ=冨平安希子、メルセデス=十合翔子。合唱=新国立劇場合唱団、児童合唱=TOKYO FM少年合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=ガエタノ・デスピノーザ、演出=アレックス・オリエです

     

歌劇「カルメン」はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が1873年から翌74年にかけて作曲、1875年にパリのオペラ・コミック座で初演されました

スペインのセビリアのたばこ工場で働く魔性の美女カルメンは伍長のドン・ホセに興味を抱き、誘惑する 彼にはミカエラという許嫁がいたが、カルメンの魅力と誘惑に負け、軍隊を脱走しロマの密輸団の一員となる しかし、カルメンのホセへの愛は続かず、花形闘牛士エスカミーリョに心変わりするなか、ホセは危篤の母親のもとに駆けつけるため密輸団を離れる 闘牛の日、ホセは再びカルメンの前に現れ復縁を迫るが、きっぱりと拒否される 逆上したホセは短剣でカルメンを刺し殺す

     

私が新国立オペラ「カルメン」を観るのは2002年、2004年、2007年、2010年、2014年、2017年、2018年、2021年に次いで、今回が9回目です アレックス・オリエの演出では前回=2021年の新制作公演に次いで2回目です 2021年の初公演は新型コロナウイルス感染拡大防止策を講じての上演でしたが、今回は制約を外した演出に練り直した上で上演されました

人気演目の「カルメン」の初日公演ということでしょうか、会場はほぼ満席です なぜか中高生くらいの若者の姿をあちこちで見かけました 招待でもされたのだろうか

指揮を執るガエタノ・デスピノーザはイタリア・パレルモ生まれ 1996年にロヴェレ・ドーロ国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で最高位を獲得 ファビオ・ルイージと出会った後、2008年から指揮者として活動を開始。2013~17年にはミラノ・ヴェルディ交響楽団首席客演指揮者を務める。新国立劇場では「さまよえるオランダ人」「愛の妙薬」を指揮した

デスピノーザの指揮で有名な「前奏曲」がスピード感あふれる演奏で開始され、ドラマティックな音楽を聴かせます 1~3月の3か月間だけオーケストラ・ピットに入る東京交響楽団も絶好調です

     

最初にアレックス・オリエと彼の演出についてご紹介しておいた方がよいでしょう

アレックス・オリエはスペイン・バルセロナ生まれ パフォーマンス集団「ラ・フーラ・デルス・バウス」の6人の芸術監督の一人で、同カンパニーは世界的な評価を確立した バルセロナ・オリンピック開会式をはじめとする大規模イベントや、演劇、映画など幅広く活躍している 新国立劇場では2019年オペラ夏の祭典「トゥーランドット」、21年「カルメン」を演出している

舞台はロック・コンサートでよく使われるような鉄パイプ構造のステージになっています 主人公のカルメンは有名なバンド歌手、ドン・ホセは警察官という設定になっています カルメンの周囲には、ミュージシャン、音響技術者、警備員、プロデューサー、そしてカルメンを追いかけるファンがいます。密輸商人はドラッグ・ディーラーです

アレックス・オリエが「カルメン」のモデルとして想定したのはイギリスのシンガーソングライター、エイミー・ワインシュタイン(1983-2011)でした 彼女は録音したアルバムが次々と賞を受賞するなど高い評価を受けた一方、薬物中毒やアルコール依存症などに悩まされ、27歳の若さで死去しました

私はオペラに関しては、基本的にオーソドックスな演出を好みます 基本スタンスは「演出は音楽の邪魔をしてはならない」「演出家のための演出はお断り」というものです そのスタンスに照らして、アレックス・オリエの演出はどうなのか、ということが問題になります 結論から言うと、許される範囲だと思います 保守的なスタンスの人は「カルメンがバンド歌手で、ホセが警察官ってどうなのよ?」と疑問を持つことでしょう しかし、オペラの演出は「100年以上も前の作品を、いかに現在の人々にリアリティーをもって受け止めてもらえるか」ということを目指しているはずです その点、エイミー・ワインシュタインという人物をモデルとして設定したことによって、よりリアルな演出が可能になったと思います

     

カルメン役のサマンサ・ハンキー(メゾソプラノ)はジュリアード音楽院で学士号と修士号を取得した後、グラインドボーン・カップやオペラリア・コンクール、メトロポリタン歌劇場ナショナル・カウンシル・オーディションなどで入賞 2019~21年にはバイエルン州立歌劇場と契約し、多くの役に出演する傍ら、チューリヒ歌劇場、ノルウェー国立オペラなどにデビュー、世界中のオペラハウスで活躍しています 最初はインパクトが弱いかな、と思いましたが、徐々に存在感を示すようになりました この人の大きな特徴は演技力が素晴らしいことです 「カルメン」に関してはエリーナ・ガランチャといい勝負だと思います

ドン・ホセ役のアタラ・アヤンはブラジル出身のテノールです 2007年にブラジルの平和劇場で「ジャン二・スキッキ」リヌッチョでデビュー ボローニャ歌劇場イタリア・オペラ研修所などを経て、世界の歌劇場で活躍しています 本公演の出演者の中で一番良かったと思います リリカルな歌唱が印象的でした

エスカミーリョ役のルーカス・ゴリンスキーはポーランド出身のバス・バリトンです 現在 ポーランド国立歌劇場を中心に活躍中ですが、艶のある低音が魅力で、聴衆を魅了しました

ミカエラ役の伊藤晴(はれ)は三重大学卒業。武蔵野音楽大学大学院修了。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第25期生修了のソプラノです パリで研鑽を積み、2013年にパリ地方音楽院修了。新国立劇場では「修道女アンジェリカ」オスミーナ、「夢遊病の女」リーザに出演 藤原歌劇団団員 純粋で真摯なミカエラにピッタリの歌唱が印象に残りました

新国立劇場合唱団とTOKYO FM少年合唱団のパフォーマンスも素晴らしかったです

ガエタノ・デスピノーザ指揮東京交響楽団は「前奏曲」「第2幕への間奏曲」「第3幕への間奏曲」の素晴らしい演奏をはじめ、歌手に寄り添いつつカルメンの強い意志やホセのやるせなさ等を表情豊かに演奏しました 「第3幕への間奏曲」でフルートを吹いたのは竹山愛さんでしょう 素晴らしい演奏でした

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました

     

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チョン・ミョンフン ✕ 前田妃奈 ✕ ハン・ジェミン ✕ 東京フィルでベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲」&「交響曲第3番”英雄”」を聴く

2025年02月26日 00時14分36秒 | 日記

26日(水)。月曜日にモーツアルト・シンガーズ・ジャパンの「ツァイーデ」「騙された花婿」「カイロの鵞鳥」公演に関するtoraブログを X に投稿したところ、当日出演したソプラノ歌手の種谷典子さんから(旧ツイッターでいう)「イイね」をいただきました    嬉しかったので彼女の X をフォローすることにしました   すると、1分後に種谷さんが tora の X をフォローしてくださいました   とても嬉しいです 音楽関係者では指揮者の原田慶太楼さんに次いで2人目です これで X のフォロワーは107人になりました

ということで、わが家に来てから今日で3697日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は24日、ロシア国営テレビのインタビューで「(レアアースの埋蔵量は)我々はウクライナより格段に多い。新領土も含め、米国など外国企業と協力する用意がある」と述べ、一方的に併合を宣言したウクライナ4州を含めた地域での共同開発を米国に呼びかけた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     強欲トランプがレアアースの話を持ち出すから 狡猾プーチンが割り込んでくるんだ

  どういう風の吹き回しか、娘が「(今週中でコンサートのある)火・水・木は、自分の夕食は自分で作ります」と言い出したので、お言葉に甘えて夕食作りは3日間お休みします 

         

昨夜、サントリーホールで東京フィル「第1011回サントリー定期シリーズ」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 ハ長調 作品56」、②同「交響曲第3番 変ホ長調 作品55 ”英雄”」です   演奏は①の指揮・ピアノ独奏=チョン・ミョンフン、ヴァイオリン独奏=前田妃奈、チェロ独奏=ハン・ジェミン、②の指揮=チョン・ミョンフンです

ヴァイオリン独奏の前田妃奈は2022年ヘンリク・ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝 現在、東京音楽大学アーティストディプロマコース在学中

チェロ独奏のハン・ジェミンは2006年韓国生まれ。2021年にジョルジュ・エネスク国際コンクールで最年少の15歳で優勝

韓国出身のチョン・ミョンフンは卓越した指揮者であるとともに、1974年の第5回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門で第2位入賞という輝かしい経歴の持ち主 ちなみにその年の第1位はソ連のアンドレイ・ガヴリーロフで、第4位にはハンガリーのアンドラーシュ・シフが入っている

     

オケは10型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び ステージ中央には蓋を取り除いたグランドピアノが客席から鍵盤が見える形で設置されています これはチョン・ミョンフンが指揮をしながらピアノを弾く(弾き振り)ための配置です コンマスは三浦章宏です

1曲目はベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 ハ長調 作品56」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1803年から翌04年にかけて作曲、1808年2月18日にライプツィヒで初演されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「ロンド・アラ・ポラッカ」の3楽章から成ります

ソリスト3人がステージ中央に進み、配置に着きます ピアノに対峙し 客席に背を向けたチョン・ミョンフンの指揮で第1楽章が低弦による重心の低い演奏で開始されます やがて独奏チェロと独奏ヴァイオリンが入って来てピアノが加わります ハンのチェロがよく歌います ヴァイオリンがやや線が細いという印象を受けますが、気のせいだろうか チョンのピアノは流石としか言いようがない軽快さです 第2楽章では冒頭、ハンの独奏チェロがロマン溢れる演奏を繰り広げ、前田の優しさに満ちたヴァイオリンが続きます チョンのピアノが加わり極上のアンサンブルが展開します この曲に限らず、ベートーヴェンの曲で一番素晴らしいのは緩徐楽章だと思います アタッカで第3楽章に入りますが、ここでもハンのチェロが主導権を握ります チェロ、ヴァイオリン、ピアノという順番で演奏されるポロネーズ主題が心地よく響き渡ります 堂々たる演奏によるフィナーレは爽快でした

満譲の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました

     

本公演を聴くにあたり、チョン・トリオ(Vn:キョンファ、Vc:ミュンファ、P:ミョンフン)&チョン・ミョンフン指揮(弾き振り)フィルハーモニア管弦楽団によるCD(1998年録音)で予習しておきました

     

プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第3番 変ホ長調 作品55 ”英雄”」です この曲は1803年から翌04年にかけて作曲、1804年6月にウイーンのロプコヴィッツ侯爵邸で試演の後、1805年4月7日にアン・デア・ウィーン劇場でベートーヴェン自身の指揮により公開初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「葬送行進曲:アダージョ・アッサイ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・モルト ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

弦楽器が14型に拡大し、2管編成のところホルンだけ3本でスタンバイします

チョン・ミョンフンの指揮で第1楽章に入りますが、冒頭の力強い2つの和音は魂がこもった渾身の演奏でした この2つの和音が全曲の演奏を決定づけたと思います オーボエとフルートを中心とする木管楽器群がよく歌います ホルンも絶好調です この曲も緩徐楽章の第2楽章が白眉でした オーボエが醸し出す寂寥感が印象的です 深みのある弦楽アンサンブルが美しく響きます 第3楽章のハイライトはホルン三重奏です 高橋臣宣率いるホルン陣の演奏は立体感がありました 第4楽章では、フルート、オーボエが再び大活躍し、ホルンが輝きを増しました チョン・ミョンフンは集中力に満ちた指揮により東京フィルの面々から持てる力を全て引き出し、スケールの大きな演奏を展開しました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました つくづくチョン・ミョンフンは指揮もピアノも素晴らしい、と思いました

     

     

     

     

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P.D.ジェイムズ著「女には向かない職業」を読む ~ 女探偵コーデリアが科学者の息子の死の真相究明にあたる

2025年02月25日 00時02分35秒 | 日記

25日(火)。昨日の朝日新聞朝刊に、人気の本の著者が各地の学校を訪ねて特別授業をする読書推進授業「オーサー・ビジット」が紹介されていました 2人のうち1人がジャーナリスト池上彰氏でした。池上氏は閉校が決まっている札幌聖心女子学院で特別授業を行いました 生徒から英語の他に習得すべき言語について聞かれた池上氏は「外国語を話せること以上に重要なのは、『語るべきもの』を持つこと。そこに教養が表れる」と答えています

これは的確なアドヴァイスです いくら英語が話せても、「自分が語るべきもの」がないのは、英語で話す意味がないからです つまり「話す内容がないこと」は無教養を晒すことになるということです これを読んで、ハタと思ったのは「語るべきもの」がなければ、ブログは書けないということです これまで このブログで何度か書きましたが、「インプットなくして アウトプットなし」ということです

ということで、わが家に来てから今日で3696日目を迎え、米連邦政府の複数機関の廃止などを主導している富豪のイーロン・マスク氏は22日、連邦政府職員に対して 「前の週にした5つ」を箇条書きにしてメールするよう指示し、従わなければ解雇すると告げたが、一部も政府機関トップがマスク氏のメールに従わないよう職員に指示するなど、混乱が生じている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     前の週にした5つ・・・・仕事と仕事と仕事と仕事と仕事と書けばいいんじゃね?

         

義父の納骨式のため先週金曜日の夜に帰省した息子が昨夜、宮城県白石市の単身赴任先に戻るので、夕食時にピザパーティをやりました 息子がお土産に買って来てくれた宮城県産の赤ワインを飲みながら食べましたが、もう満腹です

     

         

P.D.ジェイムズ著「女には向かない職業」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読み終わりました P.D.ジェイムズは1920年オックスフォード生まれ。1962年にアダム・ダルグリッシュ警視シリーズ第1作「女の顔を覆え」でデビュー 71年「ナイチンゲールの屍衣」、75年「黒い塔」、86年「死の味」で3度、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を受賞したのをはじめ、数々の権威ある賞を受賞 2014年没

本書は1975年1月にハヤカワ・ミステリとして刊行した作品を文庫化したものです

「探偵稼業は女には向かない。ましてや22歳の世間知らずの娘には」と誰からも言われる。名探偵はただ頭が切れて行動力があればよいというものではない。無残な死体を見なければならないこともあるし、相手に脅かされることもある、時には殺されそうになることさある しかし 女主人公コーデリア・グレイは、探偵事務所の所長で相棒のバー二イ・プライドが不治の病を苦にして自死したことから、強い意志をもって単独で探偵事務所を経営することになる 最初の依頼は、微生物学者ロナルド・カレンダー卿から、大学を中退し 予告もなしにケンブリッジのマークランド少佐という人物の庭師に就職し、首を吊って21歳で死んだ息子のマークの死の理由を調査してほしいというものだった コーデリアはカレンダー卿のもとに赴き、彼の秘書エリザベス・レミング、研究助手のクリス・ルン、マークの友人たちと会い、話を聞き出すが、自殺ではなく誰かに殺されたという予想外の事実が明らかになる

     

まったく先が読めないストーリー展開に読む手が止まりません いつの間にか何人もの関係者が死んでいることに後で気が付いて驚きます

それにしても長い 瀬戸川猛資氏が「コーデリア姫とダルグリッシュ探偵」という見出しの解説を書いていますが、それには「ジェイムズ・ミステリは敬遠したくなるような特徴をもっている    陰鬱荘重な雰囲気、分厚さ、極端に改行の少ない文章、相当な本格ファンでも途中で投げ出したくなるような描写の執拗さ・・・」と書かれています

この中で、私が強く感じたのは「描写の執拗さ」です 1つのことを描写するのに10くらいの言葉を使っている、という印象を持ちます ここまで”執拗”に書く”必要”があるのだろうか、と思うほどで、好意的に言えば「丁寧で緻密な描写」であり、投げやり的に言えば「10のうち9は無駄な描写」と言いたくなるような文章です しかし、読み進めていくと、彼女の文章表現に慣れてくるせいか、「これが著者の魅力でもあるのだろうな」と思えてくるから不思議です いつの間にか371ページの大書を読み終わっています

ミステリーファンはとっくに読んでいると思いますが、まだの方にはお薦めしておきます

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モーツアルトの未完オペラ三部作:「ツァイーデ」「騙された花婿」「カイロの鵞鳥」を聴く ~ 「モーツアルト・シンガーズ・ジャパンVol.6」公演

2025年02月24日 00時08分46秒 | 日記

24日(月・休)。わが家に来てから今日で3695日目を迎え、ロイター通信が2月13~18日に行った調査によると、米国のトランプ大統領の支持率は就任直後の47%から44%に低下し、不支持率51%を7ポイント下回った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     世界を相手に喧嘩を売っているトランプ政権が いつまでも支持されるわけがないぜ

         

昨日、王子ホールで「モーツアルト・シンガーズ・ジャパン  Vol.6 ~ ピアノ伴奏で楽しむモーツアルト オペラ・プロジェクト」公演を聴きました    プログラムはモーツアルトが20代で手掛けた未完のオペラ3部作(「ツァイーデ」「騙された花婿」「カイロの鵞鳥」)です   出演はツァイーデ/チェリドーラ=種谷典子、エヴジェニア/アウレッタ=全詠玉、ベッティ―ナ/ラヴィ―ナ=重田栞、ゴーマッツ=望月哲也、太守ソリマン/ブルケリオ/カランドリーノ=伊藤達人、ドン・アストルバレ/ビオンデルロ=金山京介、キキビオ=近藤圭、ボッコニオ=鹿野由之、ピアノ=髙田恵子です

王子ホールは前回いつ来たのか思い出せないほど遠い昔です 銀座三越の裏だったよな、と思い出しながら何とか辿り着きましたが、ホールが2階にあることは忘れていました

     

全315席の小ホールということもあって、会場は満席です 自席はⅠ列4番、左ブロック右から2つ目です

公演は、企画の宮本益光が狂言回し役を務め、各曲の冒頭でその作品の作曲の背景やストーリー内容などを、モーツアルトがウィーンから故郷ザルツブルクにいる父親に出した手紙を紹介しながら進めていきます

1曲目は「ツァイーデ(後宮) K.344」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1779年から80年にかけて作曲したジングシュピール(歌芝居)ですが、未完に終わりました 物語は「ツァイーデはトルコの王に気に入られ後宮にいるが、その暮らしが気に入らない 同じ土地出身の奴隷と恋仲になり駆け落ちするが捕らえられてしまう。太守ソリマンは逃げたツァイーデに怒り狂う」という内容です 物語の構成は、この曲の直後の1781年から翌82年に作曲された「後宮からの誘拐」に生かされています

ツァイーデを歌った種谷典子と太守ソリマンを歌った伊藤達人は、ともに新国立劇場オペラ研修所の出身者ですが、私は彼らが研修生時代から聴いています 二人ともモーツアルトの「フィガロの結婚」等に出演していました あの頃のイメージのまま、この日に間近に姿を見てアリアを聴いたのですが、二人ともすっかり成長し貫禄が出てきて、歌唱も見違えるように魅力に溢れていて驚きました 種谷の歌ったアリア「安らかにお休み、いつまでも」と「虎よ! ひたすら爪を研ぐがいい」が素晴らしかった

前日聴いたオペラ研修所の若き研修生たちも、いつかはこの二人のように頭角を現して、オペラ劇場で活躍する歌手に成長してほしいと思います

     

休憩後の1曲目は「騙された花婿 K.430(K6 424a)」です この曲は1783年に作曲されたオペラ・ブッファ(喜歌劇)ですが、未完に終わりました 物語は「ちょっと間の抜けたお金持ちおじさんのボッコニオは若い美女エウジェーニアと婚約する 彼女には婚約者ドン・アスドゥバーレがいたが、戦死したと聞いていた ところがその婚約者が帰ってきたから大騒ぎ」という内容です

この曲は未完であるのに「序曲」があります 髙田恵子さんのピアノ独奏で軽快に演奏されましたが、いかにもブッファの序曲といった ユーモアのセンスを感じる曲でした

伊藤が歌ったアリア「いったいどこにこんな眼が見出せるだろうか?」は良く通る高音が絶好調でした

最後の三重唱「なんという災難だ!」は楽しく聴けました

最後の曲は「カイロの鵞鳥 K.422」です この曲は1783年に作曲したドラマ・ジョコーソ・ぺル・ムージカ(オペラ・ブッファ)ですが、未完に終わりました 物語は「幽閉された恋人を救うため『カイロからのプレゼント』として鵞鳥(がちょう)を贈るが、実はその鵞鳥は作り物で、中に人が隠れている」という「トロイの木馬かよ」という内容です

全員出演のフィナーレ「仕事だ、お前たち、早く、早く!」は、モーツアルト特有のアンサンブルの魅力溢れた合唱で、「フィガロの結婚」のフィナーレを思い起こしました

個人的には新国立オペラ研修所出身の種谷、伊藤の二人に肩入れしてしまいますが、言うまでもなく宮本をはじめ他の歌手陣も素晴らしい歌唱を披露しました

ピアノ1台でオーケストラ役をこなした髙田恵子さんの活躍は特筆に値します

また、未完のオペラを補筆しピアノリダクションを担ったキハラ良尚氏の仕事がなけれは、この日の公演は成り立たなかったと言えます 客席からステージ上に呼ばれカーテンコールに応えましたが、素晴らしい仕事に大きな拍手が送られました

宮本益光氏の構成による本シリーズはモーツアルトのオペラの魅力を十二分に引き出しているという意味で、素晴らしい企画だと思います これからも日程の許す限り聴きたいと思います

この公演をもって、金曜を除く6日連続コンサートという怒涛の1週間が終わりました 先週はコンサート以外にも確定申告や義父の納骨式などもあったので、いささか疲れました 幸い今日は何の予定もないので ゆっくり過ごし、明日からの3日連続コンサートに備えたいと思います

     

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新国立劇場オペラ研修所2025春公演「フィガロの結婚」を観る ~ モーツアルトのオペラの楽しさ・素晴らしさが伝わってくる研修生たちのパフォーマンス

2025年02月23日 00時15分11秒 | 日記

23日(日)。昨日は午前中に義父の納骨式があったので出席しました この日のために金曜日の夜に帰省した息子を含めて5人の家族による内輪の式でした   お寺は元麻布の麻布山善福寺で、福沢諭吉先生のお墓があることで有名です お経をあげてくれたのは4年前に亡くなった義母の時と同じ女性の僧侶さん(長髪)で、縁を感じました。義父母の墓はいわゆるマンション・タイプで、義母の骨壺が収められている仏壇に納骨しました

その後、義父と住んでいた義妹の住むマンションの隣のMホテルのレストランで会食し、私だけオペラ公演を観るため、前菜とサラダとメイン・ディッシュまでいただいたところで、お先に失礼しました

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3694日目を迎え、トランプ米大統領は21日、米FOXニュースラジオのインタビューに答え、ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が望めば「(ウクライナ)全土を手に入れられる」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプは主権国家ウクライナを何だと思ってるんだ!  あくどさはプーチンと同じ

          

昨日、新国立劇場(中劇場)で「新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)2025春公演:モーツアルト『フィガロの結婚』」初日公演を観ました 出演者はオペラ研修所の第25期 ~ 第27期生が中心です   3日間のダブルキャスト公演で、初日公演の出演者は次の通りです   アルマヴィーヴァ伯爵=松浦宗梧、伯爵夫人=大竹悠生、フィガロ=駒田敏章(賛助)、スザンナ=野口真湖、ケルビーノ=後藤真菜美、マルチェリーナ=牧羽裕子、バルトロ=松浦鉄平(賛助)、バジリオ=永尾渓一郎、ドン・クルツィオ=矢澤遼、アントーニオ=的場正剛(賛助)、バルバリーナ=谷菜々子、二人の花嫁=有吉琴美、島袋萌香。管弦楽=ザ・オペラ・バンド、フォルテピアノ=星和代、指揮=佐藤正治、演出・演技指導=デイヴィッド・エドワーズです

     

「フィガロの結婚」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がボーマルシェの原作に基づくロレンツォ・ダ・ポンテの台本により1785年から翌86年にかけて作曲、1786年にウィーンのブルク劇場で初演されました

アルマヴィーヴァ伯爵の召使フィガロは、伯爵夫人の小間使いスザンナと今日結婚式を挙げることになっている 初夜権を放棄したもののスザンナに気がある伯爵はその権利の復活を企んでいる 一方、伯爵夫人は、夫の冷めゆく愛を嘆いている そこで夫人、フィガロ、スザンナが結託して伯爵の鼻を明かそうと企む 恋する思春期の小姓ケルビーノをスザンナの衣装で女装させて伯爵をおびき出そうとするが失敗する 一方、フィガロに横恋慕の女中頭マルチェリーナはフィガロに借金返済が無理なら自分と結婚するよう強要し裁判となるが、フィガロがマルチェリーナの子であることが発覚し、一転して喜びの再会となる その後、夫人とスザンナはお互いの衣装を換えて、伯爵の浮気現場を押さえようと画策する 事情を知らないフィガロは混乱するがすぐに事態を理解する 伯爵はまんまと策略にひっかかり、夫人に平謝りして全員が喜びの中大団円を迎える

     

自席は1階14列34番、センターブロック左から2つ目です。会場はほぼ満席状態です

結論から書くと、研修生たちの最良のパフォーマンスにより モーツアルトのオペラの楽しさがストレートに伝わってくる素晴らしい公演でした

個人的には女性陣の高度なパフォーマンスが印象に残りました 筆頭はスザンナ役の野口真湖さんです。クレバーでウィットもあるスザンナを、美しくリリカルな歌唱で歌い演じました ひと言で言えば「スザンナの声」の持ち主です この公演は「フィガロの結婚」というよりも「スザンナの結婚」という方が相応しいと思わせる抜群の存在感でした

伯爵夫人役の大竹悠生(ゆい)さんは、2つの重要なアリアをはじめ高度なテクニックで抒情的に歌い上げました

ケルビーノ役の後藤真菜美さんは、”恋に恋する少年”の2つのアリアを初々しく歌い演じました

マルチェリーナ役の牧羽裕子さんは第1幕でのスザンナとの二重唱をはじめ、役の性格を表した歌唱が印象的でした

バルバリーナ役の谷菜々子さんは第4幕冒頭のアリアを抒情的に歌い深い印象を残しました

2人の花娘役の有吉琴美さんと島袋萌香さんは、出番こそ少なかったものの、美しい歌唱を披露しました

面白かったのは細かいところでの演出です   例えば、第2幕で伯爵が部屋の鍵をかけるシーンでは、普通の演出では「カシャ」という音を舞台裏で出しますが、本公演の演出では、その音を出す器具を持った女性が舞台上に現れ、客の面前で「カシャ」と音を出すのです また、第4幕でスザンナが怒ってフィガロを打ちのめすシーンでは、2枚の細長い板(ラヴェル「ピアノ協奏曲」冒頭でムチの音を出す道具と同じ)を持った女性がステージの後方に現れ、スザンナの打つ動きに合わせて「バシッ」と音を出すのです この演出は「音の視覚化」を狙ったユニークな試みだと思います

このオペラは第2幕と第4幕のラストの重唱が素晴らしいですね 何回聴いてもワクワクドキドキします 「モーツアルトが聴けることは何と素晴らしいんだろう 生きていて良かった」と思う瞬間です

佐藤正治指揮ザ・オペラ・バンドとフォルテピアノの星和代は、研修生たちに寄り添いながら、モーツアルトの音楽の楽しさ・素晴らしさをあらためて知らしめたことは特筆に値します

この日出演の研修生たちに、あらためて大きな拍手を送ります

     

         

今日は銀座の王子ホールにモーツアルト・シンガーズ・ジャパンの「ピアノ伴奏で楽しむモーツアルト オペラ・プロジェクト」を聴きに行きます

     

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泡坂妻夫著「亜愛一郎の狼狽」を読む ~ 奇術師でもある著者らしいトリックが巧妙に仕掛けられている8つの短編ミステリー小説 / 高校入試(音楽)の思い出

2025年02月22日 00時02分19秒 | 日記

22日(土)。昨日は朝一番で豊島税務署に確定申告に行ってきました わずかですが、昨年と同じくらいの金額が戻ってくるので、コンサートのチケット代にしようと思います

午後は歯科医に予約を入れておいたので、14時半に大塚駅近くにあるS歯科に行きました 2週間ほど前に奥歯に被せてある金属が取れてしまったので付け直してもらったのですが、1度で済むと思っていたら、やはり「歯石を取る」とか「別の歯が欠けているので埋める」とかで結局3回通うことになりました いつものことなので驚きはありませんでした

ところで、歯科医に行く途中に東京都立B高校があるのですが、校門に「令和7年度入学者選抜試験会場」という看板が立てかけてありました 昨日は都立高校の入学試験日だったのですね 高校入試で思い出すのは、今からン十年前に私が受けた埼玉県立T高校の音楽の試験です 最初にヒアリング試験がありました。ある曲の冒頭部分が校内放送用のスピーカーから流れてきて、その曲名を当てる試験です 曲が流れ出してすぐに、男子生徒が「あっ、田園だ」と叫んだのです すかさず 試験官の先生が「こらっ、静かにしろ」と注意しましたが、あとの祭りです    中学校の音楽の授業で「田園」「運命」「未完成」などは聴いていたのですぐに分かりました   もちろん、正確にはベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」と書かなければ正解になりません  叫んだ生徒は何のお咎めもありませんでした あの時は「正解」を叫んだので誰にも迷惑をかけませんでしたが間違った答えを叫んでいたらどうなっていただろうか今の高校入試でこういう生徒がいたら学校側はどのように対応するだろうかなどと考えると夜も眠れません昼寝をします

ということで、わが家に来てから今日で3693日目を迎え、米労働省が20日発表した失業保険統計によると、米国の解雇動向を映す9~15日の週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は21万9000件で、前週の改定値から5000件増え、市場予測を上回った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     マスク率いる政府効率化省が主導するリストラ政策の”成果”! 失業は増える一方だ

         

昨日、夕食に「鶏モモ肉のガーリック・チーズ煮、スパゲッティ添え」を作りました 久しぶりに作りましたが、美味しく出来ました あまりお酒は飲まないようにしているのですが、今回は例外として白ワインを飲みました 料理に良く合いました

     

         

泡坂妻夫著「亜 愛一郎の狼狽」(創元推理文庫)を読み終わりました 泡坂妻夫は1933年東京生まれ。奇術師として69年に石田天海賞を受賞 75年「DL2号機事件」で第1回幻影城新人賞佳作入選。78年「乱れからくり」で第31回日本推理作家協会賞、88年「折鶴」で第16回泉鏡花文学賞、90年「蔭桔梗」で第103回直木賞を受賞 2009年没

     

本書は雑誌「幻影城」に連載された8つの短編をまとめ1978年5月に刊行した単行本を文庫化したものです デビュー作「DL2号機事件」をはじめ「右腕山上空」「曲がった部屋」「掌上の黄金仮面」「G線上の鼬(いたち)」「掘出された童話」「ホロポの神」「黒い霧」が収録されています

主人公の亜愛一郎は雲や虫を被写体にする青年カメラマンで、背が高く貴族的な顔立ち、知的な目をしていて女性にもてるタイプだが、なぜか立ち居ぶるまいは三枚目だ しかし、ひとたび事件に遭遇するや並外れた推理力を発揮し、事件の謎を解明する

個々の作品を読んでいて感じるのは、著者が奇術師であることを反映しているようなトリックが巧妙に仕掛けられているということです 長編小説「乱れからくり」もそうでしたが、この点が他の推理小説家と異なる大きな特徴だと思います 推理小説評論家・権田萬治氏の執筆による巻末の「解説」を読んで、「泡坂妻夫」というペンネームが本名「厚川昌男」(アツカワマサオ)の読みを 組み合わせて作ったアナグラムであることを知りました ペンネームまでがトリックめいています

ところで、その権田萬治氏は私が新聞関係団体(NSK)の広告部で働いていた時(1980年代半ば頃)の直属の上司でした 広告部長を務める傍ら、夜中に推理小説の評論を執筆するという「二足の草鞋」生活を送っていました 彼の口癖は「僕はここをクビになっても、もう一つ収入源があるから、いつでも辞められるんだよ」でした クビになったわけではありませんが、定年前に早期退職し、専修大学教授(ジャーナリズム論、近現代文学)として15年間教鞭を執りながら、評論活動を続けておられました

彼は1976年に「日本探偵作家論」で日本推理作家協会賞を受賞しているほか、評論活動と並行して、江戸川乱歩賞、横溝正史賞、推理作家協会賞、日本ミステリー文学賞などの選考委員も務めていました 一緒に働いていた頃は仕事が忙しく(毎日残業続き)、推理小説を読む余裕もなかったので、権田氏から推理小説の話を聞くこともなかったのですが、「解説」に書かれている泡坂妻夫氏との交流のエピソード等を読むと、もっと話を聞いておけばよかったな、と思います 昨年秋のNSKのOB会に久しぶりに出席されたので、少し話をしましたが、彼から出てくる名前は、松本清張であり、横溝正史であり、新しくて東野圭吾であって、中山七里は出てきませんでした 今年秋のOB会で再会できたら泡坂妻夫との交流について聞いてみようと思います

         

今日は午前中に義父の納骨式に出席したあと、午後 新国立劇場(中)で開かれる新国立劇場オペラ研修所2025春公演「フィガロの結婚」を聴きに行きます

     

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藤岡幸夫 ✕ 野々村彩乃 ✕ 東京シティ・フィルで「イタリアオペラ」序曲 & アリア、貴志康一「交響曲『仏陀』」を聴く ~ 2025都民芸術フェスティバル参加公演

2025年02月21日 00時16分28秒 | 日記

21日(金)。わが家に来てから今日で3692日目を迎え、米ワシントン・ポスト電子版は18日、国務省が「任務に不必要」と見做したミューヨーク・タイムズ紙やロイター通信などのニュース媒体の購読・契約打ち切りを各地の在外公館に指示したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     ウクライナのゼレンスキー大統領を”独裁者”と呼んだトランプこそ独裁者じゃね?

  諸般の事情により、昨日の夕食作りはお休みしました 

         

昨夜、すみだトリフォニーホールで2025都民芸術フェスティバル参加公演「東京シティ・フィル」を聴きました プログラムは①ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、②プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」、③マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲、④プッチーニ:歌劇「ジャン二・スキッキ」より「私のお父さん」、⑤レオンカヴァッロ:歌劇「道化師」間奏曲、⑥プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「この宮殿の中で」、⑦貴志康一「交響曲『仏陀』」です 演奏は②④⑥のソプラノ独唱=野々村彩乃、指揮=藤岡幸夫です

      

プログラム前半はイタリアオペラの序曲・間奏曲・アリア集です

ソプラノ独唱の野々村彩乃は山口県出身。東京二期会オペラ研修所本科修了、優秀賞受賞 ウィーン国立音楽大学セミナーでディプロマ取得。全日本学生音楽コンクール全国大会で、声楽史上初となる高校・大学の両部門で優勝

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつものシティ・フィルの並び。コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲です この歌劇はジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)が作曲し、1862年にロシアのペテルブルクで初演された全4幕8場からなるオペラです 「序曲」はオペラの鍵となるモチーフが次々と現れ、全体のストーリーを凝縮したような構成になっています

藤岡の指揮で演奏に入りますが、金管による運命的なモチーフが悲劇を予言し、続いて切れ味鋭い弦楽器が速めのテンポで切羽詰まったフレーズを奏で、ドラマティックな演奏が展開します フルート、クラリネットの抒情的な演奏が印象的でした

2曲目はプッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」です このオペラはジャコモ・プッチーニ(1858-1924)が1900年から03年にかけて作曲、1904年にミラノ・スカラ座で初演されました このアリアは第2幕で、未だアメリカから戻らない夫ピンカートンを待ち続ける蝶々さんの純粋な気持ちを歌ったものです

野々村はリリカルな歌唱で、蝶々さんの気持ちをドラマティックに歌い上げました

3曲目はマスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲です この歌劇はピエトロ・マスカーニ(1863-1945)が作曲、1890年にローマで初演されたオペラです 「カヴァレリア・ルスティカーナ」とは「田舎の騎士道」といった意味です 「間奏曲」は復活祭の礼拝の場面で演奏される曲で、「静謐」を音で表したらこういう音楽になるのだろうと思うほど静かに心を揺さぶる曲です 「私が死んだら、お葬式でこの曲を流してほしい」という人を知っていますが、あまりにも美しすぎる曲です

藤岡の指揮で演奏に入りますが、弦楽器の弱音による繊細な演奏にオーボエの悲し気な音楽が加わって、静かな感動を呼びました

4曲目はプッチーニ:歌劇「ジャン二・スキッキ」より「私のお父さん」です このオペラはプッチーニが1918年に作曲、「外套」(1916年)、「修道女アンジェリカ」(1917年)とともに「3部作」として1918年に米メトロポリタン歌劇場で一括上演されました

野々村は伸びやかな歌唱で、ラウレッタの結婚したい気持ちをドラマティックに歌い上げました

5曲目はレオンカヴァッロ:歌劇「道化師」間奏曲です この歌劇はルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857-1919)が作曲、1892年にミラノで初演されたオペラです 「間奏曲」は第1幕の幕切れのカニオのアリア「衣装を着けろ」に続いて演奏される曲です

藤岡の指揮で演奏に入りますが、冒頭の分厚い低弦の響きとその後の繊細なヴァイオリンの響きの対照が印象的でした

前半最後の曲はプッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「この宮殿の中で」です この歌劇はプッチーニが1921年から24年にかけて作曲するも未完に終わり、作曲者の死後の1926年に初演されました

野々村は巧みなヴォイスコントロールによって、トゥーランドット姫の「誰のものにもならない」という強い意志をドラマティックに歌い上げました

会場いっぱいの拍手とブラボーのなかカーテンコールが繰り返されました 野々村はアカペラで山田耕筰「からたちの花」をクリアな歌唱で歌い上げ、再び大きな拍手に包まれました

      

プログラム後半は貴志康一「交響曲『仏陀』」です この曲は貴志康一(1909-1937)が1934年に作曲、同年11月18日にベルリンで貴志の指揮するベルリン・フィルにより初演されました 貴志は1928年、1930年、1932年と3度にわたりベルリンを訪れていますが、3度目の時に指揮法をフルトヴェングラーから、作曲をヒンデミットから学んだといいますから、驚きます 第1楽章「モルト・ソステヌート ~ アレグロ:印度 ”父” 」、第2楽章「アンダンテ:ガンジスのほとり ”母” 」、第3楽章「ヴィヴァーチェ:釈迦誕生 ”人類の歓喜” 」、第4楽章「アダージョ:摩耶夫人の死」の4楽章から成ります

藤岡の指揮で第1楽章に入りますが、序奏のホルンの演奏はブルックナーを思い起こしました    続く主部ではヒーロー漫画のテーマのような勇壮な音楽が展開します    第2楽章は弦楽器のピッツィカートに導かれて、フルートがよく歌います    また戸澤コンマスのソロ、ヴィオラ首席・臼木麻耶の独奏も素晴らしかった 第3楽章では、デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」にそっくりの音楽が繰り広げられ、思わずディズニーの「ファンタジア」の水汲みシーンを思い起こしました 第4楽章は穏やかな音楽が展開しますが、ヴァイオリン・セクションのアンサンブルが美しく、また戸澤コンマスと臼杵首席との二重奏も素晴らしかったです

静かに曲を閉じると、会場いっぱいの拍手とブラボーがステージに押し寄せました

全体を聴いた印象は、極めてモダンな曲だなと思いました 貴志は病気で28歳の若さで生涯を閉じましたが、もっと長生きしていたらとんでもない怪物になっていたのではないか、と思います

藤岡幸夫は、今月14日のシティ・フィル定期公演で演奏した伊福部昭:交響頌偈「釈迦」に次いで、この日は貴志康一:交響曲「仏陀」を取り上げましたが、彼の日本人作曲家による作品を積極的に演奏する姿勢は素晴らしいと思います

         

今日は今週で唯一コンサートのない日です 早朝から確定申告に行ってきます

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砂田愛梨 ソプラノ リサイタルを聴く ~ ベッリーニ、ドニゼッティ、メルカダンテのベルカントを堪能:アンコールに「ジャン二・スキッキ」の「私のお父さん」

2025年02月20日 00時06分43秒 | 日記

20日(木)。昨日午前、20年以上使用していない娘の電気ピアノ(ローランド・演奏可)と本棚(2段式)を粗大ごみに出しました 区による回収は21日になります。両方とも業者を通じて有料での買い取りを目指した(本音を言えばタダでもいいから持って行って欲しいと思っていた)のですが、どこにも売れませんでした 私が腰痛で重い物が運べないので、マンション管理会社 Tコミュニティーの「家族力・プラス」というサービスを利用しました    これはマンションの区分所有者であれば、1年に1回 ちょっとした困りごとに対応してくれるサービスです   30分程度は無料で それを超えると有料になります 今回は①レコード・ラック1本を隣の部屋に移す、②電気ピアノと本棚を9階の自室から1階の粗大ごみ置き場まで運ぶという作業で、それぞれの作業が各30分以内であれば無料になるというサービスです 管理会社の提携している業者が2人で来て、両方の作業を20分もかからずに手際よく終了させました。本当に助かりました このほか、照明器具の本体を交換・取付したい場合などは、別のサービスになるので30分程度なら無料で利用できます 十数年前、私が管理組合の理事長をしている時に、管理費が高すぎるということで、定期総会に諮って管理会社をC社からTコミュニティーに変更した経緯があるので、あの時変えておいて良かったと思っています

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3691日目を迎え、トランプ米大統領は18日、ウクライナのゼレンスキー大統領の支持率が低下していると指摘したうえで、大統領選挙を実施すべきだと主張し、「戒厳令下で任期が切れているゼレンスキー大統領には停戦合意に署名する資格がない」とするロシアのプーチン大統領の主張に同調した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプが ロシアに有利になるように考えていることが 明らかになった発言だな

         

昨日、夕食に「カキとキノコの味噌煮」「生野菜とアボカドのサラダ」「白菜の味噌汁」を作りました 「カキと~」は新聞の「料理メモ」に載っていたのを見て 初めて作りましたが、カキとキノコの味が味噌スープに溶け込んでとても美味しかったです

     

         

昨夜、紀尾井ホールで「砂田愛梨ソプラノリサイタル」を聴きました これは「第31回五島記念文化賞オペラ新人賞」受賞を記念して開かれたコンサートです ピアノは篠宮久徳です

「五島記念文化賞」は故・五島昇東急グループ代表の事績を記念し、芸術文化の分野における優秀な新人を顕彰することを目的に1990年に創設された賞制度です

砂田愛理は東京音楽大学及び大学院を首席修了。新国立オペラ研修所第18期修了 同研修所ANAスカラシップとしてミラノ座アカデミー、バイエルン州立歌劇場オペラ研修所で研鑽を積む 平成30年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修員、第31回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞 イタリア声楽コンコルソ・ミラノ大賞第1位をはじめ数々のコンクールで入賞を果たす

     

プログラムは①メルカダンテ「星」「春」、②ドニゼッティ「永遠の愛と誠を」「不幸な愛」「ジプシーの女」「舟人」「愛と死」「私は家を作りたい」「一粒の涙」「ベッリーニの死を嘆く」、③ベッリーニ:歌劇「夢遊病の女」より「ああ、信じられない」、④ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」より「あたりは静けさに包まれ」、⑤同:歌劇「連隊の娘」より「誰もが知っている」「望みはない ~ フランスに敬礼!」、⑥同:歌劇「サン・ドミンゴ島の狂人」より「ああ、離してください」「もし憐れみ、私の過ちを忘却で覆ってくださるのなら」、⑦同:歌劇「ドン・パスクワーレ」より「あの騎士の眼差しは」です

     

私が砂田愛梨のリサイタルを聴こうと思ったのは、今月2日に上演された新国立オペラ「ジャン二・スキッキ」初日公演で彼女が歌ったラウレッタのアリアに感動したからです その日のうちにチケットを予約しました

自席は1階16列19番、右ブロック左から2つ目です。客席は1階席の8割くらい埋まっているでしょうか

この日のプログラムは「ベルカント・オペラ」と歌曲です 「ベルカント・オペラ」は、一般的には19世紀前半のロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティと、同世代のメルカダンテなどの作曲家が書いたオペラを指します プログラム冊子に掲載の砂田愛梨さんの「研修を振り返って」という文章によると、「『ベルカント』とは、声を用いてクリアで繊細な言葉の表現、遠くの客席まで無理なく届く呼吸法を使ってフレージングを丁寧に紡ぎ、より自然でシンプルに、ダイレクトに前に表出される歌唱法および様式」です この日に聴いた彼女の歌唱は、まさにその言葉通りの「ベルカント唱法」でした 彼女がイタリアで師事したルチアーナ・セッラ女史がプログラム冊子に寄せたメッセージには「彼女は非常に素晴らしい声質を持っており、今後の有望なキャリアの前兆であると信じています。解釈能力、機敏性の高さ、完璧なイントネーション、そして充分な声量のすべての点で顕著な発展を遂げました」と書かれていますが、これ以上的確な表現はないでしょう

前半ではベッリーニ「夢遊病の女」より「ああ、信じられない」の静から動への鮮やかな歌い分けによるドラマティックな歌唱が特に印象に残りました 後半のドニゼッティはどの曲も熱唱で甲乙付けがたいパフォーマンスでした 「ランメルモールのルチア」より「あたりは静けさに包まれ」では息の長いベルカントが素晴らしかった 「連隊の娘」より「誰もが知っている」と「望みはない ~ フランスに敬礼!」では、コミカルな動きを伴う歌唱でコメディエンヌぶりを発揮しました 彼女の仕草を見ながら、METライブ「連隊の娘」でマリーを歌ったナタリー・デセイを思い出しました ナタリー・デセイはコミカルな役もルチアのようなシリアスな役も自然にこなせるので、砂田愛梨も彼女と同じような方向に行くのかな、と思いました なお、この曲は砂田が2024年秋の日生劇場「連隊の娘」マリー役で日本での本格デビューを果たした作品で、大きな反響を呼びました また、最後の歌劇「ドン・パスクワーレ」より「あの騎士の眼差しは」でも魅力的なベルカントを披露しました

会場いっぱいの拍手とブラボーが飛び交うなかカーテンコールが繰り返されました アンコールに新国立オペラで主役を張ったプッチーニ「ジャン二・スキッキ」よりラウレッタのアリア「私のお父さん」を歌ってくれました もう感激です 鳴りやまない拍手とブラボーに、ドニゼッティ「連隊の娘」より「行かなければならないの」を、息の長い旋律にも関わらず見事なベルカントで歌い上げました アンコールまできて全く崩れず完璧なベルカントで歌い上げる・・・もう、凄いとしか言いようがありません

この日の公演は、ピアノ伴奏の篠宮久徳によるソツのない伴奏と相まって、とても印象深いコンサートになりました

砂田愛梨は間違いなく世界レヴェルのソプラノ歌手です これからどんどん主役級の役柄を歌って、日本のみならず世界中のオペラハウスで活躍していくことを確信します

         

今日はトリフォニーホールに都民芸術フェスティバル参加公演「東京シティ・フィル」を聴きに行きます

     

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梅田俊明 ✕ 中川優芽花 ✕ 東京都交響楽団でモーツアルト「ピアノ協奏曲第17番」、シューマン「交響曲第1番」他を聴く ~ 2025都民芸術フェスティバル参加公演

2025年02月19日 00時43分58秒 | 日記

19日(水)。わが家に来てから今日で3690日目を迎え、ロシアによる進攻が続くウクライナ情勢をめぐって、トランプ米政権がロシアとの停戦交渉からウクライナを含め欧州を締め出す動きを見せる中、欧州主要国の首脳らは17日、パリで非公式の緊急会合を開き欧州としての対応を協議した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     戦争の当事国ウクライナと 地続きの欧州を抜きに 停戦交渉を進めるなどあり得ない

         

昨日、夕食に「ビーフシチュー」と「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」を作りました 寒い日はシチューやカレー、鍋料理が食べたくなります

     

         

昨日、すみだトリフォニーホールで2025都民芸術フェスティバル参加公演「東京都交響楽団」のコンサートを聴きました プログラムは①芥川也寸志「弦楽のためのトリプティーク」(芥川也寸志生誕100年記念)、②モーツアルト「ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453」、③シューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です 演奏は②のピアノ独奏=中川優芽花、指揮=梅田俊明です

     

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの都響の並び。コンマスは矢部達哉です    弦楽各セクションのトップを見渡すと、第2vn=双紙、遠藤、Vc=江口、古川、Va=鈴木、篠崎、Kb=池松といった万全の態勢を敷いています このフェスティバルに東京都が関係していることから、都響としても力を入れることになるのでしょう 私がトリフォニーホールで都響の演奏を聴くのは初めてです

1曲目は芥川也寸志「弦楽のためのトリプティーク」(芥川也寸志生誕100年記念)です この曲は芥川也寸志(1925-1989)がN響の常任指揮者クルト・ヴェスの依頼により1953年に作曲、同年12月にヴェス指揮ニューヨーク・フィルにより初演されました 「トリプティーク」は「三連画」を意味しますが、芥川が愛聴していたアレクサンドル・タンスマンの「トリプティーク」(1930年)に因んで付けられました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「子守歌:アンダンテ」、第3楽章「プレスト」の3楽章から成ります

以外にも私はこの曲を生で初めて聴きました 1950年代の作品とは思えないスタイリッシュな曲だと感じる一方、オスティナートの部分では芥川の師匠である伊福部昭の影響をもろに受けているな、と思いました 第1楽章の矢部コンマスのソロが印象に残り、第3楽章のプレストは爽快な演奏でした

2曲目はモーツアルト「ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1784年にピアノの愛弟子のバルバラ・フォン・プロイヤー嬢のために作曲しました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット ~ プレスト」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の中川優芽花は2001年ドイツのデュッセルドルフ生まれの24歳 2021年からワイマールのフランツ・リスト音楽大学で研鑽を積み、2021年クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝、聴衆賞も受賞しました

黒のパンツルック、眼鏡着用で登場した彼女の姿を見て思い出しました 彼女は2023年10月22日に開かれたヴァイグレ ✕ 読売日響によるコンサートでグリーグ「ピアノ協奏曲」を弾きましたが、その時と全く同じスタイルでした 「まるで図書館の司書みたいだな」という印象はその時と変わりません 「自分は黒子に徹するので、モーツアルトの音楽を感じてください」というメッセージなのかな、と思いました

梅田の指揮で第1楽章が開始されますが、最初はオーケストラだけで主題が演奏され、満を持して中川の独奏ピアノが軽快に入ってきます 彼女のピアノは粒立ちが美しくどこまでもクリアです 何より「モーツアルトを弾くのが楽しくてしょうがない」という表情を見ていると、こちらもウキウキしてきます 鮮やかなカデンツァは聴きごたえがありました 第2楽章ではオーボエ、フルートが、そこはかとない哀しみを湛えたピアノ・ソロに華を添えます 第3楽章は一転、まるでパパゲーノのアリアが聴こえてきそうな楽しい音楽が展開します 後半のプレストにおけるピアノとオケが一体となった演奏は見事でした

満場の拍手に、中川はショパン「プレリュード 作品28-3」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

     

プログラム後半はシューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38 ”春”」です この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が1841年に作曲、同年ライプツィヒで初演されました 第1楽章「アンダンテ・ウン・ポーコ・マエストーソ ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・アニマート・エ・グラツィオーソ」の4楽章から成ります   この曲は詩人アドルフ・ベトガーによる春の詩の一節に着想を得て書かれ、当初は第1楽章「春のはじめ」、第2楽章「夕べ」、第3楽章「楽しい遊び」、第4楽章「春らんまん」というタイトルが付いていましたが、最終的には削除されました   これは演奏を聴く上で参考になります

梅田の指揮で第1楽章が金管のファンファーレで開始されます ホルンが高らかに奏でる序奏は「春のはじめ」を印象付けます 第2楽章では、深みのある弦楽アンサンブルの美しい響きが印象的です 第3楽章ではクラリネット、フルート、オーボエ、ファゴットといった木管楽器がよく歌い、弦楽セクションが渾身の演奏を繰り広げます 第4楽章で印象的だったのは再現部直前のホルン独奏とその後のフルート独奏によるカデンツァです まさに「春らんまん」を感じさせる素晴らしい演奏でした オーケストラの総力を挙げてのアグレッシブな演奏で力強いフィナーレを飾りました

梅田は的確な棒捌きによって都響の持てる力を最大限に引き出しました   梅田と言えば、2023年5月の「モーツアルト・マチネ」で東京交響楽団を振ったモーツァルト「セレナータ・ノットゥルナ」の名演を思い出します 地味な指揮者ですが、私にとっては大好きな指揮者の一人です

         

今日は紀尾井ホールに「砂田愛梨  ソプラノ リサイタル」を聴きに行きます

     

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