30日(土)。11月も今日で終わりですよ、皆さん 油断も隙もありませんね
昨夕、X部長から「30分だけ」と誘われたので、生ビール1杯と枝豆、エイヒレ、冷やしトマト、仕上げ蕎麦を食して、本当に30分ぴったりで一人引き上げました。なぜなら7時から上野の東京文化会館小ホールでエリック・ハイドシェックのピアノ・リサイタルを聴くからです
文化会館小ホールに着くと、昔からハイドシェックを高く評価している音楽評論家・宇野巧芳氏の姿がありました 私はこの人のお陰で韓国のピアニスト、HJリムという素晴らしいピアニストを知ることが出来て感謝しています
この日のプログラムは前半が①ヘンデル「組曲第1番イ長調からプレリュード」、②バッハ「平均律クラヴィーア曲集第2巻第19番よりプレリュード」、③ヘンデル「組曲第3番ニ短調からプレリュード」、④バッハ「平均律~第2巻第11番よりプレリュード」、⑤ヘンデル「組曲第2番ヘ長調よりアダージョ」、ハイドン「ピアノ・ソナタ第58番ハ長調」、⑥モーツアルト「ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調K.282よりアダージョ」、⑦ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第5番ハ短調」の7曲です
自席はH列20番、センターブロック左通路側です。照明が落ちて喜寿を迎えた白髪のハイドシェックがタキシードに短めのネクタイ姿で颯爽と登場します。さすが貴族の出、サマになっています
最初はヘンデルとバッハの前奏曲を交互に弾くという変わったプログラムです まず、ヘンデルから入りますが、かなり自由に弾いている印象です。順調に弾いていると思っていると、終盤に至って演奏が突然止まってしまいました ここで休止符はないはず、と思っていると、ハイドシェックは英語で「ソーリー」と言って、少し前から弾き直しました。私は40年以上、生のコンサートを聴いてきましたが、演奏の途中で休止して再び演奏した公演はこれが初めてです。貴重な経験です
演奏が終わると、彼は突然の休止など無かったかのように、ピアノをぐるっとひと回りして拍手に応えていました 次のハイドン「ピアノ・ソナタ第58番」は2楽章から成る曲です。第1楽章のゆったりしたアンダンテと、第2楽章の急速なロンドとの対比が面白い曲ですが、こちらは途中で休止することなく見事に弾き切りました
さて、問題は次のモーツアルトとベートーヴェンです ハイドシェックはモーツアルト「ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調K.282」の第1楽章と次のベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第5番ハ短調」をまるで一つの曲のように連続して演奏しました ひょっとして、モーツアルトをベートーヴェンのプレリュードと捉えて組み立てたのかも知れませんが、彼の真意は分かりません。彼なりの必然性があるのでしょう
休憩時間にはCD売り場に人だかりが出来ていました。終演後にサイン会があるようです
後半は①ベートーヴェン「6つのバガデル」、②ドビュッシー「前奏曲集」より”四季”をテーマにしたハイドシェックによる4曲の抜粋です 彼は後半の方がノッテいるようです。後に行くほど良くなっていく印象があります ハイドシェックはドビュッシーの前奏曲から「枯葉」(秋)、「雪の上の足跡」(冬)、「ヒースの荒野」(春)、「亜麻色の髪の乙女」(夏)を選びました。極めてノーブルな香り高い演奏でした
興に乗ったハイドシェックはアンコールを5曲演奏しました。①フォーレ「ノクターン第11番」、②ハイドシェック「プレリュード」、③バッハ「フーガホ長調」、④同「プレリュード・ト長調」、⑤同「フーガ・ハ短調」です
この日の演奏会は、バッハからドビュッシーまで”プレリュード”で統一されていましたが、やはりドビュッシーが一番印象に残りました 付言すれば、アンコールにも表れているように、77歳になった現在のハイドシェックはバッハがよほど好きなのではないか、と思います