人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「文化芸術への補助金 申請したいけど」~ 朝日の記事から / ジョセフ・ロージー監督「エヴァの匂い」 & アニエス・ヴァルダ監督「5時から7時までのクレオ」を観る ~ 新文芸坐

2020年09月30日 07時14分05秒 | 日記

30日(水)。早いもので今日で9月も終わりです    今年も残すところあと92日になりました。これからの3か月なんてあっと言う間ですよ、きっと

昨日の朝日朝刊「文化・文芸」欄に「文化芸術への補助金  申請したいけど ~ 演劇・音楽など広く対象 ⇒ 8月末時点で想定の3分の1」という見出しの記事が載っていました 超訳すると、

「新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けた文化芸術関係者への文化庁の補助金が、30日に3次募集の申請期限を迎える 文部科学省が文化芸術・スポーツ活動の継続支援として補正予算で確保した509億円のうち、文化分は約450億円を見込むが、募集開始後、7月~8月末までの申請額はこの3分の1ほどだったとみられる 文化庁の『文化芸術活動の継続支援事業』は、7月10日に募集を始めた。政府による大規模イベント自粛の呼びかけ以来、影響を受けた団体やフリーランスを含む個人に向けて、活動の継続・再開などを支援する 個人向けは手続きを簡便にした上限20万円と、より積極的な取り組みをする上限150万円の2つのメニューがある 稽古や公演準備、感染防止策など、対象を幅広く設定した だが、2次募集を終えた8月28日時点での申請は、2万2250件。文化庁によれば、この時点での申請額は『150億円程度』だったとみられる。なぜ、申請が伸び悩んでいるのか。日本俳優連合が実施したアンケート調査によると、回答186人のうち未申請者が6割いた その理由を回答した人の5割が『自己負担金がないと申請できないから』を挙げた この支援は使い道が自由な給付金ではなく、活動の経費を支援する『補助金』で、これには自己資金が必要だ。劇作家の坂手洋二氏は『出費に対して補助する仕組みは、コロナ禍で余裕のない人には見合っていないのでは』とみる。申請できる経費の対象期間が、2月末~10月末の事業で発生したものに限られたこともハードルになっている

せっかく制度があるのに利用しにくいのでは、必要な資金が必要な人へ渡らないままになってしまいます 政府は申請条件の緩和などの措置を講じるべきだと思います

ということで、わが家に来てから今日で2190日目を迎え、加藤勝信官房長官は28日の記者会見で、昨年11月に死去した中曽根康弘元首相の「内閣・自民党合同葬」について、必要経費が1億9千万円余りに上るとの見通しを示したが、約9643万円の政府支出を巡っては野党から疑問の声が出ている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「悪しき前例主義の打破」を唱えていたのは菅首相じゃなかった? 僕のカン違い?

 

         

 

昨日、夕食に「秋刀魚の塩焼き」「たこの刺身」「生野菜とアボカドのサラダ」「ジャガイモと玉ねぎの味噌汁」を作りました 秋刀魚は不漁のようで、2尾で700円もしました 豊漁のときは3尾で300円ということもあったのに・・・でも、秋はやっぱり秋刀魚です

 

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐でジョセフ・ロージー監督「エヴァの匂い」とアニエス・ヴァルダ監督「5時から7時までのクレオ」の2本立てを観ました

「エヴァの匂い」は、ジョセフ・ロージー監督による1963年製作フランス・イタリア合作映画(モノクロ・110分)です

元坑夫の新進作家タイビアン(スタンリー・ベイカー)は美人女優との結婚を控えていたが、あるきっかけから、ベネチア社交界の花形である高級娼婦エヴァ(ジャンヌ・モロー)に夢中になってしまう タイビアンはエヴァが何人もの男たちを破滅させた魔性の女だと知りながらも、金も仕事も投げうって彼女を追いかけ回す そのため婚約者のフランチェスカを失望させ、自殺に追いやってしまう。それでも彼は諦めずにエヴァを追いかけ回すが、結局は金がすべての女に捨てられてしまう

 

     

 

この作品は、イギリスの作家ジェームズ・ハドリー・チェイスの小説をジョセフ・ロージー監督が映画化したものです フランス・イタリア合作映画なのでフランス語の会話が聴けると思っていたら、舞台はイタリアで出演者がフランス人なのに、台詞は英語だったは意外でした 全編に流れる女性ボーカルの歌は、ミシェル・ルグランによるものですが、ジャンヌ・モローの演じる魔性の女エヴァにピッタリです 

 

         

 

「5時から7時までのクレオ」は、アニエス・ヴァルダ監督による1961年製作フランス・イタリア合作映画(90分)です

ポップ歌手のクレオ(コリンヌ・マルシャン)は自分がガンではないかと疑い、病院で精密検査を受ける その結果が判明する7時までの間、クレオはパリの街中を彷徨いながら何人かの友人や見知らぬ人と出会い、心の平静を取り戻していく

 

     

 

この映画を観終わって思ったのは、アニエス・ヴァルダ特有のドキュメンタリータッチの作品だな、ということです カフェの喧噪、街行く人々やバス乗客の顔の表情などを、日常生活の中で撮っているように感じます

この映画でもミシェル・ルグランの音楽が全編を通して流れますが、本人もクレオの友人である音楽家ボブとして出演しています なかなかの役者です

 

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サントリーホール室内楽アカデミー第5期修了演奏会②を聴く~チェルカトーレ弦楽四重奏団、トリオ・ムジカ、クァルテット・ポワリエ、タレイア・クァルテット / エクのチケットを取る

2020年09月29日 07時17分26秒 | 日記

29日(火)。昨日は東京交響楽団の「第680回定期演奏会」の振替公演の座席指定解禁日でした この公演は当初5月30日にサントリーホールで開かれる予定でしたが、コロナ禍の影響を受け、来年1月24日(日)午後7時から、会場をミューザ川崎に変更して開くことになったものです 川崎は遠いので、払い戻し請求という選択肢もあったのですが、今の時期は出来るだけオケの経済的負担が少なくなる方法を採るべきだと思い、延期公演を聴くことにしました 予想通り、朝から電話が殺到しているらしく午前中はまったく繋がらず、午後1時近くにやっと繋がりました 2RB5列の通路側が押さえられました

なお、プログラムは①ボッケリーニ(ベリオ編)「マドリードの夜の帰営ラッパ」、②ベルク「ヴァイオリン協奏曲”ある天使の思い出に”」、③ベートーヴェン「フィデリオ」序曲、④同「レオノーレ序曲」第1番、第2番、第3番です 演奏は②のヴァイオリン独奏=南紫音、指揮=下野竜也で、変更はありません

ということで、わが家に来てから今日で2189日目を迎え、米紙ニューヨークタイムズは27日、トランプ氏が内国歳入庁に報告した情報を独自に入手したところ、同氏は大統領就任前の15年間のうち10年間にわたり連邦所得税を支払っていなかったと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     これで納税記録の公開を拒否し続けてきた理由が明らかになった  これでも大統領?

 

         

 

昨日、夕食に「スペアリブのうま煮」「生野菜とワカメのサラダ」「冷奴」を作りました 「スペアリブのうま煮」はジョン・キョンファ先生のレシピで初めて作りました 韓国のヴァイオリニスト、チョン・キョンファさんではありません。悪しからず 白いのはニンニクです   自分で言うのもなんですが、とても美味しくできました

 

     

 

         

 

11月8日(日)午後2時から東京文化会館小ホールで開かれる「クァルテット・エクセルシオ  第39回 東京定期演奏会」のチケットを取りました プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲 第33番 ト短調 作品20‐3」、②ラヴェル「弦楽四重奏曲 ヘ長調」、③ベートーヴェン「弦楽五重奏曲 ハ長調 作品29」です ③のヴィオラには読響首席の柳瀬省太が入ります エクセルシオの演奏は25日にタレイア・クァルテットとのジョイント・コンサートを聴いたばかりですが、いつ聴いても期待を裏切りません

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール室内楽アカデミー第5期修了演奏会」(第2日)を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 作品127」より第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」(演奏=チェルカトーレ弦楽四重奏団)、②メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 作品66」(トリオ・ムジカ)、③シューベルト「弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810 ”死と乙女”」より第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」(クァルテット・ポワリエ)、④モーツアルト「弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調K.421」(タレイア・クァルテット)です 

自席はC3列3番。3列目と言っても、1列目はコロナの感染防止のため空席になっています こうしたことがいつまで続くのか

トップバッターは「チェルカトーレ弦楽四重奏団」です 2017年4月に結成されました。「チェルカトーレ」とはイタリア語で「探求者」を意味するそうです メンバーは、第1ヴァイオリン=関朋岳、第2ヴァイオリン=戸澤采紀、ヴィオラ=中村詩子、チェロ=牟田口遥香です 戸澤采紀さんはご存知の通り東京シティ・フィルのコンマス・戸澤哲夫氏の娘さんです。このクァルテットは演奏曲目に応じて第1ヴァイオリンが交替するようです

演奏するのはベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 作品127」より第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」です

このブログで何度も書いているように、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の最大の魅力は緩徐楽章にあるのではないか、と思います その点、このクァルテットはその魅力を丁寧に掬い取って、美しいカンタービレを奏でていました 次の第4楽章「アレグロ」に入ると一転、メロディーの美しさよりも”強い意志”を強調した力強い演奏を展開、別の意味でベートーヴェンらしさを描き出しました

2番手は「トリオ・ムジカ」です 東京藝術大学の同期生で2018年に結成されました。メンバーはヴァイオリン=柳田か那子、チェロ=田辺純一、ピアノ=岩下真麻です

演奏するのはメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 作品66」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1845年に作曲、シュポーアに献呈されました 第1楽章「アレグロ・エネルジーコ・エ・コン・フォーコ」、第2楽章「アンダンテ・エスプレッシーヴォ」、第3楽章「スケルツォ:モルト・アレグロ・クアジ・プレスト」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・アパッショナート」の4楽章から成ります

3人の演奏で第1楽章に入ります ほの暗い情熱の発露とでも言うべきエネルギーに満ちた演奏が展開します この楽章の演奏を通じて感じたのはバランスのよく取れたトリオだな、ということです 第2楽章ではヴァイオリンとチェロのアンサンブルが美しく、それにピアノが加わり色彩感が増します 第3楽章はメンデルスゾーン特有の 妖精が高速で飛び回っているようなスケルツォです 第4楽章は力強さに満ちた迫真の演奏で、堂々たるフィナーレを飾りました トリオ・ムジカの3人には、大好きなメンデルスゾーンを取り上げてくれ、素晴らしい演奏を繰り広げてくれたことに感謝します

 

     

 

休憩後の1番手は「クァルテット・ポワリエ」です 桐朋学園大学の在学生・卒業生で2018年に結成されました 「ポワリエ」とはフランス語で「梨の木」という意味で、花言葉は「愛情、優しい思い、癒やし、なぐさめ」だそうです メンバーは第1ヴァイオリン=宮川莉奈、第2ヴァイオリン=若杉知怜、ヴィオラ=佐川真理、チェロ=山梨浩子です

演奏するのはシューベルト「弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810 ”死と乙女”」より第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」です

他のユニットの女性陣がカラフルな衣装で登場するのに、「ポワリエ」の4人は黒の衣装で統一しています 多分、演奏曲目「死と乙女」の「死」を意識しての配慮だと思われます オケで言えば、「レクイエム」を歌うソリストは例外なく黒の衣装で登場しますが、それと同じ考えによるものだと思います

4人の演奏で第1楽章「アレグロ」の演奏に入ります 冒頭の集中力に満ちた総奏は、この曲に対峙する4人の覚悟を感じさせる迫真の演奏でした この楽章を通じて感じたのは、シューベルトのデモーニッシュ(悪魔的)な側面が良く表現されていた、ということです 第2楽章に入ると一転 静謐な音楽が奏でられ、その後 様々な変奏曲が展開しますが、チェロの山梨浩子さんが非常に落ち着いていて、彼女の低音の上で3人の演奏者が自由に演奏しているような雰囲気を感じました 4人とも素晴らしい演奏でした

ここで、会場係のスタッフが登場し、4人が座っていた椅子を布で丁寧に清掃します。これも新型コロナ対策ですが、こういうことがいつまで続くのか

コンサートのトリを務めるのは「タレイア・クァルテット」です 2014年 東京藝術大学在学中に結成され、ザルツブルク=モーツアルト国際室内楽コンクール2015で第3位、2018年第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第1位を獲得しています メンバーは第1ヴァイオリン=山田香子、第2ヴァイオリン=二村裕美、ヴィオラ=渡部咲耶、チェロ=石崎美雨(日本フィル)です

演奏するのはモーツアルト「弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調K.421」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1782年から1785年までに作曲しハイドンに献呈した6つの弦楽四重奏曲(第14番~第19番:「ハイドン・セット」)の一つで、1783年に作曲されましたが、ハイドン四重奏曲の中で唯一の短調の作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

4人の演奏で第1楽章に入りますが、短調特有の哀しみを湛えた曲想です このクァルテットは3日前の25日にクァルテット・エクセルシオとのジョイント・コンサートで聴いたばかりですが、その時に聴いたヤナーチェクの「内緒の手紙」における鋭角的な演奏とはまったく異次元の、まさに古典派の王道と言うべきモーツアルトのエッセンスを見事に掬い上げていました 山田香子、二村裕美、渡部咲耶、石崎美雨の4人が演奏を通じて再現したのは、モーツアルトの「涙が追いつけない哀しみ」です ヤナーチェクを聴いた時は、第1ヴァイオリンの山田香子とチェロの石崎美雨の演奏が特に印象に残ったと書きましたが、今回モーツアルトを聴いてあらためて思ったのは、二人の演奏の素晴らしさはそのままにして、第2ヴァイオリンの二村裕美とヴィオラの渡部咲耶も相当の実力者だということです それに加え、4人のアンサンブル能力が極めて高い ひと言でいうと、このクァルテットに関しては、研修生というよりも、かなり成熟した演奏集団という方が相応しいように思います

この日出演した演奏ユニットは、いずれも将来が楽しみな若者たちのグループですが、そのままグループの活動を継続していくにしても、一人一人が音楽家として独立して活躍するにしても、将来有望な若者たちです 近い将来、どこかのコンサートホールで、また素晴らしい演奏を聴かせてほしいと思います

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サントリーホール室内楽アカデミー第5期修了演奏会①を聴く ~ クァルテット・インテグラ、トリオ・デルアルテ、アミクス弦楽四重奏団 / 新日本フィル室内楽シリーズ(10/28)のチケットを取る

2020年09月28日 07時16分41秒 | 日記

28日(月)。昨日の日経朝刊「文化時評」に同社編集委員・瀬崎久見子さんが「コロナ禍で寄付文化は成熟するか」というテーマで書いています 超訳すると、

「今月末に締め切られる劇団四季のクラウドファンディングに、約2億円もの支援が集まっている 文化芸術では他にも数億円、数千万円を達成するクラウドファンディングが相次ぎ、コロナ禍の今、活況を呈している クラウド(群衆)からファンディング(資金集め)をする。プラットフォームが資金集めの場をインターネット上に作り、サポートする。この手法は2000年代に米国で本格的に始まり、日本には11年の東日本大震災を機に上陸したといわれる 少し前まで、日本のクラウドファンディングは50万円を集めるのも大変だといわれていた ましてや文化芸術で億単位など、夢と思われていた。そんな社会が新型コロナを機に、変わったのか。日本の『寄付文化』が一気に熟成したのだろうか。創成期から日本で多くのプロジェクトに関わってきた出川光さんは『50万円を集めるのも大変なのは今も同じ (目標額に達する)成功率も6~7割で、あまり変わっていないと思う これまで日本では、寄付したい人がいても、ふるさと納税など方法が限られていた』と語る。そんな社会に、新しい寄付インフラが生まれたといえるだろう。日本の一部のプラットフォームが、コロナに関連したプロジェクトの手数料を無料にしたことも後押しになっている こうした流れを受けて、日本の文化芸術では民間だけでなく『公』の組織や施設も寄付集めに積極的になった 公益財団法人のオーケストラでは、札幌交響楽団が2600万円あまりを集めた。続いて始まった関西フィルのサイトを見ると、寄付した人へのリターンに、たこ焼き器や、元阪神タイガースの掛布雅之氏のサイン入りボールを用意するなど、地域の特徴を生かした楽しさがある 日本で成功するクラウドファンディングにはある傾向が見られる。一つの業界が束になって、しかも、支援を受ける人とは別の著名人が旗振り役になるケースだ 映画監督が訴えた『ミニシアター・エイド基金』、作家らが呼びかけた『ブックストア・エイド基金』等だ。それぞれ素晴らしいプロジェクトなのだが、裏を返せば、個人や一企業の力ではなかなか難しいともいえる 出川さんは、《もっと正直に、個人が助けを求められる社会になってほしい》と語る

この記事を見て思ったのは、「クラウドファンディング」は あくまでも個人や組織が目の前にある危機的状況を脱するために一時的に取り組む「資金集めの手段」であって、恒常的なものではないということです    オーケストラでいえば、現在のコロナ禍の過渡的状況から1日も早く脱し、演奏会収入を中心とする正常な形で「定期演奏会」を開けるようにすることが第一義的であると思います

ということで、わが家に来てから今日で2188日目を迎え、朝鮮半島の西側の南北境界線付近の海上で、韓国から北朝鮮入りを試みた男性を北朝鮮の兵士らが射殺した問題について、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は25日、「予期せぬ不名誉な出来事であり、非常に申し訳ない」と異例の謝罪と行った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     弟の金正男はじめ多くの身内や側近の閣僚を殺害しても謝罪しなかった 何かある!

 

         

 

10月28日(水)午後7時15分からすみだトリフォニーホール(小)で開かれる新日本フィル 室内楽シリーズ「拝啓、ベートーヴェン様」のチケットを取りました プログラムは①メンデルスゾーン「ピアノ、クラリネット、ファゴットのための演奏会用小品 第2番 作品114」、②グリンカ「ピアノ、クラリネット、ファゴットのための三重奏曲 ”悲愴”」、③ベートーヴェン「ピアノ、クラリネット、ファゴットのための三重奏曲 作品38」です 出演はファゴット=佐久間大作、クラリネット=重松希巳江、ピアノ=石橋衣里です

新日本フィルの室内楽シリーズは、トークの天才・篠原英和氏がプレトークを担当していた頃は毎回楽しみにして聴きに行っていましたが、彼が降板してからは足が遠のいていました 今回はメンデルスゾーンが目当てですが、このシリーズは本当に久しぶりです

 

     

 

         

 

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール室内楽アカデミー第5期修了演奏会」(第1日)を聴きました プログラムは①ストラヴィンスキー「弦楽四重奏のための3つの小品」、②クセナキス「テトラス」、③ハイドン「弦楽四重奏曲 第79番 ニ長調 作品79」より第2楽章「ラルゲット」(以上 クァルテット・インテグラ)、④ラヴェル「ピアノ三重奏曲」(トリオ  デルアルテ)、⑤モーツアルト「弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K.465 ”不協和音”」(アミクス弦楽四重奏団)です    この演奏会は本来、毎年6月にサントリーホール「ブルーローズ」で開かれている「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン」の一環として挙行されるはずでしたが、今年は新型コロナウイルス禍の影響で、客を入れての生演奏は9月にずれ込む形になりました

会場の入場制限の撤廃を受けて、この日の「ブルーローズ」は通常の座席配置に戻っています 自席はRb5列5番、右ブロック左から5番目です

 

     

 

トップバッターは 「クァルテット・インテグラ」です 2015年4月 桐朋学園に在学中の学生により結成されました。「インテグラ」とはイタリア語で「統合」や「誠実さ」を意味するそうです メンバーは、第1ヴァイオリン=三澤響果、第2ヴァイオリン=菊野凛太郎、ヴィオラ=山本一輝、チェロ=菊地杏里です

演奏する1曲目はストラヴィンスキー「弦楽四重奏のための3つの小品」です この曲はイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)が1914年に作曲した作品です 後に彼が管弦楽曲に編曲した時に、第1曲「踊り」、第2曲「エキセントリック」、第3曲「聖歌」というサブタイトルを付けたとのことです。4人の演奏で聴く限り、まさにタイトル通りの曲想で、いかにもストラヴィンスキーらしい要素が凝縮されている音楽でした

2曲目はクセナキス「テトラス」です この曲はヤニス・クセナキス(1922-2001)が1983年に作曲した作品で、「テトラス」とは数字の「4」を意味します 第1ヴァイオリンが演奏する冒頭の音楽を聴いて、まるで暴走族のカーレースのようだと思いました 私のような無防備な聴衆は意表を突かれた感じがします 4人の掛け合いにより超絶技巧を駆使した鋭角的な演奏が展開します 内容はよく理解できませんでしたが、演奏は素晴らしく、この曲を選んだチャレンジ精神に敬意を表します

3曲目はハイドン「弦楽四重奏曲 第79番 ニ長調 作品79」より第2楽章「ラルゴ」です この曲はヨゼフ・ハイドン(1732-1809)が1797年に作曲し、1799年に出版された6つの弦楽四重奏曲(第75番~第80番)の一つです エルデーディ伯爵に献呈されたので「エルデーディ四重奏曲」と呼ばれています この第79番は第2楽章「ラルゴ」が有名で、「ラルゴ」の愛称で呼ばれています

直前に演奏した「テトラス」から184年遡った作品、しかも緩徐楽章である「ラルゴ」を聴くと、懐かしさが溢れてきます クラシックはずいぶん遠くまで来てしまっていたんだな、と思いました 4人の演奏は振幅の大きい慈愛に満ちた素晴らしい演奏でした

2番手は「トリオ  デルアルテ」です 2016年に結成されましたが、「デルアルテ」とはイタリア語で「芸術」を意味するそうです メンバーはヴァイオリン=内野佑佳子、チェロ=河野明敏、ピアノ=久保山菜摘です

演奏するのはラヴェル「ピアノ三重奏曲 イ短調 」です この曲はモーリス・ラヴェル(1875‐1937)が1914年に作曲、翌1915年にパリで初演されました 第1楽章「モデレ」、第2楽章「パントウム」、第3楽章「パッサカーユ」、第4楽章「フィナーレ:アニメ」の4楽章から成ります

3人が登場して演奏に入りますが、まずヴァイオリンの内野祐佳子の演奏が素晴らしい この人の演奏は何度か聴いたことがありますが、パワフルで表現力豊かです 久保山菜摘のピアノも素晴らしいのですが、小ホールの特性からか、音が大きすぎる感じがしました 河野明敏のチェロは第2楽章でよく歌っていました この曲は3人の初めての演奏会で披露した作品とのことですが、内野祐佳子のパワフルな演奏を中心に思い出深い演奏になったのではないかと思います

 

     

 

この日のトリを務めるのはアミクス弦楽四重奏団です 桐朋学園大学と東京藝術大学の出身メンバーにより結成されました 「アミクス」とは「友」を意味するラテン語だそうです。メンバーは第1ヴァイオリン=宮川奈々、第2ヴァイオリン=宮本有里、ヴィオラ=山本周、チェロ=松本亜優です

演奏するのはモーツアルト「弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K.465 ”不協和音”」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1782年から1785年にかけて作曲し、ハイドンに献呈した6つの弦楽四重奏曲(第14番~第19番:「ハイドン・セット」と呼ばれる)の一つで、第1楽章冒頭で不協和音が奏でられることから「不協和音」という愛称で呼ばれています

第1楽章「アダージョ~アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第3楽章「メヌエット:アレグロ」、第4楽章「アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

4人が登場し、第1楽章のアダージョの序奏部がチェロから開始され、ヴィオラ、ヴァイオリンが加わって不協和な演奏が展開しますが、アレグロに入ると、立ち込めていた霧が晴れ上がり、急に見通しが良くなるような景色が目に浮かびます N響ヴァイオリン奏者・宮川奈々を中心に愉悦感に満ちたアンサンブルが展開します 藝大フィルハーモニア管弦楽団のヴァイオリン奏者・宮本有里が第1ヴァイオリンやヴィオラとの間合いを図りながら演奏しているのが印象に残りました 第2楽章では4人による優美な演奏が展開、第3楽章では松本亜優のチェロがよく歌っていました 第4楽章ではモーツアルトらしい明るく晴朗な音楽が展開しました

この日のコンサートは出場した3組が、それぞれまったく異なる個性に溢れていて、予想以上に楽しむことができました この日出演の皆さんのこれからのご活躍をお祈りします

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尾高忠明 ✕ 川久保賜紀 ✕ 東京交響楽団でショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」他を聴く / 新国立オペラ「アルマゲドンの夢」他のチケットを取る

2020年09月27日 07時21分57秒 | 日記

27日(日)。わが家に来てから今日で2187日目(満6年)を迎え、7年目に向けてあいさつするモコタロです

 

     

     tora家に来て満6年が経ちました  表紙のモデルの契約更新をしました  よろしく!

     

         

 

新国立劇場からオペラ「アルマゲドンの夢」実施決定通知と特別先行販売の案内が届きました 11月オペラ公演「アルマゲドンの夢」は気鋭の作曲家・藤倉大がアルマゲドン(世界最終戦争)をテーマに作曲したオペラです チケットは「夏の夜の夢」(ブリテン)、「こうもり」(J.シュトラウス2世)と同様、アトレ会員先行販売となっています。今回もコロナ禍の影響で海外在住歌手の来日が不可能になる可能性が高いので、S席は避け、A席を申し込みました

 

         

 

昨日「サントリーホール室内楽アカデミー 第5期修了演奏会」のチケットを取りました 9月27日(今日です!)と28日(明日です!)の2公演です しばらく前にネットで手配しようとしたら「予定枚数終了」になっていたので諦めていたのですが、コンサートホールの入場制限措置が撤廃されたことからか、販売を再開していました 翌日と2日後のチケットが取れるのか疑問が湧きましたが、無事取れました 本日はクァルテット・インテグラ、トリオ・デルアルテ、アミクス弦楽四重奏団が出演します 狙いはトリオ・デルアルテのラヴェル「ピアノ三重奏曲」と、アミクス弦楽四重奏団のモーツアルト「不協和音」です 明日はチェルカトーレ弦楽四重奏団、トリオ・ムジカ、クァルテット・ポワリエ、タレイア・クァルテットが出演します 25日に聴いたエクセルシオとのジョイントで、タレイア・クァルテットの演奏が良かったのでチケットを取ったという側面もあります 彼らはモーツアルト「弦楽四重奏曲第15番K.421 」を演奏します

 

     

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第683回定期演奏会を聴きました プログラムは①リャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖  作品62」、②ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲 第1番  イ短調 作品77」、③バルトーク「管弦楽のための協奏曲 作品116」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=川久保賜紀、指揮=尾高忠明です 当初ヴァイオリン独奏はアリーナ・イブラギモヴァ、指揮はリオネル・ブランギエの予定で、1曲目はコダーイ「管弦楽のための協奏曲」でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてそれぞれ変更になりました それに伴って、市松模様の座席配置をするとの通知が一旦出されましたが、その後、9月19日からコンサート会場の入場制限が解除されたことから、通常の定期会員席で聴けるようになりました 今回が新シーズンに入って初めての本来の会員席です

ホール入口で「マスクで鼻も覆ってください」と言われました このように言われたのは初めてで、「そこまで要求するか」と思いましたが、「泣く子と地頭とサントリーホールには敵わない」という諺もあるので、「わかりやした、お代官様。年貢は収めておりますが、政権も変わったことですし、今回は仰せの通りにいたしやす」と頭の中で答えました。もちろん、音楽を聴いている時は鼻を出していました。だって息が苦しいんだもん

オケの配置は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東響の並び。コンマスはグレブ・二キティンです 弦楽奏者はマスクを着用、譜面台は2人で1台を使用します。前回は1人1台だったので、ソーシャルディスタンスの距離が若干緩和された感じがします

1曲目はリャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖  作品62」です この曲はロシアの作曲家アナトーリ・コンスタンチノヴィッチ・リャードフ(1855-1914)が1909年に作曲、同年サンクトペテルブルクで初演された作品です

尾高氏の指揮で演奏に入りますが、静けさを湛えた音楽で、私はン十年前に訪れた霧の摩周湖を思い浮かべました 尾高氏がコダーイの代わりにリャードフのこの曲を選んだのは、次に演奏するショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲の第1楽章「ノクターン」に音楽的につなげる意味を持たせたのではないか、と思います

2曲目はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲 第1番  イ短調 作品77」です この曲はドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1947年から翌48年にかけて作曲、1955年10月29日にレニングラードでダヴィッド・オイストラフの独奏、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルにより初演され、ダヴィッド・オイストラフに献呈されました 第1楽章「ノクターン:モデラート」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ」、第3楽章「パッサカリア:アンダンテ」、第4楽章「ブルレスク:アレグロ・コン・ブリオ~プレスト」の4楽章から成ります

ソリストの川久保賜紀がシルバーのメタリックな衣装で登場します 川久保は2001年サラサーテ国際ヴァイオリン・コンクール優勝、2002年チャイコフスキー国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門最高位入賞の実力者です

尾高の指揮で第1楽章の演奏に入ります この楽章は独奏ヴァイオリンが息の長い瞑想的なメロディーを演奏しますが、尾高 ✕ 川久保による演奏はかなりゆったりしたペースで進みます 集中力を維持しなければならないのは演奏者も聴衆も同様です 第2楽章のスケルツォを経て、第3楽章「パッサカリア」に入りますが、この楽章における独奏ヴァイオリンの「カデンツァ」は聴きごたえ十分でした ファゴットと、ホルンと、そして弦楽奏者との対話は素晴らしいものがありました 第4楽章は、独奏ヴァイオリンが超絶技巧を駆使して超高速演奏を展開します 東響は菅・打楽器、弦楽器 総力を挙げての推進力に満ちた迫真の演奏でソリストを支えました

 

     

 

プログラム後半はバルトーク「管弦楽のための協奏曲 作品116」です この曲はベラ・バルトーク(1881-1945)が1943年に、クーセヴィツキー夫人の追悼およびクーセヴィツキー生誕70周年とボストン交響楽団指揮者就任20周年を記念して作曲され、クーセヴィツキー財団に献呈されました この曲はオーケストラの楽器がソロやセクションごとに活躍する作品です 第1楽章「序奏」、第2楽章「対の遊び」、第3楽章「エレジー」、第4楽章「中断された間奏曲」、第5楽章「終曲」の5楽章から成ります

尾高の指揮で第1楽章の演奏に入りますが、ホルン、トロンボーンといった金管楽器が素晴らしい演奏を展開していました 第2楽章ではファゴットとオーボエの演奏が際立っていました 第3楽章では弦楽セクションの渾身の演奏が光りました 第4楽章「中断された間奏曲」は、気持ちよく叙情的な音楽を聴いていると、いきなり馬のいななきが鳴り響き、音楽が中断されます これはバルトーク一流のパロディーだと思います 一種の描写音楽ですが、東響の面々はこの”可笑しさ”を見事に表現していました 第5楽章「フィナーレ」は冒頭のホルンが存在感を示し、弦楽器、管楽器、打楽器を総動員しての疾走感溢れる演奏を展開し、圧倒的なクライマックスを築き上げました

そもそも尾高忠明氏がバルトークを指揮するのは極めて稀なことだと思いますが、それに加えて、東京交響楽団の定期演奏会を振るのも珍しいのではないか、と思います しかし、そこは「弘法筆を選ばず」です どんなオケでも人を引きつけるレヴェルまで仕上げてきます

この日のコンサートは、市松模様のコロナ対策シフトから通常の座席配置に戻った形で挙行されましたが、楽団によっては「定員の50%以内」という基準が19日に撤廃された今でも、この基準を守っているオケもあります 今は過渡期だと思いますが、どのオケにも共通しているのは、コンサートを開くことで感染者が出ないようにして、元の基準に戻らないようにすることです

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クァルテット・エクセルシオ✕タレイア・クァルテットでドヴォルザーク「アメリカ」、ヤナーチェク「ないしょの手紙」、ガーデ「弦楽八重奏曲」を聴く / MET 9月~来年5月の公演すべて中止へ

2020年09月26日 07時17分14秒 | 日記

26日(土)。昨日の朝日朝刊によると、MET(ニューヨークのメトロポリタン歌劇場)は23日、「新型コロナウイルスの影響で、今シーズン(9月~来年5月)の公演をすべて中止する」と発表しました 同歌劇場は「ワクチンが広く行き渡り、(人口の多くが免疫をもつ)『集団免疫』が達成されるまで安全を確保できないと判断した」としています 来シーズンの公演は来年9月27日開幕を予定しているとのことです

これに伴って、METライブビューイングの上映も無くなることになります。毎年楽しみにしているので、とても寂しいです

ということで、わが家に来てから今日で2186日目を迎え、マスク着用義務化には反対の立場を取る知事で知られる米中西部ミズーリ州のパーソン知事(共和党)は23日、新型コロナウイルスの感染検査で陽性となったと自身のツイッターなどで明らかにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     さすがはトランプ党の知事!  因果応報だ せいぜい隔離されながら執務に当たれば

 

         

 

昨日、夕食に「とん平焼き」と「生野菜とタコのサラダ」を作りました とん平焼きの材料は豚バラ肉とモヤシと卵とチーズです 安上がりで美味しいです

 

     

 

         

 

昨夕、晴海の第一生命ホールで「クァルテット・エクセルシオ ✕ タレイア・クァルテット」合同コンサートを聴きました プログラムは①ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 作品96『アメリカ』」、②ヤナーチェク「弦楽四重奏曲 第2番『ないしょの手紙』」、③ガーデ(ゲーゼ)「弦楽八重奏曲 ヘ長調 作品17」です 演奏は①クァルテット・エクセルシオ、②タレイア・クァルテット、③エクセルシオとタレイアの合同です

このコンサートは当初3月15日に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、この日に延期されたものです 座席は新型コロナ禍の影響を受けて 再指定されたもので、市松模様の座席配置となっています 再指定後の自席は1階8列13番、センターブロック左通路側です

会場を見渡して初めて気が付いたのですが、聴衆のかなりの割合は男性です。これって、出演者8人のうち7人が女性であることに関係があるのだろうか? あるんだろうな

 

     

 

1曲目はドヴォルザーク「弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 作品96『アメリカ』」です    この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841‐1904)がアメリカ滞在中の1893年、アイオワ州スピルヴィルのチェコ人移民集団の地を訪れた時に作曲、翌1894年にボストンで初演されました    第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「レント」、第3楽章「モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

演奏するクァルテット・エクセルシオは、日本における常設の弦楽四重奏団の第一人者というべき立場にある、今年結成27年目を迎える優れたクァルテットです     第1ヴァイオリン=西野ゆか、第2ヴァイオリン=北見春菜、ヴィオラ=吉田有紀子、チェロ=大友肇の4人から成ります

4人の演奏者が登場しますが、女性陣は赤系の衣装で統一しています 第1ヴァイオリンの西野のリードで第1楽章に入りますが、冒頭の吉田有紀子のヴィオラの主題の演奏が素晴らしい 西野ゆかのヴァイオリンが美しい そして、大友肇のチェロが良く歌います チェリストは星の数ほどいますが、私は大友氏のチェロが一番好きです どんな曲でも軽々と何の苦もなくあっけらかんと弾きます 第2ヴァイオリンの北見春菜は、山田百子の後任としてエクに加わりましたが、すっかりメンバーとして定着した演奏を聴かせました 4人の演奏が際立っていたのは第2楽章「レント」でした。西野のヴァイオリンが歌い、大友のチェロが切々と語ります 第4楽章は愉悦感に満ちた演奏で、ドヴォルザークの音楽の明るく希望に満ちた面を表出していました 私はこれまで、何度かライブでこの曲を聴いてきましたが、今回の演奏は最も印象に残る素晴らしいものでした 言うまでもなく、満場の拍手が送られました

2曲目はヤナーチェク「弦楽四重奏曲 第2番『ないしょの手紙』」です この曲はレオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)が1928年に作曲した作品です 彼は70歳の時に、38歳年下の既婚女性カミラに恋し、600通を超えるラブレターを送ったといいます 逆にカミラからヤナーチェクに対してどれくらいの手紙が発信されたのかは分かりませんが、多分、一方的な愛だったのでしょうね サブ・タイトルの「内緒の手紙」というのは、言うまでもなくラブレターのことです 第1楽章「アンダンテ~コン・モート~アレグロ」、第2楽章「アダージョ~ヴィヴァーチェ」、第3楽章「モデラート~アダージョ~アレグロ」、第4楽章「アレグロ~アンダンテ~アダージョ」の4楽章から成ります

演奏するタレイア・クァルテットは2014年 東京藝術大学在学時に結成され、ザルツブルク・モーツアルト国際室内楽コンクール2015で第3位入賞、2018年第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第1位を受賞した若くも実力のあるクァルテットです サントリーホール室内楽アカデミー第5期フェローメンバーとしてもお馴染みです 第1ヴァイオリン=山田香子、第2ヴァイオリン=二村裕美、ヴィオラ=渡部咲耶、チェロ=石崎美雨の4人から成ります

それぞれ シルバー、ブラック、ホワイトを基調とする衣装を身に着けた4人が登場、さっそく演奏に入ります 第1楽章は緊張感が半端ない曲想で、演奏する側も聴く側も覚悟が要ります 曲自体はかなり技巧を求められる曲想で、演奏者の実力が試されそうな作品です 第2楽章も同様です。第3楽章は一転、美しいメロディーが奏でられますが、終盤で第1ヴァイオリンが高音で叫び声を上げます 第4楽章は、はっきり言ってハチャメチャです 「一瞬先は闇」といった曲想で、コロコロと目先が変化します はっきり言って狂気の音楽です。4人の演奏者はヤナーチェクの求める本質を見極めながら、確かな技術を背景に多様な響きをカラフルに描き出しました

 

     

 

プログラム後半はガーデ(ゲーゼ)「弦楽八重奏曲 ヘ長調 作品17」です この曲は、デンマークの作曲家ニルス・ガーデ(1817-1890)が1848年に作曲した作品です 彼はメンデルスゾーンのもとでゲヴァントハウス管弦楽団の副指揮者を務め、ライプツィヒ音楽院でも教職を得ています

8人の演奏家が左からタレイア、エクセルシオという順番に交互に配置につきます つまり、第1ヴァイオリンはタレイアの山田香子が努めます。これは意外でした てっきりエクの西野さんが努めると思っていたからです

山田香子のリードで演奏に入りますが、全体を通して聴いた印象は、メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲第2番」と言っても誰も疑わないほど、メンデルスゾーンの影響をもろに受けています 第1楽章における推進力に満ちた曲想しかり、第2楽章のメランコリックな曲想しかり、第3楽章のスケルツォしかり、第4楽章の前へ前へという推進力しかりです 演奏では第1ヴァイオリンの山田香子のメイン・メロディーをはじめ、チェロの石崎美雨の良く歌う演奏が強く印象に残りました

いつか、この日出演の8人でメンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」を聴きたいと思いました

 

     

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稼げるか オンラインライブ / 井上道義 ✕ 野田秀樹による「フィガロの結婚 ~ 庭師は見た! ~」のチケットを取る / ジャック・ドゥミ監督「ローラ」&「シェルブールの雨傘」を観る

2020年09月25日 07時16分05秒 | 日記

25日(金)。昨日の日経朝刊 首都圏経済欄のコラム「点照」に「稼げるか オンラインライブ」という記事が載っていました 超訳すると、

「新型コロナ禍の影響で興業が次々に中止となり、ぴあ総研の予測では2020年のライブ・エンターテインメントの市場規模は前年の7割減にまで落ち込むという そんな中で、多くのホールやミュージシャンが取り組んだのがライブやコンサートのオンラインだ クラシック音楽では3月8日、川崎市のミューザ川崎シンフォニーホールが提携する東京交響楽団の無観客コンサートを無料配信し、約10万人が視聴した 7~8月には全17公演という、コロナ禍では世界でも例のない大規模なクラシック音楽祭「フェスタサマーミューザKAWASAKI」を開催。入場者は定員の3分の1に絞ったが、1公演あたり1000円のオンライン鑑賞券を販売し、およそ9000枚が売れた 経済産業省の予算も得てカメラ8台を設置、臨場感を伝えることにこだわった そのかいあって、オンライン視聴者からは「沖縄に住んでいて、なかなかコンサートに行けないのでありがたかった」など評価は高かった もっとも、オンライン配信を軌道に乗せるにはコスト面の課題が残る サマーフェスタも映像制作、配信に約2400万円かかった。半分は国の補助があったとはいえ、オンライン鑑賞券の収入だけでは支出を賄いきれなかった ミューザの担当者は『開催決定から実施まで短期間で、全国的なプロモーションができなかった』と反省する。ただ、コロナ収束後もオンライン配信が音楽ホールの新たな収益源として検討されていくのは間違いない

コンサートは現場で生演奏を聴くことこそ醍醐味があるわけですが、確かに、上の記事にある沖縄の視聴者のように、地元にコンサートホールもなく、したがってコンサートを聴く機会もない地域では、オンライン配信は貴重な機会となります 事前のPRを全国的に展開すれば、かなりペイする事業に成長するのではないかと思います

ということで、わが家に来てから今日で2185日目を迎え、米大統領の経済顧問であるクドロー米国家経済会議委員長は23日の記者会見で、トランプ政権下での景気拡大により貧困者数が大きく減ったとする実績を強調したが、新型コロナウイルスの感染拡大後のデータは含まれておらず「いいとこ取り」で誤解を招くとして 記者が追い詰める場面があった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプ大統領への忖度だと思うけど  周囲にはこういう腰抜けしか残っていない

 

         

 

昨日の夕食は「サバの塩焼き」「タコの刺身」「生野菜サラダ」「大根の味噌汁」です サバは脂がのって美味しかったです

 

     

 

         

 

指揮・総監督=井上道義、演出=野田秀樹によるモーツアルト「フィガロの結婚 ~ 庭師は見た ~ 」のチケットを取りました これは5年前にチケットを取りそこなって口惜しい思いをした公演です すでにミューザ川崎での公演は9月19日に好評のうちに終了しました 東京芸術劇場コンサートホールでは10月30日(金)と11月1日(日)の2日間開かれますが、私は11月1日(日)午後2時開演の公演を選びました。井上道義 ✕ 野田秀樹の仕掛けが面白くないわけがありません。大いに期待したいと思います

 

     

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「ローラ」と「シェルブールの雨傘」の2本立てを観ました

「ローラ」はジャック・ドゥミ監督による1960年製作フランス映画(モノクロ・88分)です

フランス西部の港町ナント。キャバレーの踊り子として生計を立てるシングルマザーのローラ(本名はセシル:アヌーク・エーメ)は、7年前に姿を消した初恋の相手ミシェル(ジャック・アルダン)の帰りを待ち続けていた    ある日彼女は、幼馴染みの青年ロラン・カサ―ル(マルク・ミシェル)と10年ぶりに再会する。ロランは初恋の相手であるローラへの変わらぬ思いを確信し、彼女に愛を告白するが、「あなたのことは好きだけど、愛してはいない」と断られてしまう やがてミシェルは金もうけをして街に凱旋しセシル(ローラ)と再会する ロランは彼女を諦め 密輸の仕事を引き受け海外に出る

 

     

 

この作品はジャック・ドゥミ監督の長編デビュー作です

映画の冒頭、ミシェルが高級大型車に乗って故郷に錦を飾りにくるシーンで、何とベートーヴェン「交響曲 第7番 イ長調 作品92」の第2楽章「アレグレット」が流れていました この重々しい音楽は劇中でも流れますが、意外に感じました 一方、ロランがセシル(ローラ)の面影を宿す14歳のセシル(名前が同じ)と本屋で出会うシーンと、セシルの家に招かれて食事をするシーンでは、モーツアルト「フルート協奏曲 第2番 二長調 K.314」の第1楽章「アレグロ・アペルト」の愉悦感に満ちた音楽が流れていました こちらはそれぞれの場面に合った音楽だと思いました    別のシーンではバッハ「平均律クラヴィーア曲集」第1巻から第1曲「プレリュード」BWV846や、チャイコフスキーのバレエ音楽「眠りの森の美女」から「ワルツ」が使われていました

これらの音楽はミシェル・ルグランの選曲によるものではないかと推測します

 

         

 

「シェルブールの雨傘」はジャック・ドゥミ監督による1964年製作フランス映画(91分)です

フランス北西部の港町シェルブール。20歳の自動車修理工の青年ギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)と17歳の傘屋の娘ジュヌヴィエーブ(カトリーヌ・ドヌーブ)は結婚を誓い合った恋人同士だった ある日 シェルブール雨傘店を営むエムリ夫人に莫大な納税通知書が届き、彼女はジュヌヴィエーブに説得されて大切なネックレスを売ることにする    宝石店での交渉が上手く進まなかったが、たまたま居合わせていた宝石商ロラン・カサ―ル(マルク・ミシェル)がその場でネックレスを買ってくれる 彼はジュヌヴィエーブを気に入っていた。アルジェリア戦争の徴収令状がギイに届き、彼は戦地に赴く その後、妊娠していることを知ったジュヌヴィエーブは、ギイからなかなか手紙が来ないので不安に感じていた カサ―ルは「生まれる子供は二人で育てよう」と結婚を申し込む。ギイを待ち続けていたジュヌヴィエーブは次第にカサ―ルに心を開くようになり、求婚を受け入れる その後、ギイは除隊して帰郷したが、ジュヌヴィエーブの結婚と移住を聞かされ、自暴自棄となり投げやりな生活を送っていたが、一緒に暮らしていた叔母が死んだこともあり、心を入れ替えて働くことを決心し、叔母の面倒を看てくれていた幼馴染みのマドレーヌに求婚し、叔母の遺産でガソリンスタンドを開く 雪の降るある夜、偶然ジュヌヴィエーブの運転する車が彼のガソリンスタンドに給油に寄る。彼女は、娘の名前はフランソワーズだと告げ、「会ってみる?」とギイに訊くが、彼は首を振る。彼女の車が去っていくのと入れ違いに妻マドレーヌと息子フランソワが帰ってくる

 

     

 

この映画は音楽をミシェル・ルグランが担当するミュージカルです 全編が音楽のみで、台詞が一つもありません こういう徹底したミュージカル映画も珍しいでしょう この作品はドヌーヴの出世作となった作品ですが、出演者はすべて歌の素人だったため、全ての歌が吹き替えになっています ジュヌヴィエーブの歌はダニエル・リカーリ、ギイの歌はジョゼ・バルテル、ロラン・カサ―ルの歌はジョルジュ・ブランヌがそれぞれ歌っています 何と言っても、世界中で大ヒットしたルグランによる主題曲が全編に流れ、この映画を不滅の作品にしています

ところで、ジュヌヴィエーブの母親が宝石店で出会った宝石商ロラン・カサ―ルに「独身ですか?」と尋ねると、カサ―ルは「昔、ローラという女性を愛していましたが、上手くいきませんでした」と答えるシーンがあります。これを聞いた時「アッ!」と思いました。つまり1960年製作映画「ローラ」に出てくる彼女の幼馴染みの青年ロラン・カサ―ル(マルク・ミシェル)が、ビジネスで成功して、この映画では宝石商として登場した、というわけです

「ローラ」「シェルブールの雨傘」の順番に観なかったら、ジャック・ドゥミ監督の仕掛けに 気が付かなかったかもしれません

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芸劇ブランチコンサート「砂川涼子 ソプラノ・リサイタル」を聴く~グノー「宝石の歌」(ファウスト)、ビゼー「恐くないと言ったけれど」(カルメン)他 / 東響10月定期公演 ⇒ 中止

2020年09月24日 07時27分11秒 | 日記

24日(木)。東京交響楽団からのメールによると、10月9日、15日の川崎定期公演と同月11日、17日の東京定期公演は、指揮者ジョナサン・ノットと招聘歌手陣が新型コロナ禍に伴う入国制限措置の影響を受け、中止となりました このコンサートはワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)を2回に分けて上演するもので、2020-2021シーズンの目玉公演だっただけに、とても残念です 東響では払い戻しに関する案内を近日中に発送するとしています これにより、私に関わる公演中止は全115公演(うち延期6公演)となりました

ということで、わが家に来てから今日で2184日目を迎え、日産自動車が米テネシー州で7年ぶりに全面改良した多目的スポーツ車「ローグ」の生産を開始したと発表したことに対し、トランプ大統領が「日産がテネシー州でローグの展開を始める。グレート!」と歓迎するツイートを投稿したが、日産は現行モデルを発表した13年からローグをテネシー州で生産しているので、トランプ氏のツイートは同車の生産が日本から米国に移ると勘違いした可能性がある  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     大統領選に有利になりそうな情報は 確かめもせずにツイートするのはいつもの癖だ

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラこんにゃく」「生野菜とワカメのサラダ」「冷奴」を作りました あとは、娘が漬けたキュウリとオクラの「ぬか漬け」です。ヘルシー・メニューですね

 

     

 

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで芸劇ブランチコンサート 「名曲リサイタル・サロン『砂川涼子  ソプラノリサイタル』」を聴きました プログラムは①フォーレ「夢のあとに」、②同「レクイエム」より「ピエ・イエズ」、③デュパルク「悲しき歌」、④同「旅への誘い」、⑤プーランク:歌劇「偽りの婚約」より「花」、⑥同「愛の小路」、⑦アーン「歌の翼に」、⑧同「クロリスに」、⑨グノー:歌劇「ファウスト」より「宝石の歌」、⑩ビゼー:歌劇「カルメン」より「恐くないと言ったけれど」です ソプラノ独唱=砂川涼子、ピアノ伴奏=清水和音、ナビゲーター=八塩圭子です

このシリーズも、今回から市松模様の座席配置から解放され、通常のスタイルに戻りました 自席は1階E列25番、右ブロック左通路側です

 

     

 

曲のラインアップからも分かるように、この日の公演は「オール・フランス・プログラム」です 前半の8曲が歌曲、後半の2曲がオペラのアリアです

砂川涼子と言えば、新国立オペラのプッチーニの歌劇「トゥーランドット」のリュー、ビゼーの歌劇「カルメン」のミカエラといった、弱いが芯の強い心優しいヒロインを思い浮かべます 1998年 第34回日伊声楽コンコルソ優勝、2000年 第69回日本音楽コンクール第1位など受賞歴が多数ある実力者です 藤原歌劇団団員で、母校の武蔵野音楽大学非常勤講師を務めています プログラムのプロフィールを見て、彼女が沖縄県宮古島出身であることを初めて知りました。勉強不足でした

ブルーのエレガントな衣装に身を包まれた砂川涼子が登場し、清水和音の伴奏でガブリエル・フォーレ(1845-1924)の「夢のあとに」に入ります 自然な発声による美しい歌唱が印象的です 次の「ピエ・イエズ」もピュアな歌声で心が浄化されるようです 続くアンリ・デュパルク(1848‐1933)の「悲しき歌」と「旅への誘い」では感情表現豊かに歌い上げます

ここでナビゲーターの八塩圭子さんがピアノ伴奏の清水氏にインタビューをします 「歌曲の伴奏は珍しいそうですね。フランス音楽だけのコンサートも珍しいですね」とマイクを向けると、清水氏は「歌手はオペラ歌手としてスタートするケースが多く、歌曲から始めるケースは稀なので伴奏の機会がほとんどないのです しかも、オペラと言えばイタリア・オペラという印象が強い。そこで今回は、フランス音楽だけを歌ってもらおうと砂川さんにお願いしたのです」と語っていました

 

     

 

再び砂川涼子が登場、フランシス・プーランク(1899-1963)の歌劇「偽りの婚約」より「花」、続いて「愛の小路」を歌います とくに「愛の小路」はほとんどシャンソンで、聴いているとパリの街並みが目に浮かぶようです 砂川さんは次のレイナルド・アーン(1875‐1947)の「歌の翼に」と「クロリスに」で美声を響かせたあと、八塩さんによるインタビューを受けました 「オペラはイタリアものが多く、オール・フランス・プログラムで歌うのは今回が初めてです そういう意味では、今までにない緊張感があります。また、このコンサートはコロナ禍での再開後 初めての公演となるので別の意味での緊張感があります」と語っていました。準備のため舞台裏に戻った彼女と入れ替えに清水氏が登場し、インタビューを受けました  「とにかくソプラノやテノール歌手というのは、周囲の者は腫れ物に触るような扱いをします リハーサルでソプラノ歌手が「今日は調子悪いから帰る」と言ったら、周囲の者はそれを受け入れるしかありません 現在の声楽の業界ではこれが普通のことです 砂川さんは自己主張があまりない方ですが、多くのソプラノ歌手は我が強い面があります 調子が悪いのに無理してリハーサルをやって喉を潰したりしたら大変なので、周囲の者は”まあ、仕方ないな”と思っているのです 言い方を変えれば、ソプラノやテノールは、この業界ではそれほど大事にされ尊重されているということです」と持論を展開しました

これを聞いて私は、砂川涼子という人は、自分から積極的に「ここはこう歌いたい」とか「ここはこういう演出にした方が良い」とかいうように積極的に主張するのではなく、与えられた役柄は自分なりに咀嚼した上で、プロフェッショナルとしてキッチリと歌い 演じるというタイプではないか、と思いました    それにしても、ソプラノ歌手やテノール歌手の誰もが我が強いと言わんばかりの発言はどうなんでしょうか

砂川涼子は最後に得意のオペラからシャルル・グノー(1818‐1893)の歌劇「ファウスト」より「宝石の歌」を表情豊かに ピアノを突き抜けて歌い上げ、次いでジョルジュ・ビゼー(1838-1875)の歌劇「カルメン」より「恐くないと言ったけれど」を、ミカエラの不安な心情を掬い取りながら歌い上げました

休憩なし1時間のコンサートでしたが、歌とインタビューを通して砂川涼子という歌手の人と力量を垣間見たような気がします

 

         

 

帰りがけにホール入口の臨時チケット売場で、1月と3月の「名曲リサイタル・サロン」のチケットを購入しました とくに1月6日のN響第1コンサートマスターの”マロ”こと篠崎史紀氏のリサイタルが楽しみです

 

     

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ジャン=リュック・ゴダール監督「女と男のいる舗道」&「女は女である」を観る ~ ミシェル・ルグランの音楽が全編に流れる:新文芸坐

2020年09月23日 07時15分24秒 | 日記

23日(水)。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものです 朝夕を中心にだいぶ涼しくなってきました 昨日、半袖シャツをしまい 長袖シャツを出しました  これから暑い日があったとしても、映画館などでは新型コロナウイルス感染拡大予防措置としてエアコン(冷房)をガンガン効かせて寒いくらいなので、長袖の方が良いのです

ということで、わが家に来てから今日で2183日目を迎え、米国ではトランプ政権が発足後、連邦地裁が大統領令を差し止める事例が急増しており、米放送局VOA(ボイス・オブ・アメリカ)によると、オバマ政権では年平均2.5件だったが、トランプ政権では最初の1年間に20件に達している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプ・ファーストの方針で  大統領令を出せば何でもできると勘違いしている

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました わが家のビーフカレーは牛バラ肉を使います。安くて美味しいです

 

     

 

         

 

昨日から池袋の新文芸坐で「ミシェル・ルグランと巨匠たち」シリーズの上映が始まりました 19日から映画館の入場制限が緩和されたことに伴い、すべての席に座れるようになりました ただし、マスク着用、入口での体温検査と手指のアルコール消毒は継続されています 昨日は祝日ということもあって、久しぶりに多くの観客が入りました

昨日は「女と男のいる舗道」と「女は女である」の2本立てを観ました

「女と男のいる舗道」はジャン=リュック・ゴダール監督による1962年製作フランス映画(モノクロ・84分・4Kデジタルリマスター版)です

舞台は1960年代初頭のフランス。ナナ(アンナ・カリーナ)はパリのとあるカフェで、別れた夫ポール(アンドレ・S・ラヴァルト)と近況を報告し合い、別れる。彼女は女優を夢見て夫と別れ、パリに出てきたが、夢も希望もないままレコード店員を続けていた 家賃も払えないほどの貧困生活に陥ってしまった彼女は、ある日、街の舗道で男(ジル・ケアン)と出会い、誘われるままに抱かれ、その代償を得る。ナナは昔からの友人イヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)と会う。イヴェットは売春の仲介をしてピンハネをして生きていた。ナナはいつしか娼婦となり、知り合った男ラウール(サディ・ルボット)がヒモになっていた やがてナナは見知らぬ男と関係を持つことに無感覚になっていく。ラウールはナナを売春業者に売り渡すことにする。引き渡しの時、業者から受け取った金が不足していたため、ナナを連れて帰ろうとするが、業者側のギャングは拳銃を撃ち、ナナを直撃する ラウールもギャングも逃走し、ナナは舗道に倒れ絶命する

 

     

 

この映画はジャン=リュック・ゴダールの長編第4作です 強烈に印象に残るのはナナを演じるアンナ・カリーナの横顔のアップです 何度となくスクリーンに登場しますが、ゴダール監督はよほどアンナ・カリーナの顔を撮りたいのだと思います それはそうでしょう。二人はこの映画製作の前年(1961年)に結婚したばかりなのですから

もう一つは、始まったかと思うと急に止み、無音が続き、しばらくしてまた始まる悲し気な旋律です これはミシェル・ルグランの作曲による音楽ですが、途中で止めるのも彼の意図かどうかは不明です それにしても、ラストで死んでしまうナナが可哀そうです

 

         

 

「女は女である」はジャン=リュック・ゴダール監督による1961年製作フランス映画(84分・カラー)です

コペンハーゲンから来たばかりでフランス語の「R」の発音がうまくできないキャバレーの踊り子アンジェラ(アンナ・カリーナ)は、パリの小さな書店に務めるエミール(ジャン=クロード・ブリアリ)と一緒に暮らしている ある日アンジェラが、突然、24時間以内に子どもが欲しいと言い出す エミールはそんな彼女に戸惑いを隠せない 二人の意見が合わないため、アンジェラは「それなら他の男に頼む」と啖呵を切ると、エミールは動揺しながらも「勝手にしろ」と答えてしまう そこへ、アンジェラに想いを寄せる青年アルフレッド(ジャン=ポール・ベルモンド)が現れる ついにアンジェラはアルフレッドと寝てしまう。ある晩、アンジェラがエミールの住むアパルトマンに帰ってくる。二人はベッドで黙り込むが、エミールは「試しに自分の子どもをつくってみよう」とアンジェラを抱く。行為の後、エミールは「君がそんなにみだらな女だとは思わなかったよ」と言うと、アンジェラは「私はただの女よ」と答える

 

     

 

この映画はジャン=リュック・ゴダールの長編第3作で、「登場人物が歌わないミュージカル・コメディ」と銘打って製作されました 音楽をミシェル・ルグランが担当しています

確かに「コメディ」であるのはその通りですが、「ミュージカル」にしては、誰も音楽に合わせて歌ったり踊ったりすることがないので、疑問です そのうえ、せっかくミシェル・ルグランの流麗な音楽が流れているのに、急に断ち切られたり、無音状態になったりするので、観衆は「慣性の法則」で気持ちだけが前のめりになって先を行くのでズッコケそうになります

この映画のラスト、「君がそんなにみだらな女だとは思わなかったよ」というエミールの台詞と、「私はただの女よ」というアンジェラの台詞のうち、「みだらな女」と「ただの女」のフランス語が韻を踏んでいる面白さを前面に出したようです 大学の一般教養課程の第二外国語としてフランス語を学んだだけの乏しい知識では、とても理解した上で楽しむところまではいきませんが

劇中、アルフレッド(ジャン・ポール・ベルモンド)が「早くしてくれ。テレビで『勝手にしやがれ』を観たいんだ」という台詞を言うシーンがありますが、これは言うまでもなく、ゴダール監督、ジャン=ポール・ベルモンド主演による前年製作映画のタイトルです こういうところはゴダール監督のユーモアのセンスを感じます

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五百旗頭幸男・砂沢智史監督「はりぼて」を観る ~ 自民党会派の富山市議の不正を告発したチューリップテレビの記者たちの活動を追う:ユーロスペース / ミニシアター 映画の多様性を支える

2020年09月22日 07時15分38秒 | 日記

22日(火・祝)。昨日の朝日朝刊「文化の扉」コーナーに「豊潤なるミニシアター 映画の多様性支え 作り手も育む文化拠点」という見出しが躍っていました 記事を超訳すると、

「小さな映画館『ミニシアター』。新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされたが、数多くの映画人や映画ファンが支援に名乗りを上げ、その価値が見直されている 政府に支援を求める要望書を出した『SAVE  the CINEMA』に9万1659筆の署名が、クラウドファンディングによる『ミニシアター・エイド基金』には約3万人から3億3千万円を超える資金が集まり、各地のミニシアターに分配された ミニシアターとは、大手映画会社の影響下にない独立した経営を行い、『単館系』『アート系』と呼ばれる作品を中心に上映する小規模映画館である 2019年末で全国に127館があり、昨年公開された1091本のうち半数が、ミニシアターのみで公開された 日本でのはじまりは、1974年に東京の『岩波ホール』が始めた、知られざる名画を上映する『エキプ・ド・シネマ』運動とされる 映画史に詳しい日本大学の古賀太教授は『作品の多様性や、ネットの動画配信にはないライブ感を生かして 個性的な映画館は生き残ってきた   《ミニシアターは社会に必要だ》というコロナ禍で生まれた認識を、今後につなげていく必要がある』と話す

私が足しげく通っている「ギンレイホール」「早稲田松竹」「新文芸坐」も典型的なミニシアターです

このコーナーでは全国各地の有名なミニシアターを5館ほど紹介していますが、東京からは1982年に渋谷初のミニシアターとして開館し、若者文化の発信地としてミニシアターブームをリードした「ユーロスペース」を取り上げています 昨日「はりぼて」を観ました。下にご紹介します

ということで、わが家に来てから今日で2182日目を迎え、ギンズバーグ米連邦最高裁判事の死去を受けた後任の選定を遅滞なく行うトランプ大統領の方針について、与党共和党のコリンズ上院議員が反対したのに続いて、同党のマカウスキ上院議員は、2016年にオバマ前大統領が指名した最高裁判事候補の承認を、当時上院を支配していた共和党が「次期政権まで待つべきだ」と拒否したことに言及し、「われわれは2か月足らずで大統領選を迎える。同じ基準を適用する必要がある」と主張した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     共和党にも良心のある議員がいることが分かった  次はロムニー上院議員と誰だ?

 

         

 

昨日、夕食に「豚しゃぶ」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました ヘルシーメニューで統一しました

 

     

 

         

 

昨日、渋谷のユーロスペースで五百旗頭幸男・砂沢智史監督による2020年製作映画「はりぼて」(100分)を観ました

この映画は、保守王国・富山県の小さなテレビ局「チューリップテレビ」の追及により、市議会議員14人がドミノ辞職し、報道によって議員たちの狡猾さと滑稽さを丸裸にさせたドキュメンタリーです

富山県は、有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一という保守王国である 2016年8月、平成に開局した若いローカル局「チューリップテレビ」のニュース番組が「自民党会派の富山市議   政治活動費事実と異なる報告」というスクープを報道した この市議は”富山市議会のドン”と言われていた自民党の重鎮で、その後、自らの不正を認め議員辞職した これを皮切りに議員たちの不正が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職していった その反省をもとに、富山市議会は政務活動費の使い方について「全国一厳しい」と言われる条例を制定したが、3年半が経過した2020年、その後不正が発覚した議員たちは辞職せず居座るようになっていった 記者たちは議員たちを取材するにつれ、政治家の非常識な姿勢や滑稽さ、まるで「はりぼて」を目の当たりにしていく しかし、「はりぼて」は記者たちのすぐそばにもあった

 

     

 

五百旗頭幸男、砂沢智史の二人の記者は情報公開制度を利用し、関係方面への取材を通して、各議員の政務活動費の領収書の裏にある”実態”を突き止め、事実関係に関する疑問を議員に投げかけることによって、その不正を暴いていきます この地道な「調査報道」こそジャーナリズムに欠かせないもので、「チューリップテレビ」はこのスクープにより「日本記者クラブ賞特別賞」「ギャラクシー賞報道活動部門大賞」「菊池寛賞」を受賞しています   

それにしても、市議会のドンを皮切りに、次から次へと不正が発覚し謝罪会見で頭を下げるにとどまらず、市議会の議長に選ばれた議員も次々に不正が発覚し議長を降りて交代するといった事実を見せつけられると、もう笑うしかありません これがブラックコメディでなくて何なのかと言いたくなります 日本の政界の縮図を見るような思いがします

市議会議員の不正追及に終わっていれば、単なるスクープの自慢話に終わっているところですが、この映画の凄いところはカメラを自らの「チューリップテレビ」に向けているところです

あの事件以後、五百旗頭記者は社内異動により記者職を離れ事務職(社長室)に移ることになり、砂沢記者は「あれ以降、会社は自分が思っていたのと違った方向に行こうとしている それが残念だ。残った人達には頑張ってほしい」と涙ながらに語り、退職の挨拶をするのです

これを観ている我々は、「ある方面から圧力がかかって、あの優秀な二人の記者は報道の現場から外されたんだろうな」と推測することになります あの二人だったら、どこに行っても通用すると思いますが、本人たちにとっては不本意でしょう ただ、「チューリップテレビ」は会社が新しいだけに若い社員が圧倒的に多いので、2度目の日本記者クラブ特別賞を目指して 社員の皆さんの奮起を期待したいと思います

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バッハ・コレギウム・ジャパンでJ.S.バッハ「ミサ曲ロ短調 BWV232」を聴く ~ コロナ禍の影響によりオール日本人歌手による熱演

2020年09月21日 07時19分37秒 | 日記

21日(月・祝)。わが家に来てから今日で2181日目を迎え、米メディアは19日、トランプ米大統領あてに猛毒のリシンを含む封筒を米当局が見つけ、トランプ氏の手元に渡るのを阻止したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     いくらトランプが史上最悪の大統領だということが事実だとしても それはアウトだ

 

         

 

昨日、初台の東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン「第139回定期演奏会 ~ J.S.バッハ『ミサ曲 ロ短調 BWV232』」を聴きました 演奏はソプラノⅠ=澤江衣里、ソプラノⅡ=松井亜希、アルト=布施奈緒子、テノール=西村悟、バス=加来徹。合唱・管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン、指揮=鈴木優人です 当初ソリストは ソプラノⅠ=ジョアン・ラン、ソプラノⅡ=オリヴィア・フェアミューレン、テノール=ユリウス・プファイファー、バス=ドミニク・ヴェルナーの予定でしたが、新型コロナ禍の影響により日本人歌手に総入れ替えとなりました

「ミサ曲ロ短調  BWV232」はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)が1724年から1749年にかけて作曲したミサ曲です 「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」と並びバッハの3大宗教曲の一角を占めています この作品は大きく第1部:ミサ(キリエ、グロリア)、第2部:ニケーア信経(クレド)、第3部:サンクトゥス、第4部:オザンナ、ベネディクトゥス、アニュス・デイとドナ・ノビス・パーチェムの4部から構成されています

コンサート会場における人数制限は19日に解除されていますが、この日の公演は定員の50%未満の市松模様の座席配置をとります。それに伴い再指定された自席は1階29列7番です

 

     

 

オケのメンバーが入場し、次いで合唱とソリストが配置に着きます 通常の配置は指揮者の近くに弦楽器、その後方に管楽器、そして最後方に合唱団が配置されますが、演奏中の(特に声楽の)飛沫拡散防止の観点から、最後方に弦楽器と管楽器が扇型に横一列で並び、その手前に合唱団が、指揮者の一番近くにソリストがそれぞれ扇型に並びます 最後方の配置は、左からフラウトトラヴェルソ(2)、コンマス・若松夏美以下ヴァイオリン(6)、ヴィオローネ(コントラバス)、オルガン、ヴィオラ(2)、トランペット(3)、ティンパニ、コルノ・ダ・カッチャ(ホルン)、ファゴット(2)、オーボエ(2)という並びで、オルガンの手前にはチェロ(2)が、オーボエの手前にはチェンバロがスタンバイします

鈴木優人の指揮でキリエの演奏に入ります 合唱が「キリエ」と歌い出した途端、透明感のある純粋な歌声が会場に響き渡りました BCJの一番大きな特徴は、ドイツ人も驚くという正確なドイツ語とクリアな歌声です 第2曲「キリストよ、あわれみたまえ」の澤井衣里と松井亜希の二重唱が美しい 第4曲「グロリア」のナチュラル・トランペットとティンパニが祝祭的な響きを醸し出し、合唱を盛り立てます この曲を聴くとワクワクします 第6曲「われらの主を、褒め~」の松井亜希につけるオブリガートを演奏する若松夏美の演奏が素晴らしい 第8曲「主なる神、天の王~」のソプラノの澤江衣里とテノールの西村悟の二重唱は息がピッタリで、フラウトトラヴェルソ(フルート)の前田りり子と菅きよみの伴奏がよく寄り添っています 第10曲のアリア「父の右に座視したもう~」の布施奈緒子のアルトが三宮正満のオーボエに良く溶け合っていました 次の第11曲「主のみ聖なり~」の加来徹のバスが安定感抜群で、日高剛のコルノ・ダ・カッチャ(ホルンのような楽器)がよく付けていました この楽器はバルブがないので、演奏が非常に難しいと思われますが、あれだけの演奏ができるのは日フィル、読響、N響(首席代行)を渡り歩き、東京藝大准教授を務める逸材だからこそです 第12曲「精霊とともに~」の合唱は、スピード感があふれ、高揚感がたっぷりでした 以上「キリエ」と「グロリア」で前半が終了しましたが、ちょうど4時でした。ちょうど1時間かかったことになります

25分の休憩後、「ニケーア信経」以下の演奏に移りますが、印象は前半と同様で、歌手陣と合唱がよく頑張り、管楽器を中心にソリストによく寄り添っていました

松井亜希と加来徹の二人はBCJのソリストとしてお馴染みなので、期待通りの実力を発揮していましたが、この日の収穫はソプラノの澤江衣里とアルトの布施奈緒子、そしてテノールの西村悟の3人です 女性2人はすでに合唱団の中で活躍し、ソリストとして歌うこともありましたが、西村悟はBCJデビューだったのではないかと思います オペラだけでなくバッハも歌える歌手として期待できると思いました

最後の第27曲の合唱「われらに平安を与えたまえ」の最後の音が消えたのが5時22分でした

 

     

 

「音楽の友」9月号に「朝岡聡 meets 鈴木雅明&鈴木優人  J.S.バッハ『ミサ曲ロ短調』を語る」というインタビュー記事が載っています 鈴木優人氏がBCJで『ミサ曲ロ短調』を指揮するのは初めてとのことです インタビューの中で、優人氏が冗談交じりに「指揮するのは100年早い?(笑)」と問いかけると、父・雅明氏は「誰にとってもこの作品を指揮するのは100年早いですよ(笑)。何て言うのかな、『ミサ曲ロ短調』は、極端な言い方をすると指揮できるような曲じゃないんですよ!」と答えています さらに「私が『ミサ曲ロ短調』を初めて指揮したのは、実は20年前です 中学生の頃からカール・リヒターのレコードを聴きまくっていて、バッハの音楽で一番演奏したかった曲ではあったけれど、どうすれば良いかはずっと分からなかった 物語をフォローしたり劇的にストーリーをつくったりするカンタータや受難曲は、オペラとも若干共通するところがあって、どちらかと言えばやりやすかったのです 一方『ミサ曲ロ短調』は、どうやったら形になるか長い間分からなかった。それで2000年に初めて指揮してみたらわかった!『自分がどうやったら良いかずっと考えていたこと自体が馬鹿げている この曲はそんな音楽ではない・・』というのが分かったのです」と述べています これに対して、優人氏は「この曲の演奏は、例えれば宇宙飛行みたいなもので、もちろん多くの人々の支えと高度な訓練を受けた飛行士が必要なのですが、個々の飛行士によって成否が決まるわけではありません。この曲の演奏に参加するとなったら、全員が全身全霊で任務を全うするのみ・・ということです」と語っています

この日の公演は、コロナ禍により海外在住のソリスト陣が参加できなかったことに伴い、図らずもオール・ジャパンでの演奏になったわけですが、指揮者・鈴木優人氏にとっては、共にバッハの宇宙飛行をする上で「禍を転じて福と為す」となったのではないか、と思います さてご本人はどういう感触を持たれたでしょうか

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