30日(土).昨日は金曜日にも関わらず,コンサートもなく,飲み会もなく,まっすぐ家に帰りました こんなことは数えるほどしかありません,マジで
川上未映子著「ヘヴン」(講談社文庫)を読み終わりました 川上未映子は2008年に「乳と卵」で第138回芥川賞を受賞して一躍有名になりましたが、様々なプロフィールの持ち主です。
1976年に大阪市で生まれ、高校までは大阪の学校を卒業しました。2002年にはビクターから川上三枝子の名前で歌手デビューしています 残念ながら”売れた”という話は聞いたことがありませんしかし、女優としては、映画「パンドラの匣」(2009年。太宰治原作。富永昌敬監督)で竹さん役で出演してキネマ旬報新人女優賞を受賞しています。川上ファンの私はこの映画を観ましたが、なかなか艶めかしくて好演でした さて、「へヴン」です。
同級生からのイジメを受けている14歳の”僕”は,ある日「わたしたちは仲間です」という差出人不明の手紙を受け取ります それは同じクラスの女生徒・コジマからのものでした.コジマもイジメを受けています やがて2人は会って話をするようになります.イジメを受けていることについてコジマは次のように語ります.
「君もわたしも,弱いからされるままになっているんじゃないんだよ.あいつらの言いなりになってただ従ってるわけじゃないの.最初はそうだったかもしれないけど,私たちはただ従ってるだけじゃないんだよ受け入れているのよ.自分たちの目のまえでいったいなにが起こっているのか,それをきちんと理解して,わたしたちはそれを受け入れているんだよ.強いか弱いかで言ったら,それはむしろ強さがないとできないことなんだよ」「あの子たちにも,きっとわかるときが来る」
コジマのこの考えを”僕”は心の底からは理解できません.
”僕”は自分が斜視であることからイジメにあっているのではないか,と考えて,イジメる側の男子生徒に対してそれを問います.しかし,彼は次のようなことを言います
「そんなの関係ない.意味なんてなにもないよ.したいことをやっているだけなんじゃないの,たぶん.まず,彼らに欲求がある.その欲求が生まれた時点では良いも悪いもない.そして彼らにはその欲求を満たすだけの状況がたまたまあった.君を含めてね それで,彼らはその欲求を満たすために,気ままにそれを遂行しているだけの話だよ」「だから,君の言うところのイジメを君が受けたくないんだったら,僕たちを,というか,二ノ宮を,まあどうにかするしかないよね」
”僕”はこの考えにも同意できません.何が善で何が悪か,どこまでが許されて,どこからが許されないのか・・・・・ますます分からなくなります
そうした中,”僕”は,コジマが好きだという斜視の目を,医者の勧めで手術をして治します.すると今まで見えなかった世界が明るく見えるようになって新しい世界が開かれるとことを感じ取ります これによって”僕”はイジメを受けることがなくなるのか,それは分かりません
関西弁を駆使したエッセイなどでお馴染みの川上未映子が,真正面から”イジメ問題”に取り組んだこの作品は2010年、第60回芸術祭選奨文部科学大臣新人賞と第20回紫式部文学賞を受賞しましただから,というわけではありませんが,現代における善と悪を考え直す意味でも,一読をお勧めします
今日で2012年も前半が終わりです.自分のために,今年1月1日から6月30日までの実績を記録しておきます
①コンサート: 91回
②映 画: 27本
③読 書: 32冊
どうもコンサートが突出してしまったようです.後半も予定が増えつつあります