人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

真保裕一著「奪取・上」を読む~偽札造りに命を賭ける男たちの物語

2015年08月31日 07時01分13秒 | 日記

31日(月).とうとう8月も今日で終わりです.暑い夏でしたが,ここ数日,雨が降ったせいか涼しい日が続いていました 先週の合言葉は「もう夏は終わったんでしょうか?」「いやいや,また ぶり返すんじゃないですか」でした さて,今週は暑くなるのか,涼しいまま秋になってしまうのか・・・・予想がつかない私は,昨日賭けに出ました 思い切って半袖シャツをタンスにしまい,長そでシャツを出しました.これが吉と出るか凶と出るか,さあどうなるでしょうか? 今朝は小雨が降っていて涼しいので,今日に限っては取りあえず賭けには成功したと言ってもよいのでしょうね ということで,わが家に来てから325日目を迎え,マガジン・ラックをベッド代わりにリラックスするモコタロです 

 

          

            ここはリラックスできるんだよね ぼく雑誌じゃないけど

 

  閑話休題  

 

真保裕一著「奪取・上」(講談社文庫)を読み終わりました 真保裕一は1961年東京生まれ.アニメーションディレクターを経て,1991年「連鎖」で第37回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューを飾っています 97年に発表したこの「連鎖」で日本推理小説家協会賞と山本周五郎賞をダブル受賞しています.「デパートに行こう」は面白い小説でした

 

          

 

「22歳の道郎は友人の雅人がヤクザの街金に引っかかり1,260万円の借金を負ったため,二人で偽札を造ってピンチを脱しようと画策する パソコンを始めとするメカに強い道郎は,その知識を存分に発揮して偽札造りに突入することになるが,差し当たり造った偽札が銀行のATMの機械を騙すことが出来るのかを試すため,ATMの中に組み込まれた「紙幣識別機」を奪取することを思い付き,実行に移す

銀行の小さな支店から「紙幣識別機」を奪取し,偽札造りに必要な材料を買い集め,とうとう識別機を通過する偽札の完成に辿りつく さっそく,銀行の本支店をハシゴして「両替機」で1万円札をくずす”仕事”にかかる.「うまく行った」と思った時に,得体のしれないジジイの罠に引っかかり,財布を擦られてしまう そこからトンデモナイ展開が待っていた.果たしてジジイの正体は?道郎と雅人の運命は?」

この小説が書かれたのは1999年5月のことです.読んでいると「テレホンカードの偽造」とか,「電話ボックス」という,その時代を反映した言葉が出てきます スマホ全盛の時代に読むと何となく違和感がありますが,それは全体の大きな流れの中では些細なことに過ぎません

この「上巻」は第1部が「手塚道郎篇」,第2部が「保坂仁史篇」となっていますが,保坂仁史とは誰のことか・・・それは読んでのお楽しみです 最初のうちは,先の「テレホンカード」が出てきたりして,ちょっとダルイな,と思っていましたが,読み進めるうちに加速度がついてきて,あっと言う間に上巻を読み終わってしまいました 時間を忘れるエンタテインメント小説としてお薦めします

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アジア・ユース・オーケストラでベートーヴェン「交響曲第9番」を聴く

2015年08月30日 10時37分03秒 | 日記

30日(日)。わが家に来てから324日目を迎え,後ろにいるのが敵か味方か逡巡するモコタロです 

 

          

           後ろにいるのは 白ウサちゃんの関係者かな?それとも・・・

 

  閑話休題  

 

昨夕、東京オペラシティ・コンサートホールでアジア・ユース・オーケストラ(AYO)の東京公演第2夜を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「エグモント」序曲、②ハイドン「チェロ協奏曲第2番ニ長調」、③ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付”」です ②のチェロ独奏はスティーヴン・イッサーリス、③の独唱はソプラノ=イー・ソヨン、メゾソプラノ=ジェニー・ホー、テノール=イ・ヨンフン、バリトン=ベンノ・ショルムで、指揮は芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスです

 

          

 

自席は1階25列10番,左ブロック右通路側です.会場は前日よりも多く9割以上埋まっている感じです 前日同様,ステージ上は約100人の若者がそれぞれのチューニングに勤しんでおり,会場アナウンスが良く聴こえません.これはカオスです

この日のコンマスは前日,コンマスの隣にいた女子です.二人で交替したようです.後で判りますがこの女子は台湾出身で,前日の彼女は予想通り中国出身でした AYO芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスがトレード・マークの白のジャケットで登場し,早速1曲目のベートーヴェン「エグモント」序曲の演奏に入ります 彼はタクトを持ちません.楽員とは目と目で合図をします.これをアイ・コンタクトということは,当ブログの読者の方は嫌と言うほど聞かされましたね

 

          

 

前日のバッハ「トッカータとフーガ ニ短調」と同じく,フル・オーケストラのマスの力が発揮され,迫力ある音楽が展開します 冒頭はかなりゆったりしたテンポだったので,このまま行くのかな,と思っていたら次第にテンポ・アップして力強い演奏を展開しました

楽員が大幅に引き上げ,総勢30数名のこじんまりした態勢になります.イッサーリスがチェロを抱えて堂々と入場します パンチャスの合図でハイドン「チェロ協奏曲第2番ニ長調」の演奏に入ります イッサーリスはオケによる序奏の時もチェロ・パートに同調して演奏したり,弓で指揮をしたり,自由自在に振舞っています チェロ独奏の部分に入ると,まるでチェロと一体になっているように弓を操り,ハイドンの明るい音楽を奏でます.演奏するのが楽しくてしかたがない,という表情で自由自在にチェロを弾きこなします

大きな拍手にアンコールに応え,弱音が美しい「鳥の歌」を演奏しました この曲は,チェロの巨匠カザルスが国連本部で演奏して有名になった曲です.イッサーリスは極限の弱音を追求し見事に鳥の歌を弾き切りました

残念だったのは,また拍手のフライングがあったことです イッサーリスの弓が降りないうちに,2階席から静けさを破る大きな拍手が起きたのです イッサーリスは2階の方を見上げ,「信じられない」という顔付を見せましたが,一旦止んだ拍手がまた再開したので立ち上がって一礼しました 彼にとっても余韻を味わえないアクシデントで残念だったことでしょう.名演に拍手をしたい気持ちは分かりますが,どういう曲が演奏されたのかを認識した上で拍手をするタイミングを図るべきです 曲によっては,せっかくの感動が台無しになります

 

          

 

休憩後は,いよいよベートーヴェンの「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です.オケの後ろには約100名のコーラスがスタンバイしています よくもあんなに狭いスペースに並んだものだと感心します.フル・オーケストラと合唱団とがステージ一杯に広がる景色を見ると「これはマーラーの”千人の交響曲”でも演奏するのかい」と言いたくなります.さすがにソリスト4人を収容するスペースが取れないようで,2階正面のパイプオルガン下のP席に4つ椅子が並べられました

チェロ・セクションにイッサーリスが加わると,ステージ上の若者たちから歓迎の歓声が上がりました パンチャスの合図で,第1楽章に入ります.冒頭,ホルンがちょっとずれたようですが,何事もなかったかのように演奏は進みます オケ全体を見渡しながら聴いていると,まさにオケの中央・後方に位置するティンパ二の女子が凄く良い演奏をしているのに気が付きます リズム感が良く,メリハリのある音楽を形作っています.管楽器群もそれぞれが上手く,安心して聴けました

第2楽章「スケルツォ」は前進あるのみの素晴らしい演奏でした この楽章が終ったところでソリストの4人が2階正面P席の所定の位置にスタンバイします

第3楽章のアダージョは弦楽器を中心にベートーヴェンの”穏やかな良さ”を発揮しました ヴィオラと第2ヴァイオリンが主旋律を奏でた時,「ベートーヴェンは何と素晴らしい音楽を作ったのだろうか」と,目頭が熱くなりました.演奏が素晴らしかったからこそです

この第3楽章はかつて,(西)ドイツ映画「マリア・ブラウンの結婚」で使われていました マリアが,戦地から帰るはずの夫を駅で待つシーンで流れていました つまり第3楽章の穏やかな音楽は第4楽章の歓喜の前兆であるわけで,マリアは夫が帰るはずの列車(=第4楽章)を駅で待っているという設定です

第3楽章が終わり,間を空けることなく第4楽章に入ります.その瞬間,2階席のソリストたちに緊張感が漂いました この楽章では「歓喜の歌」のメロディーがチェロとコントラバスで奏でられ,ヴィオラ,ヴァイオリンへと受け継がれていきますが,弦楽器群の演奏は美しく素晴らしいものがありました

4人のソリストも声が良く通り,素晴らしい歌声を聴かせてくれ,コーラスも熱唱でした 総力戦でのフィナーレの畳み掛けは圧倒的でした

終演後,パンチャスがマイクを持って英語でAYOが今年25周年を迎えたことを説明し,例年通り103名のメンバーを国別に紹介していきました 国名を挙げられたメンバーはその場で立ちあがり,ステージ上の仲間や聴衆から大きな拍手を受けました 次いでパンチャスは,メンバーは6週間の中で,最初の3週間はプロのレッスンを受け,次の3週間は上海,北京,天津,香港,台北,韓国,大阪,そして東京へと演奏旅行を続けてきて,この日を最後としてオケは解散し,メンバーはそれぞれ別の道を歩むことを説明しました 

そして,アンコールとしてエルガーの「エグニマ変奏曲」から「二ムロッド」を演奏しました 作品自体が感動的な曲なので,演奏側も聴衆側も否が応でも感傷的になります 演奏後,そこかしこでスタンディング・オベーションも見られ,惜しみない拍手を送る聴衆を前に,103名の若者たちの中には涙を隠せない者が少なくありませんでした これをもって彼らの6週間の”夏の研修合宿”は終わりを告げました

AYOの皆さん,素晴らしい演奏をありがとう 世界の各地で紛争が絶えない現状の中で,皆さんは「音楽に国境はない」ことを演奏で示してくれました またいつかどこかで皆さんの演奏を聴く機会があれば嬉しく思います それぞれの国に帰っても,この6週間の体験を忘れずに,そして日本の聴衆のことも忘れないでください メンバーが入れ替わっても,私は来年も聴きに行きます

 

          

 

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ジェームズ・ジャッド+アジア・ユース・オーケストラでマーラー「交響曲第4番」他を聴く

2015年08月29日 10時15分04秒 | 日記

29日(土)。わが家に来てから323日目を迎え,新国立競技場の予算が最終的に決定して一安心するモコタロです 

 

          

           やれやれ やっと決まったか! 一時はどうなるかと思ったよ

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の東京オペラシティ・コンサートホールでアジア・ユース・オーケストラ(AYO)東京公演第1夜を聴きました プログラムは①バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」、②ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番変ホ長調」、③マーラー「交響曲第4番ト長調」で、②のチェロ独奏はスティーヴン・イッサーリス、③のソプラノ独唱は坂井田真実子、指揮はジェームズ・ジャッドです

 

          

 

アジア・ユース・オーケストラは1987年に巨匠ヴァイオリニスト,ユーディ・メニューインと指揮者リチャード・パンチャスによって設立され,1990年から本格的に活動し,今年が25周年に当たります 会場入口ではプログラムとともに記念バッチが配られました

 

          

 

 自席は1階21列10番,左ブロック右通路側です.会場は8割方埋まっている感じでしょうか それよりも,ビックリしたのはステージ上のカオスです.これ以上は乗り切れないほど多くの若者たちが舞台狭しと配置に着き,各々の練習をしています アジア・ユース・オーケストラ(AYO)はアジア各国で厳しいオーディションを通過し,3週間のリハーサル・キャンプ(夏期講習)に続いて3週間の演奏ツアーを挙行する17歳から27歳までの若者たち103人の集まりです

100ページにも及ぶフルカラーの立派なプログラムに掲載されたメンバー表で国別に人数を数えてみると,多い順に台湾29人,中国26人,香港17人,日本13人,フィリピン,シンガポール各4人,タイ3人,韓国,ベトナム各2人,インドネシア,マレーシア,マカオ各1人といったように,中国大陸からの参加者が多数を占めています 男女比では男子56対女子47という比率です.男女とも上はダーク・グレイのシャツ,下は黒のパンツ(男),黒のロングスカート(女)で統一しています

 

          

 

オケは左奥にコントラバス,前に第1ヴァイオリン,右にチェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります コンマスは女子です.多分,中国出身者ではないかと推測します.AYO首席指揮者ジェームズ・ジャッドがタクトなしで登場します.思わず「待ってました,ポール」と声をかけそうになります.遠くから見るとビートルズのポール・マッカートニーに風貌が良く似ているのです

 

          

 

1曲目はバッハ「トッカータとフーガ ニ短調」です この曲はもともとオルガンのために書かれたものですが,アメリカの大指揮者レオポルド・ストコフスキーがオーケストラ用に編曲した版によって演奏されます.冒頭から100人による音の風圧が客席に押し寄せてきます マスの力に圧倒されます.この規模の演奏は迫力が違います

「対向配置」,「ストコフスキー」ということで思い起こすのは,もともとヨーロッパでオーケストラがクラシック音楽を演奏する時は,第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる「対向配置」を取っていたのですが,アメリカの巨匠ストコフスキーが初めて,向かって左サイドを高音を受け持つヴァイオリン・セクションで固め,右サイドに中・低音を受け持つヴィオラ,チェロ,コントラバスを配置したのです

当時,レコード録音がモノラルからステレオに変わる端境期にあり,ステレオ装置の左のスピーカーから高音部(ヴァイオリン)が,右のスピーカーから中・低音部(ヴィオラ,チェロ,コントラバス)が聴こえるように,楽器の配置を並べ変えたのです ちょうどピアノの鍵盤と逆の配置になるように 現在は,「対向配置」をとる指揮者が多くなっているようですが,”原点回帰”の現象が起きているのかも知れません

 

          

 

さて,弦楽器も管楽器も縮小し,チェロの演奏台がセンターに運ばれます.AYOの公演ではお馴染みのスティーヴン・イッサーリスがジャッドとともに登場し,さっそく2曲目のショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」の演奏に入ります

冒頭,人をおちょくったようなメロディーがイッサーリスのチェロから紡ぎ出されます イッサーリスはチェロを自分の手足のごとく自由自在に扱います.弓は右手の延長ではないかとさえ思えてきます 出てくる音楽はいかにもショスタコーヴィチのアイロニカルなメロディーで,音の表情が豊かです 第2楽章ではチェロが泣いていました.その後の長いチェロ独奏はイッサーリスの独壇場です.物語を語っているかのようでした

 

          

 

会場一杯の拍手とブラボーに,イッサーリスはアンコールに応えました 聴いた感じでは,同じ作曲家ショスタコーヴィチか,あるいは曲想がプロコフィエフのようだったので,そのどちらかだろうと見当を付けました.後でロビーの掲示で確かめると「プロコフィエフの”マーチ”」と書かれていました

15分の休憩後はマーラーの交響曲第4番です.ここでまたオケが拡大し,フル・オーケストラで臨みます あまりにもステージが窮屈そうなので,第4楽章で歌うソプラノ歌手はいったいどこで歌うのだろうか,と心配になってきました ステージがダメなら2階のオルガンの下か,などと勝手に想像していました

第1楽章冒頭が,予想よりもゆったりしたテンポだったので,「このテンポで大丈夫かな?間延びしないかな?」と心配になりましたが,そこはマーラーを得意とするジャッド.次第にテンポ・アップして安心させてくれました 第1楽章と第2楽章を中心にコンマスがヴァイオリンを独奏する部分がありますが,音が大きく,演奏がちょっと大げさではないか,と思いました.しかし,次の瞬間,100人のオケをバックに独奏するのだから,大げさと思われるくらい大きな音で演奏しなければオケに負けてしまうだろう,と思い直しました.素晴らしい演奏でした

この曲の白眉は第3楽章「静かに,少しゆるやかに」でしょう この楽章でも,ジャッドは極めて遅いテンポ設定で曲を進めました.私はここでも「大丈夫かな・・・・」と心配しましたが,何とかクリアしました.とくにオーボエを中心にクラリネット,ホルン,ファゴット,フルートといった管楽器群が素晴らしく,弦楽器の奏でるメロディーをしっかり支えました

第3楽章が終わりを告げ第4楽章に移る時,ティンパ二が連打されますが,ちょうどその時,ステージの左の扉が開き,ソプラノの坂井田真実子が白いドレスに包まれて登場,チェロの後ろ,ハープの前あたりにスタンバイしました 2階のパイプオルガン下という予想は外れました

坂井田は国立音楽大学出身で,イタリアのボローニャ王立音楽院で研鑽を積んだソプラノです 軽快なオケの序奏に続き「われらは天上の喜びを味わい~」と歌い始めると,もうそこはマーラーの世界です.音楽の都ウィーンでも研鑽を積んだこともあって,素晴らしい歌声でした

 

          

 

この曲は静かに静かに終わるのですが,ジャッドは最後の一音が鳴り終ってから,しばしタクトを下ろさず,両手を挙げたままの姿勢を保っていました.そして,おもむろにタクトを下ろすと,会場から大きな拍手が巻き起こりました あるいは,半数の人は,この曲が終わったことを認識できず,拍手を控えていたのかもしれないな,と思ったりしましたが,そんなことはどうでも良く,とにかく「待ってました!」とばかりにブラボーや拍手が巻き起こらなくて良かったと思います 最後の音が消えてから指揮者のタクトが下りるまでの瞬間こそが,クラシックを聴く醍醐味だからです

AY0メンバーの皆さん,素晴らしい演奏でした.一人一人に大きな拍手を送ります

さて,今夕も東京オペラシティコンサートホールに行きAYOの第2夜公演を聴きます.ベートーヴェンの「第9」が演奏されますが,あの狭いステージのどこに100人近くの合唱団を配置するのか興味津々です

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大竹聡著「それでも酔ってません」を読む~酔っぱらいの戯言

2015年08月28日 07時01分05秒 | 日記

28日(金).昨日午前,池袋のサンシャイン60の7階にあるSクリニックで人間ドックの日帰り検診を受けてきました 肺や胃のレントゲン検査,超音波による内臓検査を含めてひと通り検査してもらいましたが,終わってから呼ばれ,いくつか指摘されました

「視力が落ちてます.聴力も高音部が落ちてます.ついでに能力も落ちてます

「もともと無い能力は落ちようがないでしょう!だいいち,脳検査やってないし

「そうでした 100円落ちてます

「えっ,どこどこ

「人間が卑しいですよ

「はかったな

ということで視力も聴力も下降線を辿っていることが精密検査の結果,判明しました 年間180回コンサートを聴く身からすると,聴力の低下は重大問題です 耳を鍛えたいと思います.でも,どうやって? ということで,わが家に来てから322日目を迎え,白ウサちゃんを兔ドック・デートに誘うモコタロです 

 

          

           ねえ 10万円貯まったら いっしょに兔ドックに行こうよ

 

          

            さて 今いくら貯まっているかな・・・・裏返してみよう

 

          

            よく見たら お金が入っていなかった 缶違いだったよ

          

  閑話休題  

 

大竹聡著「それでも酔ってません 酒呑みおじさんは今日も行く」(双葉文庫)を読み終わりました 著者の大竹聡氏は1963年東京生まれ.早稲田大学第二文学部を卒業後,出版社,広告代理店,編集プロダクションなどを経て現在フリーライターの立場です

この本は悪名高き『週刊大衆』誌上に2013年春から2014年秋まで連載した,酒呑みの話です この本が出る前に『ぜんぜん酔ってません』と『まだまだ酔ってません』があり,この本はシリーズ第3弾というわけです

つまり,本書は出版社からお金をもらって酒を呑んで,その失敗談を雑誌に連載して原稿料をもらうという,一見羨ましい立場の人が書いた本です しかし,『仕事として呑む』ということは,考えようによっては,呑みたくない時にも呑まなければならないわけで,その時は辛いでしょう・・・と普通には思うのですが,この人は呑みたくない時はないようです 本当によく呑みます.二次会なんて当たり前で,三次会,時には四次会まで呑んで,呑み代よりも高いタクシーで帰ることになります もっとも呑み代は出版社が出してくれるので,呑み代がタクシー代に取って代わるということなのでしょうが 本人は「ギャラより高い交通費」と詠んでいます

 

          

 

取りあえず生きて行くのに,読まなくても十分やっていけます 「自分はここまで呑んで失敗したりはしないよ」と優越感に浸りたいお酒好きな人にお薦めしときます

 

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エピス・クァルテットでハイドン「第81番」,ベートーヴェン「第12番」を聴く

2015年08月27日 07時01分23秒 | 日記

27日(木)。昨日は台風の影響か朝から夜まで涼しかったですね.久々にスーツで出勤しました 今日は休暇を取って人間ドックに行ってきます ということで,わが家に来てから321日目を迎え、おやつに不服を唱えるモコタロです 

 

          

           これ ぼくのおやつじゃないよ 兎用のおやつをちょうだい!

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の東京オペラシティ・リサイタルホールでエピス・クァルテットのコンサートを聴きました プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第81番ト長調」、②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第12番変ホ長調」です

「エピス」というのはフランス語で香辛料のことだそうです.スパイスの効いた演奏を目指しているのでしょう 2010年に結成されたこの弦楽四重奏団のメンバーは全員が東京藝大の出身者です 第1ヴァイオリンは,群馬交響楽団や京都市交響楽団の首席客員奏者として活躍する須山暢大,第2ヴァイオリンは東京藝大音楽学部非常勤講師の村津瑠紀,ヴィオラは東京都交響楽団ヴィオラ奏者の村田恵子,チェロは東京交響楽団の首席チェリスト伊藤文嗣です

 

          

 

そもそもこのクァルテットを聴こうと思ったのは,チェロの伊藤文嗣が東京交響楽団の首席チェリストで,何度もオケの一員としての演奏に接してきたからです 見るたびに「若者,頑張ってるな!」と見守っています

エピス・クァルテットの演奏を聴くのは,JTアートホールで初めて聴いて以来今回が2回目です また,オペラシティのリサイタルホールで聴くのは,ハンブルク・トリオのブラームス演奏会を聴いて以来今回が2回目です 座席は自由席.右ブロック前から6列目の左通路側席を押さえました

4人が登場して,さっそく1曲目のハイドン「弦楽四重奏曲第81番ト長調作品77-1の演奏に入ります この曲はハイドンの最後の弦楽四重奏曲の一つですが,ロプコヴィッツ公爵に献呈されていることから”ロプコヴィッツ四重奏曲”とも呼ばれています.この公爵はベートーヴェンの最初の弦楽四重奏曲である作品18の6曲も献呈されているとのことです 第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「メヌエット プレスト」,第4楽章「フィナーレ プレスト」の4つの楽章から成ります

私はこの曲を聴くのは初めてですが,第1楽章の冒頭を聴いた第一印象は「まるで,ロッシーニのオペラのアリアを聴いているような親しみやすい軽快なメロディーだな」ということです.それは第2楽章に移っても同じ印象でした 全体を通して感じたのは,極めてシンプルな作りなのではないか,ということです ハイドンは晩年に至って一層,音楽を単純化していったのではないか,と思いました

4人は各楽章間でチューニングを入れましたが,この日は,雨が降ったり止んだりの湿度の高い気候だったことから,楽器に影響があったのでしょう.しかし,演奏は肩の力を抜いた素晴らしいアンサンブルでした

休憩後は,ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第12番変ホ長調作品127」です ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の最初の曲です.ここ数日,イタリア弦楽四重奏団のCDで予習してきたので全体の流れは頭に入っています

 

          

 

4つの楽章から成りますが,この曲の白眉は第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」でしょう 冒頭,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリン,第1ヴァイオリンへと短い断片が受け継がれ”本題”に入って行きますが,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴く時に思うのは,アダージョ楽章が特に素晴らしい,ということです この曲のアダージョも”祈り”のような曲想が展開します

この日の演奏会を振り返ってみると,個人的にはハイドンの方が彼らに合っているのではないか,ベートーヴェンはちょっと荷が重すぎたかな,と思いました それでも,ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲に果敢に挑む若い彼らの姿勢には好感をが持てます.第3回目のコンサートも是非聴きたいと思います

 

          

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「奪取・下」「おとなの鉄道旅行」「立川談志まくらコレクション」「リヒテルと私」を買う

2015年08月26日 07時01分06秒 | 日記

26日(水).昨日の朝日朝刊・金融情報面のコラム「経済気象台」に、グーグル社の室内設定温度は年間を通じて20度であることが書かれていました その理由は「人間の頭脳が最も効果的に回転し、効率的に仕事が出来るのは、少し寒いくらいの20度が最適だ」ということです コラムは「グローバルで勝ち残る企業は最優秀の人材を集め、彼らの能力を最大限に発揮させようとあらゆる手段を講じている」と結んでいますが、これを日本の企業が採用すれば本当の意味での『クール・ジャパン』になるのでしょうか ということで、わが家に来てから320日目を迎え,日常の出来事に疑問を呈するモコタロです 

 

          

             どうして ここに 洗濯バサミがあるんだ? 説明してよ!

 

  閑話休題  

 

本を4冊買いました 1冊目は新保裕一著「奪取(下)」(講談社文庫)です.これは,まさか下巻があるのを知らずに上巻を買ってしまった結果,買わざるを得なくなった本です

 

          

 

2冊目は立川談志著・和田尚久構成「立川談志 まくらコレクション」(竹書房文庫)です.個人的には立川談志師匠に興味はありませんが,落語のまくらには興味があります なにしろ天才と言われた落語家の話の”出だし”ですから

 

          

 

3冊目は河島みどり著「リヒテルと私」(草思社文庫)です 著者の河島さんはリヒテルの通訳を27年間務めた人です.一番近くにいて見たピアノの巨匠リヒテルはどんな人だったのか,興味があります

 

          

 

4冊目は小林克己著「青春18きっぷで楽しむ おとなの鉄道旅行」(だいわ文庫)です いずれまとまった時間ができたら一人旅に出るのもいいかな,と

 

          

 

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西加奈子著「漁港の肉子ちゃん」を読む~一人の少女の成長物語

2015年08月25日 07時02分21秒 | 日記

25日(火)。「中国不安 動揺続く 日経平均895円安 NY株一時1000ドル超下落」(日経朝刊トップ),「NY株一時1000ドル安 その後買戻し やまぬ世界株安」(朝日朝刊トップ).今に始まったことではありませんが、中国が世界中に迷惑をかけていますね 3度にわたる急激な元切り下げ、大幅な経済減速、各地での爆発事故と、これが世界第2位の経済大国でしょうか? はっきり言って信用できないんですよね,あの国は そのあおりを受けて、昨日の日経平均の終値は18,540.68円と、半年ぶりの安値水準まで落ち込みました 元に戻るには半年かかるということでしょうか?こうなったら、短歌でも作って笑うしかないですね そこで一句

           中国は 世界に不安 まき散らす どこまで下がる 日経平均

ということで、わが家に来てから319日目を迎え、自宅にいながら世界に目を向けるモコタロです 

 

                  

          中国って 中くらいの国ってこと? 白ウサちゃん  おせーて!

 

  閑話休題  

 

西加奈子著「漁港の肉子ちゃん」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 西加奈子は1977年,テヘラン生まれ.カイロと大阪で育つ.2004年に「あおい」でデビューし,2007年「通天閣」で織田作之助賞を,13年に「ふくわらい」で河合隼雄物語賞を,15年「サラバ!」で第152回直木賞を受賞しています

 

          

 

この本は朝日だったか日経だったかの書評で紹介されていて,面白そうだと思って買った本です

肉子ちゃんというのは,北の漁港にある小さな焼肉屋「うをがし」で働く,丸々と太っていて不細工で,それでいてめっぽう明るい38歳の女性,菊子のことです その体型から肉子ちゃんと呼ばれています 美しく可愛い少女キクりんは本名が喜久子で,肉子ちゃんとは親子関係にあります.字が違うとは言え親娘で名前が同じなのはなぜでしょうか?その秘密は最後に明かされます

肉子ちゃんは男に騙されて借金を負わされれても,もくもくと働いて返済します.そして,また別の男に引っかかって騙されてしまいます そんな単純な肉子を小さい時から見ているキクりんは肉子ちゃんはバカなのではないか,と思っています しかし,親娘なのに似ても似つかない風貌と体型にキクりんはいつしか,肉子ちゃんの本当の子どもではないのではないかと気が付いています それでも無償の愛を与えてくれる肉子ちゃんと一緒にいることに感謝するのです

「あとがき」で西さんが書いているように,この作品は編集者とともに石巻市周辺の港を旅したときの様子をもとにして書いたものです その時に女川の港で一軒の焼肉屋を見つけた.そこに太っていて肉の塊りみたいな女性が働いていたら面白いのでは・・・と思って書いたのだそうです その後,小説のモデルとなった石巻が3.11東日本大震災で被害を蒙ったのでした

その後,2013年に女川町の「うをがし」のモデルになった焼肉屋の常連だった地元の住人から連絡があり,その店には生前肉子ちゃんを彷彿とさせるおかみさんが実際に存在していたが,津波に呑まれたことを教えられます 西さんは再度,女川を訪れ,おかみさんのご主人や町の人の話を聞き,人間は死んでも確かに「漁港の肉子ちゃん」という作品は残るのだということを理解します

ラスト・シーンを読んだら,この小説が一人の少女の成長物語だったのだ,と思いました。心温まる物語です。自信をもってお薦めします

 

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古典四重奏団のブラームス「弦楽四重奏曲第1~第3番」レクチャーコンサートのチケットを買う

2015年08月24日 07時01分13秒 | 日記

24日(月).昨日は約1か月ぶりにコンサートも映画もない穏やかな日曜日を過ごしました 午前中は,先日手配しておいた通り,子供部屋の照明をLED照明器具に交換するため業者に来てもらいました これで全ての部屋がLED照明になり,すっきりしました.残るは廊下の電球のみです.今度どこかの球が切れたら考えようと思います 午後はベッドに寝転んで新聞を読みましたが,身体が疲れているせいか,いつの間にか長い昼寝をしていました ということで,わが家に来てから318日目を迎え,またしても冷却プレートから外れてリラックスするモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

古典四重奏団のレクチャー付きコンサートのチケットを買いました 10月31日(土)午後2時から第一生命ホールで開かれるコンサートで、プログラムはブラームスの①弦楽四重奏曲第1番ハ短調、②同第2番イ短調、③同第3番変ロ長調です この「レクチャー付きコンサート」はこれまで何度か聴いていますが,チェロの田崎瑞博氏が曲の主要部分を解説して4人でその部分を演奏してくれるので,彼らのキャッチ・フレーズ「ムズカシイはおもしろい!!」の通り,分かり易く勉強になります 今回は午後2時からレクチャーがあり,2時40分から本公演となります チケット代は一般4,000円,シニア(60歳以上)3,000円,25歳以下1,500円と良心的な料金設定になっています.ブラームスは苦手だ,という人に特にお薦めします

 

          

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マーラー祝祭オーケストラでマーラーの交響曲「大地の歌」を聴く

2015年08月23日 11時00分37秒 | 日記

23日(日)。わが家に来てから317日目を迎え,久々にお兄ちゃんからご飯をもらうモコタロです 

 

          

            夏休み もう終わりだって? 理科系の大学って大変だね

          

  閑話休題  

 

昨日、ミューザ川崎でマーラー祝祭オーケストラ特別演奏会を聴きました プログラムは①ハチャトリアン「ピアノ協奏曲変ニ長調」、②マーラー「交響曲”大地の歌”」です。①のピアノ独奏はアルメニア出身のカレン・ハコビヤン,②のテノール独唱は今尾滋、アルト独唱は蔵野蘭子、指揮は井上喜惟です

マーラー祝祭オーケストラは,そもそも2001年に井上喜惟(ひさよし)氏が2001年に発足させた「ジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラ」を,今回アマチュアだけでマーラー全交響曲演奏を完結するという壮大な計画の最後を締めくくるため,「マーラー祝祭オーケストラ」と改称したものです 2001年からマーラーの交響曲だけを演奏してきて,残すところ「大地の歌」と第8番だけになり,今回「大地の歌」を取り上げることになったわけです

 

          

 

ミューザ川崎はこの夏「フェスタ・サマーミューザ」で9日間通い詰めた会場で,ほぼ2週間ぶりです 自席は1C7列15番,センターブロック左から2つ目です.会場は半分くらい埋まっている感じでしょうか

オケのメンバーが登場し,配置に着きます.左の奥にコントラバス,その前に第1ヴァイオリン,右にチェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります カレン・ハコビヤンが登場し,ピアノに向かいます.井上の指揮で1曲目のハチャトゥリアン「ピアノ協奏曲変二長調」が開始されます.第1楽章を聴いていると,何となくショスタコーヴィチのような曲だな,と思いましたが,より民族色豊かな曲想です 激しいリズムで世界中に知られる「剣の舞」で有名なハチャトゥリアンです.第3楽章こそが,彼らしいリズム感に満ちた激しい音楽でした

 

          

 

休憩後はマーラーの交響曲「大地の歌」です.オケにマンドリン奏者2名,ハープ2台が加わります.テノールの今尾滋とアルトの蔵野蘭子が登場し,指揮者の前にスタンバイします.交響曲「大地の歌」はテノールとアルト(またはバリトン)の2人の歌手によって歌われますが,1,3,5の奇数楽章をテノールが,2,4,6楽章をアルト(またはバリトン)が歌います

この曲は,ドイツ人,ベートゲが編纂した「中国の笛」に基づいて,マーラーが作曲した交響曲と歌曲集を融合させた全く新しい形態の作品です 次の6つの楽章から成ります

第1楽章は「大地の悲しみについて酒席で歌う」

第2楽章は「秋に寂しき者」

第3楽章は「青春について」

第4楽章は「美しさについて」

第5楽章は「春に酔えるもの」

第6楽章は「別れ」

聴いていて思うのは,マーラーの交響曲だけを演奏するために,アマチュアの演奏家だけが集まって練習を重ねコンサートに臨むということがいかに凄いことか,ということです 管楽器にしても,弦楽器にしても,打楽器にしても,予想以上の水準を示し,”マーラーの音”を現出していました ソリストの今尾滋とアルトの蔵野蘭子も素晴らしい歌声を聴かせてくれました 何となく落ち着かなかったのは,私自身にとって全く初めて聴く指揮者とオーケストラだったため,いらぬ緊張感があったためだと思います 会員になっている在京オーケストラのコンサートだと,見慣れた顔ぶれなので安心感があり不必要な緊張感がありません.その点,初めての指揮者+オケは緊張します

残念だったのは,オケ側でなく聴衆側でした.最後の第6楽章「別れ」のフィナーレで,アルトが「永遠に,永遠に・・・・」と静かに繰り返し曲を閉じるのですが,バックのオケの音が消えるや否や,「待ってました!」とばかりに拍手が起こったのです その時,指揮者のタクトは上がったままでした.クラシックの聴き方としては最悪の態度です とくにこの「大地の歌」のように静かに終わる曲では,最後の音が消えてから指揮者がタクトを下ろすまでの”しじま”こそがクラシックを聴く醍醐味と言っても過言ではありません 指揮者は一旦拍手が止んでから,しばし間を置いてタクトを下ろしましたが,指揮者にとっても”余韻”に浸ることが出来ず残念だったことでしょう

もう一つ残念だったのは,カーテンコールの時に,ケータイでステージを写していた愚か者が私が分かる範囲で2人いたことです 一人は会場の係員に注意されていましたが,もう一人はうまく逃れおおせたようです

こうした人たちを見ると,クラシックの「アマチュア」はオーケストラの方ではなく,聴衆の方ではないのか,と思ってしまいます

さて,次回の最終公演は来年2月28日(日)午後2時からミューザ川崎で開かれます もちろんマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」が演奏されます.チケットは11月ごろ発売されるらしいので是非とも購入したいと思います

 

          

          

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今年のマイ・ベスト1か~HJリムのチャイコフスキー「ピアノ協奏曲」を聴く

2015年08月22日 08時03分45秒 | 日記

22日(土)。わが家に来てから316日目を迎え、冷却プレートから大幅に外れて休むモコタロです 

 

          

           だって このプレート ちょっと滑るんだぜ 氷みたいに

 

  閑話休題   

 

昨日午後6時半から、池袋の東京芸術劇場で「読響サマーフェスティバル2015~三大協奏曲」公演を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(ヴァイオリン独奏=服部百音)、②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」(チェロ独奏=アンドレアス・ブランテリド)、③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ長調」(ピアノ独奏=HJリム)、指揮は下野竜也です

サラリーマンにとって午後6時半からの公演は時間的にキツイです 5時半の終業とともに会社を出て丸ノ内線で池袋へ.コンビニでオニギリ3個とお茶を買って芸術劇場への長いエスカレーターを上り,会場へ入りました.6時15分です プログラムを読みながら急いで食事を済ませて席に着きました.自席は1階I列12番,左ブロック前から9列目の右通路側です.結構良い席です HJリムのピアノを聴くために万全を期しました そもそもこのコンサートはHJリムの弾くチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」を聴くためにチケットを買ったようなものです.会場は文字通り満席です

 

          

 

オケのメンバーが入場します.コンマスはダニエル・ゲーデ,隣には同じコンマスの長原幸太が控えます.反対側のヴィオラ首席には鈴木康浩がスタンバイします 1曲目のメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」を演奏するため,ソリストの服部百音(もね)がピンクの薔薇模様の”お人形さんドレス”で登場します 小柄でかわいらしい顔をしているので,まるで中学生が出てきたような印象を受けます 百音さんは1999年東京生まれといいますから今年,弱冠16歳.現在東京音大付属高校特別特待奨学生とのことです 5歳でヴァイオリンを始め,名教師のザハール・ブロンに師事したとのことで,2009年にヴィエニャフスキ国際音楽コンクールのジュニア部門で最年少優勝したのをはじめ,数々の国際コンクールで優勝している実力者です

はっきり言って,あまり期待はしていませんでした しかし,第1楽章が始まって彼女のヴァイオリンが入ってくると印象がガラッと変わりました.使用楽器ピエトロ・グァルネリを駆使して美しい音色でロマンティックなメンデルスゾーンを奏でていきます 実に素直な演奏で,曲に対する真摯な姿勢が好感を呼びます 素晴らしいと思ったのは,バックを務める下野竜也率いる読響の演奏です 相手が16歳の若手だろうが,対等の立場で真っ向から向き合い,真剣勝負で演奏に取り組みます.そして,楽員の演奏する姿から想像すると,演奏を楽しみながら,若いソリストを支えてあげようという温かい気持ちが伝わってきます そうしたオケの姿勢が伝わったのか,百音さんのカデンツァは素晴らしい演奏でした.その調子で第2楽章も続く第3楽章も完ぺきに演奏,畳み掛けるようなフィナーレは圧巻でした

会場一杯の拍手に,百音さんは何度もカーテンコールに呼び戻され,前に,右に,左に,後ろに頭を垂れて歓声に応えました 指揮者がオケを立たせたのに気が付かず,舞台袖に引き上げようとして,途中で気が付いて引き返し,舌を出して愛敬を振り撒いていました.やっぱり16歳の少女です

続いてドヴォルザークのチェロ協奏曲ロ短調の演奏に入ります 1987年デンマーク生まれ(今年28歳)のアンドレアス・ブランテリドが登場します.かなり長身なので背の低い下野竜也との高低差が際立ちます.音楽には関係ありませんが

この曲は,先のメンコンと同様,名曲だけに,だれが演奏してもそれなりに聴こえます したがって,どこで他の演奏家と差別化できるのかが問われます.その意味では,ブランテリドの演奏は際立って音が美しいとか,どっしりと重々しいとか,彼独自の特徴が見えない演奏です.演奏後は凄い拍手でしたが,さあ,どうでしょう

さて,休憩後はいよいよHJリムによるチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」です リムがトレードマークの上下黒の衣装で登場します HJリムは1987年ソウル生まれ.12歳で単身フランスに渡り,パリ国立高等音楽院でアンリ・バルダに師事しました.2011年にEMIと専属契約し,いきなりベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ全集」を録音してデビューしました

私がHJリムを聴くきっかけになったのは音楽評論家の宇野弘芳氏が新聞の音楽評で絶賛していたのを見たからです 2013年6月に浜離宮朝日ホールでベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ全曲演奏会」を開いたのですが,私はかろうじてその最後のリサイタル(6月21日.”悲愴”,”熱情”ほか)を聴くことができました それは衝撃的な出会いでした 私はそのコンサートを2013年に聴いたコンサートの中でマイ・ベスト1に挙げています その後は,来日するたびに聴きに行き,2014年にはリサイタル(11月22日.ベートーヴェン”悲愴”,”月光”,”熱情”ほか),東京都交響楽団プロムナード・コンサート(11月30日.チャイコフスキー”ピアノ協奏曲第1番”),リサイタル(12月12日.バッハ”平均律クラヴィーア曲集第2巻)と聴いてきました 12月12日のバッハの公演などは,フォーレ四重奏団のチケットを犠牲にしてまで聴きに出かけました 今回のチャコフスキーは昨年の11月に次いで2回目です

 

          

 

下野の指揮で第1楽章に入ります.リムは最初から叩きつけるような演奏を展開します いわゆる”教科書的な”演奏からは正反対の唯我独尊の演奏です.こういう演奏は,嫌いな人は”お行儀が悪い”と言って毛嫌いするでしょう.しかし,私に言わせれば,予定調和的なお行儀の良い演奏など聴きたくもありません.生演奏を聴くからには強い印象が残らなければ意味がありません もちろん,技術の裏付けのない好き勝手な演奏では誰も聴く耳を持たないでしょう.しかし,リムは完璧です.正確無比です

第1楽章のカデンツァは凄まじいものがありました 一転,第2楽章はピアノの美しさが際立っていました.彼女の弱音は美しいだけでなく,美しさに力があります 続けて演奏される第3楽章は再び強烈な演奏が展開します.この楽章に関する限り,リム下野+読響は協奏曲ではなく競争曲を展開していました.下野が仕掛ければリムがそれを受け,今度はリムが仕掛けて下野が受けます.丁々発止のやり取りで生き生きとした演奏が展開します.第3楽章のフィナーレに突入する直前,リムは会場の方に顔を向け,一瞬ニコッと笑いました 「さあ,これから疾風怒濤のフィナーレに突入しますよ.聴き逃さないでね」とでも言いたげです.そして,まさに息つく暇もないほど超高速でフィナーレを弾き切り,聴衆を興奮の坩堝に巻き込みました 私などは何回か彼女の演奏に接しているので,ある程度慣れていますが,今回初めてリムの演奏を聴いた人は度肝を抜かれたでしょうね

鳴り止まない拍手に,リムはアンコールにジャズの即興演奏風の超絶技巧曲を演奏し,再び聴衆を興奮の坩堝に巻き込みました 途中,右手を挙げ,演奏が終了したかに見せかけましたが,その指を鍵盤に下ろし「アリラン」のメロディーを奏で,再度スピードアップして圧倒的なフィナーレで曲を閉じました 後で掲示で確かめたら,「本日のアンコール=HJリム作曲『ファンタジー』」とありました

まだ一度もリムの演奏を聴いたことのない人に言いたいのは,「いまHJリムを聴かずして,いったい誰の演奏を聴くと言うのか」ということです.現在のベートーヴェンの,チャイコフスキーの最前線の演奏がここにあります

この日のリムの演奏は,今年に入って133回聴いてきたクラシック・コンサートの中で,間違いなく現時点でのベスト1です

最後にリムのデビュー・アルバムでもあるベートーヴェン「ピアノ・ソナタ全集(4組8枚)」のCDを紹介しておきます CDからも彼女の豪演が伝わってきます とくに第4集に集録されている”熱情ソナタ”だけでもお聴きになると,リムが並みのピアニストではないことが判るはずです

 

          

 

          

 

          

 

          

 

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