人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

下野竜也+新日本フィルでフランスのオペレッタ序曲集を聴く~新クラシックへの扉

2015年05月31日 09時25分09秒 | 日記

31日(日)。わが家に来てから234日目を迎え,ご主人の晩酌に付き合うモコタロです 

 

          

          発泡酒ばかりじゃなくてさ たまには本物のビールにしてよ!

 

  閑話休題  

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの「新クラシックへの扉」コンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト「歌劇”イドメネオ”序曲K.366」、②同「ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595」、③エロール「歌劇”ザンパ”序曲」、④ボワエルデュー「歌劇”バグダッドの太守”序曲」、⑤オーベール「歌劇”フラ・ディアボロ”序曲」、⑥オッフェンバック「”天国と地獄”序曲」です 指揮は下野竜也、②のピアノ独奏は菊池洋子です

 

          

 

自席は1階11列25番,センターグロック右から2つ目です.後方に空席が目立ちますが,このシリーズは金・土の2日連続公演で,平日割引がある金曜公演の方が聴衆が多いのではないかと推測します

コンマスは豊嶋泰嗣.ポピュラーなオペレッタ序曲集に豊嶋コンマスの登場とは,新日本フィルの力の入れようが伝わってきます ステージ上には2曲目のピアノ協奏曲用のグランド・ピアノが蓋を閉めた状態で置かれています.指揮者・下野竜也が登場,さっそく1曲目のモーツアルト「歌劇”イドメネオ”序曲」が開始されます 冒頭の力強い堂々たる音楽は彼の歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲を思い起こさせます オペラの筋書きは,愛し合いながらも”運命”のため引き裂かれたイダマンテとイリアが,イダマンテの冒険を経て結ばれるという物語です.序曲はオペラのエッセンスを表出します

ピアノの蓋が上げられ,ソリストの登場を待ちます.菊池洋子が淡いベージュのドレスで登場,ピアノに向かいます モーツアルトの最後のピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595は1791年3月頃に完成し,作曲者自身のピアノ演奏により初演されました この年の12月に彼は息を引き取ったので,結果的に晩年の作品となりました

例によってモーツアルトのピアノ協奏曲の第1楽章は序奏部が長く,主役のピアノはなかなか登場しません 菊池は序奏の間,じっとピアノに対峙し,出番を待ちます.その佇まいの美しいこと そして,いよいよピアノが女王のように登場します.2002年第8回モーツアルト国際コンクールで日本人として初めて優勝した彼女の演奏は軽やかです 第2楽章は天国の音楽です.そして歌曲「春への憧れ」のテーマを採用した第3楽章に移ります モーツアルトは,この曲の初演の時,ピアノを弾きながら,まさか自分が9か月後にこの世に別れを告げるとはよもや思っていなかったでしょう.そんなことを考えると,明るいメロディーを聴きながら,なぜか哀しくなります

 

          

 

休憩後は前半とはガラッと変わってフランス・オペレッタ序曲集です オケを見渡すと,先日の「室内楽シリーズ」コンサートで紹介された3人の新人がスタンバイしています.第1ヴァイオリンの古日山倫世,第2ヴァイオリンの松崎千鶴,ヴィオラの脇屋冴子です これからも応援したいと思います

最初の曲「ザンパ」序曲を作曲したエロールは,モーツアルトの死と入れ替わるように1791年にパリで生まれています 「ザンパ」という名前の海賊が主人公ですが,身代金代わりに美しい娘を要求するものの,彼女の婚約者に邪魔をされて終わるという他愛のない物語です 曲は冒頭から威勢のいい曲ですが,後半にはどこかで聴いたことのあるメロディーが聴かれます

2曲目は,ベートーヴェンとほぼ同じ時代を生きたボワエルデューによる「バグダッドの太守」序曲です 内容は,バグダッドを治める太守(長官)と婚約した娘アディーナ,彼女と相思相愛のセリーモなどが登場し騒動が起きるがハッピーエンドで終わる物語です 冒頭は静かな出だしで,途中から賑やかになってくる序曲です

曲の合間にマイク片手に下野が解説します

「今日の後半の曲は,何の脈絡もないように見えるかも知れませんが,実はすべてフランス・オペレッタの序曲で,ニ長調で書かれています 理屈抜きに楽しい曲を楽しんでいただけたらと思います 私は子供の時,ジュニア・オーケストラでトランペットを吹いていたのですが,それが私にとって”クラシックへの扉”でした 今日プログラムに載せた曲はすべてその頃に自分が演奏した曲です.リハーサル前にそう言うと団員の皆さんから反発を食らうおそれがあるので,今まで黙っていました クラシック音楽というと敷居が高いのでとっつきにくいという方もいらっしゃるでしょうが,新日本フィルの”新クラシックへの扉”シリーズはいいですね 次の曲は,パリでワーグナーと人気を争ったスター作曲家オーベールの「フラ・ディアヴォロ」です.物語は海賊たちを主人公にしたコミカルな作品です この曲は,大正時代に人気を博した浅草オペラのヒット作でもあり,劇中で歌われる『岩にもたれて(ディアヴォロの歌)』は田谷力蔵が歌ってヒットしました.ところで,まったく関係のない話ですが,浅草の通りには,由利徹,渥美清,萩本欣一など浅草で活躍した芸人たちの肖像が飾られていますが,唯一『予約中』と書かれているのがありますが,誰かご存知ですか?・・・・(ビート)タケシさんです」(会場から  の声が)

演奏された「フラ・ディアヴォロ」はこのオペラのエッセンスを凝縮したような楽しいものでした 最後はオッフェンバックの「天国と地獄」序曲です.あの有名は「フレンチカンカン」で世界中に知られている曲です ところで「天国と地獄」というタイトルは日本独自の表現で,原題は「地獄のオルフェ」です

この曲はオペラの序曲ながら,管楽器,弦楽器の聴かせどころ満載の曲です 重松希巳江のクラリネット,古部賢一のオーボエ,木越洋のチェロ,豊嶋泰嗣のヴァイオリンによる独奏は流石です

客席が最大に盛り上がったところで,下野が「おかわりです」と言ってアンコールに移りました 「天国と地獄」の後半「フレンチカンカン」をもう一度演奏します.曲が終盤に移った時のことです.何を思ったか,下野がどこからともなく,チア・リーダーが両手に持つ色とりどりのボンボンを取り出して,第1ヴァイオリン奏者のS氏とT氏に手渡し,自らも両手に持って男3人でカンカン踊りを始めたのです 

両手でボンボンを振り,足を上げ,ぐるっと回転し,踊りまくります.すぐそばで見ながら演奏せざるを得ないオケのメンバーは笑いをこらえるのが辛そうです 第2ヴァイオリン首席の吉村知子などは受けに受けて,演奏に支障をきたすほどです 私は思わず「第3機動隊はどうした 本所警察はまだか 騒乱罪で現行犯逮捕だ」と叫びそうになりましたが,じっと我慢しました.笑いを 

それにしても,指揮者の権限は絶大ですね 家庭に帰れば養うべき家族が待っているプロのヴァイオリン奏者を,地位も名誉もかなぐり捨てさせてカンカン踊りに駆り出すのですから 二人にとっては「顔で笑って 心でカンカン」,「天国と地獄」ではなく「天国から地獄へ」だったかも知れません お陰様で”超”楽しいコンサートを体験できましたが,今回のコンサートをきっかけに二人が”ひきこもり”にならなければよいが,と心配します

「客を喜ばせるためなら手段を選ばない」という強権的なプロ意識のもと,強引に「新クラシックへの扉」を開け放った2001年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝者・下野竜也の知られざる一面を垣間見ることが出来た貴重なコンサートでした

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METライブビューイング、レオン・カヴァッロ「道化師」を観る

2015年05月30日 09時09分55秒 | 日記

30日(土)。わが家に来てから233日目を迎え,再び白ウサちゃんを責めるモコタロです 

 

          

            要するに 君たち まだ つきあってるってことね?!

 

  閑話休題  

 

28日(木)に新宿ピカデリーでMETライブビューイング、マスカー二「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオン・カヴァレッロ「道化師」を観ました これは今年4月25日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された2本立てオペラのライブ録画映像です 今日は「道化師」について書きます

キャストはカニオにマルセロ・アルヴァレス(テノール)、ネッダにパトリシア・ラセット(ソプラノ)、トニオにジョージ・ギャグニッザ(バリトン)、シルヴィオにルーカス・ミーチャム(バリトン)ほかで、演奏はファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はデイヴィッド・マクヴィカーで、今回新制作です

 

          

 

アルヴァレスとギャグニッザは「カヴァレリア・ルスティカーナ」に引き続いての出演です 幕間にスーザン・グラハムによるインタビューがあり,アルヴァレスはスーザンから質問を受ける前に「いまトゥリドゥを歌い終わってホッと一息ついたところなんだ でもこの後の『道化師』の開演まで25分しかないんだ.ごめんね」と言って,急いで楽屋に向かって行きました.2本立て,しかも主役の2本立てはさぞかし大変だろうと推測します

この脚本では,舞台は『カヴァレリア~』と同じシチリアの小村という設定ですが,時代は数十年後 さて「道化師」のストーリーは

「カニオは旅回り一座の座長だが,若い妻ネッダとうまくいっていない 実はネッダにはシルヴィオという村の若者と恋仲の関係にある.一方,ネッダに思いを寄せるが相手にされない座員ト二オはネッダとシルヴィオが駆け落ちの相談をしているところを見つけ,腹いせにカニオに告げ口する ネッダの不倫現場を見たカニオは傷心のまま舞台に立つ 芝居が始まるとカニオは現実との区別が付かなくなり,不倫相手の名前を白状しないネッダを刺し殺す

このオペラも「カヴァレリア~」と同様『復習劇』です.「カヴァレリア~」と「道化師」は一緒に上演される機会が多いのですが,この組み合わせで上演されたのは1893年のMETが初めてだったとのことです

最初にトニオ役のギャグニッザが前口上を述べるのですが,直前に演じたシリアスな役柄から一転,喜劇役者さながらの立ち振る舞いです.この辺は『プロ』を感じます ただ,役柄にしては体格も良くちょっと性格が強すぎるような気もします.しかし急な代演,ないものねだりというものでしょう

同様にカニオ役のアルヴァレスは,直前のオペラに続いて主役を演じることになります.これは相当なプレッシャーに違いありません しかし,彼は25分の間に衣装とともに気持ちも切り替え,喜劇役者として再登場しました 芝居どころの心境ではないのだが,舞台に上がらなければならない,そんな複雑な心境のまま歌う「衣装を付けろ」は感動的です

ネッダを演じたラセットは,「ライブビューイング」ではインタビュアーとして登場することが多いのですが,このオペラではヒロインでの登場です 恵まれた身体から発声するソプラノには力があります また,サーカスが舞台なので,出し物として喜劇が演じられるのですが,ラセットは喜劇役者としての資質があるようで,何の違和感もなく”お芝居”を演じ,聴衆の笑いを誘っていました

指揮者ルイージは,幕間のインタビューでスーザンからマイクを向けられ「マエストロは昨日私も出演した『メリー・ウィドゥ』でも指揮をしていらっしゃいました.オペレッタの翌日にヴェリズモ・オペラを振るということで,気持ちの切り替えはどうしているのでしょうか」と訊かれ,「METのオケは優秀なので,彼らの自主性に任せていれば良いのです 私は彼らの演奏を手助けするだけですよ」と答えていました.いやいや,そんなことは全くありません.完璧にコントロールしてオケを歌わせていました

 

          

 

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METライブビューイング、マスカー二のオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」を観る

2015年05月29日 07時01分09秒 | 日記

29日(金)。わが家に来てから232日目を迎え,何かを期待しているモコタロです 

 

          

             おやつ ちょうだい! カレーライスは苦手かな・・・・

 

  閑話休題  

 

昨日、休暇を取って新宿ピカデリーでマスカー二の「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオン・カヴァッロの「道化師」を観ました これは今年4月25日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された2本立てオペラのライブ録画映像です 今日は「カヴァレリア・ルスティカーナ」について書きます

キャストは、トゥリドゥにマルセロ・アルヴァレス(テノール)、サントゥッツァにエヴァ=マリア・ヴェストブルック(ソプラノ)、アルフィオにジョージ・ギャグニッザ(バリトン)ほかで,演奏はファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はデイヴィッド・マクヴィカーで、今回新制作です

 

          

 

この日は「METライブビューイング2014ー2015シーズン」の日本での上映最終日でした.ウィークデーの昼間にも関わらず,オペラ映画としては決して少なくないオペラ好きが集まりました 私はいつものように左ブロック後方の右通路側席を押さえました

全1幕の「カヴァレリア・ルスティカーナ」(「田舎の騎士道」という意味)のあらすじは

「舞台は復活祭の日のシチリアの小村.教会に近い酒場マンマ・ルチアの店に悲痛な面持ちのサントゥッツァが現われる.彼女はルチアの息子トゥリドゥと結婚の約束までしていたのに,最近トゥリドゥは元の恋人でアルフィオの妻となったローラと縒りを戻している サントゥッツァは,現われたトゥリドゥに泣きつくが,彼は冷たくあしらう 嫉妬に駆られたサントゥッツァはローラの夫アルフィオに,二人の不倫を告げ口する.怒ったアルフィオはトゥリドゥに決闘を申し込み,二人は”騎士道精神”に則って闘うことになるが,トゥリドゥが殺される

ファビオ・ルイージの指揮でこの物語の悲劇的な結末を予言するかのような悲しい序曲が始まります ステージ上は広い回り舞台になっていますが,時々せり上がってくるテーブルと,脇に置かれた多くの椅子があるくらいで,極めてシンプルな造りです

冒頭から最後までサントゥッツァ役のエヴァ=マリア・ヴェストブルックは出ずっぱりですが,最初の10分くらいはまったく声を発しません アリアもなければ合唱にも加わりません.ここは”歌わない歌手”としての演技の見せ場です 彼女はサントゥッツァの不安な心理を顔の表情や立ち振る舞いによって見事に表していました また,「ママも知るとおり」などのアリアでは迫真の演技とともにドラマティックな歌声を聴かせます

トゥリドゥを演じたマルセロ・アルヴァレスは歌にしても演技にしても真に迫っていました 中でも決闘を前に歌う「母さん,この酒は強いね」はまさに感動的でした 

もう一人,迫力があったのはアルフィオを演じたジョージ・ギャグニッザです METライブビューイングでは,プッチーニの「トスカ」でのスカルピア役が忘れられない迫真の演技でした アルフィオ役は当初出演予定だったジェリコ・ルチッチが体調不良で降板したため代わりに出演したものですが,この人選は正解だったと思います

このオペラは「道化師」とともに「ヴァリズモ・オペラ」の傑作と言われています 「ヴェリズモ」とは「リアリズム」のことで,市井の人々の日常生活に題材を取り,現実の姿をオペラとして描くものです あからさまに言ってしまえば,新聞の三面記事に載った不倫や殺人事件などをオペラ化したものです たいてい人が死にます

ところで,このオペラが不滅の人気を誇っているのは途中に挟まれた「間奏曲」のお陰と言っても過言ではないでしょう これほどまでに美しく,これほどまでに悲しい間奏曲はほかにあるでしょうか? 「私が死んだら,この曲を流して見送って欲しい」と言う人を知っていますが,気持ちはよく分かります

ファビオ・ルイージはメトロポリタン歌劇場管弦楽団をよくコントロールし,オーケストラ自らがよく歌っていました METの音楽監督フェイムズ・レヴァインがタクトを預けるだけのことはあります

 

          

 

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ピエール・ルメートル著「死のドレスを花婿に」を読む~「その女アレックス」の衝撃をもう一度

2015年05月28日 07時01分04秒 | 日記

28日(木)。昨夕は、当ビル10階のレストランAで、日本記者クラブ賞贈賞式の後、パーティーがあったので参加しました 今年のクラブ賞は読売新聞東京本社論説委員の竹内政明氏(「編集手帳」執筆者)に、特別賞は愛媛県の南海放送の伊東英朗氏+「X年後」制作グループ(ドキュメンタリー)に贈られました  直前に開かれた記者クラブ会員総会での柳田邦夫氏の記念講演が長引いた関係で,パーティーが30分遅れのスタートとなりました.よほど”ノッていた”のでしょうね 私は新宿に行く予定があったのでワインやビール を飲みながら寿司,ローストビーフ,カレーライス,サンドイッチなどをつまんでから30分くらいで失礼しました という訳で,わが家に来てから231日目を迎え、またまたバランスボールで遊ぶモコタロです 

 

          

             もちろん 自分で飛び乗ったんだよ すごいだろう!

 

  閑話休題  

 

昨夕,新宿ピカデリーに行きMETラライブビューイング「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」の2本立て映画の指定席をとりました 今日休暇を取って観に行きます

 

          

 

その後,伊勢丹会館地下のチケットぴあに寄って,10月8日(木)にNHKホールで開かれる「NHK音楽祭2015」のうちパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団のコンサート・チケットを買いました プログラムは①ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」,②ラヴェル「ピアノ協奏曲」,③ベルリオーズ「幻想交響曲」で,②のピアノ独奏はジャン・イヴ・ティボーデです

 

          

 

          

 

  閑話休題  

 

ピエール・ルメートル著「死のドレスを花婿に」(文春文庫)を読み終わりました ピエール・ルメートルは1951年,パリ生まれ ルメートルと言えば,何と言っても2014年に発表された「その女アレックス」の衝撃が忘れられません この作品はイギリス推理作家協会賞を受賞したのをはじめ,日本でも「このミステリーがすごい!」など4つのミステリーランキングで1位となり,ベストセラーになりました この作品は「その女アレックス」よりも前の2009年に発表されました.「その女~」の原点とでも言うべき作品です

 

          

 

物語は全4部から成っており,第1部「ソフィー」はソフィー・デュゲという女性の行動を描写する形をとっています.ごく普通の幸せな生活を営んでいたソフィーは,いつしか記憶障害に悩まされるようになっていた ベビーシッターの仕事を得た彼女は,ある日,疲れて眠りこんでいて,目を覚ますとその子が死体となって横たわっていた 自分がやったのか・・・・他に誰がやったというのか・・・・自首するか,逃げるか・・・・彼女は悩んだ末に逃げることを選ぶ それから彼女のまったく身に覚えのない事件が次々に起こり,ノイローゼ状態になる.なぜそんなことになってしまったのか それは第2部「フランツ」で明らかになる.フランツは最初からソフィーを貶めるために,日常から彼女を監視し,罠をかけ,追い詰めて行ったのだった それではなぜ,フランツはソフィーがそれほど憎かったのか・・・それが第3部「フランツとソフィー」以降で明らかになります これからこの作品を読む人のためにこれ以上は書けません

「その女アレックス」は衝撃的な作品でしたが、この「死のドレスを花婿に」も同様に衝撃的です ドレスとはウェディング・ドレスのことですが,なぜ日本語のタイトルが死のドレスを”花嫁に”でなく”花婿に”なのか、その理由が後で分かります あまりの面白さにあっという間に読み終わってしまいました 変化のない日常生活に飽き飽きしている人にお薦めします

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中村文則著「迷宮」を読む~なぜ殺人事件は迷宮入りになったのか?

2015年05月27日 07時01分09秒 | 日記

27日(水).わが家に来てから230日目を迎え、縄張りを死守するモコタロです 

 

          

             別に綱引きをしているわけじゃないんだよね・・・

 

  閑話休題  

 

昨日、当ビルの消火器操作訓練があり、約60名の皆さんが参加されました 夕方、要員の打ち上げ兼防災センターK隊員の送別会が地下の焼鳥Rで開かれたので参加しました 例によって二次会にも行ってしこたま飲んだので,今朝は朝から頭が頭痛です 頭の中がモヤモヤしていて思ったように働きません(いつものことか) それとは全然関係ない話ですが、第一生命保険が毎年実施している「サラリーマン川柳」の第28回目の入選作品のうち上位10作品が発表されました 1位になったのは「皮下脂肪 資源にできれば ノーベル賞」ですが、私が傑作だと思ったのは「記念日に『今日は何の日?』『燃えるゴミ!!』」と「ひどい妻 寝ている間に ファブリーズ」という作品です そして、身につまされるのは「増えていく 暗証番号 減る記憶」です それにしても、よくこういうフレーズを考えるものだと感心します。NHKの人に違いありません。NHKとは言うまでもなく日本ヒマ人協会のことです

 

  閑話休題  

 

中村文則著「迷宮」(新潮文庫)を読み終わりました  中村文則は1977年,愛知県生まれ.このブログでも「掏摸(すり)」「王国」を紹介しました

 

          

 

都内で一家惨殺事件が発生した.4人の家族のうち夫,妻,長男は殺され,長女だけが生き残った 現場は密室で,唯一生き残った少女は睡眠薬でこん睡状態だった.全裸の妻の周囲には色とりどりの折鶴が螺旋状に置かれていたことから「折鶴事件」と呼ばれた.生き残って成長した少女は,中学の同級生だった男に迷宮入りした事件の真実を語り始める なぜ,鍵のかかった密室で殺人事件が起こったのか.偶然が重なったといえ,背景には家族の中での夫と妻との関係,兄と妹との関係が事件に大きな影を落としていた

なるほど,と思わせるどんでん返しが待ち受けていますが,それにしてもどうして中村文則の小説はこうも暗いのでしょうか 女性作家でいえば湊かなえのようなテイストの作品です。ハッピーエンドに飽き飽きした人にお薦めします

 

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メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」他を聴く~新日本フィル室内楽シリーズ

2015年05月26日 07時01分08秒 | 日記

26日(火).わが家に来てから229日目を迎え、相変わらず何でも口にするモコタロです 

 

          

           これトイレットペーパーの芯じゃないよね? 水に流してって?

 

  閑話休題  

 

昨夕,すみだトリフォニー(小)ホールで新日本フィル室内楽シリーズ「弦楽合奏の魅力」を聴きました プログラムは①テレマン「4つのヴァイオリンのための協奏曲」より,②ブラームス「弦楽五重奏曲第2番ト長調」,③メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」です 出演はヴァイオリン=チェ・ムンス,佐々木絵理子,古日山倫世,松崎千鶴,ヴィオラ=高橋正人,脇屋冴子,チェロ=森澤泰,スティーヴン・フィナティです

 

          

 

会場はかなり埋まっている感じです.第1回目の公演ともども選曲の良さだと思います 楽団員プロデュース・シリーズ第2回目となる今回のコンサートはコンマスのチェ・ムンス氏のプロデュースにより弦楽合奏曲が取り上げられました.7時15分開演ですが,その前の7時からチェ氏によるプレ・トークがありました

新日本フィルの室内楽シリーズも今年で11年目を迎えるそうで,これまで弦楽四重奏を取り上げる機会が多かったこともあり,違う編成による弦楽合奏曲を選んだ,という解説がありました 「オーケストラでは,合わせるために待ったりして,”タテを合わせる”ことがあるのですが,それは音楽とは関係ないことです.それが今回の室内楽の演奏でどこまで解決できるのか,試みてみたいと思います」と語ります

簡単に演奏曲目を解説し,この日演奏する若手メンバーを紹介します.古日山倫世さんは2013年入団の第1ヴァイオリン奏者 松崎千鶴さんは今年1月に入団した第2ヴァイオリン奏者で契約団員 脇屋冴子さんは今年2月に入団したヴィオラ・フォアシュピーラーで契約団員です それにしても,新日本フィルはどうしてこう美人を揃えられるのでしょうか? その後,ベテランのヴィオラ奏者・高橋正人,チェロ奏者・森澤泰の紹介があり(省略),演奏に移りましたが,お話そのものはやはりトークの天才・篠原英和氏には遠く及ばず,時間も5分超過していました.これは致し方ないことです

さて,最初はテレマン「4つのヴァイオリンのための協奏曲」からト長調,ハ長調,ニ長調の3曲が続けて演奏されます チェ・ムンス,淡いグリーンのドレスの古日山倫世,淡いピンクのドレスの松崎千鶴,パープルのドレスの佐々木絵理子の4人による演奏です.聴いた感じでは,全体的にヴィヴァルディのような曲想です 1曲が6~7分の短い曲ですが,目先がクルクルと変わり,ターヘル・ムジーク(食卓の音楽)をいくつも作ったテレマンのサービス精神が表われているようです

2曲目のブラームス「弦楽五重奏曲第2番ト長調」についてチェ氏はプレ・トークで次のように解説しました

「ブラームスの後期の曲は演奏のハードルが高いです この曲は晩年の曲ながらエネルギーに満ちた曲で,第1楽章は交響曲第2番のようなエネルギッシュな明るい曲想で,第2楽章は交響曲第3番のような感じです チェロが1本だけというのはバランスに欠ける編成ですが,ブラームスはどのように考えていたのか,興味深いところです ところでこの曲と同じ時期に作曲された『間奏曲』も素晴らしい曲です.90歳になろうとしていたチッコリー二の演奏でこの曲を聴いた時は,枯淡の境地と言うか,この年にして初めて達成した境地だな,と感じ入りました 私もこの年になるまで生きられるかどうかも分かりませんが,演奏できる限り一生懸命精進したいと思っています

この曲はチェ,佐々木,高橋,脇屋,森澤というメンバーによって演奏されました.第1楽章の冒頭は混沌とした雰囲気でしたが,次第にこなれてきてブラームス独自のメロディーが浮かび上がってきました 1本だけのチェロは確かに責任重大でいかにも大変そうです.5人の渾身の演奏が展開しました

 

          

 

最後の曲はメンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲変ホ長調」です.このブログでも何度か書きましたが,私はこの曲が大好きです 左からチェ,松崎,佐々木,古日山,脇屋,高橋,森澤,フィナティ(チェロ)という態勢で演奏します.チェ氏も若手の演奏者達も語っていましたが,この曲がメンデルスゾーン16歳の時の作品であるとはとても思えません 「果たして,自分が16歳の時いったい何をやっていただろうか?」と思わず振り返ってしまいます もっとも彼の場合は,大金持ちの息子という恵まれた立場にあり,好きな音楽のためなら何でも出来たという側面もありました それにしても才能がなければ後世に名を残すことはなかったでしょう.メンデルスゾーンがモーツアルトに次ぐ早熟の天才だと言われる由縁です

曲は第1ヴァイオリンを中心に,前へ前へと音楽が進む実に気持ちの良い推進力に満ちた明るい曲です大きな特徴の一つは,第3楽章「スケルツォ」でしょう.「真夏の夜の夢」の妖精が空を飛びまわっているような小気味の良い弾む音楽です そして第4楽章「プレスト」になだれ込む訳ですが,チェロ→ヴィオラ→第2ヴァイオリンという順に速いパッセージによるフーガで受け継がれていき,クライマックスを迎えます このフィナーレはたまらない魅力です.これぞ弦楽合奏だという曲です

大きな拍手にショスタコ―ヴィチの「弦楽八重奏のための2つの小品」から第2番「スケルツォ」をアンコールに演奏しましたが,ショスタコーヴィチらしい諧謔的でエキセントリックな曲でした この曲は間違いなくモスクワ音楽院首席卒業のチェ氏による選曲でしょう とにかく激しい曲ですが,私は一度聴いただけで好きになりました 会場は割れんばかりの拍手でした

コンサート後には「ワン・コイン・パーティー」(500円)があり,ヴァイオリン奏者・篠原英和氏がナビゲーターとして復活したのに,すぐに帰らなければならないやんごとなき事情があり,参加できませんでした 非常に残念ですが,7月に篠原氏のプロデュースによる「短調のモーツアルト」の会に持ち越すことにしました

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R.シュトラウス「ばらの騎士」を観る~アンネ・シュヴァーネヴィルムスの元帥夫人に尽きる!

2015年05月25日 07時01分08秒 | 日記

25日(月).娘の就職祝いに自転車を買いました.娘は大喜びですが,こちらは自転車操業です ということで,わが家に来てから228日目を迎え,ブルー・マンデーでちょっぴり憂鬱なモコタロです 

 

          

            また月曜日が来てしまった はやく土曜日がこないかなぁ

 

  閑話休題  

 

昨日,初台の新国立劇場でリヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」を観ました キャストは元帥夫人にアンネ・シュヴァーネヴィルムス,オックス男爵にユルゲン・リン,オクタヴィアンにステファニー・アタナソフ,ファー二ナルにクレメンス・ウンターライナー,ゾフィーにアンケ・ブリ―ゲル,マリアンネに田中三佐代,警部に妻屋秀和ほか,指揮はシュテファン・ショルテス,演出はジョナサン・ミラー.管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団です

 

          

 

新国立の「ばらの騎士」は2007年,2011年に続いて今回が3回目ですが,いずれもジョナサン・ミラーの演出です 前回2011年の公演は4月10日の初日に観ましたが,あの時は東日本大震災の影響で,外国人歌手陣のキャンセルが相次ぎ,上演するかしないか相当悩んだ末に,ほとんど代演によって挙行されたのでした また,新日本フィルが初めて新国立劇場のオーケストラ・ピットに入るということで話題を呼びましたが,指揮者アルミンクは原発事故を憂慮して帰国したため,代わりにマンフレッド・マイヤーホーファーがタクトをとったのでした

人気のオペラ公演とあって,会場はほぼ満席です ハンガリー生まれのシュテファン・ショルテスが指揮台にあがり,序曲が演奏されます.リヒャルト・シュトラウスらしい感情を煽り立てるロマンティックな音楽です あまりにも有名なオペラなので筋書きは省略しますが,全3幕,休憩時間を入れて4時間の大作です

 

          

 

今回を含めて3回の公演を観て疑問に思ったのは,第1幕の終盤で元帥夫人(マルシャリン)が,窓を伝う雨の跡を見ながらタバコを吸うシーンです マッチを擦ってタバコに火を点け,吸って白い煙を吐き出しているので,本物のタバコを吸っているように見えます.歌手にはタバコは大敵のはず あれは本物のタバコなのか?あるいは巧妙な仕掛けの施された小道具なのか? あえてタバコを吸うシーンを登場させた演出の意図が良く分かりません 演出の秘密を『煙で捲こう』ということなのか?つまらないシャレでした.吸いません

このオペラの見所,聴きどころは少なくありませんが,何と言っても最大の聴きどころは第3幕終盤の元帥夫人,オクタヴィアン,ゾフィーの三重唱です 中年の人妻である元帥夫人と17歳数か月のオクタヴィアンは不倫関係にある訳ですが,元帥夫人は,いつか愛人が若い女性の元に去って行くと感じています.そこにゾフィーが現われた訳です.この三重唱はこの3人の複雑な心境を見事に歌い分けています

今回この公演を観て一番感動したのは,その三重唱の後,二人の若者を残して元帥夫人が去って行くシーンです.ドイツ出身のソプラノ,アンネ・シュヴァーネヴィルムスは歌も最高でしたが,その後ろ姿で元帥夫人の”若さへの決別”を表現していました その佇まいが素晴らしかった このときの元帥夫人の気持ちは,ある程度の人生経験がなければ分からないでしょう.いずれにしても,歌が上手いだけではオペラはダメだということをこの歌手に教わった気がします

 

          

 

このオペラのタイトルとしてリヒャルト・シュトラウスが考えていたのは「オックス」でしたが,彼の妻パウリーネ(悪妻として有名)の命令によって「ばらの騎士」に変更されたと言われています それほど,このオペラにおけるオックス男爵の存在は大きい訳ですが,ドイツ生まれのユルゲン・リンは,そこそこ好色で,そこそこ貴族の血筋を感じさせる男爵の性格を見事に演じていました

オクタヴィアン(=マリアンデル)を演じたステファニー・アタナソフはウィーン生まれのメゾソプラノですが,元帥夫人とゾフィーとの間で揺れる若者の心境を見事に歌い上げていました

ゾフィーを歌ったアンケ・ブリ―ゲルはドイツ生まれのソプラノですが,初々しさの中にも芯のある役柄を演じていました

ファー二ナルを演じたクレメンス・ウンターライナーはウィーン出身のバリトンですが,娘を犠牲にしてでも貴族の仲間入りをするのだという土地成金の父親を”真面目に”演じていました

出番は少なかったのですが,2人の日本人歌手が光っていました.一人は「テノール歌手」を歌った水口聡です.この人の歌は聴いていて気持ちがいいです もう一人は警部を演じたバスの妻屋秀和です.新国立オペラでは常連の歌手ですが,何を歌っても何を演じても素晴らしい稀有な存在です

ところで,演出上,今回も分からなかったのは第3幕フィナーレのシーンです ホフマンスタールの台本では「オクタヴィアンとゾフィーが舞台を去る時,ゾフィーはハンカチを落としていく.誰もいなくなった舞台へ,元帥夫人のお小姓がゾフィーの落としたハンカチを取りにやってきて,慌しく幕が下りる」となっているはず.しかし,ミラーの演出ではそうはなっていません

聴衆は,いつゾフィーがハンカチを落とすのか,と固唾をのんで注目していますが,最後までゾフィーはハンカチを落とさず去っていきます 落ちがあるはずが落ちがない・・・新米の落語家の話を聞いているような落ち着かない気分です お小姓がハンカチの代わりに持ち去った紙切れのようなものは,マリアンデル(=オクタヴィアン)がオックス男爵を罠にかけるために送った手紙ではないか,と勝手に解釈していますが,本当のところはどうなのでしょうか???

さてこの公演について最後に付け加えるとすれば,シュテファン・ショルテスの指揮のもとロマン溢れる演奏を展開した東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしい演奏です 在京オケの中で最大の楽員数を誇るオーケストラの中から選ばれた精鋭の演奏だったのでしょう

 

          

 

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ウルバンスキ+ヴァシリエヴァ+東響でドヴォルザーク「チェロ協奏曲」を聴く

2015年05月24日 09時06分02秒 | 日記

24日(日).わが家に来てから227日目を迎え,呆れる白ウサちゃんをよそに紙ロールを食べる食欲旺盛なモコタロです 

 

          

            この紙 バームクーヘンみたいな形で うまいんだぜぇ

 

  閑話休題  

 

昨日午前,トッパンホールで開かれるハーゲン弦楽四重奏団のコンサート・チケットを手配しました モーツアルトの生まれ故郷オーストリア・ザルツブルグの出身者から成るハーゲン弦楽四重奏団によるモーツアルトの「後期弦楽四重奏曲ツィクルス(4日連続)」のうちの2枚です この連続演奏会は10月1日(木)にハイドンセットⅠ(弦楽四重奏曲第14番K.387,同15番K.421,同16番K.428)が,10月2日(金)にハイドンセットⅡ(弦楽四重奏曲第17番K.458,同第18番K.464,同第19番K.465)が,10月3日(土)にプロシア王セット(弦楽四重奏曲第21番K.575,同第22番K.589,同第23番K.590)が,10月4日(日)に弦楽四重奏曲第20番K.499,クラリネット五重奏曲K.581,ブラームス「クラリネット五重奏曲」が演奏されます

私がトッパンホールの会員先行予約で手配したのは2日の第17番~第19番と3日の第21番~23番です 午前10時受付開始の予約電話がつながったのは10時33分でした.すでに5月9日から受付開始の4公演セット券の会員先行発売で良い席が押さえられており,センターブロックは取れず,かろうじて右ブロック前方の席を取りました

2年前にハーゲン弦楽四重奏団が開いたベートーヴェンの「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の時には,トッパンホールの会員でなかったため,一般発売の時にはすでにソルド・アウトになっていて涙を呑んだ苦い思い出があります 私がトッパンホールの会員になったのは,ハーゲン弦楽四重奏団のチケットを確実に手に入れるためであると言っても過言ではありません

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団のオペラシティ・シリーズ第86回公演を聴きました プログラムは①ルトスワフスキ「交響曲第4番」,②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」,③スメタナ「交響詩”我が祖国”」から「ヴィシェフラド(高い城)」,「ヴルタヴァ(モルダウ)」,「シャールカ」です 指揮は東響首席客員指揮者クシシュトフ・ウルバンスキ,②のチェロ独奏はタチアナ・ヴァシリエヴァです

 

          

 

1曲目が大編成を必要とする曲のため,ステージは所狭しと楽員が詰めかけています.コンマスは大谷康子.東響きってのイケメン指揮者ウルバンスキが登場すると大きな拍手が湧き起こります

ウルバンスキは同じ国の作曲家ルトスワフスキの交響第4番を最初に持ってきました この辺に彼のこだわりを感じます.この曲はロスアンジェルス・フィルの委嘱により書かれ,1992年夏に完成し,93年2月に作曲者自身の指揮で初演されました

曲想としては暗いのですが,シェーンベルクなどのように訳の判らない音楽ではなく,比較的聴きやすい曲です アンニュイな雰囲気とトラジックな雰囲気が交差しフィナーレになだれ込みます

管楽器が減り,チェロの台座が設置され,2曲目のドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」に備えます.よく見るとチェロの首席の椅子が一つ空いています するとスタッフが現われ,2列目にスタンバイしていた樋口泰世に1列目に移動するよう伝えました.首席の西谷牧人が演奏に間に合わないようです 「おっ,いよいよ樋口泰世が定期公演で首席クラスの仲間入りか・・・・」と期待が高まったのですが,そのすぐ後に,西谷がおっとり刀で登場,樋口は元の位置に戻りました.彼女は苦笑いしていました せっかくのチャンスだったのに,惜しいことしましたね,樋口さん

ソリストのヴァシリエヴァがベージュを基調とした衣装で登場,ウルバンスキの指揮で第1楽章に入ります ヴァシリエヴァの演奏を聴いていて感じたのは,「優しく包み込むような演奏だな」ということです 母性的な演奏と言い換えても良いかもしれません 何なんでしょうか,この心地よさは 力に頼って弾くのでなく,ごく自然体で弾いているように見えます この曲は色々な演奏家で生演奏を聴いてきましたが,こういう印象を抱いた演奏は初めてです.すごく良いと思いました

第2楽章では,コンマスの大谷康子とヴァシリエヴァとの”対話”がありますが,なかなか聴きごたえがありました オーボエの荒絵理子,フルートの甲藤さち,クラリネットのエマニェエル・ヌヴ―をはじめとする管楽器群がソリストを盛り立てます

5回ほどのカーテンコールの後,ヴァシリエヴァはバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」から「プレリュード」を「優しく包み込むように」演奏し,拍手喝さいを浴びました

 

          

 

休憩後はスメタナの連作交響詩「わが祖国」から第1曲「ヴィシェフラド(高い城)」,第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」,第3曲「シャールカ」が演奏されます

第1曲「高い城」は冒頭2台のハープが物語の始まりを告げます 第2曲「モルダウ」は一番有名なメロディーなのでお馴染みですが,何度聴いても良い曲ですね 第3曲「シャールカ」はあまり馴染みがありませんが,解説を見るとかなり恐ろしい物語です 「美しいシャールカは,恋人に裏切られたことを根に持って,全男性への復讐を遂げるため宴会を開き,酒に酔った男性どもを皆殺しにする」という内容です 女って怖いですね クラリネットのソロがシャールカを描写しますが,エマニュエル・ヌヴーは迫真の演奏を展開しました

ウルバンスキは前の2曲でもそうでしたが,すべて暗譜で指揮をします 何しろ,リハーサルの時から全曲を暗譜で振ると言われていますから驚きです 1982年生まれといいますから,今年弱冠33歳です.現在米・インディアナポリス交響楽団の音楽監督,ノルウェー・トロンヘイム交響楽団の首席指揮者も務めていますが,2015-2016年シーズンからは,北ドイツ放送交響楽団首席客員指揮者に就任予定とのこと.将来が楽しみな指揮者です

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尾高忠明+新日本フィルでエルガー,V.ウィリアムズ,ブリテン,ディーリアスを聴く

2015年05月23日 08時11分06秒 | 日記

23日(土).わが家に来てから226日目を迎え,ご近所の奥様とお話しするモコタロです 

 

          

            お野菜が高くなって生活も大変ですわねぇ 奥さま!

 

  閑話休題  

 

昨夕,すみだトりフォニーホールで新日本フィル第541回定期演奏会を聴きました 本来はトりフォニー・シリーズ第2日目の会員なので今日聴くはずだったのですが,東響オペラシティ・シリーズ公演と重なってしまったため,振り替えサービスのある新日本フィルの方を前日に振り替えてもらったのです プログラムは①ヴォーン・ウィリアムズ「タリスの主題による幻想曲」,②ディーリアス「楽園への道」,③ブリテン「歌劇”ピーター=グライムズ”より”4つの海の間奏曲”」,④エルガー「交響曲第1番変イ長調」です 指揮は英国音楽のスペシャリスト尾高忠明です

 

          

 

自席はいつもの定期会員席と反対側の右ブロック18列24番,会場は9割方埋まっている感じです 1曲目のヴォーン・ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」は,16世紀に活躍した作曲家トマス・タリスの詩編を1906年に校訂編纂した「イングランドの讃美歌」で取り上げたものを使っています

オケの配置を見て「おやっ?」と思いました 弦楽奏者のみの態勢ですが,新日本フィルの通常の編成=左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスに加え,後方右の壁に沿って,ヴァイオリン6本,ヴィオラ2本,チェロ2本,コントラバス1本が横並びにスタンバイしているのです あらためてプログラムの解説を見ると,これは作曲者の指示によるもので,前の編成が第1群,後方の編成が第2群として配置されていることが分かりました コンマスはチェ・ムンスです

尾高忠明はいつも通りタクトを持たずに登場,さっそく演奏に入りますが,曲の冒頭から弦楽器の厚みのある音が心地よく響いてきます 後半で首席奏者のチェ・ムンス,須山暢大(客演),木越洋,篠崎友美の弦楽四重奏が聴かれますが,素晴らしいアンサンブルでした この曲のメロディーを聴いていると,英国人と日本人とは相通じる感性の持ち主なのではないか,と感じます どこか懐かしい感じに包まれます

それは次のディーリアスの「楽園への道」でも同じです.この曲はディーリアスの歌劇「村のロミオとジュリエット」の終盤に演奏される間奏曲です.前曲で後方に居た弦楽奏者が本来の定位置に着き,管楽器が入ってきます 美しい弦楽器にオーボエの古部賢一,クラリネットの重松希巳江,フルートの白尾彰の演奏が彩りを添えます

この曲で思い出すのは,今からン十年前の独身時代のことです.軽井沢でテニス・サークルの合宿があり,テニス・コートに着いて車から降りた時,カー・ラジオからこの「楽園への道」のメロディーが流れてきたのです しばしその場に立ちすくんで聴き入っていました.その頃は,ディーリアスを聴いているリスナーはそれほど多くない時代でしたが,私はLPレコードでよく聴いていました ちなみに,そのサークルは男女各6人位のグループで,今で言う「合コン」でしたが,一組もゴールインしませんでした.懐かしくも情けない恥ずかしきことこの上ない思い出です フォーティLoveまで行かず,ダブル・フォールトばかりでした

3曲目はベンジャミン・ブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」です.この歌劇はプロローグと3幕から成りますが,この曲は独立した形で出版され,「夜明け」「日曜日の朝」「月光」「嵐」という標題が付いています この曲では,鋭い弦楽器と分厚い管楽器が見事にマッチしオペラの心象風景を表現します いつか観た新国立オペラの「ピーター・グライムズ」を思い出していました

 

          

 

休憩後はエドワード・エルガーの「交響曲第1番」です.この曲はエルガーが51歳の時に作曲したもので,演奏に1時間近くかかる大曲です.この曲の大きな特徴は第1楽章冒頭の序奏で現われる英雄的な旋律が循環主題として全曲を支配することです エルガーは名曲「威風堂々」の作曲者ですが,この曲にタイトルと付けるとしたら「威風堂々」でよいのではないかとさえ思うほど堂々たる音楽です 彼は英国のチェールズ・ゴードン将軍の雄姿に感銘を受けて作曲したのですが,本人は標題音楽ではないと主張していたようです

第2楽章などは,まるで映画「スターウォーズ」に出てくるジェダイの戦士が行進する時の音楽のようです 第4楽章のフィナーレを迎え,この曲のテーマが蘇ると,聴いているわれわれは,長い旅から戻ったなあ,という感覚に捉われます

この日のプログラムは英国音楽の第一人者・尾高忠明の指揮による「英国音楽」ツィクルスでした.何の脈絡もないカップリングでプログラムを組むコンサートが”普通”になってしまった今日ですが,本来はこのような首尾一貫したコンサートこそ望ましいと思います

尾高忠明は新日本フィルの,特に弦楽器の持ちうる力を最大限引き出すことに成功していました 彼が常任指揮者でもいいんじゃないでしょうか.次の人は決まってますけど

 

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中村文則著「王国」を読む~生きるためのユリカの選択

2015年05月22日 07時01分09秒 | 日記

22日(金).わが家に来てから225日目を迎え,片目のジャックを気取るモコタロです 

 

          

            片目のジャックじゃなくて 固めの麺がいいんだってば!

 

  閑話休題  

 

一昨日、日経ホールの「日経ミューズサロン」を聴きに行ったとき、8月以降のミューズサロン公演のチケット先行発売(センターブロック1列目と7列目の計24席)をやっていたので、2枚買いました 1枚は9月29日(火)午後6時半からの「シャンドル&アダム・ヤボルカイ兄弟withモーツアルトハウス・ウィーン弦楽四重奏団」演奏会です。下の写真で見る限り何となく胡散臭い雰囲気が漂っていて、興味本位で聴いてみたいと思いました プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第15番k.421」のほか、「くまん蜂の飛行」のような超絶技巧曲の演奏もあるとのことで、こちらの方が期待大です

 

          

 

もう1枚は11月30日(月)午後6時半から開かれる「パノハ弦楽四重奏団」演奏会です 結成45周年を迎える老舗クアルテットの演奏で、プログラムはモーツアルト「弦楽四重奏曲第17番K.458”狩”」ほかです

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

中村文則著「王国」(河出文庫)を読み終わりました 中村文則は1977年愛知県生まれ.2002年『銃』で新潮新人賞を受賞してデビューしました 2010年に『掏摸(すり)』で大江健三郎賞を受賞し,12年に『掏摸』の英訳が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの年間ベスト10小説に選ばれ話題になりました

 

          

 

ある組織からの依頼で,社会的な地位にある要人の弱みを人工的に作り出すことがこの作品の主人公ユリカの仕事だった ターゲットの男を誘惑し決定的な場面を隠し撮りさせ,後から組織がその写真をネタに強請るといった具合だ.ある日,彼女は見知らぬ男から声をかけられ「あの男に関わらない方がいい」と忠告を受ける 男というのは木崎という名の不気味な存在.ある日、木崎から依頼されてターゲットに接触したら,意図がバレて,逆に依頼主を騙して情報を流すように脅される ユリカは命の危険を感じながら”二重スパイ”のように両方を騙して逃亡しようと企てるが・・・・果たして彼女は逃げ切ることができるのか??

とにかく暗く切羽詰まった小説です.相手から怪しいと疑われると何とか口実を作って必死に逃れる道を探る.そうしなければ相手に殺されるから 読む側はユリカの身になって二人の男から逃げ回るのを体験するような感じです.自分が今いる環境ではなく,ユリカのような劣悪な環境に置かれたとき,どういう行動を取るだろうか,と考えさせられる小説です 刺激のない毎日に退屈している人にお薦めです

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