FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

「こんこん病」 ― それは、喉のアレルギーだった

2009-09-17 01:30:11 | シニア&ライフプラン・資産設計
私は持病もちである。
「こんこん病」である。
ある時、季節の移り目に空気が変わると、喉(正確には気管支)が刺激を受けて、急に咳き込む。
風邪ではない。
いや、ず―っと、風邪だと思っていた。20代から、1~3年周期でやってくる。これがくると、2~3ヵ月咳が続く。昼間も、ひっきりなし、夜も続き寝られなくなる。寝ていても、咳で体がハネ起きてしまう。

病気だと思うから、そのたびに病院へ行く。問診、胸のレントゲン、血液検査、呼吸器検査。熱はない。肺もきれいだ。で、咳が止まらないからって、大量の咳止め薬をくれる。しかし、咳は2ヵ月も3ヵ月も容赦なく来る。寝られない。喋れない。

日中でもおかまいなしに、腹の奥から咳の源がこみ上げてくる。人前では、腹の筋肉と喉の辺りでこらえ、鎮める。くっくっくっ、と。ひくっひくっひくっ、と咳になるまでの手前で抑えておく。それがたまって、噴火すると音と現象となって、咳の洪水が起こる。だから、話すのが苦になる。話せない。夜は夜で、ためているものがそれこそ堰をきって咳が暴れる。

すごい体力消耗だ。腹筋と背筋をめいっぱい、ぶたれたように刺激となる。大きめのが続くと、それだけで汗だくで、ひと運動したようになる。苦しみながら、おかげでたるんでいた腹筋がしまったかな、この咳運動で体重が減ってくれたかな、なんて余計なことも考える。

きっと、これが原因で、おれは歳とったら死ぬんだろうな、と思う。年寄りになると、確実に、この咳に持ちこたえられない。
「こんこん病で彼は死にました」――。
そうこうするうちに、春先、暖かくなると、自然に治っている。二度とあの苦しい病は訪れないだろうと思えるくらい、快調となる。それがまた・・・。こうして、十何回も十何年も、繰り返してきたのだ。女房も、また来たね、と慣れている。

これは、原因不明の難病だ。そう思っていた。いろんな検査をしてもわからないのだ。咳を吐きながら、病弱の美剣士が、凄絶に敵に討たれて散る、それなら美しくも舞台的な情景ともなろうが、今の時代、この歳じゃ・・・。

最近、これが分かってきた。アネルギー性の咳、あるいは喉アレルギー、気管支アレルギーと言われるものらしい。新聞記事に載っていた。どうも、それらしい。同じような症状の人が多い、とある。

そうとわかれば、アレルギー専門の医者へ行けば、それの対処が分かるはずだ。
―― 咳が続くんです。
―― 熱はないな。いま咳していると、肩身が狭いよね。
―― は、ああ、新型インフルエンザかと・・・。
―― じゃあ、咳止めを出しておくから。
―― ええ~っと、咳が2ヵ月くらい続くんです。季節の変わり目に、急に。
―― まず、この薬で試してみて、5日分あるから。
―― 風邪じゃあ、ないと思うんですが・・・。
―― レントゲンは異常ないね。
―― いつも、病院へ行くと撮られますけど、きれいな肺だって・・・。
―― じゃあ、問題ないね。咳止めを飲んでみて、だめだったら、また来て。その時はまったく違うから、治し方が。アレルギーだったら、また違うから。
―― (アレルギーって、わかってるじゃん。)そ、そうです、咳がずっと続くんです、アレルギーかと・・・。
―― まず、咳が治るか、これで。それから見てみよう。
―― (いや、その咳が治らないから・・・)あ、ああ、まず、咳を治してからですかね??

どうもおかしい。熱もないし、食欲も普通、風邪じゃないのに。まず咳を治して? 咳が止まらないから来ているのに? 会社休んでまで。大量の風邪の咳止めをもらって来た。2日後、別のアレルギー専門の医者へ行った。いきなり、「風邪の咳止めでは効きません。アレルギーです」と言った。
アレルギーの吸入薬をもらって来た。だいぶ楽になった。完全ではないけれど。

原因と対症療法がわかれば、恐くない。恐いのは、何の病気か分からない、いつ起きるか分からない、いつ治まるか分からない、ということだ。とりあえず‘難病’ではなさそうだ。安心はしたけど、年寄りの人だと、よくわからない病院では無駄な治療代と薬代を払うのも、なんか、医療費が大変なんだろうなあ、と思う。

同じように「こんこん病」(そんな病名はありません)で苦しんでいる人、風邪じゃないって。アレルギーだって。医者にはっきり言おう。
――だから、風邪じゃないってば、さ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿