「鞍馬天狗」
書いた大佛次郎は白いスーツも似合い、中国服も似合い、
ヨット、ゴルフ、テニスを楽しみ、横浜のホテルで、仕事が一段落すると、
一階のバーで、コニャックを飲む。
民衆座の「青い鳥」でチルチルとミチルで水の精を演じた、女優、吾妻と結婚した。
華のある生き様である。
地唄舞の「竹原はん」とは、晩年の関係。
がんセンターに入院した大佛を、古希に近い女性が門前仲町の深川不動で
冬の寒い中お百度を踏む。
ひとりの女性にこれほど愛されるとは・・・。
戦争中、大佛は疎開をしなかった。
出来なかった。
無類の猫好き、十二匹を飼っていて、彼らを連れての疎開は無理だったから。
生涯に勝った猫は、五百匹を越え、その種類の内訳は、
シャム猫に限らず、皮膚病の猫、目の見えない猫まで・・・・・。
捨て猫を見ると、ひょいと、拾ってきた。
子供のいない大佛が亡くなり、、夫人もなくなった。
家政婦は見ていた!!
大佛家で十数年働いていた女性が、猫を愛しつづけた大佛の無念を引き継ぎ、
猫たちすべてを連れて、信州の小さな村に移り住んだという。
「この子たちが、生きている間は、私も死ねないわ。最後の一匹を私が抱いて、
一緒に死ねたら、理想よね・・・・・・!」
鎌倉長谷の大仏様の裏手に居を構え、ペンネームを大仏様から拝借し、
里見淳、久米正雄ら鎌倉文士と老童チームの名で野球をした、
大佛の幸せは、自分で作ったものなんだろうな・・・・と
「俺には・・・・な!」と
つぶやき、天を仰いだ!
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