近鉄特急にはJRでいうところの列車愛称がありません。時刻表やきっぷの表示も第〇〇列車と列車番号が表記され、特急券の申し込みも〇〇時発を△△までとか、発駅と着駅、発車時刻を伝えての申し込みとなります。「しまかぜ」や「ひのとり」は車両につけられた愛称。
では、近鉄部内や鉄道愛好家はどのように区別しているのか、ご紹介いたしましょう。
名阪甲特急
近鉄名古屋と大阪難波を結ぶ特急で、津・鶴橋・大阪上本町のみ停車(一部大和八木にも停車)する速達タイプの特急で、近鉄特急の花形とも言える特急。過去にはビスタカーやアーバンライナーなど近鉄特急のフラッグシップが投入されてきました。
名阪間では新幹線が圧倒的に速いですが、最高130km/hで走行したり、座席の改良や居住性の向上を図ったりしていますし、なんばや上本町などミナミから名古屋へ一本でいけることから一定の需要を確保しているようです。現在は新型の80000系ひのとりが運用され、さらなる快適性をもたらしています。
名阪乙特急
近鉄名古屋と大阪難波を結びますが、こちらは停車駅が多く,基本的には桑名・近鉄四日市・白子・津・名張・大和八木・鶴橋・大阪上本町に停車します。かつては汎用タイプの特急車(22600系ACE、22000系ace、12400・12600系サニーカー)が使用されていましたが,現在は21000・21020系アーバンライナーが使用されています。
阪伊甲特急 大阪難波と賢島の間を走る速達タイプの特急。土休日ダイヤで1往復と大阪難波発鳥羽ゆきが1本走っています。停車駅は大阪上本町・鶴橋・伊勢市・宇治山田・鳥羽・志摩磯部・鵜方で、鳥羽までの列車は大和八木にも停車します。賢島ゆきは大阪から伊勢志摩へ最速で走り、鶴橋ー伊勢市間をおよそ1時間半ノンストップで駆け抜けます。23000系伊勢志摩ライナーが賢島ゆきに使用され、鳥羽ゆきは30000系ビスタEXで運転されています。
阪伊乙特急 大阪難波と賢島の間を走り、停車駅の多い特急です。一部宇治山田や鳥羽までの列車もあります。停車駅は大阪上本町・大和八木・名張・伊勢中川・松阪・伊勢市・宇治山田・五十鈴川・鳥羽・志摩磯部・鵜方を基本に、布施・大和高田・榛原・桔梗が丘・伊賀神戸・榊原温泉口に停車する列車もあります。伊勢志摩ライナー、ビスタEX、汎用特急車が運用されています。
名伊甲特急 近鉄名古屋ー賢島間で、土休日に1往復運転される列車で、阪伊甲特急と同じく伊勢志摩ライナーが限定で運用されています。東海地区から伊勢志摩へ最速であるほか、新幹線を介して東京方面からのアクセスもになっています。停車駅も津・伊勢市・宇治山田・鳥羽・志摩磯部・鵜方と限られたものになっており、ダイヤ面でも東京から日帰りで伊勢神宮参拝できるようになっています。
名伊乙特急 近鉄名古屋ー賢島間を基本に松阪・宇治山田・鳥羽までの列車も運転され、概ね毎時2本が運転されています。東京方面から伊勢志摩へのアクセスはもちろんですが、名古屋から三重県内への輸送も多く,停車駅も桑名・近鉄四日市・白子・津・伊勢中川・松阪・伊勢市・宇治山田・五十鈴川・鳥羽・志摩磯部・鵜方を基本に朝夕には久居停車の列車もあります。
車両は汎用特急車を中心にビスタEX、アーバンライナー、伊勢志摩ライナーが使用されています。
京伊特急
京都ー賢島間を走る列車で、その距離195.2km。私鉄最長走行距離を誇る列車です。停車駅は近鉄丹波橋・大和西大寺・大和八木・名張・伊勢中川・松阪・伊勢市・宇治山田・五十鈴川・鳥羽・志摩磯部・鵜方を基本に、高の原・西ノ京・榛原・榊原温泉口に停車する列車もあり、京都から新幹線で西日本各地から伊勢志摩への観光客のほか、運転経路のかぶる阪伊乙特急の補完や、大和八木で名阪乙特急と乗り継ぐことで、名古屋と奈良・京都方面を結ぶ役割も果たしています。車両は汎用特急車の他、伊勢志摩ライナーも使用されています。
京橿特急 京都ー橿原神宮前間で運転される特急で毎時2本が運転されています。橿原神宮前で吉野特急と接続することから近鉄線主要駅からと、京都・名古屋を介して東海道・山陽新幹線からの吉野連絡の性格も帯びており、12200系スナックカーまでは吉野連絡の副票をつけていました。停車駅は近鉄丹波橋・大和西大寺・大和八木で、朝夕に高の原、日中に薬師寺や唐招提寺への最寄駅の西ノ京に停車する列車があります。汎用特急車主体の運用になっています。
京奈特急
京都ー近鉄奈良間で運転されています。京都・奈良という古都を結ぶ短距離特急となっています。しかしながら毎時2本が確保されており、京都ー大和西大寺間では京橿特急と合わせて毎時4本と高頻度運転となっています。京橿特急と同様に汎用特急車中心の運用になっていますが、大和西大寺駅にある西大寺車庫への入出庫の関係で京伊特急に使用される伊勢志摩ライナーも運用されています。
阪奈特急
大阪難波ー奈良間で運転され、平日朝の大阪難波ゆき、夕方の奈良ゆきのみ設定の通勤特急となっています。同線を走る快速急行や急行と所要時間も変わらないことから日中はそちらがメインとなっています。停車駅は大阪上本町・鶴橋・生駒・学園前・大和西大寺となっています。
京奈特急と同様に西大寺車庫への入出庫運用も兼ねていて、阪伊特急や名阪特急で運用される伊勢志摩ライナーやアーバンライナー、さらには新型特急ひのとりで運転される列車もあり、短距離でお手軽に乗車できます。
吉野特急 大阪阿部野橋ー吉野間を走る特急です。走行する南大阪・吉野線は標準軌(1435mm)の他の近鉄線と違い、狭軌(1067mm)の路線なので独立しており、他線との乗り入れはありません。停車駅は尺土・高田市・橿原神宮前・飛鳥・壺阪山・吉野口・福神・下市口・六田・大和上市・吉野神宮とやや多めとなっています。
車両は南大阪線用の16000・16400・16600系の汎用特急車の他、26000系さくらライナーも使用されています。
観光特急しまかぜ 大阪難波・京都・近鉄名古屋から賢島まで走る特急で、全席プレミアムシートの列車です。一応、甲特急に分類され停車駅も準じていますが,名古屋発着列車が津ではなく近鉄四日市に停車するほか、全列車が志摩磯部を通過します。使用車両の50000系は天皇陛下が伊勢神宮に参拝される際の御乗用車にも指定されてます。
観光特急青の交響曲 大阪阿部野橋ー吉野間を走る特急で、通勤型電車を改造した16200系を使用した全車デラックスシートの特急です。停車駅は吉野特急と変わらず、吉野特急の一員としてダイヤに組み込まれています。が、特別車両券が必要となっています。ただし,毎週水曜日は検査のため、汎用特急車で運転されます。
観光特急あをによし
2022年春から運転予定の大阪難波ー近鉄奈良ー京都間を運転する特急です。阪奈特急と京奈特急を合わせたような列車で、大阪難波ー京都間1往復と近鉄奈良ー京都間2往復が運転予定。京阪間を走る列車は近鉄奈良でスイッチバックします。かつては大和西大寺折り返しで阪京特急が運転されており、30年ぶりの復活となります。
車両は12200系を改造した19200系が充当される予定で、おそらく青の交響曲同様に全車デラックスカーになるものと思われます。
以上が現在近鉄で走っている特急列車の系統分類ですが、過去には湯の山特急(大阪・名古屋ー湯の山温泉)や奈伊特急(近鉄奈良ー賢島)もありました。幕式行先表示器を持っていた12200系スナックカーには湯の山特急のコマもあり、乗務員さんのサービスで回送時に表示されていたこともありました。