改めて山中慎介-アンセルモ・モレノ戦を振り返ると

大苦戦V9の山中 神の左に磨きかける!

 一昨日行なわれたWBCバンタム級タイトルマッチは王者の山中
慎介が元WBAスーパー王者のアンセルモ・モレノと対戦し2-1の
判定で9度目の防衛に成功した。

‘神の左’といわれる強打を誇る山中に対し‘神の眼’でパンチを
捌くディフェンスマスターのモレノという対戦は最強の矛盾対決と
いわれていたし、モレノが元とはいえWBAのスーパー王者でタイ
トルを失った試合も不運な負傷判定負けだから両団体統一戦に匹敵
するカードだった。

 基本的に山中が勝つならKOでモレノが勝つなら判定と思われて
いたのだが気になったのは80年代ぐらいから南米の長身のテクニシ
ャン系に日本人は相性が悪く、イラリオ・サパタやエウセビオ・ペド
ロサにサムエル・セラノらと対戦した日本人選手は距離を制圧されて
強打が空転するばかりかパンチが当たる距離に肉薄すると巧妙な
クリンチで消耗させられ判定負けというパターンを嫌というほど
見てきたわけだ。

 だから山中-モレノ戦は日本のボクシング界が80年代以降から
突きつけられた‘宿題’をどうこなせるかという側面もあったのだ。

 試合終了後ボクシングファンのブログやサイトを覗くと山中に対し
否定的なコメントが目立っていたのだが、モレノ自身は勝てなかった
事を認めているしジャッジ3名が揃って片方に振り分けたラウンドが
少ない事から115-113の2-1判定は妥当な結果だった。

 個人的にWBCの途中採点の発表がカギを握ると考えていたので
4R終了時点ではTV解説の飯田覚士やセレス小林はモレノ優勢と
語っていたのが2-0で山中優勢という結果に この日のジャッジの
採点基準が分かってよかったという事だろう。

 仮に途中採点発表がなければ4Rまでのペースでラウンドを重ねて
山中有利のまま進んだか、9R以降ポイントの劣勢を意識せず山中が
猛攻を加えずにモレノの判定勝ちになったかは分からない。

 ただポイントでリードされた事を自覚した山中が9Rから思い切った
猛攻を仕掛け一旦は右フックのカウンターでグラついたものの、10Rに
左強打から右の返しでダメージを与え11R以降モレノを追いかけ回し
攻勢を印象付けて逆転勝ちしたのは紛れもない事実。

 伝説のボクサー・大場政夫が初防衛戦でベツリオ・ゴンサレスに苦戦
した試合を筆頭に地元判定云々と批判された試合が名王者といわれた
日本の歴代世界王者達にも必ず存在するのだから、この一戦で‘山中の
メッキが剥がれた’と判断するのは利口な事ではない。

 むしろ劣勢を自覚した山中が終盤カウンターを貰いながら攻勢をかけ
るという勇気ある姿勢が勝ち運を呼び込んだわけで、これこそが他の
選手と違う要素だし9度の防衛にも成功しているのだと思った。

 派手なダウンシーもなければ打ち合いもなかったが、
将棋の千日手を思わせる8Rまでの息詰まる駆け引きや9R以降の一歩
間違えれば勝敗が逆になるスリリングな展開にハイレベルなボクシング
の醍醐味を味わったのだった。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 今年度のキッ... ダーククラス... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。