ウルトラセブンEP ８・狙われた街

　私がセブンを初めて見たEPが、この話。
　偶然メトロン星人が登場していた。
　メイン脚本の金城哲夫が、実相寺昭雄監督と組んだ唯一の作品で
特撮の大木淳も初めて参加。　
　夕日の中でセブンとメトロン星人が、戦う名シーンを演出している。　

　冒頭いきなり暴走するタクシーをパトカーが追い掛け回し狂った運転手を
逮捕するが、運転手が気を失う。
　続いてライフル魔が暴れ、偶然近くにいたパトロール中のフルハシと
ソガが駆けつけ取り押さえるがフルハシが負傷。
　手当てを受けていたフルハシが、作戦室にパトロール中に買ったタバコを
吸うと突然狂ったように暴れだす。
　みんなで取り押さえるとフルハシは、タクシー運転手やライフル魔同様
昏睡状態に陥った。
　しかも続いて同じタバコを吸ったソガまでが、同じように暴れるのだ。

　2人が吸いかけたタバコの中からは、赤い結晶体が出てきた。
　そして、その赤い結晶体を吸い込むと理性や感情を失い、敵を倒す殺意
だけを持った人間に変わってしまうものだった。　
　実は、タクシー運転手やライフル魔は北川町の住人だ。
　しかも同じ北川町の住人のアンヌの伯父であるパイロットの操縦する
飛行機が墜落したのは、フライト前に駅前の自販機で買ったタバコを吸って
起こした事件だった。
　そこでダンはライフル魔の取調べに立ち会い、吸ったタバコが北川町の
駅前自販機で買ったという話を聞いたのだ。
　そこで張り込んだダンとアンヌは、自販機にタバコを入れに来た男を尾行
しアパートに入っていくのを目撃した。　

　ダンが中に入ると、2階の奥の部屋でメトロン星人が待ち受けていた。
　星人は「赤い結晶体が人類の頭脳を狂わせるのに、十分効力がある
ことが分かった。我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きて
いることに目をつけた。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。
人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、
やがて自滅していく」と言う。
　そしてダンを円盤に閉じ込めたのだが、円盤はホーク1号に撃墜され
夕日の中に巨大化して現れた星人も脱出したセブンとの戦いでアイスラッ
ガーで縦切りされた後、エメリューム光線で爆発した。　

　先週に引き続き‘ダンの正体をキリヤマ隊長が知っていた’という証拠が
今回もある。
　それはダンがメトロン星人の円盤に拉致されて飛び立った時、連絡を
受けたキリヤマが「よし分かった、中にはダンがいるのだな」と応え、ホーク
1号で分離した円盤を何の躊躇もなく撃墜している。
　仮にダン＝セブンでなければ、‘ダンが閉じ込められているのは、どっちだ？’ともめる可能性があるが、全く躊躇がなかったという事は正体を知ら
ないとできない事ではないだろうか？

　このEPはゲストの刑事役で穂積隆信が出演しているし、星人の声を担当
しているのは仮面ライダーのナレーター・中江真司だ。
　ダンとメトロン星人の会談が行われるのは、脚本ではマンションのソファ
となっていたが監督の意向でボロアパートとなったようである。
　また‘事件から手を引け’と星人が、ダンプカーから警告するシーンは
脚本ではビデオシーバーに星人の姿が映って警告、直後にダンプが爆発
するように書かれていた。
　このように脚本と本編が、かなり違うのが特徴のEPだがラストで脚本では
そのまま終わりなのを「人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙
人です。でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。
　え、何故ですって？我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを
信頼してはいません」というナレーションを入れて金城哲夫の世界を完全
否定して終わるのである。

　梶原一騎とちばてつやという毛色の全く違う作家が書いた名作・あしたの
ジョーだが、これ意向 両者が組む事はなかったというのが分かるような
終わらせ方ではないかと思う。
　ただ、このEPはウルトラセブンを代表する名作として今でも人気である
のは言うまでもない。
　それにしても当時は、日本人の半分は喫煙者だったのが分かる。
　作戦室での喫煙など今では考えられないシーンでもある。