ロンドン五輪を見ていて印象に残ったのが表彰式で選手達が入場する時に
流れる炎のランナーのテーマ。
ヴァンゲリスの‘タイトルズ’のテーマに乗って入場して表彰式が始まるという
パターンだったのだが、思えば炎のランナーは1924年のパリ五輪に出場した
2人のイギリス人金メダリストの物語。
100m金メダリストのハロルド・エイブラハムスと400m金メダルのエリック・
リデルが共に金メダルを獲得するまでのストーリーが秀悦で、特に印象的
だったのは聖職者のリデルが100mの優勝候補だったものの100m予選が
日曜日で安息日という事から出場辞退をするという話。
後に91年に行われた第2回ラグビーW杯のSファイナルで連覇を目指すニュー
ジーランドの中心選手だったマイケル・ジョーンズが同じ理由で出場せずに
オーストラリアから敗れたのを見て炎のランナーを思い出した。
炎のランナーの舞台になった1924年当時の五輪は厳格なアマチュアリズム
全盛の時代で理念に拘るイギリスのお偉方にしてみればユダヤ系のエイブラ
ハムは、ただでさえ潜在的な差別を受けているのに国内選考会で敗れたリデル
やアメリカ勢に勝つためにプロのコーチを雇って勝とうとする姿勢を非難される。
最終的にプロのコーチはエイブラハムを競技に集中させるため競技場の隣の
ホテルで待機していたのだが100mのスタートシーンの後に、しばらくしてゴッド
・セイブ・ザ・クィーンが流れてイギリス国旗が掲揚されるのを見てエイブラハム
が勝った事を知るというシーンも素晴らしい。
炎のランナーは陸上競技の映画だけに、やはりフィットするのは陸上競技の
表彰式の時。
特にウサイン・ボルトが表彰される時に聞くと炎のランナー舞台になった
1924年のパリ五輪の100m優勝記録は10,06から88年経って100mの記録も
9,58と大幅に更新されたというのを痛感する。