NHK特集「行 -比叡山 千日回峰-」のDVDを見た。
このDVDは、1979年1月5日に放映されたNHKスペシャルをDVD化したもの。
今年観たいろんな映像の中でも、最高レベルの衝撃を受けた映像だった。
事実は小説よりも奇なり。
==================
<内容紹介>
時代を超えて人々の心に残る作品を送り出してきた「NHK特集」「NHKスペシャル」。
この夏以降、“戦争”“戦後のニッポン”“日本のこころ” “伝説のスポーツドキュメンタリー”という4つのテーマで、「雨の神宮外苑 学徒出陣・56年目の証言」「江夏の21球」ほか10数作品を4ヶ月連続でリリース!!
第3弾では“日本のこころ 「伝統、祈りと美」を伝える”をテーマにした4作品をリリース!!
【内容】
天台宗のもっとも厳しい行である「千日回峰」に挑む、延暦寺 山宝院住職 酒井雄哉さんの記録。
700日の回峰終了後に9日間にわたって断食、断水、不眠をしながら行う「堂入り」の行など、厳しい修行の様子を半年に渡って取材。
酒井さんの生き方、考え方を浮き彫りにし、行、信仰、の根源をさぐる。
==================
■
「千日回峰」というのを噂には聞いていたけど、実際見たらとんでもなくすごかった。自分のイマジネーションを超えていた。
この「千日回峰」はほんとうに死ぬ覚悟でやる修行。
途中での失敗は死を意味するらしく、自害するための短刀を常に携帯して歩く。
服装も白装束で常に死ぬ覚悟をしている。足も草履だけだ。
一日で草履はボロボロになるので、毎日草履をはきかえる。
その一日一日を刻むボロボロの草履の映像も出る。
「一日一生」(朝日新書)と言う本は、その草履を見て言った言葉だそうだ。
草履と同じで、人間も一日で一生が終わり。
だから毎日生まれ変わる。だから毎日反省をするんだよ、と。
千日回峰の間は、毎日3‐4時間の睡眠だけで7年間にもわたる。
気が遠くなるような果てしない修行。
軽い思い付きでは絶対にできない。ほんとうの意味で命がけの「行」だ。
■
比叡山の山の中を毎日午前2時に出発する。
真言を唱えながら260箇所で礼拝しながら歩き続ける。
けもの道のような山道を毎日30キロ6時間で歩き続ける。
それが、まず4年!も続く。
4年という長い年月を歩くことに費やした後、次には「堂入り」が始まる。
この「堂入り」が一番衝撃だった。
9日間、断食と不眠を続ける。水分すらとれないし横にもなれない。
不動明王の前に座り真言を唱え続け、毎朝午前2時には堂を出て不動明王に水を運び供える。
睡眠もしていないので意識は朦朧としている。その姿はすさまじい。
命がけの行なので「堂入り」前に「生き葬式」すら行われる。
生き葬式が最後の別れになるかもしれないので信者さんは泣いていた。自分も思わず泣けた。
堂入りの9日目。最終日辺りの表情が衝撃だった。
ほとんど死人のような表情だった。
生きながら死んでいるような状態で、衝撃的な映像だった。
でも、目だけが別の生き物のように生命を放射している感じでもあった。
体から死臭すらするとのことだ。
代謝が極限まで低下しているからだろう。
これこそ人間のすごさだし、人間の神秘だと思った。登山家メスナーと同じようなものだ。
(⇒『映画「ヒマラヤ運命の山」(NANGA PARBAT)』(2011-08-14))
この世界は科学や医学で分からないことばかり。人間が秘める力はすごい。
この行は、普通の人がすると間違いなく死ぬだろう。
堂入り前に、比叡山の山中を獣のように毎日40キロ走り続けることで、普通の人間を超えた存在(まさしく超人)となっているんだと思う。
■
この堂入りを生きて終わっただけで感動だったのに、まだまだ続く。
行はあと3年も続く。
これまでは自分のための「自利行(じりぎょう)」で、この「堂入り」を経て自分以外のための「化他行(けたぎょう)」へと移行していく。
1日30キロの行程+京都の赤山禅院の往復が追加され、1日60キロの行程となる。
そして、最後の7年目には全行程84キロの京都大回りというのが入り、7年に渡る「千日回峰」が終わる。
7年間で歩く距離は約4万キロ。これは地球1周分!に相当する。
この「千日回峰」を成し遂げたのは延暦寺の記録では47人しかいないとのこと。
「千日回峰」のすさまじさを見ただけでも口がアングリしていたのに、ここに出ている酒井雄哉大阿闍梨は、なんと1回目がおわった半年後には2回目に入っている!!それも完遂・・。
千日回峰を2回もしてしまった人はたったの3人しかいないらしい。
この酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨が、その3人の中の1人なのです。次元が違いすぎる。
■
さらに驚いたのは年齢のこと。
千日回峰の1回目を始めたのが47歳(1973年)から54歳(1980年)で、2回目はその半年後から始めて、2回目が終わったのは60歳(1987年)。
普通は体力面からも30才台でやるものらしい。
酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨は年齢すらも超越していて、ほんとうに超人だと思った。
映像の中でも、山を歩く動きは風のようだった。
風が吹くように、水が重力で落ちるように野山をかけぬけていた。
松尾芭蕉もこんな人だったのかもしれない。
すべての言葉が脱落していって、無となる。
その果てで出た最小限の言葉が、あの5・7・5の俳句になったんだろう。
同じように、酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨の何気ない言葉も、とても重く深い。
■
人間の可能性や限界やすごさを肌で知りました。
しかも、この酒井雄哉大阿闍梨は謙虚も謙虚。おそろしく腰が低い。
人格的にもとびぬけている人だと思った。
偉ぶる様子が全くない。まさに仙人のようだった。
透明な人だと思った。
あらゆるものを貫通させて映し出す、透明で透き通った人だ。
こういう偉大な人物を見ると、不思議と自分も謙虚になります。
親からよく言われた言葉を思い出します。
『実るほど 首(コウベ)を垂れる 稲穂かな』
このDVDを見てから、普段の生活で歩いたり自転車で移動することも、不思議と苦痛に感じなくなりました。
電車とかに乗ると、感謝の念が湧いてくる。
普段、いかに自分が贅沢して甘えているかを痛感するというか・・。
このDVDを見ると、明らかに自分が変わります。
■
ほんとうにすごい人は、神々しくすごいのです。すごいを通り越すと光り輝いて見えるものです。
あらゆる概念を超越してる。ああ、見てよかった。
「神さま」と言うとすごく抽象的でイメージが難しいですが、こういう「生き神さま(生き仏さま)」のような存在を具体的に見ると、その生々しさに電気が走るような衝撃があります。
思わず、自分の我欲も勝手にポロポロと抜けていくようで。
酒井雄哉大阿闍梨ははまだご存命なので、いつか生で拝見したいものです。
後光が差しているんじゃなかろうか。想像するだけで何か元気が湧く。
ほんと、すごいお方がいるものです。
感動しました。ありがたや、ありがたや。
みなさま、機会があれば是非DVDをご覧ください。
僕はとても衝撃を受けました。
youtubeでも別の動画が見れます。
そして、思わず本もいろいろ買ってしまいました。
○長尾 三郎「生き仏になった落ちこぼれ―酒井雄哉大阿闍梨の二千日回峰行」講談社 (1988/12)
○中尾清光「二千日回峰行者 酒井雄哉大阿闍梨・超人の教え」中央公論事業出版 (2000/07)
○酒井雄哉,寺田みのる「比叡山・千日回峯行 酒井雄哉画賛集」小学館文庫(2006/5/11)
○天台宗大阿闍梨 酒井雄哉「一日一生」朝日新書(2008/10/10)
この「一日一生」の帯に出ている酒井雄哉大阿闍梨の笑顔。
なんとも素晴らしいではないですか。
こんな笑顔が自然にできるようになったら、この世は満点花丸で卒業になるんでしょうね。笑
このDVDは、1979年1月5日に放映されたNHKスペシャルをDVD化したもの。
今年観たいろんな映像の中でも、最高レベルの衝撃を受けた映像だった。
事実は小説よりも奇なり。
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<内容紹介>
時代を超えて人々の心に残る作品を送り出してきた「NHK特集」「NHKスペシャル」。
この夏以降、“戦争”“戦後のニッポン”“日本のこころ” “伝説のスポーツドキュメンタリー”という4つのテーマで、「雨の神宮外苑 学徒出陣・56年目の証言」「江夏の21球」ほか10数作品を4ヶ月連続でリリース!!
第3弾では“日本のこころ 「伝統、祈りと美」を伝える”をテーマにした4作品をリリース!!
【内容】
天台宗のもっとも厳しい行である「千日回峰」に挑む、延暦寺 山宝院住職 酒井雄哉さんの記録。
700日の回峰終了後に9日間にわたって断食、断水、不眠をしながら行う「堂入り」の行など、厳しい修行の様子を半年に渡って取材。
酒井さんの生き方、考え方を浮き彫りにし、行、信仰、の根源をさぐる。
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■
「千日回峰」というのを噂には聞いていたけど、実際見たらとんでもなくすごかった。自分のイマジネーションを超えていた。
この「千日回峰」はほんとうに死ぬ覚悟でやる修行。
途中での失敗は死を意味するらしく、自害するための短刀を常に携帯して歩く。
服装も白装束で常に死ぬ覚悟をしている。足も草履だけだ。
一日で草履はボロボロになるので、毎日草履をはきかえる。
その一日一日を刻むボロボロの草履の映像も出る。
「一日一生」(朝日新書)と言う本は、その草履を見て言った言葉だそうだ。
草履と同じで、人間も一日で一生が終わり。
だから毎日生まれ変わる。だから毎日反省をするんだよ、と。
千日回峰の間は、毎日3‐4時間の睡眠だけで7年間にもわたる。
気が遠くなるような果てしない修行。
軽い思い付きでは絶対にできない。ほんとうの意味で命がけの「行」だ。
■
比叡山の山の中を毎日午前2時に出発する。
真言を唱えながら260箇所で礼拝しながら歩き続ける。
けもの道のような山道を毎日30キロ6時間で歩き続ける。
それが、まず4年!も続く。
4年という長い年月を歩くことに費やした後、次には「堂入り」が始まる。
この「堂入り」が一番衝撃だった。
9日間、断食と不眠を続ける。水分すらとれないし横にもなれない。
不動明王の前に座り真言を唱え続け、毎朝午前2時には堂を出て不動明王に水を運び供える。
睡眠もしていないので意識は朦朧としている。その姿はすさまじい。
命がけの行なので「堂入り」前に「生き葬式」すら行われる。
生き葬式が最後の別れになるかもしれないので信者さんは泣いていた。自分も思わず泣けた。
堂入りの9日目。最終日辺りの表情が衝撃だった。
ほとんど死人のような表情だった。
生きながら死んでいるような状態で、衝撃的な映像だった。
でも、目だけが別の生き物のように生命を放射している感じでもあった。
体から死臭すらするとのことだ。
代謝が極限まで低下しているからだろう。
これこそ人間のすごさだし、人間の神秘だと思った。登山家メスナーと同じようなものだ。
(⇒『映画「ヒマラヤ運命の山」(NANGA PARBAT)』(2011-08-14))
この世界は科学や医学で分からないことばかり。人間が秘める力はすごい。
この行は、普通の人がすると間違いなく死ぬだろう。
堂入り前に、比叡山の山中を獣のように毎日40キロ走り続けることで、普通の人間を超えた存在(まさしく超人)となっているんだと思う。
■
この堂入りを生きて終わっただけで感動だったのに、まだまだ続く。
行はあと3年も続く。
これまでは自分のための「自利行(じりぎょう)」で、この「堂入り」を経て自分以外のための「化他行(けたぎょう)」へと移行していく。
1日30キロの行程+京都の赤山禅院の往復が追加され、1日60キロの行程となる。
そして、最後の7年目には全行程84キロの京都大回りというのが入り、7年に渡る「千日回峰」が終わる。
7年間で歩く距離は約4万キロ。これは地球1周分!に相当する。
この「千日回峰」を成し遂げたのは延暦寺の記録では47人しかいないとのこと。
「千日回峰」のすさまじさを見ただけでも口がアングリしていたのに、ここに出ている酒井雄哉大阿闍梨は、なんと1回目がおわった半年後には2回目に入っている!!それも完遂・・。
千日回峰を2回もしてしまった人はたったの3人しかいないらしい。
この酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨が、その3人の中の1人なのです。次元が違いすぎる。
■
さらに驚いたのは年齢のこと。
千日回峰の1回目を始めたのが47歳(1973年)から54歳(1980年)で、2回目はその半年後から始めて、2回目が終わったのは60歳(1987年)。
普通は体力面からも30才台でやるものらしい。
酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨は年齢すらも超越していて、ほんとうに超人だと思った。
映像の中でも、山を歩く動きは風のようだった。
風が吹くように、水が重力で落ちるように野山をかけぬけていた。
松尾芭蕉もこんな人だったのかもしれない。
すべての言葉が脱落していって、無となる。
その果てで出た最小限の言葉が、あの5・7・5の俳句になったんだろう。
同じように、酒井雄哉(ユウサイ)大阿闍梨の何気ない言葉も、とても重く深い。
■
人間の可能性や限界やすごさを肌で知りました。
しかも、この酒井雄哉大阿闍梨は謙虚も謙虚。おそろしく腰が低い。
人格的にもとびぬけている人だと思った。
偉ぶる様子が全くない。まさに仙人のようだった。
透明な人だと思った。
あらゆるものを貫通させて映し出す、透明で透き通った人だ。
こういう偉大な人物を見ると、不思議と自分も謙虚になります。
親からよく言われた言葉を思い出します。
『実るほど 首(コウベ)を垂れる 稲穂かな』
このDVDを見てから、普段の生活で歩いたり自転車で移動することも、不思議と苦痛に感じなくなりました。
電車とかに乗ると、感謝の念が湧いてくる。
普段、いかに自分が贅沢して甘えているかを痛感するというか・・。
このDVDを見ると、明らかに自分が変わります。
■
ほんとうにすごい人は、神々しくすごいのです。すごいを通り越すと光り輝いて見えるものです。
あらゆる概念を超越してる。ああ、見てよかった。
「神さま」と言うとすごく抽象的でイメージが難しいですが、こういう「生き神さま(生き仏さま)」のような存在を具体的に見ると、その生々しさに電気が走るような衝撃があります。
思わず、自分の我欲も勝手にポロポロと抜けていくようで。
酒井雄哉大阿闍梨ははまだご存命なので、いつか生で拝見したいものです。
後光が差しているんじゃなかろうか。想像するだけで何か元気が湧く。
ほんと、すごいお方がいるものです。
感動しました。ありがたや、ありがたや。
みなさま、機会があれば是非DVDをご覧ください。
僕はとても衝撃を受けました。
youtubeでも別の動画が見れます。
そして、思わず本もいろいろ買ってしまいました。
○長尾 三郎「生き仏になった落ちこぼれ―酒井雄哉大阿闍梨の二千日回峰行」講談社 (1988/12)
○中尾清光「二千日回峰行者 酒井雄哉大阿闍梨・超人の教え」中央公論事業出版 (2000/07)
○酒井雄哉,寺田みのる「比叡山・千日回峯行 酒井雄哉画賛集」小学館文庫(2006/5/11)
○天台宗大阿闍梨 酒井雄哉「一日一生」朝日新書(2008/10/10)
この「一日一生」の帯に出ている酒井雄哉大阿闍梨の笑顔。
なんとも素晴らしいではないですか。
こんな笑顔が自然にできるようになったら、この世は満点花丸で卒業になるんでしょうね。笑
また翌日は生まれ変わる。
以前「一日一生」の本も購入、読みました。
酒井雄哉大阿闍梨が亡くなられました。
病気になられた後の大阿闍梨の会話が
掲載された、最近出版された本も読みました。
無常の時の流れうを感じます。
一日一生で生きていきます。
その一端を受け取り、自分の中でちゃんと花咲かせ、また次につなげていきたいです。
この映像は本当に素晴らしい映像で、NHKは素晴らしい仕事をされています。本当に。