「原子炉時限爆弾」(広瀬隆著)という本がある。どうもこの本が脱原発派に評価され売れているらしい(ただし、5月16日付け週刊オリコンランキングBOOK総合では30位までに本書も含め明快な脱原発派の本は確認できない)ので、原発推進派(安全強化して原発を維持発展させる派)として、直接、発信源を叩いてみようと思う。ただ、本を一冊まるまる批判するとなると、量的にも大変である。何度かに分けて記事を書くことになることはご容赦いただきたい。
まず著者であるが、作家である。自分も1ブロガーに過ぎないので、だからどうこう言うつもりもないが、専門家ではないということはまず指摘しておかなければならない。作家という商売がどういうものか特別な知識は無いが、本が売れないと困ってしまう人たちなのだろうなというのは容易に想像がつく。
反原発派歴は長いらしく、著書にも「原子力の危険性を訴え続けるとともに、反原発の市民運動を展開」と書いている。(橋下知事のような事実上の)俄か脱原発派よりは手強い相手であると思う。
また、著書にある紹介文にあるタイトルでは「二酸化炭素温暖仮説の崩壊」 (2010/7/16)「世界金融戦争」(2002/11/30)「世界石油戦争」(2002/06)などのタイトル(順番は原文のママ)が目をひく。二酸化炭素温暖化仮説を攻撃してきたのは、世界的には右派と思うが(自分も例外ではない)、日本では左派もやるらしい。恐らく、長年脱原発だった絡みで、二酸化炭素温暖化説を真実と仮定すると、原子力発電の正当性を認めざるを得なくなるから、反二酸化炭素温暖化仮説に踏み込んだのだろう。
「世界石油戦争」に関しては、資源エネルギーに関心があって、自分も以前買って読んだ事がある(ただし、名前は記憶していたものの引越しの際と思うが処分してしまって今はもうない)。内容はamazonによると「激動する欧米とイスラム社会の深層を暴く、衝撃のノンフィクション」である(個人的には古い本ということもあり、残念ながら印象に残ってない)。続く「世界金融戦争」では「アメリカ帝国は崩壊の時代に入った。世界的な金融メカニズムが、膨大な人々を貧困に追いやっている。現代金融スキャンダルの主役たちを追う問題作。ビジネスマン必読。」(同じくamazon)だそうである。
ちなみに出典は忘れてしまい現時点で確認できなかった(週刊誌だったか月刊誌だったか最近読んだ覚えがある。確認できれば訂正する予定)が、広瀬氏は味噌を食べると放射能に良いと言って、健康食品を販売しているらしく(グーグル検索「広瀬隆 味噌」2011年5月14日21:00の一番目の支持派らしき人のブログにもあった。さすがにリンクは遠慮したい)、科学的根拠まで追及された批判記事があったことは付け加えておく。
この本は2010年8月に発売されており、「先見の明があった」ということで注目されているのだろうが、自分は結論から言って全然そうは思わない。
>私は、本書で、大地震によって原発が破壊される「原発震災」のために日本が破滅する可能性について、私なりの意見を述べる。しかもそれが不幸にして高い確率であることを示す数々の間違いない事実を読者に見ていただくが、内心ではそこから導き出される結論が間違っていることを願っている。(2P)
>このことに関して、論争を全く望んでいない。(2P)
※下線部筆者
高い確率が間違いないというのも、「雨が降るのは80%で間違いない」と言い切るようなもので、単なる誇張のレトリックなのだろうが、間違っている事を願っているなら、論争はした方がいいだろう。間違いを指摘されるかもしれないではないか。自分も1ブロガーに過ぎないが、承認制とは言え、コメント欄は開放している。
>ここに書く事実をほとんどの人間は知らないと確信している(3p)
これから順に批判していく(さすがに全部は無理なので、抜粋しつつ)が、基本的な事実に関しては、大したことは無いと思う。また、事実(科学的根拠)を言うなら、巻末に出典が無いことは致命的だろう。本来、厳密に事実を重んじる(間違いたくない)人はそれだけで本書を読まないと思う。今時、ウィキペディアでも出典をつけている。
>【図2】は、日本が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、一九六〇年四月に科学技術庁の委託を受けて、日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した極秘文書の表紙である。(12p)
>【図4】は、その報告書に記載された被害予測図である。(14p)
>日本全土で農業が出来ないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えていいだろう。全員が被害者になるのだから、この問題で論争をしたり、推進派と反対派を色分けしたり、自分が何処の都道府県に住んでいるかによって安全か危険かを判断する人間はよほど知恵が足りないということになる。(14p-17p)
極秘文書とやらが存在するのかどうか知らないが、論争したらよほど知恵が足りないと言う以上、絶対にその文書は存在するのであり、その文書は絶対に正しいと広瀬氏は考えていることになる。脱原発派が存在すると主張する極秘文書(しかも政府は否定している)を信用しろと言われて素直に信用するのも、知恵が足りないのではないかと思うが、被害に関して、政府・原子力産業の予測だけを信用する態度も知恵が足りないように見える。
ちなみにこれまで大事故と言えるのはチェルノブイリだけと思うが、そのチェルノブイリでも避難は30キロ圏内であり、350キロ圏内のホットスポットと言われる高濃度汚染地域で農業の停止、住民の移転が行なわれたに止まる(ウィキペディア「チェルノブイリ原子力発電事故」2011年5月14日23時)。勿論、このような大惨事は繰り返してはならないとは思うが、不思議なことに広瀬氏が口を極めて批判するのはより被害の少ないことが明らかなスリーマイル(ウィキペディア)であり、ソ連の大事故を批判せずにアメリカの事故を批判してしまうあたりが冷戦左翼頭だと思うのである。
>どのように控えめに評価しても、被害額では楽に数百倍の数百兆円を超える。
>広大な地方が消えることだけは間違いない。
残念ながら、地震により福島で原発事故は起こってしまったが、広瀬氏の大げさな煽りが間違っていたことだけは間違いない。
まず著者であるが、作家である。自分も1ブロガーに過ぎないので、だからどうこう言うつもりもないが、専門家ではないということはまず指摘しておかなければならない。作家という商売がどういうものか特別な知識は無いが、本が売れないと困ってしまう人たちなのだろうなというのは容易に想像がつく。
反原発派歴は長いらしく、著書にも「原子力の危険性を訴え続けるとともに、反原発の市民運動を展開」と書いている。(橋下知事のような事実上の)俄か脱原発派よりは手強い相手であると思う。
また、著書にある紹介文にあるタイトルでは「二酸化炭素温暖仮説の崩壊」 (2010/7/16)「世界金融戦争」(2002/11/30)「世界石油戦争」(2002/06)などのタイトル(順番は原文のママ)が目をひく。二酸化炭素温暖化仮説を攻撃してきたのは、世界的には右派と思うが(自分も例外ではない)、日本では左派もやるらしい。恐らく、長年脱原発だった絡みで、二酸化炭素温暖化説を真実と仮定すると、原子力発電の正当性を認めざるを得なくなるから、反二酸化炭素温暖化仮説に踏み込んだのだろう。
「世界石油戦争」に関しては、資源エネルギーに関心があって、自分も以前買って読んだ事がある(ただし、名前は記憶していたものの引越しの際と思うが処分してしまって今はもうない)。内容はamazonによると「激動する欧米とイスラム社会の深層を暴く、衝撃のノンフィクション」である(個人的には古い本ということもあり、残念ながら印象に残ってない)。続く「世界金融戦争」では「アメリカ帝国は崩壊の時代に入った。世界的な金融メカニズムが、膨大な人々を貧困に追いやっている。現代金融スキャンダルの主役たちを追う問題作。ビジネスマン必読。」(同じくamazon)だそうである。
ちなみに出典は忘れてしまい現時点で確認できなかった(週刊誌だったか月刊誌だったか最近読んだ覚えがある。確認できれば訂正する予定)が、広瀬氏は味噌を食べると放射能に良いと言って、健康食品を販売しているらしく(グーグル検索「広瀬隆 味噌」2011年5月14日21:00の一番目の支持派らしき人のブログにもあった。さすがにリンクは遠慮したい)、科学的根拠まで追及された批判記事があったことは付け加えておく。
この本は2010年8月に発売されており、「先見の明があった」ということで注目されているのだろうが、自分は結論から言って全然そうは思わない。
>私は、本書で、大地震によって原発が破壊される「原発震災」のために日本が破滅する可能性について、私なりの意見を述べる。しかもそれが不幸にして高い確率であることを示す数々の間違いない事実を読者に見ていただくが、内心ではそこから導き出される結論が間違っていることを願っている。(2P)
>このことに関して、論争を全く望んでいない。(2P)
※下線部筆者
高い確率が間違いないというのも、「雨が降るのは80%で間違いない」と言い切るようなもので、単なる誇張のレトリックなのだろうが、間違っている事を願っているなら、論争はした方がいいだろう。間違いを指摘されるかもしれないではないか。自分も1ブロガーに過ぎないが、承認制とは言え、コメント欄は開放している。
>ここに書く事実をほとんどの人間は知らないと確信している(3p)
これから順に批判していく(さすがに全部は無理なので、抜粋しつつ)が、基本的な事実に関しては、大したことは無いと思う。また、事実(科学的根拠)を言うなら、巻末に出典が無いことは致命的だろう。本来、厳密に事実を重んじる(間違いたくない)人はそれだけで本書を読まないと思う。今時、ウィキペディアでも出典をつけている。
>【図2】は、日本が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、一九六〇年四月に科学技術庁の委託を受けて、日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した極秘文書の表紙である。(12p)
>【図4】は、その報告書に記載された被害予測図である。(14p)
>日本全土で農業が出来ないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えていいだろう。全員が被害者になるのだから、この問題で論争をしたり、推進派と反対派を色分けしたり、自分が何処の都道府県に住んでいるかによって安全か危険かを判断する人間はよほど知恵が足りないということになる。(14p-17p)
極秘文書とやらが存在するのかどうか知らないが、論争したらよほど知恵が足りないと言う以上、絶対にその文書は存在するのであり、その文書は絶対に正しいと広瀬氏は考えていることになる。脱原発派が存在すると主張する極秘文書(しかも政府は否定している)を信用しろと言われて素直に信用するのも、知恵が足りないのではないかと思うが、被害に関して、政府・原子力産業の予測だけを信用する態度も知恵が足りないように見える。
ちなみにこれまで大事故と言えるのはチェルノブイリだけと思うが、そのチェルノブイリでも避難は30キロ圏内であり、350キロ圏内のホットスポットと言われる高濃度汚染地域で農業の停止、住民の移転が行なわれたに止まる(ウィキペディア「チェルノブイリ原子力発電事故」2011年5月14日23時)。勿論、このような大惨事は繰り返してはならないとは思うが、不思議なことに広瀬氏が口を極めて批判するのはより被害の少ないことが明らかなスリーマイル(ウィキペディア)であり、ソ連の大事故を批判せずにアメリカの事故を批判してしまうあたりが冷戦左翼頭だと思うのである。
>どのように控えめに評価しても、被害額では楽に数百倍の数百兆円を超える。
>広大な地方が消えることだけは間違いない。
残念ながら、地震により福島で原発事故は起こってしまったが、広瀬氏の大げさな煽りが間違っていたことだけは間違いない。