観測にまつわる問題

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「原子炉時限爆弾」批判(経歴と序章)

2011-05-14 19:20:09 | 日記
「原子炉時限爆弾」(広瀬隆著)という本がある。どうもこの本が脱原発派に評価され売れているらしい(ただし、5月16日付け週刊オリコンランキングBOOK総合では30位までに本書も含め明快な脱原発派の本は確認できない)ので、原発推進派(安全強化して原発を維持発展させる派)として、直接、発信源を叩いてみようと思う。ただ、本を一冊まるまる批判するとなると、量的にも大変である。何度かに分けて記事を書くことになることはご容赦いただきたい。

まず著者であるが、作家である。自分も1ブロガーに過ぎないので、だからどうこう言うつもりもないが、専門家ではないということはまず指摘しておかなければならない。作家という商売がどういうものか特別な知識は無いが、本が売れないと困ってしまう人たちなのだろうなというのは容易に想像がつく。

反原発派歴は長いらしく、著書にも「原子力の危険性を訴え続けるとともに、反原発の市民運動を展開」と書いている。(橋下知事のような事実上の)俄か脱原発派よりは手強い相手であると思う。

また、著書にある紹介文にあるタイトルでは「二酸化炭素温暖仮説の崩壊」 (2010/7/16)「世界金融戦争」(2002/11/30)「世界石油戦争」(2002/06)などのタイトル(順番は原文のママ)が目をひく。二酸化炭素温暖化仮説を攻撃してきたのは、世界的には右派と思うが(自分も例外ではない)、日本では左派もやるらしい。恐らく、長年脱原発だった絡みで、二酸化炭素温暖化説を真実と仮定すると、原子力発電の正当性を認めざるを得なくなるから、反二酸化炭素温暖化仮説に踏み込んだのだろう

「世界石油戦争」に関しては、資源エネルギーに関心があって、自分も以前買って読んだ事がある(ただし、名前は記憶していたものの引越しの際と思うが処分してしまって今はもうない)。内容はamazonによると「激動する欧米とイスラム社会の深層を暴く、衝撃のノンフィクション」である(個人的には古い本ということもあり、残念ながら印象に残ってない)。続く「世界金融戦争」では「アメリカ帝国は崩壊の時代に入った。世界的な金融メカニズムが、膨大な人々を貧困に追いやっている。現代金融スキャンダルの主役たちを追う問題作。ビジネスマン必読。」(同じくamazon)だそうである。

ちなみに出典は忘れてしまい現時点で確認できなかった(週刊誌だったか月刊誌だったか最近読んだ覚えがある。確認できれば訂正する予定)が、広瀬氏は味噌を食べると放射能に良いと言って、健康食品を販売しているらしく(グーグル検索「広瀬隆 味噌」2011年5月14日21:00の一番目の支持派らしき人のブログにもあった。さすがにリンクは遠慮したい)、科学的根拠まで追及された批判記事があったことは付け加えておく。

この本は2010年8月に発売されており、「先見の明があった」ということで注目されているのだろうが、自分は結論から言って全然そうは思わない。

>私は、本書で、大地震によって原発が破壊される「原発震災」のために日本が破滅する可能性について、私なりの意見を述べる。しかもそれが不幸にして高い確率であることを示す数々の間違いない事実を読者に見ていただくが、内心ではそこから導き出される結論が間違っていることを願っている。(2P)

>このことに関して、論争を全く望んでいない。(2P)

※下線部筆者

高い確率が間違いないというのも、「雨が降るのは80%で間違いない」と言い切るようなもので、単なる誇張のレトリックなのだろうが、間違っている事を願っているなら、論争はした方がいいだろう。間違いを指摘されるかもしれないではないか。自分も1ブロガーに過ぎないが、承認制とは言え、コメント欄は開放している。

>ここに書く事実をほとんどの人間は知らないと確信している(3p)

これから順に批判していく(さすがに全部は無理なので、抜粋しつつ)が、基本的な事実に関しては、大したことは無いと思う。また、事実(科学的根拠)を言うなら、巻末に出典が無いことは致命的だろう。本来、厳密に事実を重んじる(間違いたくない)人はそれだけで本書を読まないと思う。今時、ウィキペディアでも出典をつけている。

>【図2】は、日本が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、一九六〇年四月に科学技術庁の委託を受けて、日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した極秘文書の表紙である。(12p)

>【図4】は、その報告書に記載された被害予測図である。(14p)

>日本全土で農業が出来ないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えていいだろう。全員が被害者になるのだから、この問題で論争をしたり、推進派と反対派を色分けしたり、自分が何処の都道府県に住んでいるかによって安全か危険かを判断する人間はよほど知恵が足りないということになる。(14p-17p)

極秘文書とやらが存在するのかどうか知らないが、論争したらよほど知恵が足りないと言う以上、絶対にその文書は存在するのであり、その文書は絶対に正しいと広瀬氏は考えていることになる。脱原発派が存在すると主張する極秘文書(しかも政府は否定している)を信用しろと言われて素直に信用するのも、知恵が足りないのではないかと思うが、被害に関して、政府・原子力産業の予測だけを信用する態度も知恵が足りないように見える。

ちなみにこれまで大事故と言えるのはチェルノブイリだけと思うが、そのチェルノブイリでも避難は30キロ圏内であり、350キロ圏内のホットスポットと言われる高濃度汚染地域で農業の停止、住民の移転が行なわれたに止まる(ウィキペディア「チェルノブイリ原子力発電事故」2011年5月14日23時)。勿論、このような大惨事は繰り返してはならないとは思うが、不思議なことに広瀬氏が口を極めて批判するのはより被害の少ないことが明らかなスリーマイル(ウィキペディア)であり、ソ連の大事故を批判せずにアメリカの事故を批判してしまうあたりが冷戦左翼頭だと思うのである。

どのように控えめに評価しても、被害額では楽に数百倍の数百兆円を超える。

広大な地方が消えることだけは間違いない。

残念ながら、地震により福島で原発事故は起こってしまったが、広瀬氏の大げさな煽りが間違っていたことだけは間違いない。


メタンハイドレート、新エネルギーの切り札の実力

2011-05-14 17:01:03 | 政策関連メモ
新エネルギー確保の“切り札” メタンハイドレート採取へ実験装置導入(MSN産経ニュース 2011.5.14 12:58)

>、政府は原子力発電の比率を高めることを盛り込んだエネルギー基本計画の見直しも視野に入れており、メタンハイドレートは新たなエネルギー源として、にわかに期待が高まっている。

>東電福島第1原発の事故を踏まえ、菅直人首相は10日の会見で、平成42年までに原子力発電の割合を50%以上に引き上げることを目標にしたエネルギー基本計画について、「いったん白紙に戻して議論する必要がある」と表明。

メタンハイドレートが新エネルギーの切り札らしい再生可能な自然エネルギーではないのだが、新エネルギーには違いないので検討してみる。

メタンハイドレートは日本近海にも纏まった量で存在するため、エネルギー安全保障の観点でこれまでも注目されてきた(経産省ホームページ平成13年7月19日)。だが、実際には商業化されていない。コストがかかるからだ。開発の主体の意見ということを割り引く必要はあるだろうが専門家の意見(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム「メタンハイドレートの開発と経済性」)によると・・・

>結果としては、2004年のガス価が23.8円/m3に比べ、生産期間中のガス生産価格は46円/m3となりました。

>「原油価格が上がれば、メタンハイドレート開発の可能性が高くなる!」という噂をよく聞きますが、単純にそうは言い切れないことが分かります。

>原油価格の上昇により人件費、燃料費などが高騰し、結局は、操業費(OPEX: Operation Expenditure)建設コストを含む施設費(CAPEX: Capital Expenditure)が上昇するため、原油価格の上昇は経済性によい影響を与えますが、通常開発費も上昇するため期待するほどには良化しません。

>海洋産出試験を実施することで、より実際的な数値(パラメータ)を入手して、経済性評価の精度を向上させることもフェーズ2の重要な課題

本文中しばしば言及されているが、仮定が多い実験段階ということは間違いないだろう(「フェーズ2の実施期間は、経済産業省の方針に基づき平成21年度から平成27年度までの7年間」とされている)。やはり「期待の新エネルギー」の範疇を越えていないように見える。要は脱原発の結論ありきで、何かブチあげる必要性があったのだろう。量的に最も期待できるであろうメタンハイデレートでこの程度(再生可能な自然エネルギーでは量的に期待できない)か・・・。大層な切り札である。

日本に資源があるとなれば、中国や北朝鮮も頑張ってしまうということも考えられなくも無い。

それはともかく、埋蔵地域(ウィキペディアファイル:Methane hydrate around Japan Ilands.PNG)で気がかりな事がある。そう、東部南海トラフ・南海トラフにあるということだ。おなじみの最も警戒されてきた震源地帯ではないのか?

メキシコ湾原油流出事件を思い出さなければならない。あの原油流出事故で環境が破壊されたことは記憶に新しい。果たして大地震の根源地帯で安全な採掘は可能なのだろうか?地震を受けた代替エネルギー問題で、メタンハイドレートが浮上するとは皮肉なものである

これは噂程度のようだが、メタンハイドレートで温暖化が加速するという説もネット上でまことしやかに飛び交っていることも付け加えておく。

脱原発、後は野となれ山となれではダメなのである。脱原発派は責任をもって考えていただきたい。もしくは、現実的に脱原発のプランを立てられる人を探すことだ。

橋下氏肝いり庁舎の危険性(拙速な判断が禍根を残す)

2011-05-14 15:34:41 | 注目情報
橋下知事肝いり庁舎、想定津波なら機能喪失 本移転見直しも(2011.5.13 14:39 MSN産経ニュース)

>府の依頼で咲洲庁舎の被害を想定したのは、関西大学社会安全学部の河田恵昭学部長(社会安全学)。

咲洲庁舎は、地下2階に電気・通信系統の基幹設備が集中。浸水すると、庁舎全体に電気を送る特別高圧変圧器3基のほか、電話回線や光ファイバーなどの通信機器だけでなく、停電時に備えた自家発電機2台も使用不能になり、庁舎機能がマヒする可能性がある

東日本大震災の長周期地震動とみられる揺れの影響で、高層の咲洲庁舎はひび割れなど約360カ所で被害が出た。府は、補修と同時に、耐震補強や、津波対策として自家発電機を3階に移すことを検討。約33億円の予算を見込む。周囲を防潮堤で囲む案も検討したが、まちづくりに影響するため、難しいという。

河田氏は「咲洲への本庁舎移転構想が出たときから危険だと反対してきた。全面移転すれば、大津波が来たときに府は行政としての機能を喪失し、大混乱に陥るだろう。本庁舎は移転せず、現在の場所で建て替えるべきだ」と話している。

どうやら橋下氏肝いりの庁舎はとても危険だったようだ。臨海地域の地下に通信機器はおろか非常用電源も集中させるとは!こんなことでは防災拠点として不適格なのは言うまでもない(東北の地震でひびが割れるような関西の建物など論外である。国は素直に反省し耐震基準の見直しをしっかりしておくべきではないか)。橋下氏の防災に関する判断力は極めて怪しいということになるだろう。こういうことがあったから、狼狽して極端(防災無視)から極端(脱原発)に走ったのかもしれない。脱ダム(槙尾川ダム)の判断も怪しいものだ。

原発“中断”発言の橋下徹大阪府知事に福井県知事かみつく(MSN産経ニュース 2011.5.13 20:15)

大阪府の橋下徹知事が原子力発電所の新規建設や稼働期間の延長をしないための府民運動を展開するとしていることについて、原発14基を抱える福井県の西川一誠知事は13日の定例会見で、「関西の55%の電力が福井から供給されていることを、関西の自治体、消費者はわきまえてもらいたい」と反論した。

日本において脱原発運動を展開してきたのは左翼である。仲間に入れてもらえばどうだろうか。お得意の嘘なのかもしれないが。

更に言えば、新規建設をせずに稼動機関を延長しなければ、古い原子力発電所から順次止めていくことになり、将来もエネルギー使用量が増えないと仮定しても、55%もの電力を何かで代替するということになる。お分かりだろうか。日本はこれまでも新エネルギーには力を入れてきたので、現在の常識的な見込みでは、これを新エネルギーで代替できるということは考えにくい。せいざい5%くらいではないのか。そう考えると、橋下発言は火力発電所倍増計画に等しいということになる(経済を半分に縮小する計画でなければ)。何処に何を造ることを想定したのか知らないが、そもそも知事はエネルギー政策に首をつっこみすぎるべきではない。国のチェック機能と電力会社の判断が重要なのだ。ちょっと反対してみれば人気がとれそうだみたいな浅い考えで介入してもらっては困るのである。

橋下知事の長所としてスピード感が言われる事があるが、これは拙速だし、視野が狭いとも言っていいだろう。知事の判断は後世に長期的な影響を残す。しっかりしたブレーンに相談し、長期的な展望のある判断を政治家は下していくべきだと考える。

自滅するみんなの党、規制強化の訴え

2011-05-14 11:34:12 | 政治システム・理論
みんなの党が「原発緊急点検法案」骨子を発表(MSN産経ニュース 2011.5.13 18:27)

>みんなの党の渡辺喜美代表は13日の記者会見で、原子力発電所などすべての原子力施設を緊急に点検し、内閣か国会が安全上必要があると判断すれば使用停止を命じることができる「原発緊急点検法案」の骨子を発表した。

※下線部筆者

国会が使用停止を命じることが出来るというのがキモなのだろう。行政は政府の役割なのであって、国会の役割ではない。個別企業への強権発動を国会なんかに認めたりしたならば(国会議員がどれほど信用できるというのか?)、政治発の混乱がまた更に増えるだけ。原子力なんぞなんにも知らない国会議員が安全点検を命じて一体全体どんな意味があるというのか?こんなものは首相なり経産大臣なりが専門家の助言を受けて判断するしかないだろう。いくら首相に問題があるとしても、山ほどいる専門的に無知な国会議員の判断で強権発動なんかしたら、余計悪いのは火を見るより明らかだ。どうせ何も知らないのをいいことに危険でないものを勝手に止めて首相に対するカードにするに決まっているそういう面白いショーが国をガタガタにするというのは、ねじれ問題で国民にも分ったと思う。政治システムの機能不全は国を滅ぼす元なのだ。

ちゃんちゃらおかしいのは、小さな政府を標榜するみんなの党が民間企業への規制強化を言い始めたこと。アジェンダとやらは何処行った?これでは嘘つき呼ばわりされてもしょうがない。民主党があると言ってなかった財源をあくまであると主張しているのがみんなの党だが、その言葉の信頼性はこんなものである。小さな政府派は規制には慎重であるべきなのであり、ましてや自分のところに権限を持ってくるというような浅ましい考えではいけない。(以下みんなの党ホームページ→政策「みんなの党 アジェンダ みんなの党の理念」より抜粋)

>求められることは、はっきりとした路線を特定の団体や組織・組合のためでなく国民全体のために政治が掲げることです。議論されるべき路線としては、「大きな政府」か「小さな政府」か、「配分重視」か「活力重視」か、「日米中正三角形」か「日米同盟基軸」か、という国の根幹に関わることです。みんなの党は、小さな政府、活力重視、日米同盟基軸です。
ここを、はっきり言わず両方の良いとこ取りの「第三の道」という主張もありますが、我々はあぶはち取らずの「第三の道」とは決別し、はっきりとした路線を打ち出します