観測にまつわる問題

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脱原発の理路はアメリカに言われたからなのか?

2011-05-24 23:51:18 | 日記
内田樹の研究室「脱原発の理路」(2011.05.20)がちょっと面白かったので、言及。当人が方針を示さない限り、個人ブログにはリンクを貼りたくないので、見たい人は勝手に検索して見ること。

リーク云々のマクラ(マスコミはインサイダー)に関しては、そうなのかもとは思う。まぁ、自分が知るよしはなく、人脈のある内田氏のような人が書いてくれると面白いかなと言った程度。

で、やはり本題の浜岡停止(英断とは思わない。内田氏は脱原発なので英断としているだけである)だが、菅首相の抜き打ち要請を再考しておくと、やはりアメリカの要請が全てとするのは極論で無理がある。内田氏も言及しているように官僚は原発をやりたいのであれば、菅首相にはアメリカの要請を無視するというオプションはあった(不思議と菅おろしが激しくなるかもしれないが)。

ところで、内田氏は気付いてないらしいが、アメリカは浜岡以前最初から少なくとも暗に脱原発の流れを創ろうとし続けていた。内田氏が言うように脱原発はアメリカの国益であるからなのだろう。「誰にでも分りそうなこと」をアメリカが浜岡停止近辺でふと気付いたわけがないことは内田氏も分ると思う(アメリカがそういう流れに持って行く動機があること、アメリカに世論操作をする実力があることが分る内田氏は、指摘されれば、早い段階からアメリカからの脱原発の働きかけがあった蓋然性があることは理解できると思う)。自分が観察する限りでは、タイミング的には地震直後から(!)なのだが、証拠が無いのでそれは声高には言わない。

つまり、菅首相は本当に鈍感でない限り、アメリカの意向は最初から知っていたと思う。タイミングが最近になったのは事故対応がひと段落してから浜岡停止というスケジュールに沿ったものであるのだろう。まさか事故対応の最中に浜岡停止とかやってられない。

ここで気をつけたいのは、菅首相・アメリカの思惑と官僚(少なくとも一部)の思惑にズレがあることである。菅首相が抜き打ち「政治主導」で「要請」したのは、官僚(少なくとも一部)に邪魔されないためだということは誰にもで分るだろう。そしてそういう官僚の意向は、首相が真性鈍感でもない限り、始めから分っていた。

そして手前味噌という程のことでもないありきたりすぎる知識だが、菅首相は市民運動化出身(内田氏を含め、左翼=脱原発の図式はこと日本では鉄板に近い)であり、原子力専門家を自認している。浜岡のことを知らなかったはずがないと思うのだが如何だろうか?右翼で非専門家の自分が知る事をまさか首相が知らないとは信じられないのだ。

結論を纏めるとこうだ。菅首相は浜岡のことはそれこそ大昔から知っていた(反対運動しているお仲間ぐらいいるだろう)し、アメリカの意向も知っていた。両者は結託し、官僚を出し抜いて、原発対応がひと段落ついた後、おもむろに浜岡停止に持っていった。浜岡停止は急がなくても逃げていかない。自分達でやるからだ。

一応弁解しておくと、自分が首相が左翼であることを強調したのは、アメリカ圧力説の説得性ある「証拠」が揃わなかったからに過ぎず(あやふやに言うと逆に信憑性を落とすリスクがある)、後で訂正したのは(今回もそうであるように)他の人が言ったから便乗したまでである。いや自分も知っていたけど・・・なんて書くと言い訳がましいという常識ぐらいはあるのである。

というわけで、内田氏の提示するアメリカ説(自分は全部アメリカ説は誤りと思うが、多分内田氏は自分を含め左翼=脱原発の明らか過ぎる図式を客観視できていない)の状況証拠が面白いので吟味していこうと思う。

>菅首相が浜岡原発の停止を要請し、中部電力がこれを了承した。政治的には英断と言ってよい。メディアも総じて好意的だった。でも、なぜ急にこんなことを菅首相が言い出し、中部電力もそれをすんなり呑んだのか、その理由が私にはよくわからない。経産省も電力会社も、「浜岡は安全です」って言い続けてきたのだから、こんな「思いつき的」提案は一蹴しなければことの筋目が通るまい。でも、誰もそうしなかった。なぜか。

自分の考察で行けば、菅首相は始めから浜岡停止にイエスだったし(福島の対応で忙しかったのだ)少なくともその提案に好意的になる土壌はあった。だから「要請」したのである。何の不思議も無い。アメリカが味方でメディアが動いて世論の評価が得られるのなら、筋目なんかゴミのようなものなのだろう。筋目を重んじる人間でもない限り(筋目と言う言葉が適切かどうかは知らないが、自分は自分の意見を重んじている。自分の意見は自分が一番良く知っており最も自分にとって信頼できるからだ。要するに自分は内田氏の言う筋目を重んじるタイプであるが、日本人は少なくとも相対的に概ねそうではない人が多いだろうと言いたい)。

経産省は程度問題だが、「筋目」(国益と思うが)を重んじただろう。首相周辺が「政治主導」で要請したには理由があるのである。内田氏が三位一体であるかのように言うのは、ニュースをよく読んでいないのではないかという合理的な疑いがある。更に言えば、この抜き打ちの手法はタイミング的にビンラディン掃討戦にかぶるのが象徴的。

電力会社はもうしょうがない。政府(+アメリカ)には逆らえまい。一蹴もへったくれもないことは常識中の常識としか思えない。自分は原発支持側だから、何とか英断(安全に自信があればだが、「要請」を蹴ること)を下してもらえまいかと記事を書いたまでである。

「思いつき的」提案のカッコが自分の使い方のように本当はそうではないが(ここではスケジュールだが)という意味であれば、そこは当たっていると思う。強調表現であれば、これまで述べてきたように思い付きじゃないんじゃないということである。誰もそうしなかったというのも、官邸が抜き打ちで言って(内田氏も後で指摘するように)メディアが翼賛したら、中々覆すのは難しいよねということである。つまり、何故かと言ってみたところで、前提の段階でほとんど総崩れであるからその問自体に意味は無い。

が、内田氏も言うようにアメリカの要請はあっただろう。自分が知らなかった知識があり、面白いと思ったのはここからである。

>福島原発の事故処理ではフランスのアレバにいいところをさらわれてしまい、アメリカは地団駄踏んだ。

経産省の頑張りかどうか知らないが、官僚はアメリカの意向ぐらい知っていたし、合理的な決断を下しただろう。そして、この官僚の頑張りが浜岡の停止が「政治主導」になる伏線なのだろう。後付だが。

>(1)第七艦隊の司令部である、横須賀基地の軍事的安定性が保証される。

言われてみれば。浜岡は安全と思う(思いたい)が。

>(2)原発から暫定的に火力に戻す過程で、日本列島に巨大な「石油・天然ガス」需要が発生する。石油需要の減少に悩んでいるアメリカの石油資本にとってはビッグなビジネスチャンスである。

オバマ政権にとっては後付け的か?政敵(共和党)の資金源の面はあると思う。

>(3)日本が原発から代替エネルギーに切り替える過程で、日本列島に巨大な「代替エネルギー技術」需要が発生する。代替エネルギー開発に巨額を投じたが、まだ経済的リターンが発生していないアメリカの「代替エネルギー産業」にとってはビッグなビジネスチャンスである。

オバマ政権のクリーンエネルギー推進は自明。ただ、日欧の競争力も強いと思う。

>(4)スリーマイル島事件以来30年間原発の新規開設をしていないせいで、原発技術において日本とフランスに大きなビハインドを負ったアメリカの「原発企業」は最大の競争相手をひとりアリーナから退場させることができる。

自明。ブログには書いてなかったと思うが(これだけでは記事にするほどでもないから)。

>(5)54基の原発を順次廃炉にしてゆく過程で、日本列島に巨大な「廃炉ビジネス」需要が発生する。廃炉技術において国際競争力をもつアメリカの「原発企業」にとってビッグなビジネスチャンスである。

廃炉技術云々は知らない。オバマ政権は原子力産業の支援があるから、(4)は分っていたが、なるほどと思う。

>たぶん日本はこれから脱原発以外に選択肢がないだろうという客観的な見通しを持っている。

客観的な見通しと言うなら、証拠を出せるはず。

>決定的な国策の転換でさえも、アメリカの指示がなければ実行できない、私たちはそういう国の国民なのではないかという「疑い」を持ち続けることが重要ではないかと申し上げているのである。

疑うだけでは駄目。少なくとも日本の国益を言えるようになって始めて保守と言える。リベラルには関係ないのか知らないが。日本国の主人は日本人なのだから。

「日本の国境問題」批判(尖閣諸島編1)

2011-05-24 00:32:13 | 政策関連メモ
「日本の国境問題」(ちくま新書)(孫崎享著)という本が出た。国境問題は何度も当ブログで扱ってきたテーマであり、元外務官僚という立場の著者が問題のある内容の本を出したと考えるので、ここで批判しておく。量的に何度かに分割せざるを得ないのはご容赦いただきたい。

第一章32p~35pに「有利な条件を自ら覆す日本」とのタイトルで文がある。尖閣諸島を取り上げ、日本が自滅したと言っているのだ。専門家に対し失礼だが、この人はとんでもない安全保障オンチではないだろうかという疑問が拭えない。

>周恩来首相が一九六九年九月三〇日、国慶節レセプションで「我々のほうから戦いを挑むことをしないと演説したのは極めて重要な意味を持つ。(34p)※アンダーラインは孫崎氏強調部分

>中国側が「一発の銃声を発し」、「日本側が仕掛けた」と言って紛争に持ち込み、尖閣諸島を取り込む可能性は十分ある。(24p)

中国側から仕掛ける可能性を指摘しておきながら、周恩来首相の「我々のほうから戦いを挑む事をしない」という言葉を極めて重要な意味を持つとしている。大丈夫なのだろうか?我々から攻めないなどという言葉に大した意味があるとは思えない。何故なら、自分で言っている通り、攻められたとか言って攻めて来る可能性が十分あるからだ。今回の事件だって、ぶつけてきておいて、日本に全責任があるとし、国内では日本からぶつけてきたと情報を流しているのだが、分っているのだろうか?

>日本は次第に「尖閣諸島棚上げ、実質日本の管轄を容認」という日本に有利な決着を、自らの手で放棄していく。そのピークが二〇一〇年の尖閣諸島での中国漁船船長逮捕に繋がっていく。(35p)

>棚上げは決して中国に有利な解決手段ではないことである。棚上げは日本の実効支配を認めることだからだ。かつ中国側は実力で日本の実効支配を変更する事を求めないことを意味する。(73p-74p)

>領土問題で重要なのは一時的な解決ではない。(45p)

棚上げは棚上げ。氏が中国側が言ったと書いているのだが、「一時的に棚上げし子孫に残して解決させる」という意味でしかないだろう。自身で重要でないとする一時的な解決に拘る孫崎氏の考えは分らない。一方中国の狙いはとても分り易い。豊かになって日本に追いつけば棚上げを解除するということである。その際、実力で日本の実効支配を覆すことも十分考えられる。日本が攻めてきたと言えばいいのだから。厚かましくも自分でぶつけてきておいて人のせいにできる国は何でも言える。また、中国漁船の取り締まりが出来ない状態を中国が日本の実効支配を認めていると言える状況なのかは怪しいものだ。ロシアや韓国なら、絶対に取り締まるはずである。なるほど日本は事実上実効支配を認めてしまっている。しかし中国はそうではない。だから騒動になっているのである。また、船長を逮捕するのが不利だったとする意味が不明である。逮捕しなければ、ぶつけたい放題ではないか!そうなると寧ろ戦争の確率が高まるとしか思えない。ぶつけて我慢している相手など、「日本側が仕掛けた」と主張して攻め込めば、脱兎の如く逃げると見るのが中国ならずとも普通の国際的な見方と思う。

以下続く(問題箇所が多く長期戦の予定)