トラウマとフルインクル(その87)
A:『私たちは骨の髄まで社会的な生き物だ。』
B:『私たちの人生は、人間のコミュニティの内部に居場所を見つけることから成る。』
C:『どの人生も、利用可能な手段のいっさいによってまとめ上げられた、一つの芸術作品である』
これらの言葉にうなずけるなら、私たちはなすべきことは―――何か。
社会全体を変えることより、まずは子どもたちの社会を変えることだ。
社会から差別をなくすことは難しいが、差別を学習する前の子どもたちのために、学校が誰にとっても安全な場所に変えることは可能だ。
X= 「ふつう学級」を、誰にとっても安全な場所に変えること。
Y= 「ふつう学級」から、個別で「安全」な場所を用意してあげること。
この二つは対立しない。
XもYもABCのための場所である。
だから「個別でいることのできる居場所」は、「一時的な場」であるときに意味を持つ。
『私たちは骨の髄まで社会的な生き物だ』から。
『私たちの人生は、人間のコミュニティの内部に居場所を見つけることから成る。』から。
『どの人生も、利用可能な手段のいっさいによってまとめ上げられた、一つの芸術作品である』から。
一時的な場所、緊急避難の場所が、永住の場であった時代、障害者は社会に出ていくことができなかった。
多くの事件があり、今がある。
それが、私たちが歴史から学ぶことだ。
◇
施設ではなく、社会で「自立生活」をしている「障害者」が伝えていることは何か。
その言葉に真摯に耳を傾けること。
それが、私たちが子どもたちのために、私たちができることの第一歩だ。
私自身が、子どもたちにとって、安全な記憶の人でいられるために。
私たち自身が、子どもたちの人生にとって、安全な社会の大人であるために。
◇
【子どものころに養育者から残忍な仕打ちを受けていた患者は、誰といても安全だと思えないことが多い。
私はよく患者に、児童期にいっしょにいて安心できた人を挙げてみるように言う。
多くの患者は、これまでただ一人だけ気遣いを示してくれた教師や隣人、店の人、コーチ、あるいは聖職者の記憶を、しっかり持っている。
そしてその記憶はしばしば、物事にもう一度携わるための種(たね)となる。
私たち人間は、可能性に満ちた種(しゅ)だ。
トラウマに対処するというのは、損なわれたものに取り組むことだけではなく、どのように生き延びたのかを思い出すことでもある。
いっしょにいて安全だと感じた人がまったく思い浮かばない患者もいる。
彼らにとっては、馬や犬とかかわるほうが、人とかかわるよりもずっと安全なのかもしれない。】(348)
【私たちの人間性の土台、すなわち幼いときに私たちの心と脳を形作り、全人生に実体と意味を与えてくれる人間関係と相互作用を無視しないこともまた重要だ。」(276)
(「身体はトラウマを記録する」ベッセル・ヴァン・デア・コークより)
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