「一国二制度と国家分裂」

2020-07-02 11:40:03 | 従って、本来の「ブログ」

         「一国二制度と国家分裂」


 そもそも「一国二制度」とは「国家分裂」そのものではなかったか?

もしも、宗主国イギリスが「一国二制度」の制限の下での香港返還を容

認することによって香港の民主政治が中国本土に影響を及ぼすことを期

待したとすれば、たぶんそれは中国人民へ見過ごせない影響を及ぼした

から、中国共産党独裁政権は「一国二制度」の約束を破棄したのではな

いか?つまり、一方で差別的な管理社会があり、一方では自由社会が認

められているとすれば、同じ政府の下で統制できないことは火を見るよ

り明らかだったはずだ。そもそも中国共産党独裁政権は「一国二制度」

による高度な自治を受諾することによってとにかく香港返還を優先させ

たかったに違いない。つまり主権さえ認められれば「一国二制度」など

どうにでも改められると思っていた。ロンドン政治経済大学国際関係学

部教授Michael Yahuda氏によれば、「英中共同声明は中国とイギリスと

の間のきわめて長期にわたる交渉から生まれたもので、中国は香港特別

行政区(SpecialAdministrative Region 以下SAR)の成立から50年間は

一国二制度を遵守しなければならない。そしてこの共同声明は国連でも

承認されており、国際条約上の拘束力もある。」しかし当時のイギリス

政府の「リフキンド外務相が、中国政府が期待通りに共同宣言を守るか

どうかが心配だと述べたことがある。」と記している。つまり、すでに

返還時からそれは危惧されていたのだ。そして「約束が破られた場合を

考えると問題はかなり深刻である。まずはアメリカ、日本やその他のア

ジア諸国との外交関係が急激に悪化するに違いない。特に台湾の不信度

がかなり増加するであろう。」と、いま正に起こっていることは返還時

にはすでに予見されていた。

『Business & Economic Review 1997年07月号』【(特集 香港返還)】
イギリスから見た香港返還 1997年06月25日 ロンドン政治経済大学国
際関係学部教授 Michael Yahuda 
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=16541

 私は、一連の香港問題を聞くにつけ、中国政府が世界から不信の目を

向けられても断じて約束を反古にしなければならないほど余裕を失って

いることに不安を感じる。何故なら、他者からの批判は孤立化した彼ら

の信念を頑なにするからだ。
 
                          (おわり)