「あほリズム」(883)

2022-02-10 23:22:27 | アフォリズム(箴言)ではありません

    「あほリズム」

 

      (883)

 

 ニーチェ著「悦ばしき知識」信太正三訳(ちくま学芸文庫)より

        第三書

        124

『無限なるものの水平圏内で。――われわれは陸地を後にして、舟

に乗り込んだのだ!われわれは背後の橋梁を撤去した――と言うよ

りむしろ、戻るべき陸地を撤去したのだ!いざ、小舟よ!心せよ!

お前のかたわらに広がるのは太洋だ。まこと、太洋はいつも吼え立

ててばかしいるのではない、おりおりは絹かのように金かのように

好意の幻夢のように臥していることもある。けれども、それが無限

であるのを、そして無限にまさる怖るべきものの何一つないのを、

お前が認める時が来るであろう。ああ、身の自由を感じたのに無限

というこの鳥籠の壁につきあたっている、哀れな鳥よ!そこにはさ

らに多くの自由があったとでもいうように、陸地への郷愁がお前を

襲うとしたら、いたましいことだ!――もう「陸地」はどこにも無

いのだ!』