「あほリズム」(885)

2022-02-16 06:18:53 | アフォリズム(箴言)ではありません

       「あほリズム」

 

        (885)

 

 アメリカ軍が撤退した後にイスラム原理主義組織タリバンが実効

支配するアフガニスタンで、経済が破たんして貧困が深刻化してい

るというニュースを聞く時、「そりゃあ、超保守的なイスラム教原

理主義の教義を優先する限りそうなるわな」と思ってしまうが、翻

って日本経済は30年の長きに亘って低迷したままだと聞けば、少

なくとも今われわれの目に見えている社会的課題、たとえばジェン

ダーフリーや男女共同参画社会、さらにはデジタル化への転換など

、社会変革を望まない既得権益に与る保守的な人々の反対によって

遅々として前へ進まない現実を見れば、どの国の保守的な人々も経

済よりも守るべきことがあると思っているのかもしれない。経済成

長とは今の社会を企投して新しく地平を拓くことだとすれば、伝統

に縛られていては何も変えられない。かつて三島由紀夫は、昭和4

5年7月7日(1970年) 産経新聞に「果たし得てゐない約束――

私の中の二十五年」という文章を寄稿した。その中で、

「このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないかとい

う感を日ましに深くする。日本はなくなって、その代わりに、無機

的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がな

い、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう。それでもいい

と思っている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなっているの

である。」と嘆き、その年の11月25日に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯

地にて割腹自殺した。

 すでに「日本」という国はアメリカと中国が奪い合うボールのよ

うな存在で、国家としての意志などとうになくなってしまったが、

私は「或る経済的大国」として残るのであれば、それでもいいとさ

え思っているが、しかし、今やそれさえもなくなってしまおうとし

ているのであれば、伝統文化などと言ってる場合じゃないだろう。

ところで、わが国はすでに中国と入れ替わって三流国になろとして

いるが、中国共産党が少なくとも経済的に成功した原因は伝統文化

を破壊してデジタル社会しか残されていなかったからである。ニー

チェの箴言を借りれば、「われわれは陸地を後にして、舟に乗り込

んだのだ!われわれは背後の橋梁を撤去した――と言うよりむしろ

、戻るべき陸地を撤去したのだ」「もはや戻るべき『大地』はどこ

にも無いのだ」。爪に火を灯す暮しに「みやび」もないだろう。