「超国家主義(スープラ・ナショナリズム)」
そもそもEU(欧州連合)とはヨーロッパで繰り返されてきた戦争
をなくすために、国家をなくせば戦争する相手がなくなることから
国家を超えた組織を創設しようとして生れた。もちろん、有史以来
それぞれの民族がそれぞれの国土の下で培われた伝統文化は守られ
た上で統治権は制限されることになるが、それ以上に国境がなくな
ることによる個人の行動の自由とそれから生まれる自由主義経済が
もたらす豊かさは広がった。ただ当然のことながら、単に国家を連
合すると言っても何よりも繋がり合える共通の土壌がなければなら
ないが、ヨーロッパの国々は有史以来キリスト教伝統文化を共有し
て育んできたことがその礎となった。たとえば、キリスト教国がイ
スラム教国と国境をなくして連合することはまずできないだろう。
しかし、かつて我が国は「八紘一宇」の理想を掲げて侵略したアジ
アの植民地を、神格化された天皇の下に統治しようとしたが、どの
国も押し付けられた日本固有の国家神道を受け入れるはずがなかっ
た。こうして大日本帝国が目指したAU(アジア連合)は理想として
はEU(欧州連合)の先駆けではあったが、現実を見誤った天皇制帝
国主義は終戦と共に消滅した。
さて、一方で社会主義国家ソビエト連邦の下で自由を制約されて
きた東欧諸国の人々にとって自由と民主主義を掲げるEUの誕生は
渡りに船だった。ヨーロッパの周辺諸国の多くが雪崩を打って加盟
したが、取り残されたのは旧ソ連と国境を接する繋がりの浅からぬ
国だけで、その一つがウクライナだった。そのウクライナのEU加
盟だけは地政学的な防衛上からも絶対認めることができないロシア
によってウクライナ侵攻が行なわれた。
酔ったので(つづく)