【2011年9月18日(日曜日)】 MOVIX京都
いつも一人で肩の凝りそうな映画ばかり見ているので、たまには娯楽映画でも見ようと物色していたら、意見が一致したので連れ立って出かける。
一応、日中戦争から太平洋戦争の開戦前夜という歴史的背景を踏まえているが、『娯楽映画』である。
中国にはまだ一度も行ったことがないし、中国の歴史も高校で少しかじっただけでまとまった知識など無いから、むずかしい話は抜きにしてリラックスして見ようと思うが、やはり《実際の中国の近代史を知っていたほうが、いいのでは》という興味がくすぐる。
ストーリは、各国が中国に進駐し、勢力争いでしのぎを削る中、日本人租界でアメリカの諜報員が殺される。その真相を調査に別の諜報員が上海にきて探るが、その背後に上海を支配する財閥とその妻、アヘン中毒者、日本の特務機関が入り乱れる。
殺害された米諜報員は、何か重大な情報をつかんでいた。その時点で日米は開戦していなかったが、『真珠湾攻撃』に関する動きを察知したことを暗示している・・・。
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中国に関する知識は『中国の映画』経由がほとんどだ。チャン・イーモウ(張芸謀)の『初恋のきた道』、『あの子を探して』、『至福のとき』や、謝晋の『芙蓉鎮』、『乳泉村の子』、『阿片戦争』、チェン・カイコー(陳 凱歌)の『さらば、わが愛/覇王別姫』、『北京バイオリン』、張楊の『こころの湯』、『胡同のひまわり』、メイベル・チャンの『宋家の三姉妹』などで、『芙蓉鎮』は特に印象深い映画だった。でも、歴史的背景を垣間見ることのできるのは限られている。
山本薩夫の『戦争と人間(3部作)』を見て《日本は中国に対して野蛮なことをしてきた》くらいのことしか知らない。山崎豊子の『大地の子』を読んで、中国の人民はひどい仕打ちを受けたのに、そんな野蛮な行為をして逃げていった日本人の子をかくまい育てるという、中国の風土、人々の心の広さを感じたものだった。
最近の中国は経済も発展し生産力もGDP(GNPでも同じ)では日本を追い抜きアメリカについで世界第二位となっている。そんな国力を背景にしてか、日本を含め近隣諸国との領土問題で軋轢を増している。先日の『列車事故』の扱いを見ても、ちょっと最近、いやなイメージが多くなってきた印象がある昨今だ。
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この映画には、コン・リーやらチョウ・ユンファやら渡辺謙といった豪華俳優を配しているのに、スリルにもサスペンスにもちょっと中途半端な感じ。ストーリー展開にきれもないし思わぬどんでん返しもない。
上海に限らず、当地の財閥や軍属が日本の侵略によりその地位を脅かされ奪われた結果、民衆と共に抗日運動の中心になるというかとはよく話に聞く。父親を日本兵に殺された財閥の娘が地下組織で戦闘的な役割を果たすというのもよくある。(今回の映画のコン・リーもそんな役回りだ)
でも、どうしても現実にはあり得ない不自然さが目についてしまう。冷血無情であるはずの特務機関のタナカ大佐がどうして最後のシーンだけ人情的になって涙を流したり、捕らえるべき敵を見逃すのか、暗黒街のボスがどうしてその妻を自由に泳がせるのか。
爆弾が飛び交う中を、どうして主人公だけが生き残るのか。
映画をみて、何か新しい歴史的真実なり、新しい歴史的解釈を得られたかというとそうでもない。
「そんな堅いことを言わずに、楽しめよ」という声も聞こえないでもないが、今回の映画はどっちつかずで、どうもこの手の映画は苦手である。
娯楽映画ならそれに徹した方がよかったか。(その点『ツーリスト』は楽しめた!)
『シャンハイ』-公式サイト