【 2020年10月1日 】 京都シネマ
はじめは、看護師の鑑と言われるナイチンゲールの話と思いきや、チラシを見ておかしいなと思いつつ、野生動物や小鳥の話でもない。チラシ解説で興味を持ち、見てみたらタイトルからは全く想像もつかない過酷な話だった。
いったい、いつ頃の話なのだろう。
【1788年からアメリカに代わり流罪植民地としてイギリス人の移民が始まり・・・ほとんどが貧困層の人間であった。また、当時は軽犯罪でも当地に流刑され・・・
1828年にイギリスの植民地になり、先住民族であるアボリジニは白人による娯楽としての狩猟(スポーツハンティング)の対象となり虐殺された。その後もオースト
ラリア政府の政策によりタスマニア島を含むアボリジニの人口は激減した。・・・1901年にはイギリスから独立してオーストラリア連邦となっている】
とウィキペディアにあるから、その間-1800年代の中頃-の話なのだろう。
アイルランド人を奴隷のように扱い、先住民である(タスマニア)アボリジニを家畜のように扱う流刑地タスマニア島が映画の舞台であるが、この映画には「イギリス王国によるアイルランド民族の支配・虐待の歴史」と「白人による先住民への蔑視と隷属支配・暴虐」の2つが同時に織り込まれている。
話の筋は、公式サイトから引用した下記の《STORY》に概略が書いてある。
主人公であるクレアとその夫はアイルランド人とあるから、新たなイギリスの植民地となったオーストラリアに夫エイデンと共に送り込まれ、そこで軽微な罪を犯しタスマニアに流刑になったのだろうか。監視役の英国軍将校のホーキンスは刑期が済んだにもかかわらず、解放せず自分の意のままして、異議を申し立てた夫の生まれたばかりの赤子と共に殺してしまう。
復讐の念に駆られたクレラは、夫から1つだけ残された馬に乗り、現地人の案内人を1人だけ連れて、先に旅立ったホーキンスらの後を追う。
イギリスとアイルランドの関係は、一方が他方を無条件に支配する差別と支配・服従の関係である。イギリス(イングランド王国)は、ピューリタン革命に端を発する宗教問題から1649年にクロムウェルをアイルランドに攻め入らせ、これを征服したが、以来争いが絶えない。アイルランドの独立運動も起きたが、イギリスは1800年にアイルランドを併合してしまう。ちょうど第二次世界大戦の前夜、日本が挑戦を朝鮮を併合したように。
1845年には主食であるジャガイモの不作で大飢饉が起こりアイルランド農民は大打撃を受けたという。本国イギリスでは産業革命が起こり都市部に富が集中し始めたというのにである。マイケルコリンズなどが中心になり独立運動が盛んになったのもこの頃からだ。
もう一つの支配と差別または蔑視の関係は、タスマニアの先住民・アボリジニと白人との間にもあった。指揮官ホーキンスは自分の昇進のために島の反対側にある駐屯地に出るのに、密林の山を越えなければならない。道案内に土地を知り尽くしたアボリジニ(映画の中では黒人と呼んでいたが)を同行させなければならないのだが、その振る舞いは人間とは思われない家畜のような扱いである。復讐の念に駆られそれを追いかけるクレアも当然道案内が必要で。黒人の同行を拒否するが女性一人では無理と分かり、渋々同道させるが、やはり若いアボリジニのビリーを見下していた。虐げられているものが更に別の人間をさげすむ人間社会の複雑さを感じさせる。農民の下に敢えて《(エタ)》という身分を作ったように、【下には下がある】と人の意識をコントロールする支配者側の狡猾さと、それに踊らされる人間の浅ましさを感じさせらる。
ナイチンゲールという響きからはとても想像できないような、残虐で激しい描写と共に、民族間の果てしないいがみ合いと、利己心にとらわれた人間の醜さとをさらけ出している。
現在も、イギリスのEU離脱に象徴されるように、北アイルランドの扱いを含め、アイルランド紛争はいまだにくすぶり続けている。一方、自由な地を求めて多くのアイルランド人も移民していった新天地だったアメリカ(合衆国)でも黒人への暴力を伴った差別問題は解決どころか、一部ではますます尖鋭化している。
かつて見た映画で、イギリスとアイルランド問題に関しては『麦の穂をゆらす風』(2006年、ケン・ローチ監督)が、イギリスのオーストラリア統治に関係するものとしては『オレンジと太陽』(2012年、ジム・ローチ監督)が特に印象に残っている。併せてみたい映画だ。
映画『ナイチンゲイール』-公式サイト
『麦の穂をゆらす風』-に関するマイブログ
『オレンジと太陽』に関するサイト
(2012年4月に見ているが、マイブログは書いていなかった)
はじめは、看護師の鑑と言われるナイチンゲールの話と思いきや、チラシを見ておかしいなと思いつつ、野生動物や小鳥の話でもない。チラシ解説で興味を持ち、見てみたらタイトルからは全く想像もつかない過酷な話だった。
いったい、いつ頃の話なのだろう。
【1788年からアメリカに代わり流罪植民地としてイギリス人の移民が始まり・・・ほとんどが貧困層の人間であった。また、当時は軽犯罪でも当地に流刑され・・・
1828年にイギリスの植民地になり、先住民族であるアボリジニは白人による娯楽としての狩猟(スポーツハンティング)の対象となり虐殺された。その後もオースト
ラリア政府の政策によりタスマニア島を含むアボリジニの人口は激減した。・・・1901年にはイギリスから独立してオーストラリア連邦となっている】
とウィキペディアにあるから、その間-1800年代の中頃-の話なのだろう。
アイルランド人を奴隷のように扱い、先住民である(タスマニア)アボリジニを家畜のように扱う流刑地タスマニア島が映画の舞台であるが、この映画には「イギリス王国によるアイルランド民族の支配・虐待の歴史」と「白人による先住民への蔑視と隷属支配・暴虐」の2つが同時に織り込まれている。
話の筋は、公式サイトから引用した下記の《STORY》に概略が書いてある。
主人公であるクレアとその夫はアイルランド人とあるから、新たなイギリスの植民地となったオーストラリアに夫エイデンと共に送り込まれ、そこで軽微な罪を犯しタスマニアに流刑になったのだろうか。監視役の英国軍将校のホーキンスは刑期が済んだにもかかわらず、解放せず自分の意のままして、異議を申し立てた夫の生まれたばかりの赤子と共に殺してしまう。
復讐の念に駆られたクレラは、夫から1つだけ残された馬に乗り、現地人の案内人を1人だけ連れて、先に旅立ったホーキンスらの後を追う。
イギリスとアイルランドの関係は、一方が他方を無条件に支配する差別と支配・服従の関係である。イギリス(イングランド王国)は、ピューリタン革命に端を発する宗教問題から1649年にクロムウェルをアイルランドに攻め入らせ、これを征服したが、以来争いが絶えない。アイルランドの独立運動も起きたが、イギリスは1800年にアイルランドを併合してしまう。ちょうど第二次世界大戦の前夜、日本が挑戦を朝鮮を併合したように。
1845年には主食であるジャガイモの不作で大飢饉が起こりアイルランド農民は大打撃を受けたという。本国イギリスでは産業革命が起こり都市部に富が集中し始めたというのにである。マイケルコリンズなどが中心になり独立運動が盛んになったのもこの頃からだ。
もう一つの支配と差別または蔑視の関係は、タスマニアの先住民・アボリジニと白人との間にもあった。指揮官ホーキンスは自分の昇進のために島の反対側にある駐屯地に出るのに、密林の山を越えなければならない。道案内に土地を知り尽くしたアボリジニ(映画の中では黒人と呼んでいたが)を同行させなければならないのだが、その振る舞いは人間とは思われない家畜のような扱いである。復讐の念に駆られそれを追いかけるクレアも当然道案内が必要で。黒人の同行を拒否するが女性一人では無理と分かり、渋々同道させるが、やはり若いアボリジニのビリーを見下していた。虐げられているものが更に別の人間をさげすむ人間社会の複雑さを感じさせる。農民の下に敢えて《(エタ)》という身分を作ったように、【下には下がある】と人の意識をコントロールする支配者側の狡猾さと、それに踊らされる人間の浅ましさを感じさせらる。
ナイチンゲールという響きからはとても想像できないような、残虐で激しい描写と共に、民族間の果てしないいがみ合いと、利己心にとらわれた人間の醜さとをさらけ出している。
現在も、イギリスのEU離脱に象徴されるように、北アイルランドの扱いを含め、アイルランド紛争はいまだにくすぶり続けている。一方、自由な地を求めて多くのアイルランド人も移民していった新天地だったアメリカ(合衆国)でも黒人への暴力を伴った差別問題は解決どころか、一部ではますます尖鋭化している。
かつて見た映画で、イギリスとアイルランド問題に関しては『麦の穂をゆらす風』(2006年、ケン・ローチ監督)が、イギリスのオーストラリア統治に関係するものとしては『オレンジと太陽』(2012年、ジム・ローチ監督)が特に印象に残っている。併せてみたい映画だ。
映画『ナイチンゲイール』-公式サイト
『麦の穂をゆらす風』-に関するマイブログ
『オレンジと太陽』に関するサイト
(2012年4月に見ているが、マイブログは書いていなかった)