【 2017年1月2日 】 京都シネマ
過ぎ去った昔の世界に戻ったり、未だ訪れていない未知の世界に入り込んだりと、リアルな視覚的映像に触れ、教科書では学べない《隠れた歴史の裏話》を垣間見たり、文字情報だけでは得られない当時異次元の世会の世界や昔の社会の様子を観たりと《貴重な体験》を映画は与えてくれることがある。
予告編を見ていたら、ヨーロッパが暗黒時代の中世の時代にあって、遙か東方のイスラム社会では医学が進歩して優れた医術が展開されているのを知った青年が、それを学びに行く物語というから、どんな歴史ロマンが展開されるものかと思った。しかも、歴史の教科書では名前しか挙げられていない「イブン・シーナ」(アヴィケンナ)が【どのような人物として描かれていて、どんな学識を持った人なのだろうか】と興味津々で映画館に行った。
出だしは、まずまずの描写で期待感を持たせてくれたが、《砂漠の旅行》あたりから怪しくなってきた。物語に膨らみを持たせるために《若く美しい女性》が登場するのはいいが、物語の進行に必然性-現実感が伴わないのである。砂漠からの《脱出》もあっけない。
致命的なのは、肝心の『イヴン・シーナ』の医術の世界-イングランドでは理髪師がまやかしの治療をしていたのに対し、進んだ医療を行っていたという-が全く見えないことだ。その背景となっている【イスラム世界】や社会構造のことも分からない。《歴史的スペクタクル》を装った単なる《娯楽映画》だ。
《闇の世界》の謎が少しでも解けるのかと期待したが、全くのはずれだった。
余計なことだが、ベン・キングスレーの『イブン・シーナ』の役柄は荷が重すぎる感じがした。
*どういう訳か、すでに《公式サイト》は存在しませんでした。