この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『彼らは生きていた』ーBBCが保有していた「第1次世界大戦」時の貴重なフィルムを編集した衝撃的なドキュメンタリー映像

2020-02-24 11:52:08 | 最近見た映画
     【 2020年2月20日】     京都シネマ

             
                            【 公式サイトより (以下の写真も) 】

                  

 第一次世界大戦は、ヨーロッパを中心に展開されながらも、文字通り全世界を巻き込んだかつてない規模の戦争だった。そこから得られた教訓も多かったはずだが、人類はわずか21年後に再び世界大戦を経験することになる。

     
                    

 戦争から得た教訓は多かったはずだが、往々にして人間は過去を忘れ去ろうとする。戦争のもたらした”便益”だけを語って。

       

    
                   

 西部戦線は塹壕戦が主流だったと聞いているが、チャップリンの映画など出でてくるそれと違って、実際の塹壕戦は想像したものよりはるかに過酷で耐え難いものだと、このドキュメントを見て分かった。「トレンチコート」という語感から想像するようなそんなロマンチックなものは何もない。

                             

 あまりにも凄惨すぎて、ここでは掲載を控えるが、戦場はまさに生き地獄の様相だった。原型を留めない死体がそこいら中に散乱した上を歩兵や戦車が進む。地雷が炸裂する生々しい映像。

                   

 束の間の休息。戦闘が長引き、膠着状態に陥って、兵士がふと思う。
 「何のために戦っているのか。」
                         

 この戦争で、イギリス軍は100万以上の死者が、全世界では1000万人以上の死者と2000万人以上の負傷者とさらに多くの行方不明者が出たという。

       

 終りの方の映像で、敵味方の兵士が寄り合い談笑する姿が印象的だった。

                                    

 冒頭の写真を見てほしい。右半分がモノクロの不鮮明な映像なのに対し、左半分はカラーで鮮やかに蘇っている。復刻の努力もさることながら、技術の進歩も大きいと思わざるを得ない。
 それにしても、よくぞ残してくれたと思うと共に、映像の力をまざまざと感じさせてくれるものだった。

 このドキュメンタリーはBBCが保管していたものなので、当然ほとんどがイギリス側からとったものだが、相手国ドイツから描いた映画『西部戦線異状なし』も思いで深い印象に残る映画だった。併せてみたら一層理解が深まる。

       〇                〇                 〇


 今、若者が狙われている。自衛隊の”体験コーナー”で機銃をさわる前に、この映画を見てほしい。本当の戦争とはどんなものか!
 戦争を知らない世代の人たちは、この映像を見たら、「戦争の意味のなさ」を知るはずだし、「こりごりだ!」と思うはずだ。
 若者よ、アクションゲームのボタンを押すのを止めて、もし家に歴史を綴る本がなかったらNetで第一次世界大戦のウィキペディアのページを覗いてみればいい。多くの記述と共に、この映画にはない歴史的瞬間を映し出した貴重な写真も多数載っている。


   『過去を振り返ることは、未来に責任を持つことだ』(ヨハネパウロ2世)

   『過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる』(ヴァイツゼッカー大統領)
  


  周りの空気にほだされて、戦争に行かざるを得ない-それが事実上の1つの道であったーそういう時代に生まれてこなかった自分らはいかに幸せだったかを、今一度深く感じる。





  
       『彼らは生きていた』-公式サイト




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