【 2024年5月22日 】 京都シネマ
衝撃的な映画である。
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ロシアのウクライナ侵略戦争が始まる前からも、アフガン戦争やクルド人迫害など人権抑圧の絶えないイランやシリアからの難民がEU諸国に押し寄せている問題が、受入国にも大きな負担になっているが、ベラルーシ政府は敢えてEUを混乱させる目的のため難民をポーランドに送り込んで、それが極右勢力台頭の原因ともなっていると言われている。ポーランドは最大の難民受け入れ国でEU全体の7割近くにのぼり、その数は200万人近いとも伝えられている。
この映画は、「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した、幼い子どもを連れたシリア人家族の、ドキュメンタリー映像かと思わせるような《白黒画面》のルポルタージュ風の物語である。
映画の原題は『グリーン・ボーダー』で、直訳すれば《緑の国境地帯》であるが、次の2つの裏の意味を含んでいると解説にあった。
1つは、 ポーランド語辞典にある《政府の許可なく非合法に越境する》ことで、もう1つは1995年に発効したシェンゲン協定によって《EU内を国境検査の必要がなく自由に移動できること》を暗示している、と。
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子供二人を連れた家族と、もう一人の同行者を伴った難民の一行は、海を渡るより安全だという思いで、陸路ベラルーシに入り、同国の国境警備隊が意図的に開けた抜け道を通って非合法な越境を試みるが、ポーランド国境警備隊による押し戻される。ベラルーシに戻された難民は深い森の中で再び越境を強いられるが、同じことの繰り返しで飢えとのどの渇きで疲弊していく。
【 木の葉の雫でのどの渇きをしのぐ 】
政府の心無い決定に反発する人権活動家と、その狭間に立って葛藤するポーランドの国境警備隊の姿。
【 拘束された難民の親子 】
【 ポーランド国境警備隊と対峙する人権活動家 】
【 非合法を理由にポーランド警察に捉えられた活動家 】
ぎりぎりの合法と非合法の間を縫って活動を続ける人権活動家間にも亀裂が入り掛けるが、それを上回る《人間の良心》の大きさに圧倒される。
【 いつになったら、無意味な戦争が終わり、難民になる必要のない、国を捨てる必要のない平和が訪れるのか 】
【 平和ボケした自分ら日本人と日本の国が何をすべきか、《難民に冷酷な日本》に何ができるのか 】、
もっと深く考えないといけないと思わざるを得ない、心に響く映画だった。
映画『人間の境界』ー公式サイト
【 ポーランドのウクライナ難民支援の状況を伝えるサイト】(その1)
【 ポーランドのウクライナ難民支援の状況を伝えるサイト】(その2)