この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「シッコ」(ほとんどビョーキ)-マイケル・ムーアの3作目を見る

2007-09-10 22:12:56 | 最近見た映画
[2007年8月29日]京都シネマ

 自分たちが世界の中心だとして、その価値観、やり方を「グローバリズム」として世界に押しつけるアメリカ的価値観、アメリカ流のやり方が決して世界の標準でなく、最もいい方法でないことが医療制度を例にして示される。

 臓器移植やら日本では出来ないような手術を受けにアメリカに渡り、無事一命を取り留め日本に帰ってくるという報道をたまに見ることがあるが、そんなときアメリカの医療は進んでいるなあと思ってしまう。
 しかし、アメリカには高度な医療技術はあっても、皆が安心して使える医療制度、保険制度が無いことがこの映画を見るとよくわかる。
 
 医療保険が企業の利益のための営利事業にされると、どんな惨めな結果がもたれされるか、実例で示してくれる。

 これは海の向こうの国の話ではない。日本の近い将来の予想図を描いている。国保を制度破綻にし、健保を骨抜きにして国民皆保険制度を無くした後に、「アフラック」だの「アメリカン・ファミリー」だの保険会社がもっと幅をきかす社会を作ろうとしている、その構図だ。

 医療しかり、福祉しかり、教育しかり、郵便制度しかり、民営化された国鉄しかり、みな民間の活力をという標語ととも、地方や弱者を犠牲に大企業のもうけとアメリカ資本の便宜を図るため改革という名のもとに推し進められていく。

 今の首相も、何かというと「確実に改革を進めていくことで国民の信頼を、云々~」と馬鹿の一つ覚えの様に、何が改革なのか具体的なことは何も言わないで、ただ抽象的の言葉を並べる。

 それに対して、ヨーロッパは元気というか健全だ。アメリカだけを見ていたら世界の方向を見誤る。同じ北米なのに、カナダのことも少しは見習わないと、日本は世界の後進国になってしまう。(ある面ではすでに立派な後進国だが。)

 パンフ(映画カタログ)を見て腹が立つことがあった。なんで、あのアメリカの走り遣いのような男、デーブ・スペクターのコメントを載せているんだと。正々堂々とした反対意見ならいい。ただケチをつけるようなコラム記事をお金を出してまで見たいとは思わなかった。わかっていたら買わなかった。

 全体を見て、そういえば広告のコピーからして、今回のこの映画の扱いが少しおかしい。マイケル・ムーアをドキュメンタリー映画の監督としてではなく、ピエロか変人として笑いのなかに茶化してしまおう、という感じがする。決して、笑いでごまかせるような問題ではないのだが。

 かつてアメリカがチャップリンを追放した時に、彼を単なるドタバタ喜劇を演じる道化役者という面だけを強調して、社会の告発者としての核心をくるんでしまったように。


 「シッコ」-公式サイト

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