【2010年1月26日】 京都シネマ
韓国の貧しい農村地帯、時代の流れに背くように、機械を使わず農薬を使わず年老いた牛と自らの人力だけで農耕を営む老夫婦。
牛に食べさせる草をかる作業も大変だが、農薬を使わないから牛にいいばかりか汚染の心配もない。
息子夫婦はホンの少し登場するだけで、近代化の世界に行ってしまった遠い存在のようである。
政治的な主張も荒だって出てこないが、アメリカの「狂牛病」輸入に関しては日本以上に猛反対した様子が、映画から垣間見られる。
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日本の農業も林業も荒れ放題で国土は荒廃するに任せている。
先日テレビでの放映されていた。耕作されないで放ったらかしにされ荒れ放題になっている土地のことを「耕作放棄地」と呼ぶらしいが、それが日本全体で埼玉県に相当するくらいの面積になるという。それを活用したいと思っても、地主が不在だったり無頓着でままならないらしい。
「生きること」「人を生かすこと」の一番根本のところがないがしろにされている現実がある。
ずっと以前に見た韓国映画で印象に残る映画では「西便制 風の丘をこえて」と、それと最近では「おばあちゃんの家」がよかった。
この映画は、その延長線上にある、もうひとつの韓国映画の魅力を充分感じさせる。
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美しい農村風景の中で、絶え間なく挿入される同じく年齢を重ねた妻の「愚痴」が静かな背景に彩りを添える。
「牛の鈴音」-公式サイト