この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『幸福の黄色いハンカチ』の思い出-1992年の家族旅行記・『卒業!パック旅行-わが家の北海道』

2014-11-22 11:19:49 | 山・旅行


 先日、高倉健が亡くなった。【健さん】といえば、すぐに『幸福の黄色いハンカチ』を思い浮かべる。『網走番外地』や【任侠物】を思い出す人もいるかもしれないが、わたしの場合はやはり『黄色いハンカチ』以降の作品だ。それも山田洋次の作品に限る。

 『黄色いハンカチ』を初めて見たときの衝撃は忘れない。もう、何十回も見たことだろうか。だから、映画の中の【台詞】がギャグとなって、わが家の会話の中にたびたび登場する。
 例えば、

 『・・そんな風には見えなんだけどなー』  (【健さん】の【金ちゃん】に対する言葉)
 『・・何とかなるんじゃないの・・』    (【渡辺係長】の言葉)
 『・・あんたって、自分勝手な人だねー・・』(倍賞智恵子こと【みつえ】の【健さん】に対する言葉)
 『・・あーあ、損行しちゃった。・』    (【金ちゃん】が無駄骨を折ったときに【健さん】につぶやく言葉)

 等々。
 それと、ふがいない男をたしなめる言葉。【金ちゃん】に、『そういうのを草野球のキャッチャーというじゃ。わかるか!』
 『・・ミットもない』と。

 
 そんなこんなで、家族で『北海道旅行』に行くことになった。

 以下は、その時の旅行記である。懐かししくなって、読み返している。

      ○          ○          ○


  「祝卒業!パック旅行-わが家の北海道」

 1992年の春休み。
 3月26日午前五時半、前夜から積み込んだ山のような荷物の同のシートにそれぞれが座り込んで京都のわが家を出発。本当は五時に出発する予定であったが、きちんと時間通りに出発したためしがない。それでも三十分遅れですんだのは優秀なほうだ。
 愛車はデリカ・スターワゴン。荷物を積んで一家が移動するには普通の乗用車ではどうにもできなくなり、3年前に購入したものだ。人間だけならゆったりとできるのだが、家財道具でいっぱいの狭い家の中と同様、旅行に必要な荷物を積み込むととたん、に狭くなる。それでも本来なら六人乗るところ五人なのでいつもよりだいぶ余裕がある。その分、助手席は荷物が置かれナビゲ一夕ーはいない。運転はいつもどおり家長たるわたし。真ん中の回転式のシートには妻と近ごろちょっと気難しくなった中二になる二男の林太郎、後ろのシートには今春、めでたく高校に入学できた長女の都麦(ツムギ)と二女で小五になるゆずがにこにこして座っている。
 出発して30分、東名の東インターに入る頃には後ろの連中は再びここちよい眠りに入ってしまった。こちらは、さあ今日は走りに走らねばと、カッと目を見開く。

 わが家では毎年春休みの時期に家族旅行をするのを恒例としている。共働きの家庭では休みを同時に取るというのが難しいが、末娘のゆずが十歳だから、もう10年近くそうしてきている。子供はいずれも産休明けから保育所のごやっかいになっていたが、忙しい中、暇を見つけては小さい時からおしめと哺乳瓶を持ってよく小旅行に出かけたし、盆と正月にはそれぞれの故郷に帰省したりもした。
 しかし、共働きの家庭の有給休暇は子供の病気のための使われることが多い。ましてや四人も子供がいると誰かしらが病原菌を貰ってくると連鎖反応式に病気が移っていき、年間の有給休暇の大半を消化してしまうことばよくあることであった。だから有給は大切に使わなければならないが、こちらの都合でなく保育所の都合で年に一度、3月末から4月始めの年度替わりの閉所期間があり、その期間はいずれかが仕事を休まねばならなかった。いつからか、どうせ有給をとるなら一家で旅行しようということになり、それ以降、子供がすべて卒園してしまいそもそもの根拠が失われてしまった後もその習慣だけは残っている。
 何回か繰り返してはじめて気がついたのであるが、春休みというのは学校が休みであるにもかかわらず正月やお盆に比べてずっと宿が取りやすいのである。それに子供にとって煩わしい宿題というものがこの休み期間にはないので、のびのびと休暇を楽しむ事ができる。しかし子供が大きくなったらなったで一家揃っての旅行というのも、だんだん難しくなってきた。もしかしたらこれが家族全員での最後の旅行になるかもしれない。そんなことを予感させるように、今回の旅行をいかにするかで、もめにもめた。
 いかにもめたかという話はおいおい書いていくことにしよう。

 車は名神を米原に向かって走る。八日市あたりで太陽がようやくあがってきたろうか。
 米原ジャンクションの手前まできて左に折れて北陸道に入るか、それともそのまま直進するか迷った。二年前の東北旅行の時は中央道を諏訪で降り小諸、碓井峠を通り足尾鉱山と日光に立ち寄り安達太良山近くの野地温泉に第一泊目をとった。これはかなりハードな行程だったが美しい景色と変化もあり退屈しなかった。しかし、同じコースはとりたくない。この手の旅行ではいつも欲張って走り回り、日没前に宿に着いたためしがない。着くなり夕食を急かされ、あわてて風呂に入り、アルコールが入った後は疲れてただ寝るだけというパターンである。せっかく設備の整った旅館でも、これではもったいない。今度の旅行は宿でもくつろげるよう、いつもよりは早く、せめて夕陽が残っているうちに着きたいと思っていた。
 今日の目的地は仙台郊外の作並温泉。露天風呂も温水プールもあるという。道中にこだわっていたらまた着くのが遅れる。東京回りで行こうか新潟に出ようか迷っているうちに北陸分技まであと2キロの標識。車を左に寄せる。

 そもそも、行き先と目的は決まっていた。北海道に行くというのは今回の場合、当然の成り行きである。というのは、わたしも妻も山田洋次の映画の大のファンであった。山田洋次の映画には北海道がたびたび舞台た使われている。寅さんは全国くまなく歩き回っているから北海道だけにこだわっていないが、それでも2~3回は舞台になっている。
 映画『家族』で一家が九州から北海道に移って行ったときの北海道はそれこそ寒々としていたが、『幸福の黄色いハンカチ』の北海道は是非一度行ってみたいところ、として写った。映画の中で武田鉄也が言うせりふ-『いいぞ北海道。なっ、行こうよ、北海道』はそれ以来、わが家の合い言葉になったが、なかなか実行には移せなかった。
 一家で行くにはあまりにも遠すぎたし、子供もまだ小さかった。口に出してはみるものの、北海道への家族旅行は当面、実現しそうもない夢みたいな、最終目標みたいなものだった。そうこうしているうちに6年たち7年たちその間、わたしの方は会社の社員旅行で2回も北海道に行ったが、妻にはそうした機会もなく当然子供も行った事がなかった。
 近いところから始めた家族旅行は、信州も行き中国地方・四国にも行き、東北も回り九州も2回行ったとなると、大ざっばに言って国内ではあと北海道だけしか残っていなかった。山田洋次の映画で雄大な北海道の自然が映し出され、それを見たわたしが『いいぞ、北海道』と感嘆の息をもらした時や、社員旅行の時の、【いくら井】やら【生うに】、【いかそーめん】に【ホッケ】などの北の海の幸を思う存分食べた話しなどをした時は、いつも『父さんだけ、ずるい!』の非難の合唱。こうなったらもう北海道に行くしかない。しかし、決まったのは北海道に行くということだけである。

 北陸自動車道に入ると多少車の数は減ってくる。伊吹山の端に朝日が掛かりまぶしい。朝もやのかかる湖北の田園地帯を快調にとばす。7時15分、敦賀湾を見おろせる杉津サービスエリアで最初の小休止。朝食代わりにパンとコーヒーをほうり込む。他の者は寝ぼけ眼で座席から離れようとしない。武生、鯖江をすぎ福井も通り抜ける。退屈な風景が続く。4WDの重たい車体はガソリンをやたらに食う。燃料の残り少ないことを知らせる警告ランプがもう点灯している。尼御前S・Aで今度は車に朝食をやる。サービスエリアに隣接している由来の書かれた断崖から、右手の下方に延びた浜をバックにスナップを一枚。
 8時半すぎ、サービスエリアを出発。ちょっと休みすぎた。海岸線の松林に沿って進むが海は見えない。旅客機が低空で近づいてくる。飛行場が近いのだろうか。しばらく走ると木々の向こうに尾翼の先っぽだけが見えかくれする。小松空港か。そのうち車は海岸線から離れ金沢の市街地を抜け山間部に入る。これだけ荷物を積んでいるとアクセルをいっぱい踏み込んでも登坂車線のある坂ではずるずるスピードが落ちてくる。あわてて追い越し車線から走行車線に退避する。さっき追い越した乗用車が悠々と追い抜いていく。
 もう少しで富山のはずだ。右手に雪をかぶった山々が見える。庄川と神通川を渡る。富山の市街地を左に見て、そろそろ北アルプスの山々が姿を現すはずだが、その方向に視線をやってもさっぱり見えない。いつか七尾から氷見に行く海岸線から富山湾越しに見た、立山やら剣山の雪をいだいた美しい姿が忘れられない。滅多に来られないのだから、訪ねて来た時くらいはカラッと晴れてそのきれいな姿を見せてほしいと思うのだが、いっこうに山にかかった雲は晴れそうにない。だんだん山との距離が縮まり、山裾が道路を日本海側に押しやってくる。魚津を過ぎ朝日まで来るともう山と海の間に平地はない。ここから片側一車線になり、トンネルの連続になる。おとなしく前の車についていくしかない。親不知を通過する。上を見ると海岸線を這い縛って国道が通っている。また、トンネルに入る。トンネルの切れ目から時折ねずみ色の日本海が顔をのぞかす。




                                             【つづく】

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