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早朝は牛乳配達を、昼間はスーパーで働き、晩は一人で本を読む、地味で単調な[凡人にはつらい]毎日を送る主人公の大場美奈子・50歳(田中祐子)。中学時代の友人(岸部一徳)にはガン末期の妻(仁科亜季子)がいてえ福祉事務所の仕事が終われば、家では介護の仕事が待っているし、知人のおばさん(渡辺美佐子)も認知症の夫(上田耕一)を抱えている。
しかし、介護だ、不治の病だといって、あたかも自分だけが特別な不幸におちってしまったことに同情心をあおる、いわゆる「お涙、頂戴」の映画とは全然違う。
その手の映画は、難病にかかったり、身内の者が「認知症」などになった事などを、他の‘幸せな'一般とは違う、自分だけが特殊な境遇に陥ってしまった「不幸な存在」として描く。
人は様々な不幸と幸せと、長所と短所を持ち合わせていて、実生活の中でそれらが渾然一体となって生きている。(悩み事も欠点も何もない、のっぺらぼうの人間なんて想像するだけで気味が悪い。)
この映画の中で、物語はそうしたものを自然に、人間の存在様式=人生のあり方の1つとして淡々と描いていく。力まずに、特別なものとしてでなく、普遍的なものとして。ただ、美奈子は忘れられない彼の事をずっと思いつつ。
登場した配役の演技が皆、すごく良かった。しみじみと味わいのある映画だった。
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