先月まで、中学生クラスでは「ブックトーク」として1テーマで2冊ずつご紹介していました。ただ、5分という時間の中では1冊じっくり語った方が良いかもしれない…と思うようになり、昨日の授業では1冊だけご紹介しました。
取り上げたのはこちらの本です。
こちらは、中3国語の教科書(光村図書)の「『私の一冊』を探しにいこう」という単元で、冒頭が紹介されています。
教科書では、この作品のあらすじも紹介されています。
簡単に書くと、「ピアノの音に魅了された青年が、個性豊かな先輩たちやお客さんとの出会いで、調律師として成長していく物語」ということなのですが…この本を読むと、「小説の魅力はあらすじでは全く伝えられない!」と思います。
時間を持て余していて、なんとか就職口を見つけて、生きていければいいと思っていた主人公、外村。
高2の2学期、17歳だった彼が案内を頼まれたのは、調律師の板鳥。
彼の調律に魅了された外村は、調律師を目指すことを決めます。
板鳥さんと同じ会社に入社した外村は、試行錯誤しながら調律師としての道を歩んでいきます。会社には、7年先輩にあたる比喩が独特な柳さん、昔、ピアニストを目指していたけれど調律師になった40代前半の秋野さんなど、個性的なメンバーが。皆、個性は様々ですが、「いい音」を目指して真摯に仕事に取り組んでいる点は同じです。
また、調律先で出会うお客さんも個性豊かで、ピアノの調律を通してそれぞれの人生が垣間見られます。
この本の魅力は、なんと言っても言葉だと思います。
物語は淡々と進んでいくのですが、言葉選びが美しい。
そして、悩みながらも、自分を成長させていこうとする主人公の真っすぐさに胸を打たれます。
私は40代半ばなので、同じく40代の登場人物である秋野さんの気持ちがよく分かります。
一見シニカルな秋野さんの、表には出さない熱い気持ちも。
けれども、できればこの本は、是非若いうちに読んでいただきたいです。
なぜなら、主人公の真っすぐさと苦しみに一番共感できるのは、若いころだと思うからです。
そして、時間を経て読み返すたびに、きっと新たな発見がある本なのだとも思います。
人生を応援してくれるような言葉がたくさんあるこちらの本ですが、クラスでは以下の部分をご紹介しました。
生徒さんたちが、このように気持ちや力を傾けられる何かを見つけられるといいなぁと願いつつ…。
「和音が何かを我慢してピアノを弾くのではなく、努力をしているとも思わずに努力をしていることに意味があると思った。努力していると思ってする努力は、元を取ろうとするから小さく収まってしまう。自分の頭で考えられる範囲内で回収しようとするから、努力は努力のままなのだ。それを努力と思わずにできるから、想像を超えて可能性が広がっていくんだと思う。」
ちなみに、こちらの作品は映画化もされています。
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