こうの史代さん作のコミック「夕凪の街 桜の国」を今日、購入して読んだ。
来週から田中麗奈、麻生久美子主演で上映される映画の原作。
終戦10年後を描く「夕凪の街」、そして現代を描く「桜の国」、
ふたつの時代を生きる若い女性を主人公に物語は紡がれる。
舞台は・・・・「ヒロシマ」。
どちらの物語も直接的に「戦争」を描いてはいない。
原爆も書かれていない。描かれているのは、あくまでに「日常」「普通の暮らし」
その普通の生活に時折、はさまれる、戦争の想い出のシーンがとてつもなく重い、
痛々しい。
「夕凪の街」の主人公皆実は「戦争」で父や姉を失い、自分が生き残った事に
罪悪感を抱いている。
「誰かに死ねばいい と思われたということ 思われたのに生き延びている
いちばん怖いのは 本当にそう思われても仕方ない人間に自分がなってしまったこと」
皆実は「幸福になること」に踏切れない。でも、愛する男性にプロポーズされ
ようやく「希望」がみえる・・・でも。
いっぽう「桜の国」は現代が舞台。
七波、凪生の兄弟は2000年を生きる普通の若者。
母親は早くに亡くしている、母親も被爆者だった。
ここでも普通の生活が描かれる。時折父親の回想をはさみつつ。
被爆者に対する周囲の冷たい目をさりげなく織り込んで・・・。
七波は両親の昔のことを知り・・・つぶやく
「凪生もわたしもいつ原爆のせいで死んでもおかしくない人間と決めつけられるのか」
「わたしはたしかにこのふたりを選んで生まれてこようと決めたのだ」
この物語は戦後生まれのこうのさんが自分の産まれた「ヒロシマ」に向かい合って書いた。
読んで思ったのは・・・戦争が如何に「普通のくらし」を奪うか、ということ。
戦争は「終戦宣言」したから終るもんじゃない。
家族を失ったヒト、怪我したヒトは後の人生が変わってしまう。
地雷だの、特殊爆弾だの戦地に未だに傷跡が残り安全な生活を脅かされる場合もある。
戦争がなければ・・・背負わなくていいはずのことばかり。
時間が流れようが「戦争」に巻込まれたヒトたちにとって、まだ終わっていない。
まだその傷跡は残ってる・・・
それを「しょうがない」の一言で片付けていいわけがない。
昔、漫画「はだしのゲン」を読んで、とてもこわかった。恐ろしかった。
それ以来「戦争」の記録や本を読むことから目を背けてた。
「知らない・知るのはこわい」と逃げてるのもイケナイ気がする。
この作品はそんな「逃げてる」自分にさり気なく入り込んできた。
これから何度でも読もうと・・・そう思う。