すずかぜ型巡視艇(すずかぜがたじゅんしてい、英語: Suzukaze-class patrol craft)は、海上保安庁の巡視艇の船級。区分上はCL型、公称船型は20メートル型。なお、ネームシップが配属替えに伴い改名したことから、現在ではひめぎく型とも呼ばれる。
来歴
海上保安庁では昭和24年度計画より国産巡視船艇の整備を開始したが、その先頭を切って就役したのが15メートル型CL(そよかぜ型)であった。これは、海保創設当時に巡視船の性能と保有量に制限が加えられていたことから、その制限の枠外において基地周辺の制限沿海海域において巡視船を補完するための港内艇として設計されたものであったが、非常に優秀で乗員の信頼を得たことから概略配置をほとんど変更せずにマイナーチェンジのみで建造され続け、最終バッチにあたるちよかぜ型は昭和43年度から50年度にかけて実に96隻が建造された。
しかし15メートル型は長年の装備強化の積み重ねで排水量が増加するとともに、船舶安全法関係諸規則の改正にともなって規則に触れる部分が増えてきた。このことから昭和52年度以降の建造分(やまゆり型)では、初めて船体寸法も変更して大型化を図り、部内では18メートル型と称された。そして平成3年度計画ではちよかぜ型の代船建造に着手されることになったが、これは更に大型化を図ることとなった。これが本型である。
さらにちよかぜ型の退役完了後も、今度はやまゆり型の更新用としても建造が続行された。平成26年度補正及び平成28年度予算によっていそかぜ型となだかぜ型を更新、続けて平成28年度二次補正以降すずかぜ型(ひめぎく型)自身の更新が開始された。(平成31年03月現在、平成3年度建造艇解役済)
設計
本型ではプレジャーボートや小型漁船の高速化に対応して、速力の向上を図っている。船型を滑走性能のよいものにするとともに、上部構造や艤装品をアルミニウム合金製として重量軽減を図った。主船体は従来の15メートル型・18メートル型と同様に高張力鋼製である。
塗色は平成12年度補正予算建造艇以降白色塗装が標準となり、船側にS字章及びJCGロゴが標記されるようになった。またそれ以前の建造艇も一部は白色塗装と変更し、船側にS字章及びJCGロゴが標記されている艇もある。
大型化にともなって操舵室・居住区が拡大されて、業務処理および居住性の向上が図られている。操舵室には全乗員分のダンパー付き椅子が配置されており、また居住区にはベッド兼用の長椅子があるほか、巡視艇として初の簡易シャワー設備が備えられている。
配備先によりマストが起倒式となっている艇が存在する。例えばCL11は当初配属地の係留場所が小樽運河内であり、橋をくぐる必要があったため。(※全艇起倒出来る、油圧式かボルト止め手動式の違い。ボルト止めの艇はほぼ倒されることはない)なお、現在係留先が変更になり小樽運河内では巡視艇は係留されていない。
艇によっては電光掲示板を装備。
無線機器の装備の違いによりアンテナの装備が艇により違いがある。
艇によっては小型の複合艇を搭載している。
高速化のため主機関も強化されており、V型12気筒4サイクルディーゼルエンジンが搭載された。主機関にはMTUタイプとMANタイプがあり、MANタイプではMAN D2842LYE[5]、MTUタイプではMTU 12V183 TE92型(910 ps / 2,230 rpm)が採用されている。
分類
本型は長期間に渡り多数が建造されている(1番艇就役の1992年(平成4年)からなお建造中及び計画がある)ことから、多数の派生型が存在する。
原型(平成3年度型~H7年度型:下記の幅広型及び浅海域対応型とは建造年度が重複する期間がある)
幅広型(平成5年度型~平成12年度補正型:原型とは建造年度が重複する期間がある)
船幅を20センチ大きくして定員を6名に増やしている。
一部の艇で就役後に操舵室が外見上変更されている物もある。
浅海域対応型(平成6年度型、平成7年度型、平成11年度予備費)
幅広型を元に浅海域での運用に対応して推進器をウォータージェット化したもの。
警備機能強化型(平成13年度第1次補正型、平成17年度補正型、平成19年度補正型、平成26年度補正型以降)
幅広型を元に平成13年度第1次補正計画以降の建造艇。
主機出力を2,040馬力に強化するとともに防弾性を強化したもの。
重量増の代償として船首甲板の放水銃を廃止していることから、代わりに可搬式のガソリンポンプとの放水ノズルを装備、必要に応じて船首部に設置している。
また平成17年度補正計画での建造艇は建造間隔が開いたため操舵室形状が更新されているほか、平成19年度補正計画での建造艇は推進器をウォータージェット化、平成26年度補正計画での建造艇はこれに加えて投光器がLEDになる等細部が変更されている。
船番がCL01〜04とCL171からの連番でなく、解役となったいそかぜ型及びなだかぜ型の船番が付与されている。そしてまたCL172〜付与された。
航行区域
当初は制限つき沿海とされていたが、海洋法に関する国際連合条約の発効に伴い、平成8年度補正計画の「おいつかぜ」(CL94)以降の艇では近海に変更された。(設備的に近海対応可能であるが一部の艇は沿海対応の航海灯が設置されており、近海登録されていない艇も見受けられる)
空調による分類(北方型、南方型)
艤装品まで含めると、配備先に応じて暖房ないし冷房を強化していることからそれぞれを北方型と南方型に分類される。
夜間監視装置
平成17年度補正計画以降の艇は操舵室上に夜間監視装置を搭載している。それ以前の艇にも追加で装備されているものもある。
登場作品
映画
『海猿シリーズ』
『LIMIT OF LOVE 海猿』
「CL-17 さたかぜ」「CL-47 さつかぜ」「CL-119 さつき」が登場。鹿児島湾にて、フェリー「くろーばー号」が座礁する海難事故が発生したことを受け、現場海域へ急行し救助活動にあたる。
『THE LAST MESSAGE 海猿』
「CL-86 おさかぜ」「CL-87 わかかぜ」が登場。福岡沖にて、天然ガス採掘プラント「レガリア」にドリルシップが衝突する海難事故が発生したことを受け、現場海域へ急行し救助活動にあたる。
『BRAVE HEARTS 海猿』
「CL-19 ゆりかぜ」「CL-49 あわかぜ」「CL-129 やまゆり」が登場。左翼エンジンが爆発したボーイング747-400が東京湾内に海上着水することを受け、着水する海域の近くで待機し、着水が成功すると直ちに接近して救助活動を開始する。
『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』
「CL-136 やまぶき」が登場。東京湾を航行するフェリーが濃霧のため海ほたるに衝突したことを受け、現場海域へ急行し乗員・乗客の救助活動を行う。
漫画
『大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン COMIC VERSION』
「CL-114 のげかぜ」が登場。神奈川県沖を漂流していたプレジャーボートを調査するが、バルゴンが発した冷気によって一帯の海域が凍結したことで、身動きが取れなくなってしまう。
ずかぜ型→ひめぎく型巡視艇
基本情報
艦種 20メートル型CL
運用者 海上保安庁
就役期間 1992年 - 現在
同型艦 175隻
前級 やまゆり型 (18メートル型)
次級 (最新)
要目
満載排水量 19トン
総トン数 23トン
全長 20.0 m
最大幅 4.30 m
深さ 2.30 m
吃水 0.88 m
主機 ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力
1,820馬力
2,040馬力
速力 30ノット
航続距離 200海里
乗員 5名
レーダー 航法用×1基
光学機器 夜間監視装置 (CL-135以降)
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