佐藤春夫「少年の日」より
半紙
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本文は以下の通り。
君は夜な夜な毛糸編む
銀の編み棒に編む糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰がものぞ。
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これで「少年の日」全文を書き終わりましたが
やっぱり、「1」が抜群にいい。
書じゃなくて、詩が、です。
「野ゆき山ゆき海辺ゆき」の1行があってこそ
この詩は不滅の命を持ったといえるでしょう。
「ゆき」が三回繰り返されることで
自然のなかをさまよう少年がイメージされるのですが
その切迫したリズムが、
少年のこころの切ないまでの純情さを
見事に表現しています。
映像的であって、しかも音楽的。
極端なことを言えば
この詩は「1」だけでいいのであって
後は、付け足しみたいなものだと
ぼくは思っています。