Yoz Art Space

エッセイ・書・写真・水彩画などのワンダーランド
更新終了となった「Yoz Home Page」の後継サイトです

一日一書 809 前不見古人・陳子昂

2016-02-15 09:36:37 | 一日一書

 

陳子昂「登幽州臺歌」

 

半紙

 

 

   登幽州臺歌

 

前不見古人

後不見來者

念天地之悠悠

獨愴然而涕下

 

 

前に古人を見ず

後に来者を見ず

天地の悠悠たるを念(おも)い

獨(ひと)り愴然(そうぜん)として涕(なみだ)下る

 

ずっと前に生まれた人に会うことはできない。

はるか後に生まれる人に会うこともできない。

ただ天地が悠々と続いていくのを思うとき、

人の一生の短さを思い知らされ、涙が流れるのだ。

 

 

漢詩には、高い所にのぼって、自らの感慨を述べるという趣向がおおくみられます。

高い所は、日常から離れたところであり、

そこに立ったとき、おのずから自らの人生に思いを馳せることになるのでしょう。

 

「古人」にも「来者」にも会うことができず

天地の間にぽつんと取り残されたような自分の人生のはかなさ。

それを思うと、胸がいっぱいになり、涙が流れるのだった、と詩人はいうのです。

 

けれども、「古人」の書いたものを読むことで、私たちは「古人」と親しく語りあうことができ

自分がものを書き残すことで、「来者」は同じ思いで自分を思い出してくれるのもまた事実でしょう。

 

天地の間にただ一人で存在するような個人は

「言葉」によって、深く繋がりうるのです。

 

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする